「Western Digital Black 3D NVMe SSD」レビュー

Western Digital Black 3D NVMe SSD

第2世代NVMe SSDはゲーミングシーンの新たなスタンダードとなるか?

ジャンル:
  • NVMe SSD
発売元:
  • ウエスタンデジタル
開発元:
  • ウエスタンデジタル
プラットフォーム:
  • Windows PC
価格:
48,000円(1TBモデル、税込)
発売日:
2018年2月16日

 今回レビューするのは、PC向けストレージの定番となっているSSDの中でも、これ以上の高速化が難しいSATA SSDを突き放すように、高速化の一途を辿っているPCI Express(PCIe)接続のNVMe SSDだ。

 現在普及している2.5インチタイプのSSDは使用するインターフェイスSerial ATA(SATA)の限界速度に達してしており、これ以上速度を引き上げづらい状況にある。現状のSATAでは600MB/sが帯域の上限だが、近年登場したNVMe SSDはインターフェイスにPCI Expressを使用しており、大幅に速度上限(約4GB/s)が緩和された。それにともなって対応する製品が続々と登場しており、高速通信が求められる環境での効果が期待されている。

【最新のPCIe NVMe用のM.2端子(左)と従来のSATA端子(右)】

 この4~5年ほどで登場したNVMe SSDも現在速度の転換期にあり、従来読み込み1,500~2,000MB/s、/書き込み速度:1,000~1,500MB/sあたりだったのに対して、2018年のモデルのハイエンド帯は軒並み読み込み速度3,000MB/s、書き込み速度2,000MB/sを超え、大きく速度を伸ばしている。また、価格も従来500GBのモデルが5万円前後と非常に高価であったが、現在は同じ金額で1TBクラスの容量が手に入るようになり、500GBクラスでは3万円前後となるなど手が出せない状況ではなくなってきた。このPCIe接続のNVMe SSDがゲーマーにどういった効果をもたらすか紹介していきたい。

 今回、Western DigitalよりWD Black NVMe SSD「WDS100T2X0C」をお借りしたので本製品を例に紹介していきたい。

 本製品は2018年5月に登場したばかりの最新NVMe SSDで読み込み速度3400MB/s、書き込み速度2,500MB/sと非常に高速な性能を実現している。位置づけとして同社がSSDにおいて展開するカラーバリエーション「Green / Blue / Black」の中で最上位のBlackに名前を冠した製品。コントローラー/NAND/ファームウェアとSSDにおけるキーとなる部品すべてが自社製品であることが強みという。

 なぜ自社製であることが強いかというと、自身の製品なのですべてを知り尽くしているという点だ。すべての製品の癖を当然ながら把握でき、また普通提供されないような細かなところまで調整できるのである。他社製が混じった製品が決して悪いわけではないが、どうしてもギリギリを攻めるといった調整が行なえないのだ。ちなみに競合のSAMSUNGのSSDもすべて自社設計の部品を使用している。

【WD Black NVMe SSD】
5月に登場したばかりの高速性能をうたうWD Black NVMe SSD WDS100T2X0C
CrystalDiskMarkにて計測。公称値通りのスピードを確認。それにしてもすさまじい速度である
別途ダウンロード可能なソフトウェアとして、ファームウェアのアップデートやステータス確認ができる「Western Digital SSD Dashboard」が用意されている。速度が出ていないときはインターフェイススピードがしっかりとPCIe 3.0 x4となっているか確認しよう
バックアップ、環境移行ツールとしてAcronis True Image WD Editionソフトウェアが用意されている
「Western Digital Black 3D NVMe SSD」ラインナップ
容量1TB500GB250GB
製品名WDS100T2X0CWDS500G2X0CWDS250G2X0C
インターフェイスM.2 NVMe PCIe Gen3 x4M.2 NVMe PCIe Gen3 x4M.2 NVMe PCIe Gen3 x4
Read3,400MB/s3,400MB/s3,000MB/s
Write2,800MB/s2,500MB/s1,600MB/s
TBW600TB300TB200TB

 それではさっそくゲーム面のパフォーマンスを見ていこう。

 比較対象として4TBという大容量ながら1万円を切ることも珍しくなくなった定番ストレージであるHDDから「Western Digital WD40EZRZ-00GXCB0」、そしてSSDではベストセラーとなった2.5インチSATA接続のCrucial MX100シリーズのSATA SSD「CT512MX100SSD1」をチョイスした。

 HDDは5,400rpmクラスとHDDとして一般的な製品であり、BTO PCを購入した場合に付属している性能帯だ。SSDは読み込み速度550MB/s、書き込み速度500MB/sと、数年前のSSDであるにも関わらず、現状でも文句のない性能を発揮している。

【Western Digital WD40EZRZ-00GXCB0】
単純なリード/ライト性能ではひと昔前のSSDクラスを発揮するHDD

【Crucial MX100】
2014年発売ながらSATA接続では色あせない性能を持つ製品だ

 今回「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター」ベンチマーク、「ファイナルファンタジーXV WINDOWS EDITON」、「The Forest」、「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(PUBG)、「フォールアウト 4」を用いて検証を行なった。

 検証方法は初回セーブデータのローディングにかかる時間を計測、3回の平均値を掲載している。なお、「PUBG」についてはネットワーク処理が影響するシーンが多いため、ゲームの起動開始からネットワークへの通信が始まるまでの時間を計測している。

 まず今回採用したゲームの中で唯一計測用アプリとして提供されている「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター」ベンチマークを見てみよう。「ゲームにはSSDがいい」と言われるだけあってゲームHDDとSSDの間では大きな差が開いている。HDDが37.89秒、SATA SSDが15.51秒と約22秒の差と大きく差がついており、SATA SSDとNVMe SSDの間では1.5秒程度の小さな差となった。

