「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」レビュー

エースコンバット7 スカイズ・アンノウン

12年ぶりに空を飛ぼう。楽しい世界に浸ろう!

ジャンル:
  • フライトシューティング
発売元:
  • バンダイナムコエンターテインメント
開発元:
  • バンダイナムコエンターテインメント
プラットフォーム:
  • PS4
  • Xbox One
  • STEAM
  • 価格:
    7,600円(税別)
     
    オープン価格
     
    発売日:
    2019年1月17日

    ついにあの空へ戻る日がやってきた!

     待ちに待ったこの日を迎えることができた。期待のナンバリングタイトル「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン」(以下、ACE7)を手にすることができたのだ。この時をどれだけ待ち望んでいただろうか。制作が発表されてからというもの、発売までの時間が待ち遠しかった。特に筆者は「PlayStation Experience 2016」(PSX)でVRでのプレイアブルを体験している(レポート記事「これが本当の「エースコンバット」だ! VRによる「エースコンバット7」を体験してきました」)ので、「今回のエースコンバットはこれまでとは違う!」という思いを強くしていた。その期待通りにできあがってきたのが本作だと感じている。

     「ACE7」がこれまでのシリーズとは大きく異なる点としてまず挙げられるのが雲の存在。その中を飛び回るとキャノピーに水滴が付くし、ずっと雲の中を飛んでいるとそれが氷となって「アイシング」状態になり、機体に張り付いて操作系に影響を与える。そして雲と言えば雷だ。機体に落雷すると、その衝撃で機首が下を向き、電子機器で表示されているディスプレイの表示がゆがんで見えなくなるだけでなく、敵をロックオンできなくなるのだ。つまりよりリアルに近づいたわけだ。こうした周辺環境の違いが、プレイ感覚の幅を広げたとも言える。

    【「ACE COMBAT 7: SKIES UNKNOWN」ローンチトレーラー】
    雲の中に入ると真っ白な世界。天地もわからなくなってしまう
    雲の中を飛び続けると「アイシング」状態となり、機体の制御に影響が出る
    雷はやっかいな存在
    雷に打たれると計器類が利かなくなってしまう

     そしてもう1つの大きな進化がVR対応だ。先ほど述べたPSXで体験したVRモードは、手にあるのはDUAL SHOCK4なのに、操縦かんを握って空を飛んでいる気分にさせてくれた。これまでのR3スティックでの周囲確認は、目の前の画像が右往左往するだけなので、多用すると酔うし、私はほとんどこれを使ったことはない。しかしVRだと頭を向けるだけで上にいる敵を確認することができるので、ユーザビリティの点から見てもとても素直な動きとなり、酔うこともない。ちなみにVRモードについては「サマーレッスン」の開発チームにも加わってもらい、3D酔いの対策をしているそうだ。(※PS4版に収録されるPlayStation VR対応の「VRモード」では、VR専用の新規ミッションがプレイできる。その他のモードはPS VRに対応していない)

     また、「エースコンバットシリーズ」で重要なのがキャンペーンモードのシナリオだ。本作では「エースコンバット04」(AC04)、「エースコンバット5」(ACE5)の時以来の起用となる片渕須直監督がシナリオを担当した。“片渕節”とも言えるような重厚なストーリーは健在で、ミッションが進むたびに流れていくムービーが、プレイの気分を盛り上げてくれる。このキャンペーンモードで展開されるシナリオが、ほかの“戦闘機ゲーム”と一線を画しているところだと思う。

     「ACE7」で忘れてはならないのがオンラインマルチプレイだ。PlayStation Plusに加入していれば、「MULTIPLAYER」でほかのプレーヤーとのドッグファイトを楽しむことができるのだ。本作シリーズのファンであれば、リアルな他のプレーヤーと戦ってみたいと1度ならずとも思ったはず。その思いの通り、1度踏み入れると絶対に足抜けできないほどハマると思う。

     キャンペーンモードでもこれまでエース機が出てきていて、ほかのNPCとは違う挙動に対応するのが大変だったと思う人も多いだろう。対人戦モードはまさにそれで、当然ではあるが、うまい人であればエース機以上の動作で攻撃してくるので、機体を追い続けるだけではなく、距離を取って位置取りを変更するといった戦略が必要になってくる。しかしこれが楽しすぎていけない。キャンペーンモードをすっ飛ばしてでも戦いに参加したい気持ちが高まってくる。プレイしていて、負けている状況からわずかの隙を見つけて相手にミサイルを当て、僅差で勝利したときの気持ちよさは格別だった。

