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忘れた頃に突然やってきた「World of Warplanes」日本版ファーストインプレッション

なぜ今になって日本でテストを始めるのか? その理由と新たな魅力を紹介する

7月18日テスト開始

 ウォーゲーミングジャパンは7月18日18時より、オンライン空戦バトル「World of Warplanes」の日本版テストを開始した。テスト開始に先立ち、メディア/ストリーマー向けの先行体験イベントが開催され、一足先に体験することができたので、メディア説明会の内容も含めてご紹介したい。

開発を手がけるWargaming.net Ukraine「WoWP」開発ディレクターのアレクサンダー・カシアネンコ氏
ウォーゲーミングジャパン「WoWP」パブリッシングAPACプロデューサー藤田健氏

 「World of Warplanes(以下、WoWP)」は、その名の通り、ウォーゲームを得意とするWargaming.netが展開する「World of」シリーズの空戦版。「World of Tanks」と同様に、第二次世界大戦を主軸に、その前後も含めて1920年台から1950年台まで、空軍黎明期の複葉機からジェット戦闘機までをカバーした作品だ。「World of Tanks」ユーザーなら、その名前ぐらいは聞いたことがあるかもしれないし、空戦ファンならβテストに参加したり、あるいは海外サーバーでプレイしている人もいるかもしれない。

 「WoWP」は、日本のゲームファンにとっては不幸な出会い方をしてしまったタイトルだ。もともと「World of Tanks」に続く、「World of」シリーズ第2弾として2012年より開発が進められ、E3 2013で鮮烈デビューを遂げた。当時、「World of Tanks」は、アニメ「ガールズ&パンツァー」の大ヒットにより、徐々に人気を集め出し、Wargaming.netの存在が日本のゲームファンにも知られ始めていたタイミングだ。

 スタジオジブリ宮崎駿監督の最新作「風立ちぬ」の公開を控えており、「WoWP」のティザーイメージにはあえてアニメにも登場した九五式艦上戦闘機を使うなど、日本展開する気満々だった。結局、APAC地域は2013年のサービスインは見送られたものの、2013年9月の東京ゲームショウへの映像出展に続いて、2014年1月のTaipei Game Showにも出展。インタビューでも検討中というステータスで、日本語版の準備も完了していたものの結局βテストは見送られ、その後APACでのローンチは丸ごとキャンセルされ、いつしか日本を含むAPAC地域では「WoWP」はなかったことにされていた。

 APAC地域でサービスが見送られた理由は、「エースコンバット」シリーズを筆頭に、日本には優れたフライトコンバットゲームが数多くあり、ゲームのクオリティ的に太刀打ちできないとWargaming.net社内で判断されたためだ。

 しかし、APACでなかったことにされている間も、CISと北米では正式サービスが展開され、アップデートが行なわれていた。2017年10月にはバージョン2.0となり、フライトコンバットゲームとして大幅な軌道修正が図られている。これにより、単なる空戦ゲームから、対地攻撃も含めた総合的なフライトコンバットゲームへと進化した。ユーザーからの反応も良好で、バージョン2.0以降で、50万人以上の新規ユーザーを獲得したとしている。

【World of Warplanes 2.0!】

 今回、APAC地域再進出の先駆けとして「日本版テスト」が行なわれるのは、アップデートを継続してついにバージョン2.0を迎え、目の肥えた日本のゲームファンも納得させられると考えたためだ。もうひとつの理由は、日本からわざわざ北米にアカウントを作ってプレイしているゲームファンが1,000人単位で存在しており、「WoWP」は日本でもニーズがあると判断したためだという。北米にアカウントを作ってまで遊んでいたユーザーの熱意が、ついにWargaming.netの及び腰を突き動かしたわけだ。

