2018年6月8日 07:00
独立系ゲームスタジオEndnight Gamesyが開発した異色のサバイバルホラーアクションゲーム「The Forest」を紹介しよう。
本作はSteamにおいてアーリーアクセス版を2014年に登場、2018年5月1日の正式発売まで実に4年をかけて、日本語の対応、ゲームの安定化、要素の追加・修正を行なってきたタイトルだ。
「The Forest」は、主人公の乗る飛行機が突如不安定となり、島に墜落。薄れゆく意識のさなか、一緒に移動していた息子ティミーがさらわれ、息子を探しつつサバイバル生活を送っていくというアドベンチャーゲーム。主人公は謎の食人族がいる島で生き抜きながら、どこに連れ去られた息子を探し求めていく。
筆者自身、ホラーはまったくダメなタイプだが、本作が持つ戦闘を含むサバイバル要素とクラフト要素が非常によく出来ており、ゲームクリアまで楽しむことができた。本稿ではゲームシステムからサバイバルで生き残るコツ、そして簡単にストーリーを紹介するのでその本作の魅力を少しでも伝えることができれば幸いだ。
食人族が棲まう島でひたすら生き延びるサバイバルホラー
このゲームにはシングルプレイとマルチプレイの2種類が用意されている。マルチプレイは特定のプレーヤーがホストとなって、最大8名で遊ぶことができるCOOPモードと専用サーバーを公開するデディケイトサーバーの2種類だ。以降、本稿におけるマルチプレイはCOOPを指す。
シングルプレイとマルチプレイの大きな違いは、死亡時のリスポーン位置だ。シングルプレイは体力がなくなると島の住民である食人族に連れ去られ、彼らの拠点である洞窟のひとつに拉致される。
シングルプレイでは、その洞窟内から再スタートするチャンスを与えられるが、マルチプレイでは倒れた後も、洞窟に拉致されずに、一定時間味方による救助が可能であり、一定時間経過後または諦めた場合は物語スタート地点からの再スタートとなる。またシングルプレイにはゲームの難易度変更や公式チートの使用可否などがあるが、マルチプレイにはチートはなく、難易度もホストが初回に選択したもの以外に途中変更はできない。
上記のリスポーン以外に関してはシングルプレイとマルチプレイは同一だ。マルチプレイは冒頭ホストプレーヤーのみが主人公となり、ほかのプレーヤーは同じ飛行機の乗客として参加するため、演出が若干異なる。しかし、ストーリー開始以降は主人公の区別がなしにゲームを進めることができ、実績も解除されるので安心して欲しい。
ただし、注意が必要なシーンもある。本作は複数人プレイも意識して作り込んであり、特定の演出についてはすべてのプレーヤーが体験を共有できるように配慮してあるのだが、例えば特定のアクションをするシーンなどは一人しか行なえず、周りはそれを見ているだけという制限が発生する。演出上仕方がないこととは言え、プレイする際には注意したい。
ゲームの操作方法は、非常にシンプルだ。戦闘時は左クリックで殴る、右クリックでガードだ。武器ごとにダメージの差はあるが、必ずしも強い武器を探し求める必要はなく、探索を進めるに当たって手に入れなければいけない装備は存在するものの、スタート地点の墜落した飛行機で獲得できる斧だけでも最後まで行ける。
正直な所、本作の戦闘システムは、複雑な駆け引きを必要としないシンプルな内容に留まっているが、スタミナとクラフトの要素がバトルを飽きさせないものにしている。スタミナはアクション動作に直結しており、攻撃だけでなくガードやダッシュにも影響する。食人族が1体だけであれば攻撃を避けながら殴ればよいが、複数いるとスタミナがすぐに尽きてしまう。遠距離で対応できる武器を使ったり、刀といったスタミナが切れても攻撃モーションが早い武器を使ったりすることができるし、クラフト要素を使用し、たき火などをあらかじめ仕掛けておき、敵を誘導して燃やすということもできる。特に洞窟では物資の限りがあるので多用はできないが狭い通路にたき火を置き、一網打尽を狙うということも可能だ。