     ざっと挙げていくだけでも、「ACE7」ではこれくらいの変化が起きている。ではこれらについて、1つ1つご紹介していきたい。

    「キャンペーンモード」で深みのあるシナリオに酔う

     まずはキャンペーンモードだ。「エースコンバット」シリーズで描かれる世界は「ストレンジリアル」と呼ばれるもの。1999年に起きた「小惑星ユリシーズ」の落下による大惨事から20年たった2019年の世界。ユリシーズの落下後、2003年に起きた「AC04」での「大陸戦争」、2010年に起きた「ACE5」での「環太平洋戦争」、2015年での「ACE6」の「エメリア・エストバキア戦争」を経て、今の時代となる。片渕監督が担当したのが「AC04」と「ACE5」なので、そのあとの時代を描いているからか、シームレスな印象を受ける。もちろんこれまでの時代背景を知らないと面白くない、といったことは全くなく、「ACE7」で初めて「エースコンバット」の世界に触れる人でも、十分楽しめる内容となっている。

     プレーヤーが操作する主人公は「トリガー」というTACネーム(戦闘機乗りに付けられるあだ名)を持つ人物。トリガーはまず、オーシア国防空軍第508戦術戦闘飛行隊「メイジ」に所属するルーキーとして空を飛ぶことになる。

     ユージア大陸にあるエルジア王国と、海を挟んだ別の大陸にあるオーシア連邦との緊張が高まりつつある中、オーシアの国内で無人機を使用したテロが勃発。同時にユージア大陸でオーシア主導のもと建設が進められていた軌道エレベータがエルジア軍に占拠される。トリガーが所属する基地にも所属不明機が襲来。スクランブルがかけられ、プレーヤーはメイジ隊の「メイジ2」として空を飛んでいき、ミッションスタートとなる。

    コードネームはトリガー。メイジ隊に所属する
    滑走路から離陸するところからミッションがスタートする

     ミッションの前には時折ムービーが差し込まれる。1番最初に登場するのはエイブリル・ミードという女性だ。ダークブルーに染まった空を飛ぶ。その思いを胸に彼女は、元オーシア軍の祖父とその友人とともに、8年以上の歳月をかけてレストアしたF-104Cで飛び立つ。しかし運悪く、エルジアとオーシアとの戦争開始の空戦に遭遇。エルジアの宣戦布告とともに発せられた「戦時航空法違反」により撃墜、逮捕されてしまう。

     このあとエイブリルはオーシア軍側の語り部として頻繁に登場することになるのだが、日本語版で声を担当された、ゆきのさつきさんの声がなんともいい。自分しか信じていないエイブリルの心情を見事に演じきっており、この世界にのめり込む一助となっている。

    エイブリル・ミード。気の強そうなところをゆきのさつきさんが熱演している
    レストアしたF-104で空に飛び立つのだが……

     そして次に描かれるのがエルジア側のストーリーだ。まずは孤高のテストパイロットであるミハイ・ア・シラージから触れていかねばなるまい。過去の大戦でもエースパイロットとして戦ったミハイは、年老いてもなおその体にムチを打ち、テストパイロットとして飛び続ける。そのデータは無人機の開発に生かされていく。

     実はミハイは、シラージという国の元王様。シラージがエルジアに占領された際、王族としての扱いを申し出られるが彼は断り、一市民として徴兵に応じてパイロットになるのだ。テスト飛行が終わった夜には、警護するパイロットたちが、そんなミハイを囲んでの酒盛りが始まる。皆からも一目置かれている存在だ。ストーリーが進むと、主人公とミハイは邂逅するのだが、そこでの出会いについては実際に確かめていただきたい。

    ミハイとその孫娘たち
    オレンジの尾翼がミハイの機体
    老いてなお威厳のある風貌を持つミハイ
    ミハイの警護を任されたパイロットが夜になると集まってくる

     また登場するのが、エルジア王国の王女であるローザ・コゼット・ド・エルーゼだ。平民に近い家の出身であったが、「AC04」の物語である大陸戦争の後に王政復古により探し出され、父がエルジア王となったことで王女となる。凜としたその姿は美しく、エルジアのプロパガンダ放送で、民間地を爆撃するなどしたオーシア軍の非道を語ると国民の士気は高まり、次第に周辺国からの共感も得ていくこととなる。その放送はミッション中にもたびたび登場する。