 ただ、今回の日本版テストは、正式サービスを前提にしたものではなく、“純粋なテスト”で、一定以上の人気が集められなければ、日本のみならずAPAC丸ごとお蔵入りになる可能性を残しており、逆に高い人気を集めれば、急ピッチで正式サービスへの準備が進められていくことになる。テストは完全無料で遊び倒せるため、正式サービス開始を望むゲームファンは、コミュニティの仲間を誘って大いに盛り上げたいところだ。

 さて、その「日本版テスト」の内容は、現在のバージョン2.xシリーズをベースに、コンテンツの内容を絞ったテスト専用バージョンだ。サーバーはAPAC向けに香港に置かれ、北米サーバーよりも良好なPingでプレイする事が可能だ。登場する国は、正式版が日本、アメリカ、ドイツ、ソ連、イギリス、中国、フランスの7カ国に対して、日本、アメリカ、ドイツの3カ国のみとなり、テストのためゴールドの販売は行なわない代わりに当座の軍資金として一律3,000ゴールドを支給。ゲームモードも、バージョン2.0で実装されたメインモード「コンクエストモード」のみとなる。

【技術ツリー】
日本。基本的に戦闘機ツリーしかない
アメリカ。日本より多いが、爆撃機の代名詞であるボーイングがないなど、多くのツリーが未実装だ
ドイツ。3国の中では唯一爆撃機ツリーを持つが、対地攻撃に欠かせない急降下爆撃機ツリーがないなど、どの国もまだいびつだ

 従来の「WoWP」のマルチプレイモードと、「コンクエストモード」の最大の違いは、「敵の殲滅」以外の目的が設定され、対地攻撃、拠点制圧の重要性が格段に増しているところだ。拠点を最初に押さえているのは「中立軍」で、NPC操作の直掩部隊が守っている。ここに強襲を掛けるところからゲームはスタートし、青軍、赤軍の両軍があい乱れての乱戦に突入していく。会戦まで時間にして数十秒。「World of」シリーズの中でもっとも展開の速いゲームといってもいいかもしれない。

【コンクエストモード】
フィールド上に点在する白い拠点を対地攻撃で占領していく

 新機種としては「爆撃機」が新設され、高高度からの地上拠点への水平爆撃が可能となった。これにより機種の多様性が増し、空中戦に特化した「戦闘機」、爆撃機の迎撃をはじめ高高度戦闘を得意とする重武装の「重戦闘機」、対空/対地どちらもこなせる「マルチロール機」、対地攻撃に特化した「攻撃機」、高高度から水平爆撃を行なう「爆撃機」の5クラスとなった。

【タイトルイメージ】
四発の爆撃機を前面に押し出したイメージ。爆撃機の登場によってゲーム性が大きく変化している
試遊会ではメディア/ストリーマー20人弱が香港サーバーにログインして対戦を行なった
藤田氏も混じって遊び方をレクチャーしてくれた

 テストプレイでは、Tier VI帯とTier VIII帯の航空機を使って5機種すべて使ってみたが、期待していた以上に、オンラインゲームとして魅力的なゲームに仕上がっていた。メインモードとなる「コンクエストモード」がおもしろいのは、空戦ゲームでありながら対地攻撃による拠点制圧がゲームの柱となっており、拠点制圧を巡って、自然とすくみ関係が成立するようになっているところだ。

 対地攻撃に優れているのは攻撃機と爆撃機で、彼らに自由に対地攻撃を許してしまうと拠点陥落は避けられない。だから、それをさせまいと戦闘機と重戦闘機が必死に迎撃し、攻撃部隊の護衛に付いている戦闘機や重戦闘機の守りをかいくぐりながら対地攻撃を食い止めなければならない。それをお互いがやり合うため、拠点の上空では熱い空中戦が展開されるようになっている。この高密度感が楽しい。