島内最大の敵である食人族は大きく分けて2種類存在する。人型をしたものと変異体のような特殊なもの(多くは人型の集合体のようなもの)にわけられ、各々色違いの強いタイプが存在する。序盤は数回殴れば倒せるような食人族しか現われないが、進行するにつれて強力な武器をもったものが登場する。人型からは頭・手・足を手に入れることができ、非常食やクラフトの素材とすることができる。変異体からはパーツを回収することはできないが、肉(?)を剥ぎ取ることができ、これを装備することが可能だ。防御力がアップするのでおすすめだが、見た目は最悪の一言だ。
クラフト要素を活用して安定したサバイバル生活を目指そう
序盤はゲーム開始直後に入手可能な飛行機の斧、そしてサバイバルに必要なガイドブックとリュックしか持っておらず、生活環境を整えつつ、息子を探していくのだが、島内のいたるところに原住民(食人族)がおり、序盤はとにかく逃げ惑いながら生活することになる。
食人族はランダム要素が強いものの、特定のルートを巡回する傾向があり、それらを比較的避けた場所(とはいえ、絶対的な安全な場所は存在しないが)に拠点を設けよう。拠点(避難所)では、睡眠とセーブが行なえる。
朝から夕方までの活動だけでも1・2度の食事や水分補給が必要となり、クラフトに必要な木材の切り出しはスタミナの影響を大きく受けるため、定期的な食料や水分の確保が必要だ。夜になるとたいまつを持っていても非常に暗く、一寸先は闇になる。食人族が不意に飛び出してくることもあるため、とにかく序盤は夜はおとなしく過ごすそう。
拠点を建てるおすすめの場所はとにかく装備が整うまでは水辺のある開けた場所を探そう。弱い槍は、小枝2本ですぐに製作できる武器だ。といっても食人族に対抗するためではなく、水辺にいる魚の確保に必須となるアイテムだ。食べ物の種類に制限はないので魚を確保し、乾燥させれば携行食にもなるので行動の幅も広がるだろう。水も清潔ではないもののこの水辺から確保できる。
なお、クラフトを行なうのに必要な素材の多くは草木の採取や野生動物の狩猟、そして飛行機の貨物であろう旅行鞄から素材を集めることができる。
このクラフト要素は、特に拠点に関する建築物が非常に豊富に用意されている。一度使用すると壊れてしまう避難所や小さな小屋、木の上のコテージなどさまざまなプリセットがあり、加えてカスタムクラフトとして土台・壁・床などを組み合わせ複数階構造にすることも可能だ。
コレクション要素も建物にはあり、倒した動物の首などを装飾品として飾ったり、様々な建物などを設置したりすることができる。
ところで、本作は“木こりゲー”と呼んでも差し支えがないくらい大量の木材が必要となる。建築にこだわり出した途端に多くの時間が伐採にとられることになるだろう。
1本の木から取れる丸太は4本前後なのに対して、本格的な建築物を作ろうとすると200・300本近くの丸太が必要となり、装飾品など自分好みの拠点を作ろうとするとなので最終的に数十・数百本の木の伐採をしなければならない。当然、木を切るだけでは家は組み立てられず、さらに運搬・組み立て作業が必要となる。
通常のサバイバルゲームなら、単にあらかじめ用意されたセーフゾーンに入れば済むが、このゲームは、食人族の島で生活するゲームだ。否応なく定期的に食人族がプレーヤーに襲いかかって来るため、自分の身を守るために食人族への対策を考えたり、より効率化したりと自然とやりこみ要素につながっていく。
序盤の拠点造りが落ち着く頃には食人族に攻め入る準備も整いはじめる。
島内には複数の洞窟があり、食人族の拠点として使われている。洞窟内には複数の食人族がおり、強力な食人族も存在するので用意した装備や培った経験をもとに撃破していこう。シングルプレイはアイテムの使用や立ち回りにある程度の慎重なプレイ運びが求められるが、マルチプレイであれば持ち運べるアイテム数も人数分になるため、準備さえ万端であれば数の暴力で容易に洞窟攻略が可能だろう。
洞窟内には地上では手に入らないようなアイテムがいくつか存在し、戦闘やサバイバル生活における効率を大きくあげることができるようになる。ただし、攻略が進めば進むほど食人族も強力なタイプが登場してくるようになるので油断は禁物だ。この食人族の拠点を攻略していくことによって、島の謎、息子の行方が少しずつ明らかになっていく。
サバイバル生活を終え、主人公が最後に見る世界とは?