     私はこのコゼットが大好きだ。どストライクなキャラクターグラフィックスはもちろんだが、戦争など無縁な愛らしい顔立ちがなんともいとおしい。

    王女コゼット。美しい。とにかく美しい
    ミハイの孫娘とはご学友ということだが……

     エルジア側の語り部はドクター・シュローデル。実験基地で無人機の開発に当たる人物だが、そばにいるミハイを通して、エルジア側のストーリーを紡いでいく。

     何度も繰り返してしまうが、このキャンペーンモードで描かれるストーリーこそが「エースコンバット」なのだ。1つの戦記物を読み込んでいるような気分を持たせるとともに、ミッションモードの1つ1つに意味付けがなされており、これがなければこの世界は成り立たないし、ここまでシリーズが作られることもなかっただろう。

    語り部として登場するドクター・シュローゼル
    基地にいるミハイの孫娘にも興味を抱きつつ関心を寄せている

    カスタムパーツで自機をパワーアップ

     次に「ACE7」のゲーム面について述べていこう。扱える機体だが、プレイアブル機体は全30機。実在機はすべて実際の航空機メーカーの許諾をうけてコックピット内部まで再現されている。これまではキャンペーンを終了するごとに機種が増えて、クレジットで購入することで自機を増やせたのだが、本作では「Military Result Point(MRP)」をためて、「AIRCRAFT TREE」を発展させながらゲットしていくという方法に変わっている。空対地ミサイルや空対艦ミサイルといった特殊兵装についても同様だ。1つだけは付いてくるが、それ以外の特殊兵装はMRPを使って購入する必要がある。

     また「カスタムパーツ」というものが新たに登場。標準ミサイルのロックオン射程が伸びたり、搭載量が伸びたり、自機の加速性能がアップしたりというパーツを8個まで付けることで、自機をパワーアップさせることができるのだ。カスタムパーツの中にはオンラインマルチプレイ専用のものもあるので、対戦して足りないな、と感じたところは専用パーツで強化してもよいのかもしれない。

     なおAIRCRAFT TREEだが、プレイ最初からどうたどればどの機体が購入できるのかわかるようになっているので、最終的に自分がほしい機体を目指してツリーをたどっていくのがよいだろう。

    「AIRCRAFT TREE」をたどりつつ好きな機体をゲットしていこう
    「AIRCRAFT TREE」の途中には機体だけでなくパーツもある。1つずつゲットして強化していこう

     加えてミッションについては、クリアしたものはリプレイが可能で、MRPが足りないと感じた場合は、過去にクリアしたミッションを再びプレイすることで積み上げることができる。MRP不足を感じたら、ランク上げもかねて過去ミッションをプレイしてみるのも1つの手だ。それで資金を貯めてほかの機体を購入してもよいだろう。

     ちなみに序盤戦は空中戦が主で、それほどヘビーな地上戦が出てこないため、そこそこの機体であれば乗り切れるのだが、あくまでも私の場合でいうと、どうしても越せない地上戦主体のミッションが用意されており、現状持っている機体ではクリアできそうにないとわかったので、何回か繰り返してMRPを貯め、対応できそうなほかの機体を購入した。難易度についても、1度選んでしまうと変更は利かないので、NORMALでプレイしてみたけどやはりEASYで様子を見るか、といった場合には1からのやり直しとなる。ただしMRPや獲得した機体はそのまま使えるので、クリアの難易度はグッと下がるだろう。

     「ACE7」のミッションについて述べておくと、対空戦あり、対地戦あり、レーダーをかいくぐるものもあり、エースとのドッグファイトもありと、これまでのように歯ごたえのあるものがそれぞれ取りそろえてあるといった印象だ。もちろんこっそりとトンネルも用意されている。先ほど述べた雲の影響もそうだが、風によって右左に、あるいは上下に機体が流されることもあるので、計器類をちゃんとチェックしておかないと、気づいたら地上に墜落していた、ということもあり得るのだ。それにしても雲の中に入った場合はヤバい。ホワイトアウトというか、本当に自分がどこを向いているのかわからなくなる。その場合はR1+L1で平衡を保つことができるので、天地の位置を把握し直せる。多少手間がかかるものの、最後の手段として使うことが多かった。

    ハンガーでミッションに挑む機体と特殊兵装を選んでいく

    気分はトップガン! VRモードで戦闘機乗りに酔いしれる

     さてPS4版に用意されたVRモードについて語っていこう。本作に盛り込まれたVRシステムはまさに、自分が戦闘機乗りになって空を駆け抜ける爽快感を感じさせてくれる。公式サイトでも「『エースコンバット』ファンに送る、本物のパイロット体験」とうたわれているが、まさにその通りだ。よくここまで作り込んでくれたと、制作陣に拍手を贈りたい。

     ミッションは3つ用意されており、それはVR専用のものだ。機体はF/A-18F、A-10C、F-22A、Su-30M2が扱える。VRヘッドセットをかぶると、目の前には機体が出現する。高度計や速度計といった計器類は「ホログラム搭載ヘルメット」として、頭の向きに追尾するようになっている。ちなみにコールサインは「メビウス1」。懐かしい! 登場する敵が自由エルジアということは、「ACE5」のアーケードモードの世界を踏襲しているのだろうか?

