2019年8月28日 00:00
「イモータル:アンチェインド」は、“ハードコアアクションRPG”だ。敵は超反応、攻撃力は凄まじくあっという間に体力を削られ、倒される。一瞬の油断が許されない緊張感のある戦いを強いられるゲームバランスこそ本作の特徴だ。
本稿では「イモータル:アンチェインド」の魅力を語っていきたい。きついゲームバランス、硬質で殺伐とした世界観、ストーリーはほとんど語られず、キャラクター性も独特だ。日本のユーザーにはちょっととっつきにくい、異質な雰囲気もあるが、そこが良いのだ。この厳しい世界の中で、生きぬく楽しさ、少しずつ攻略し、先に進む達成感。間違いなく強い魅力を持った作品である。
この難しさが癖になる! 敵を覚え、戦い方を覚え、じりじりと進む楽しさ
どことは知れぬ世界、どことは知れぬ宇宙……その世界は「モノリス」によって均衡を保っていた。しかしモノリスの機能が低下、蘇った死者が世界を闊歩し、世界は危機に瀕することとなった。預言者はモノリスを起動させ、伝説の戦士を呼び出す。伝説の戦士は繋がれていた鎖から脱し、戦いを開始する……。
「イモータル:アンチェインド」は一瞬の隙が命取りの、いわゆる“死にゲー”というジャンルに属する作品と言える。ゲームではまずキャラクタータイプを選ぶが、本稿ではこの特徴的なゲーム性をまず紹介していこう。プレーヤーキャラクターの目的は「探索」である。3人称視点でキャラクターを操作し、殺伐とした世界を進みながら、マップにあるゴールを目指し、敵がたくさんいるフィールドを抜けていかねばならない。
本作の戦闘バランスはかなりキツイ。敵ははるか遠くからでもこちらを発見すると弾を撃ってくるし、その攻撃力は非常に高い。さらにキャラクターが一定距離に近づくとマップに現われる敵もいる。チュートリアルのマップも用意されているが、そこを越えた後の難しさには驚かされるだろう。
敵がどこにいるか、素早く倒すにはどうするか、プレーヤーはマップと敵の位置を覚え、迅速な対応を求められる。今回はゲームプレイの一部を切り取ってみた。本作のバランスを感じてもらえればと思う。
ゲームのセーブポイントとなるのが「オベリスク」というポイント。ここではキャラクターのセーブ、ステータスの成長、武器の装備やアップデートなどができる。ステータスの成長には「ビット」と呼ばれる経験値が必要だ。
このビットのシステムも中々エグイ。キャラクターは倒されると持っているビットをその場に落としてしまう。落としたビットはその場までたどり着けば回収できるのだが、その前に倒されると失われてしまうのだ。キャラクターは倒されるとオベリスクのポイントで復活するのだが、倒した敵も復活している。難しい場所だとビットが回収できないまま何度も死ぬという、前に全く進めない状態になる。
このためプレーヤーはオベリスクを中心に慎重に敵の位置を覚え、オベリスクまで戻ってキャラクターを成長させるという手順を踏んで行くこととなる。探索をかなり進めてもオベリスクが見つからず倒されたときなどはかなりの絶望度だ。
敵は突然現われたり、躊躇なくグレネードを使ってきたり、こちらの攻撃を防ぐシールドを張ったりする。しかも初見では気づけない罠や、足場が小さい場所もある。正直その難易度が理不尽に感じ、コントローラを投げ出したこともある。
しかし、だからこそ面白いのだ。敵の場所を覚え、対処法を覚えることで広がる探索ルート、そしてショートカットや抜け道を発見し、マップを攻略、先に進む楽しさ。難しいゲームを経験で乗り越えていく楽しさ。筆者のアクションゲームの腕はそれほど高くないが、詰め将棋のように攻略を見つけ、キツイステージを走破することで強い達成感が得られる。このギリギリを攻めていく楽しさに挑戦して欲しい。
そしてこのゲームは「実況映えするゲーム」であることは断言しておきたい。まずこのきつすぎるバランスが面白いし、これに四苦八苦する実況者は見てみたい。もちろんスーパープレイでクリアしていく人には拍手を送りたくなる。硬派で無機質な世界は、突っ込みながら進んでいくと楽しいのではないだろうか。ゲーム実況者が本作をどう料理するかも期待したい。
初期パラメーターが大きく違うクラス。自分なりの戦い方を見つけ出せ
本作にはいくつかの“戦い方”がある。それは持っている武器によって変わってくる。最初に何の武器を装備するか、を選ぶのが本作で最初に選ぶ「クラス」である。クラスには独特の呼び名がある。
「追う者」はカービン銃を使う、「射る者」はスナイパーライフルを使うクラスでどちらも遠距離攻撃が得意だ。本作で遠距離攻撃を活かすには敵の場所をあらかじめ把握しておく必要がある。「侵略せし者」、「彷徨う者」は敵の攻撃をかわし背後に回り込み戦うのが得意だ。自分のプレイスタイルを考えて選ぶのが良いだろう。
ただぶっちゃけてしまうと、これらのクラスは初期ステータスの配分と、最初に入手できる武器が異なるだけでそこまで大きな違いはない。それよりも何のステータスを育て、どの武器を使うか、が重要になってくるのだ。ゲームを進めると武器の有用性がわかってくる。メイン武器でのサブマシンガンは弾数は非常に豊富だが、1撃ごとのダメージが低い。一方アサルトライフルは弾数は少ないものの敵の突進を止める威力があり、敵をひるませることができる。
スナイパーライフルは遠距離攻撃できる、ランチャーは強力な攻撃ができるが、それぞれクセが強い上に装弾数が少ない。これらをメイン武器にする場合は、弾数の多いサブ武器で補うことでバランス良く戦える。これらの武器はステータス制限があるのがポイントだ。まずはどの武器を使うか、それを考えてステータスを上げていくことになるのである。
より強い武器を目指し、いらない武器をつぶしてパーツを集めろ!