さて、ここまでゲームの概略を紹介してきたが、本作の楽しさはどこにあるだろうか。
本作はクラフト要素の強い、サバイバルホラーアクションゲームに仕上がっており、ストーリー自体は一見するといい意味で簡潔、悪い意味では単純なものとなっている。
また、このゲームの主人公は言葉を基本発しないため、心情描写含めプレーヤー側の想像だけで補完する必要がある。本来ホラーゲームの醍醐味のひとつとして、主人公が驚き、それにあわせてプレーヤーも驚く。そして恐怖だけでなく、なぜこの恐怖の原因とはなになのか、それが幽霊だったり、クリーチャーだったりストーリーを進めるにつれだんだん真実がわかってくるわけで、謎の解明におもしろさがある。
本作でこの要素は食人族にあたる。あたるのだが、本作には途中途中ヒントはあるものの、非常に理解しづらい。加えてプレイを進めていくうえで様々な発見をする訳だが、主人公はリアクションしないため、せっかくのホラー要素や物語を進めている感が薄れてしまっている。ただし、大きなネタバレになるので明言は避けるが探検を続けてゲームをクリアする一歩手前ですべて気づくことになる。
純粋にホラーゲームが好きなプレーヤーにはシングルをぜひプレイして欲しいが、ホラーは苦手と思っている読者こそ、本作を複数人でプレイして欲しい。
というのも、ただ逃げ回るだけのホラーや謎解きホラーなどと比べ、本作では対抗できる手が多数用意されている。撃退し、落ち着いたところ急に現れる食人族にプレーヤー自身が驚いたり、逆にほかのプレーヤーが驚く姿に笑ったり極限の状況下において普段とは違う形でフレンドと会話が弾むだろう。
最終的に装備が整えばどちらが食人族なのかわからないくらいプレーヤーが食人族を追い回す風景もみられるようになるはずだ。ゲームを進めると木こりに便利なアイテムが手に入るが、複数人でプレイをすれば木を切る担当、木材を運び家を組み立てる担当など役割分担が行なえストレスなくプレイが行なえる。ついついその木こり作業の効率化や様々なオブジェクトの製作に走っていると気づけば息子探しはどこ吹く風、この島に木こりとしてやってきた開拓民をしていることに気づくだろう。
物語を進めていく中で、そもそもなぜ島に食人族がいるのか、また謎の変異体はどうやって生まれたのか、そして息子はなぜ連れ去られたのか、様々な謎がある中、息子探しそっちのけで探索やサバイバル生活を満喫してしまうことができる本作。本作のプレイを進めていくと用意された謎とは別に矛盾点にいくつか気づく人も出てくるだろう。意味があっての矛盾か、ただの矛盾なのか、考えれば考えるほど気になってくるところだが、ひとまずは頭を空っぽにし、本作を楽しんで欲しい。クリアだけを目指すと10時間もかからず攻略可能だが、その分価格も非常に手頃なものとなっており、ぜひ手に取って試していただきたいゲームだ。
なお、「The Forest」は、2018年5月1日に正式サービスを開始した後も積極的にアップデートが続けられており、5月30日にはVR版のベータテストがスタートした。これから正式サービスに向けてアップデートが続けられていくが、VR以外にも様々な追加が今後もあることを期待したい。