2019年5月1日 02:30
Oculus Questは、本製品単体でVRコンテンツが楽しめる一体型VRヘッドセットだ。
外部センサーなしで6DoF(degrees of freedom)を実現し、解像度は単眼1,440×1,600、リフレッシュレートは72Hz。スタンドアローンでありながら、他のPC用VRとも遜色ないスペックを有することで、VRヘッドセットの大本命と言える。
さらに本製品にはコントローラーの新型Oculus Touchも同梱されており、購入すれば即リッチなVR体験が可能となるのもウリのひとつ。今回は発売前の製品を体験する機会を得たので、最新VRゲームも含め、その感触をお伝えしたい。発売時期は2019年春が予定されており、価格は399ドル。
スペック表(本体) | |
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サイズ | 193×222×105mm(幅×奥行き×高さ) |
重さ | 571g |
トラッキング | 6DoFサポート |
ストレージ | 64GB or 128GB |
ディスプレイパネル | OLED |
解像度 | 1440×1660(単眼) |
リフレッシュレート | 72Hz |
SoC | Snapdragon 835 |
オーディオ | スピーカー、マイク内蔵(3.5mmイヤホンジャック対応) |
RAM | 4GB |
バッテリー | 内蔵リチウムイオン電池 |
バッテリー寿命予測 | 2~3時間(ゲームプレイで約2時間、メディア視聴で3時間) |
充電 | USB-C給電(約2時間でフル充電) |
IPD(瞳孔間距離) | 調整可 |
プレイ空間 | 静止・最小2×2mルームスケールサポート |
「何もかもがシンプル」がOculus Quest第一印象
Oculus Questを手にとって真っ先に感じたのは、デザインがシンプルで洗練されているということだ。まず見た目がその1つ。本体は全体的にすっきりとしていて、周囲には布製の加工が施されている。そのため受ける印象は、小難しい機械というよりはインテリアに近い。どんな部屋に置いても日常にも溶け込みそうな、自然な雰囲気がある。
製品セットはOculus Quest本体と、Oculus Touch2つのほかは、電源アダプター、USB-Cコード、グラススペーサー、Oculus Touch用の単三電池2本、説明書とこちらも実にシンプル。セットアップだけで言えば本体とOculus Touchがあれば済むので、VRに初めて触るという人手もとてもわかりやすい。
ヘッドセットの装着は、ヘッドバンドの頭側面部分を押し上げてからヘッドセットを付け、ヘッドバンドを引っ張りながら被せるイメージ。側面と上面のバンド部分にはマジックテープがあり、ここで長さが調節できる。装着方法もシンプルな仕上がりだ。
また一度電源を付けたあとは、装着を外すとすぐにスリープモードになり、再び装着すればパッと起動する。プレイしたいときにすぐにプレイできるのは、スタンドアローン型ならではの機動力と言えるだろう。
セットアップは、iOSかAndroid用のOculusアプリを使って行なう。アプリにOculusアカウントでログインするか新規作成し、目の前のOculus Questとペアリングする。あとは手順に従っていくだけで、大体10分ほどあれば完了する。
Oculus Questでのセットアップで特徴的なのは、「ガーディアン」の設定だろう。「ガーディアン」は、Oculusファミリーで採用されている「安全にプレイするための領域設定」のこと。
Oculus Questではガーディアンを設定するとき、ヘッドセットを装着したまま、外部カメラから周囲を見渡せるようになる(パススルー機能)。そこで、「安全にプレイできる境界線」を自分で床に描いていく。
ガーディアンを設定しておくと、VRゲーム内でそのエリアを出ようとしたときに、警告のようなエフェクトが表示される。「それ以上そっちに行ってはいけない」と瞬時にわかるので、ルームスケールVRがより安全にプレイできる。
セットアップが完了して起動すれば、自動的にVRコンテンツの「First Steps」が立ち上がる。つまり、箱を開封して30分経たないうちに、いきなりVR体験に突入できる、という仕掛けだ。
「First Steps」では、Oculus Touchの操作方法の確認から、キューブを掴む、卓球ラケットでピンポン玉を打つなどのいくつかのインタラクション、また銃を使った射撃などのミニゲームがプレイできる。特に射撃は突き詰めるほど難しくなるようにできているので、VR初体験でも経験者でも一度触れてみることをオススメしたい。
適応力&機動力抜群! ケーブルなしの素晴らしさ
Oculus Questのような一体型VRヘッドセットの素晴らしさは、やはり場所を問わずプレイできるところだろう。テレビやPC、ゲームコンソールなどがなくても単体でプレイできるので、究極を言えば普段は物置に使っているような部屋でも明るささえあればOculus Questは威力を発揮する。外部センサーを部屋の端に設置して、特定の部屋を「VR部屋」と決め込む必要がなくなったのだ。
ケーブルから解放されることは、ゲームを楽しむ上でも大きな意味をもたらす。たとえば、プレーヤーの移動=時間経過で進行するアクション「SUPERHOT VR」がそうだ。
「SUPERHOT VR」では、基本的にプレーヤーが動き出さなければ敵も動かないが、プレーヤーが移動したり攻撃しようとすると敵が動き出す。つまり相手の行動を読んで、敵のパンチや射撃を避けてから反撃に出ることが大事。アクションであると同時にパズルのような味わいもあるゲームとなっている。
本作では、時間が止まっているからといって無敵ということはなく、敵の動きを読み間違えると銃弾を避けきれなかったり、敵に囲まれて“詰み”のような状態になることもある。銃弾をギリギリで避けるのもたまらないスリルがあるが、動ける範囲に制限がなければ、よりダイナミックに体を動かすことで、自分なりの攻略法を生み出すこともできるだろう。こうしたルームスケールタイプのVRゲームを楽しむ上で、一体型の恩恵は非常に大きい。