【「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター」ベンチマーク】

【「ファイナルファンタジーXIV」ベンチマーク】

 ベンチマークアプリケーション以外の実ゲーム内の計測でも差は出ており、
セーブデータを選択直後からロード画面完了以後暗転するまでの時間を計測した「FINAL FANTASY 15 WINDOWS EDITION」でHDDとSSDの差が約30秒、同条件の「フォールアウト 4」でHDDとSSDの間に28秒程度の差がついている。

 SATA SSDとNVMe SSDについては先の「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター」ベンチマークと同様誤差の範囲におさまっており、計測の回では逆転することもあったので、ゲームにおけるパフォーマンスの差はないといって差支えないだろう。

【FINAL FANTASY 15 WINDOWS EDITION】

【「FINAL FANTASY 15 WINDOWS EDITION」起動】

【フォールアウト 4】

【「フォールアウト 4」起動】

 ちなみにHDDとSATA SSDで大きな差が出ているのに対し、SATA SSDとNVMe SSDの間で転送速度差ほどの違いが出ていない要因としては次の理由が考えられる。ゲームのローディングは単一のデータをロードしているのではなく、大小さまざまなファイルを数十~数百の単位で読み込んでおり、加えて圧縮されたファイルの展開作業でストレージ性能以外のところで時間がかかったりしたものと推測される。

 実際、「FINAL FANTASY 15 WINDOWS EDITION」ではデータの転送速度をオプションでオーバーレイ表示できるが、HDDの計測データは平均して60MB/s程度となっており、CrystalDiskMarkで計測したような150MB/s前後のような数値は振るわなかった。SSDでは同様にトップスピードは出ないもののいずれも最大200MB/s前後を計測し、平均すると150MB/s程度で落ち着いている。

 「PUBG」ではある程度差は出ているものの、大きな差とならなかったのはあくまでも起動に必要なプロセスを中心としたもので、ゲームに必要なデータ自体は最低限である可能性が高いだろう。

【PUBG】

【「PUBG」起動】

 「The Forest」では性能順に並んでいるものの、ロード時間に大きな差はなかった。ストレージ性能がロード時間に大きく影響しないゲームがあるということを覚えておいてほしい。ただし、「The Forest」のゲーム内で洞窟移動など読み込みが発生した際、HDDがカクつく傾向にあった。必要最小限のみ読み込んでいるためロード時間に差がでないものの、随時読み込む際にHDDだけロードが追い付いていない可能性は否定できない。

【The Forest】

【「The Forest」起動】

 この推察を裏付けるため、単純なコピー作業で比較してみた。約3.5GBの動画ファイルを3つ同時にコピーしたところ、カタログスペックに近い形でSSD間の比較でも約6倍の速度差、HDDとNVMe SSDでは8倍近い速度差を記録した。

 大小さまざまな容量のあるゲームフォルダ(3.75GB/ファイル数481)をコピーしたところ、カタログスペックほどの差とはいかないもののSSD間で約3分の1という大きな速度差を計測することができた。

 近年NVIDIAのShadowPlayをはじめ、容易に低負荷でゲームを録画できる環境が増えており、配信とまでは言わないまでも録画して楽しんでいる読者はいるのではないだろうか。これらのファイルの移動やバックアップなどを考えるとよりゲーム以外でのゲーマーに関係する環境下でNVMe SSDは高い性能を発揮することができる。

【データコピー比較】

 ところで、NVMe SSDにはその圧倒的なスピードに加えてもう1つ大きなメリットがある。「ゲームは大好きだけどPCにはあまり苦手」という人にとって最適の製品だということだ。PCが詳しい人にとってはどうでも良い話だが、ゲームファンには実は詳しくないという人が少なくないはずだ。

 理由は接続が簡単なことだ。従来のSATA接続のSSDやHDDを換装したことがある読者はご存知だろうが、ストレージの交換はやっかいな作業だ。慣れている人にとっても新しくSATAケーブルを買ってきたり、空いているストレージベイにSSDを取り付けたり、電源ケーブルを引き延ばしてきたりするのは意外と重労働だ。使っているケーブルしだいでは配線をしている最中に接続済みのSSDやHDDのSATA/電源ケーブルが抜けてしまい「OSが起動しない!」と顔を青くした経験のある読者もいるのではないだろうか。

 PCIe接続のNVMe SSDはM.2端子に取り付けるタイプとPCIeスロットに取り付けるタイプの2種類が存在しているが、いずれも非常に簡単だ。パソコンのサイドパネルを開けてビデオカードの上下あたりの位置にあるM.2スロット/またはPCI Expressスロットに挿せばそれで完了だ。気を付ける点とすればM.2端子の場合、取り付けネジが非常に小さなため、落とさないようにするくらいだろうか。長年自作PCに関わってきた筆者としては、これだけでもNVMe SSDをおすすめする万の理由に値すると考えている。

【SATA SSDの接続端子】
SATA SSDは電源ケーブルとSATAケーブル2種類を接続する。電源ケーブルが抜けやすいので注意が必要

【NVMe SSD設置場所】
緑の枠で囲ったところが今回のNVMe SSDを設置するための場所。挿すだけで接続完了だ。PCによって場所や仕様が違うので注意が必要

 NVMe SSDは、すべてのゲーマーが絶対に導入すべきという製品ではないが、先述したように非常に手軽に拡張できるため、現在、ゲーミング環境にHDDやSATA SSDを使っていて、より速度にこだわりたいという方は、ぜひ検討する価値のあるゲーミングパーツの1つと言えそうだ。

【今回取り上げた3製品】