そしてアイテムハントだ。本作は敵を倒すことで様々な武器が手に入る。これらをアップグレードすることで戦いを有利に進めるのだ。入手できる武器は様々なものがあるが、ゲームでは中盤までメインとサブ、そして格闘武器が1つしか持てない。また、ステータス制限も厳しめなので実際はほとんどの武器が装備できない。
しかしそれでいいのだ。まず厳しいステータス制限はキャラクターを育てる指標になる。「グレネードランチャーは筋力が17も必要で、後7も上げなくてはいけない。これからは集中的に上げよう」、「スナイパーライフルは器用度と集中力の要求が高すぎる。このキャラクターはアサルトライフルを中心に使っていこう」というように、プレイスタイルが武器のチョイスで変わってくる。
また、使わない武器は「分解」することでパーツが手に入る。このパーツが他の武器のアップグレードに欠かせないのだ。必要なパーツは武器を分解しても確実に入手できるとは限らない。一定確率でしか入手できないため、それなりに貴重な武器を分解していくことになる。
「ハック&スラッシュ」のゲームというと武器を頻繁に交換していくというイメージがあるが、本作はそのペースはゆっくりだ。中盤までメイン1つ、サブ1つ、近接1つで様々な装備が可能なステータス成長は難しいため、いくつかの武器に特化していくこととなる。武器の交換はオベリスクでしかできないため、自分の得意の獲物1つに集中していくプレイスタイルになる。長いスパンで見ていくと、ここから次に何を使うかを考えて育てていく、そういうペースでプレイするゲームなのだ。
武器には装弾数やリロード速度などのパラメーターに加え、スコープや、属性、といった項目もある。アイテムを揃えていらないアイテムはドンドン分解し、より強力な武器を手に入れる。この楽しさはゲームが進んでいく中でさらに楽しさが大きくなっていくだろう。
ゲーム中盤からは武器のスロットがもう1つ解放される。メインの武器の他、もう1つの武器が使える。こうなると戦いの幅が広がる。所有できる弾丸も増えるのでより長く戦場で戦えるようになる。探索が楽になることでさらにアイテムハントが楽しくなってくるのである。
荒れ果てた殺伐とした世界。生きぬく戦いをしていくことで燃え上がる情熱
荒れ果てた、滅び行く世界をさまよう。それが「イモータル:アンチェインド」の世界だ。プレーヤーキャラクターが繋がれていた「コア」は、巨大なモノリスがあり、他の世界へのポータルが開かれている。機能を停止したモノリスを復帰させるため、他の世界に赴くこととなるのだ。
「アーデン」は氷雪に覆われた世界。奥には大きな要塞があり、今は敵である死者の軍団に支配されている。高台から見張っていたり、待ち伏せが恐ろしい。いくつか抜け道が存在しており、これらを見つける事で要塞まで行きやすくなる。
ジャングルの中にある「ヴェリディアン」。苔むした寺院と思われる場所を目指していく。茂みの中にはこちらを捕らえダメージを与える草があるのがやっかいだ。オベリスクまでの距離が長めで、時には敵を倒さず進むことを優先することも有効だ。
草一本生えていない荒れ果てた地「アペクシオン」ここはさらに難しい。強力な攻撃を行なってくる敵や、テレポートをしてくる敵までいる。ハシゴを上り下りする場面が多く、敵も強いのでまだ探索が進められてない。じっくり進んでいきたい場所だ。
「イモータル:アンチェインド」は、「まさに洋ゲー」といえるような、無骨で、硬派で、そして血湧き肉躍るゲームである。派手さは控えめだが、この突き放したような荒涼とした世界観と、難易度が良いのだ。敵の配置に、意地悪なトラップに、敵の超反応に絶望し、コントローラを投げ出しても、燃え上がる闘志と共に立ち上がり、そしてじりじりと先に進んでいく感覚、この達成感を味わって欲しい。
ただ死ぬだけではキャラクターすら成長しない。時にはオベリスクに戻り、強力な武器を装備するためのステータス計算をし、武器をアップグレードする素材を得るために祈るような気持ちで分解する。偶然ショートカットを見つけたときや、敵のうまい対処法を見つけたときはたまらなく楽しい。厳しい世界だから得られる激しい楽しさ。渋いゲームだが、ぜひチェックして欲しい。
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