また、両手にビームサーベルのような剣を持ち、リズムに合わせてキューブを斬っていく定番VRリズムゲーム「Beat Saber」は、移動こそしないものの、両手をかなり激しく動かすゲームになっている。
剣を振るときにケーブルが手に当たったりすると、ケーブルが気になって目の前の状況に途端に集中しづらくなるし、ケーブルを気にして動きに制限をかけたりする割り切りも必要だったが、この手のゲームは本当は気持ちよく剣を振りたいものだ。その点、Oculus Questはまったく気兼ねなく剣を振るうことができる(もちろん周りには注意したいが)。
つまりOculus Questさえあれば、家のどこでもVRゲームのポテンシャルを引き出せるということだ。本製品の登場により、VRへの参入障壁はいよいよ低くなってきたなと実感する。
状況に応じて臨機応変にプレイし続けられるOculus Questだが、充電の持続時間はスペック表通り、大体2時間程度(Oculus Touchはプレイ4~5時間で100%→90%になったくらい)といったところだった。
この2時間という数字は“携帯型ゲーム機”としては短く感じられるかもしれないが、個人的な見解としてはちょうどいいところだと思う。というのも、2時間プレイし続けるとOculus Questが負担をかける首の痛みが限界に近くなってくるからだ。
首がいくら痛くても、ゲームが面白いなら止めたくても止められないのがゲーマー心理というものだが、「充電が必要ですよ」と言われたならそれを言い訳にして止められる。ゲーマー根性が身体的限界を超える前にヘッドセットを外せるので、何気にいいブレーキになるなと感じた次第だ。
なおOculus Questのローンチ時には、50以上のタイトルがストアに登場予定となっている。ストアはOculus Quest専用で、Quest用に移植されたOculus Riftタイトルとオリジナルタイトルがランナップされる。
Riftからの移植には先述の「SUPERHOT VR」や「Beat Saber」などを含み、オリジナルタイトルとしては「Dance Central」、「Dead and Buried II」、「Sports Scramble」などが挙げられている。
いずれにしろ、VR体験としてはかなり快適だ。シンプルで、対応力があって、何より扱いが手軽。ケーブルなしの一体型VRヘッドセットが今後の主流になるとして、その画期的さをいち早く体験できる製品だ。
オリジナルタイトルの手触りを一挙ご紹介!
Oculus Questのオリジナルタイトルである「Dance Central」、「Dead and Buried II」、「Sports Scramble」は、実際に遊ぶことができたのでその手触りをお伝えしていきたい。
Xbox 360のKinect向けダンスゲームがQuestで復活!「Dance Central」
「Dance Central」は、キャラクターの動作に合わせて体を動かし、スコアを競うダンスゲーム。架空のダンスクラブが舞台となっており、各場所にいるキャラクターと一緒に踊ることで、連絡先を交換したり、メッセージが届いたりする。
指示通りに体を動かしてダンスを決めていくゲームは今までにもあるが、本作の場合はアバター設定とマルチプレイに対応しているところが見どころだろう。
アバター設定では、全身鏡で性別も容姿も好きに選択できる。全身鏡に写る、自分の意思通りに動くキャラクターを眺めていると、本当にそのアバターが自分自身であるような気持ちになってくる。これはVRならではの効果だと思う。
お気に入りの容姿に生まれ変わって、自分の気持ちをダンスで解放する。ダンスのパートごとに練習できるモードもあり、じっくりダンスの動きを研究することもできる。
ガンガン移動するマルチシューター「Dead and Buried II」
自ら移動するVRゲームは酔いやすさのリスクも伴うが、「Dead and Buried II」はむしろガンガン移動していくシューターとなっている。
デモ版では死んだら繰り返しリスポーンするデスマッチモードがプレイできた。リスポーン直後は両腰に拳銃を持ち、マップ内にはショットガンやグレネードランチャーが落ちている。マップを進み、これらを握ることで武器を切り替えていく。
移動は前進だけが可能で、左右へは画面がパッパッと切り替わるような仕組み。動きに慣れていないプレイ当初こそ移動にグッと酔いを感じるが、前進するスピード感に慣れると頭が付いてきて、前進しながら頭を振ってもそれほど酔いは酷くならない。
こうなると、スピーディーなマルチシューターが楽しくなってくる。武器を探し、音を聞き分けながら、敵の位置を予測して攻撃する。製品版ではゾンビを倒す内容になるとのことで、VRマルチプレイシューターとして楽しみなタイトルだ。
道具がメチャクチャなスポーツゲーム「Sports Scramble」
見た目はオーソドックスなスポーツゲームだが、蓋を開けてみると、野球なのにビーチボールが投げ込まれたり、ボーリングでパイナップルを転がしたり、次々と入れ替わるメチャクチャな道具で対戦するというもの。
「ホッケースティックとキリン型ヌンチャク棒を持ち、バスケットボールでテニスをする」などなど、状況だけ見ればはっきり言ってカオス。ボールやラケットにどんな道具が選ばれるかはランダムなので、その時の運不運に一喜一憂しながら、それでも試合そのものは真剣に勝負するような内容だ。
デモ版では野球、ボーリング、テニスがプレイできたが、製品版ではスポーツの種類が増え、さらにマルチプレイモードも追加されるという。仲間でワイワイやるようなパーティーゲームとしてのポテンシャルを大きく感じる1作だ。
これまでリッチで本格的なVRを楽しむためには、PC環境が必須というのが当然だったが、Oculus Quest以降はまったく状況が変わると思う。発売日が間近に迫り、今後のVRゲームはどのような移り変わりを見せていくのか。引き続き、VRゲームの動きには注目していきたい。