「World of Warplanes」レビュー

World of Warplanes

世界中の航空機が一挙集結! ゼロ戦からフライング・パンケーキ、名機から迷機まで楽しめるオンライン空戦MMO!

ジャンル:
  • オンラインシューティング
発売元:
  • Wargaming.net
開発元:
  • Wargaming.net
プラットフォーム:
  • Windows PC
価格:
基本プレイ無料(アイテム課金制)
発売日:
2019年4月17日

 みなさんはゼロ戦という名前に聞き覚えはないだろうか?

 学校の授業や、映画、漫画、アニメなど、様々な場所で一度は聞いたことがあると思う。
昨今では「艦隊これくしょん(艦これ)」の影響で空母の艦載機として名前を覚えた方もいるだろう。

 このように多種多様な場所で話題にあがるゼロ戦だが、何故こんなに取り上げられているのかを知っている方は少ないのではないだろうか。実を言うと筆者も自分で興味をもって調べるまでは、その理由がいっさいわからなかった。

 しかし、興味をもってからは実に早かった。日本にはまだゼロ戦が見れる場所が多く存在しており、博物館や記念館に実物を見に行ったり、多くの逸話や、世界がこの航空機をどう評価しているのかを学ぶことができた。また、これをきっかけに他の戦闘機や爆撃機にも興味が広がっていった。

【ゼロ戦】
写真は靖国神社の境内にある遊就館の三菱零式艦上戦闘機五二型(A6M5)。日本最大の機械メーカーであり、機械のデパートとも呼ばれる、三菱重工業製の生産した戦闘機。第二次世界大戦中は優れた武装と運動性能により、アメリカ軍にゼロとは戦うなという報告書を作成させるほどの脅威を与えた航空機

 そんな中、1つだけ見ることが叶わないものがあった。それが実際の航空機による空戦だ。どうしても気になってしまった筆者が手を出したのがフライトシミュレーション、フライトシューティングというジャンルのゲームだ。そんなフライトシューティング界に待望の新作が登場した。「World of Warplane(以下WoWP)」である。このゲームを紹介しながら、航空機の魅力について解説していきたいと思う。

圧倒的解放感のなか繰り広げられる空の戦い!

 そもそもフライトシミュレーション、フライトシューティングとは何か?

 ざっくりと説明してしまうと、フライトシミュレーションは、実際の航空機などの操縦訓練ができるほど、詳細に再現されたゲームだ。旅客機のパイロットが訓練で使用してるものから、シミュレーションゲームとして個人でも購入できる「Microsoft Flight Simulator」シリーズなどがこれに分類される。

 一方、フライトシューティングは、簡略化された操縦方法で戦闘機等を操縦して空戦に挑む空戦に特化したシューティングゲームだ。「エースコンバット」シリーズや、今回ご紹介する「WoWP」などがこれに分類される。フライトシミュレーション系のゲームと違い、ゲーム用コントローラーや、PCのマウス、キーボードなどで簡単に操作することができる。

 空の戦いは、陸や海とまったく違う次元の戦いが繰り広げられる。そもそもの航空機自体が時速数百キロの速度で移動していることに加え、そこに高度というものが追加される。前後左右だけでなく、上下も含んだすべてを意識しなくてはいけない。

 さらに、攻撃対象も遥か上空の爆撃機から、地表にある建物や船など幅広く対処する必要がある。「WoWP」でもこれらは重要な要素となっており、相手航空機の撃墜や、陣地への攻撃が勝利への鍵となっている。

【空対空だけではなく空対地も】
各陣地の航空機の撃墜や、陣地目標を爆撃することで、陣地を制圧できる

 さて、肝心の航空機だが、ゼロ戦のような戦闘機だけがメインというわけではない。
実際のところ、航空機には様々な種類があり、戦場においても役割がある。

戦闘機:戦闘機同士の戦闘や、爆撃機、攻撃機の護衛/迎撃、基地の防衛を主任務とした航空機
攻撃機:戦車や建築物、船など、地上や洋上の目標を攻撃するのを主任務とした航空機
爆撃機:多くの爆弾を搭載することができ、高高度から目標を攻撃することに特化した航空機
マルチロール機:多彩な装備を搭載することができ、様々な任務に対応することが可能な航空機

 上記に加え、「WoWP」には火力と防御力を強化した重戦闘機というカテゴリーも登場する。これらの機体が大きく入り乱れている戦場が「WoWP」の空戦だ。

 実際にゲーム内では地平線が見える広大なマップの中を自由に飛び回ることができる。
急上昇や急降下、旋回戦など、航空機を自由自在に操るだけでなく、自分の操縦する機体で相手の航空機を機銃で撃墜したり、地上目標を爆弾で破壊するのはかなりの快感だ。