【攻撃機】
地表スレスレからの対地攻撃が楽しい攻撃機。2人乗りで後部銃座もあり、巧く使えば戦闘機を退けることができる
【爆撃機】
高高度から拠点を爆撃。護衛がないと拠点にたどり着く前に撃墜されてしまうが、うまくいくと大戦果が狙える。爆撃機で始めてバッジを獲得できた
夜間爆撃は見えにくく、攻撃しづらいためか成功しやすい。爆撃モードで拠点が視界に入ったときのワクワク感がたまらない

 戦闘機はすべての機種に優位に立てるが対地攻撃が無に等しく、重戦闘機は堅い装甲で爆撃機やマルチロール機に強いが、戦闘機の旋回性能には適わず、攻撃機は機銃攻撃で拠点を荒らしまくれるが戦闘機や重戦闘機に弱く、爆撃機は1セット分の爆弾で拠点を壊滅させられるほどの打撃力を持つが、重戦闘機にいいようにやられてしまう。マルチロール機は、「WoT」における中戦車的ポジションで、上手い人が使えば対地対空どちらも大戦果を挙げられるだろうし、ビギナーが使えばただの器用貧乏に終わりそう、といったぐあいにそれぞれが明確なロールを持っており、「WoT」や「WoWS」のような役割分担が設定されている。

 マルチプレイではこれらのすくみ関係がうまく機能しており、どの機種も、選択した機種のロールを意識してプレイする事で、様々なスタイルの空中戦を楽しむことができた。筆者がかつてプレイしたのはE3での試遊のみだが、航空力学を無視したお手軽ドッグファイトゲームという印象で、数回のプレイは楽しいが、奥行きがなさ過ぎて100回繰り返せないゲームだなと感じた。今のバージョンは機種を変えながら何度でも繰り返し楽しめそうだと感じた。

 ゲーム性は依然としてかなりカジュアルで、リアリティよりも遊びやすさ、とっつきやすさに重きを置いている。相変わらず航空力学は軽く扱われており、3Dモデリングソフトで、3Dオブジェクトをマウス操作でぐるぐる回すような感覚で機体を空中でぐるぐる回せるし、急旋回時、急加速時にも重みが感じられない。急降下攻撃時もググッと引っ張られる感じが欲しいし、逆に水平爆撃を終えた後は軽くなる感じが欲しい。全体としてGが感じられなさ過ぎる。ここは明確に不満だ。

 その一方で、攻撃機による射撃モードでの対地攻撃の迫力や、爆撃機での爆撃モードからの水平爆撃は魅力たっぷりで、サッカーで言えばフォワード的な、ゲームの主役を担っている感覚があってとても楽しい。筆者は「World of Tanks」の魅力は、重厚な射撃感の表現であり、1発1発の射撃の心地よさだと思っているが、その手応えが攻撃機や爆撃機にはあると感じた。

【スクリーンショット】

 戦闘機同士のドッグファイトは、以前に比べるとかなり遊びやすくなっているし、銃撃の弾のばらつき感、まるで当たらないロケット弾の表現などはかなりリアルだと感じられるが、UFOのような軽すぎる挙動はぜんぜん納得感がないし、すぐ銃身がオーバーヒートして撃てなくなるため爽快感も薄い。5年分進化してこれだとすればちょっと残念で、今一段の進化を期待したいところだ。

 ドッグファイト周りの仕上がりは今ひとつだなと思うものの、すくみ関係を意識しながら自身のロールを遂行していく「コンクエストモード」は、オンラインゲームとしてとても魅力的な内容に仕上がっており、筆者自身もぜひ今夜からTier Iの複葉機で遊んでみたいと思っている。

 深いことを考えずに単純に空戦を楽しむのでも良いだろうし、筆者のようなミリタリーファンは、日本は陸軍と海軍で別々の戦闘機ツリーがあるから、「俺は海軍のゼロ戦を経由して、烈風、震電だな」という自分好みを追求しても楽しいだろう。陸の「World of Tanks」、海の「World of Warships」、そして空の「World of Warplanes」。それぞれ異なる個性を備えたタイトルとしてじっくり楽しみたいところだ。

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