    ハンガーのシーンから始まるのはキャンペーンモードと同じ
    空母の上でスタンバイ

     1番最初のミッションをスタートさせると、空母のハンガーからエレベーターで機体が持ち上げられ、発進準備に取りかかる。オンポジションとなったあとは、僚機の発進に続いて、自機の発進だ。この時まず、周りを見渡してほしい。本物と見まがうばかりのVR専用コクピットに加えて、となりで発進を待っている僚機を目にすることができる。左を見るとイージス艦が空母と並んで航行している。そして自機の翼、空の青さ、目にするものすべてが、戦闘機のコクピットにいることを実感させてくれるのだ。

    右を見ると僚機が目に入る
    左には空母と並んで航行する駆逐艦が見える
    下に目線を移すと計器類が見える

     そして敵機との遭遇。VRで展開されるドッグファイトはまさにリアル。狙いをつけて敵にミサイルをたたき込んだあと、次の獲物を探して頭を巡らせる。すると天頂付近にいる敵機を見つける。すかさず△ボタンでターゲットを合わせ、再びミサイル発射。この戦いは現実なのか? まさにそのような気分にさせてくれるVR体験だ。「エースコンバット」シリーズのファンでPS VRを持っていないのであれば、これをプレイするためだけに買っても絶対に損はないと思う。

    雲に入るとキャノピー全体に張り付く雨粒がとてもリアル
    ヴェイパーを引いて飛んでいく敵機

    (※PS4版に収録されるPlayStation VR対応の「VRモード」では、VR専用の新規ミッションがプレイできる。その他のモードはPS VRに対応していない)

    対人戦で腕を磨け!

     そして「MULTIPLAYER」モード。先ほども述べたが、世界中にいる「エースコンバット」プレーヤーと渡り合えるのがこのモードだ。扱える機体はキャンペーンモードでゲットしたものすべてが使えるほか、強化したい部分のパーツを付けることでパワーアップを図れる。先ほども述べたようにMULTIPLAYER専用のパーツもあるので、そちらも押さえておきたいところだ。

     プレイ方法だが自分でルームを立ててもよいし、今あるルームから条件を設定して検索して入室し、戦うのもよいだろう。やはり醍醐味はバトルロイヤル。自分以外の機体すべてが敵、という中を戦い抜くのが楽しい。なかなか難しい戦いにはなってしまうが、性能の低い機体でF-22に挑んでみるのも楽しいかもしれない。

     まあ現状だと、戦闘機の性能の違いが、戦力の決定的差になってしまっているようだが……。序盤に出てくる機体で勝負を挑むのはあまりオススメできない。せめて中盤以降で手に入る機体で挑んだ方が楽しいだろう。私もTyphoonで出撃して、そこにいたF-15Cをカモにしてしまった、というか、みんな考えることは同じようで、各プレーヤーから集中砲火を浴びていたが。

    【「ACE COMBAT 7: SKIES UNKNOWN」Game Feature Briefing # 5 Multiplayer Mode Gameplay Footage】
    「MATCH」を選んで進める
    必要なパーツをセットしてパワーアップ
    飛ばす機体を選択する
    ルームを検索する
    好きなルームに入ろう
    「READY」を選択して戦闘が始まるのを待つ
    いったん空に上がったら、そこは戦闘機乗りだけが知る世界
    エンブレムとともにどの機体なのか判別できる
    戦闘が終了すると順位が表示される
    戦果も表示してくれる

    空を飛ぼう。楽しい世界に浸ろう

     これまでつらつらと「ACE7」を紹介してきたが、PS4を持っているのに「ACE7」をプレイしないなんてもったいない! と声を大にして言いたい。男の子であれば1度は、戦闘機にあこがれを抱いたことがあるはず。筆者の世代で言えば、「エリア88」から始まり、大学生の時代に「トップガン」の洗礼を受けているのだから、その気持ちに共感できる人も多いだろう。空を飛ぶのは楽しい。戦闘に明け暮れるだけではなく、フリーフライトで自由に飛べるモードもあるので、日頃のいやなことを忘れて飛び回るのもいいではないか。ストレス発散のためにマルチプレイに走ってもいいだろう。いやでももう1度言おう。空を飛ぶのは楽しい。この気分を味わいたいのであれば、本作はうってつけのゲームであると言えよう。