フライトシューティングとしての「WoWP」の位置づけとは

 さて、この「WoWP」が位置するフライトシューティングというジャンルだが、当然ながら多くの先駆者たちがいる。最近だと「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」や、「War Thunder」などが代表格としてあげられるだろう。実際、これらのゲームはジャンルこそ似ているが、ゲームシステムや、与えてくれる体験はまったく違うものになっている。

 たとえば「エースコンバット」シリーズは近代から現代にかけての航空機や武装が多く登場しており、戦闘はミサイルや誘導系の特殊兵装を使用している。「WoWP」と同じく基本プレイ無料の「War Thunder」は近い世界大戦時期の航空機を扱うが、ゲームシステムはどちらかというとシミュレーターに近く、ダメージもHP制ではなく、攻撃がどこに命中したかで判定されるなど、よりリアルな形でつくられている。

【先駆者達「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」】

【先駆者達「War Thunder」】

 そんな中、この「WoWP」では耐久値(HP)を用いたシステムが採用されている。航空機ごとにHPが設定され、機体に被弾することでHPが減り、0になると撃墜されるというシステムだ。もちろん、エンジンに被弾するとプロペラが止まったり、尾翼や翼にあたると破損し機動力が落ちるなどの効果や、弾薬の効果で機体が炎上するといったものは発生する。だが、これらは時間経過で回復される。

 そのため、耐久値(HP)が無くなるまで、どれだけ撃たれようが、戦闘を継続できる。また、撃墜されてもリスポーンが可能なため、規定時間内であれば何度でも再出撃できるという、かなりカジュアルに遊べるゲームになっている。システム的には「エースコンバット」と「War Thunder」の中間にあるような感じだ。

【HPシステム】
機体の近くに表示されている赤や青のバーが耐久値(HP)だ。これが無くなると機体が爆発と共に墜落する

 「WoWP」の良い点としては、他のフライトゲームでよくあるブラックアウト(脳への血流量が下がることで視界が暗くなる現象)やレッドアウト(血液が眼球内の血管に集中し、視野が赤くなる症状)といった、パイロットへの負担から生じる効果、空気抵抗や機体の速度による機体のぶれなどがオミットされているため、純粋に撃ちあいだけに集中することができるところだ。さらに、機体にはそれぞれブーストと呼ばれる加速機能がついており、これを使用することで一定時間速度を急激に上げることができる。

 このブーストは、相手を追う時や、逆に逃げたい時、急上昇したい時や失速しそうな時などに使うことで、簡単に機体を立て直すことができる。また、「WoWP」では意図的に航空機の高度が低く設定されているため、相手航空機との戦闘が発生しやすくなっており、テンポよくゲームが進むようになっている。戦闘中は行動に対してスコアがたまっていくので、自分がどれくらい戦闘に貢献しているかなども簡単に把握することができ、初心者でも手軽に空戦を楽しめるようになっている。フライトシューティングは、操作方法やゲームルールの複雑さなど敷居の高さがネックだが、「WoWP」はフライトシューティングが初めてという人でも楽しむことができる。これは大きなメリットだ。

 だが、プレイしてみるともちろん不満に思う部分も出てくる。筆者はどちらかというとリアルよりなゲームをプレイする事が多かったため、この仕様には物足りないと感じてしまう部分があった。

 まずは航空機の撃墜方法だ。「WoWP」では相手航空機の耐久値を0にしないと、撃墜することができない。

 どんなにコックピットや翼やエンジンを撃とうが、耐久値が0にならない限り相手は飛び続けるのだ。そのため、機体の火力によっては延々と相手を撃ち続けなければいけない時がある。低Tier帯の航空機では搭載火器が7.2mmの小口径な機銃を搭載した物が多く、一発の威力が低いため下手すると何十秒も相手を撃ち続けている時もある。

 初心者がすぐに撃墜されてしまうのを考慮した仕様なのかもしれないが、本来航空機は一撃離脱などの戦法が主流のため、筆者はこの仕様には不満があると言わざるを得ない。また、航空機のTierによっては、耐久値などは大きく変わることから、必然的にTierの高い航空機に乗っているプレーヤーの方が有利になりえる。

【敷居は低いがHPを削りきるのは難しい】
上空からの強襲などができないわけではないが、やはり降下中の短時間ではHPを削り切るのは難しい

 「WarThunder」の場合、機体の撃墜は被弾部位の影響を大きく受けるため、うまく戦うことで、下位の航空機でも上位の航空機を撃墜できる場合がある。例えばコックピットに命中させたり、エンジンに命中させる事で一気に撃墜まで追い込めるのだ。

 また、高度や速度の影響が細かく設定されているため、一撃離脱戦法、ハイ・ヨー・ヨー、ロー・ヨー・ヨーなどの空中戦闘機動を有効的に使用することができる。とはいえ、ここまで細かくなると、知識や経験のある上級プレーヤーに初心者や中級プレーヤーが勝つのは至難の業になってくる。そういう意味ではどちらの仕様も一長一短と言えるかもしれない。

登場する多くの名機と迷機たち

 フライトシューティングとしての「WoWP」の魅力は、何と言っても主役である航空機達だ。航空機の世界にはゼロ戦のような“名機”と呼ばれるものもあれば、試作で打ち切られ、量産されることのなかった“迷機”と呼ばれるものもある。「WoWP」では試作機も含めて、各国で開発された多種多様な航空機達を観たり飛ばしたりすることができる。ここでは筆者が好きな機体をいくつか紹介したい。

ゼロ戦(日本)

 言わずもがな、世界に名を馳せた日本の名戦闘機。長い航続距離、20mm機関砲による高い攻撃力、そして優れた運動性能をもつ。

 「WoWP」内では日本戦闘機ルートのTierIVから使用可能となる。このTier帯ではかなり高い格闘性能を持っており、1対1ではかなり強い。敵にまわした場合、アメリカパイロットの体験した恐怖を追体験することができる。一度食らいつかれたら旋回戦では絶対に引きはがせる気がしない……。

【ゼロ戦】

Ju87 G型(ドイツ)

 スツーカやシュトゥーカの愛称で呼ばれている機体で、第二次世界大戦中、ドイツの主力攻撃機として運用されていた。急降下時に発生する甲高い風切り音で連合国軍兵士をパニックに陥れるほど恐怖された航空機でもある。その中でもスツーカに37mm機関砲を搭載したG型と呼ばれる派生タイプだ。

 Ju87 G型は、「WoWP」ではTierVから使用可能で、爆装したB型やD型にはない、37mm機関砲を搭載しているところが最大の特徴となっている。通常は戦車などの地上目標を攻撃するための装備なのだが、筆者は相手航空機の攻撃を好んで行なっている。戦車を破壊できるほどの砲なので、航空機に命中させることができると最高に気持ちがいい。37mm機関砲の直撃を受けた航空機や地上目標は、画像のように爆発四散する運命にある。

【Ju87 G型】

XF5U(アメリカ)

 アメリカの迷機のひとつ。円盤状の形状からフライング・パンケーキ(空飛ぶパンケーキ)の愛称で呼ばれている。まるでUFOのような見た目から、実験機の「V-173」は実際にUFOと誤認された記録まであるという航空機だ。見た目とは裏腹に高い速度性能と機動性能・短距離離着陸性能をもつ航空機として期待されていた。だが、ジェットエンジンの進歩によって、レシプロ機の開発は中止され、スクラップにされた。

 「WoWP」内ではアメリカの重戦闘機ルートでTierVIIIから使用可能。現実では惜しくも実現されなかったこの機体の機動性をゲーム内で体験することができる。この見た目で軽快に動いて攻撃してくるため、撃墜されるとなんかむしょうに悔しく感じる……。

【XF5U】

震電(日本)

 多くの航空機ファンを魅了した幻の機体。その特殊な形状から多くの男子を魅了した、ロマン溢れる航空機だ。開発段階においても、従来のレシプロ戦闘機の限界を超えるために採用されたエンテ型と呼ばれる水平尾翼を廃し、前方に小さな翼を設ける方式や、エンジン・プロペラが機体後部に配置されるプッシャー式や、30mm機関砲4門という圧倒的火力の搭載など、聞いているだけで何かがこみ上げてきそうな内容だ。だが、無念なことに、開発が間に合わず、当機は量産されることなく終戦とともに消えていった。

 そんな当機を「WoWP」では自由に飛ばすこができる。TierVIIIから使用可能になり、さらに、TierIXとXではその進化型としてジェットエンジンを搭載した物もある。ただ、ジェットエンジン採用機は架空の機体であり、開発が終了していた場合、製造されたかもしれないバリエーションという形の上で製造されている。

【震電】
TierVIII
TierIX
TierXのジェットエンジン採用機

ゲームとしての楽しさに注力した「WoWP」

 リアリティとゲーム。その中でゲームとしての楽しさに注力したのがこの「WoWP」だと筆者は思う。日本では正式サービスも開始して間もなく、筆者が感じた不満点も今後のアップデートでどんどん改良されていく事を期待したい。

 フライト系のゲームを今まで難しそうという理由で諦めていた方、この機会に「WoWP」で空の世界に飛び込んでみてはどうだろうか。

【多彩な航空機たち】
上記以外にもドイツのメッサーシュミット Bf109やイギリスのスピットファイア、アメリカのP-51ムスタング、ソ連の空飛ぶ戦車と呼ばれるIL-2など、有名な航空機や試作機が数多く登場する

【多彩な武器】
航空機の武装には機銃や後部銃座、爆弾以外に、ロケット弾などもある。画像の機体はTierIIIという低ティア帯にもかかわらず、ロケット弾を装備できるソ連のI-16 (e.)