2018年3月29日 00:00
ユービーアイソフトは、人気のFPSシリーズ最新作「ファークライ5」を、3月29日に発売した。「ファークライ5」は新人の連邦保安官としてアメリカはモンタナ州の「ホープカウンティ」へとおもむくプレーヤーと、この地を薬物と暴力で支配するカルト教団との戦いを描く、オープンワールドFPSだ。
弊誌では過去にE3 2017出展バージョンや、「カムバックビルド」と称された体験版のプレイレポートを同じ筆者がお届けしているが、今回はいよいよ製品版(PS4版)のレビューとなる。プレーヤーを恐怖に陥れるカルト教団の支配や、個性的な傭兵のシステムなど、これまでの体験版ではさわり程度にしか味わえなかった部分を重点的にお伝えしていきたい。なおストーリーに関するネタバレは最低限にとどめるつもりだが、本作の魅力を伝えるうえで外せない内容もあるので、そこはご容赦いただきたい。
政府も恐れるカルト組織「エデンズ・ゲート」との戦い
本作の舞台となる地「ホープカウンティ」は、豊かな自然に囲まれたモンタナ州の田舎町だ。広大な農地が広がる「ホランドバレー」、大小の山々の間を川が流れる「ヘンベインリバー」、そして針葉樹の森林に囲まれた山岳地帯「ホワイトテイルマウンテン」の3つの区域があり、これらはオープンワールドとして構築されている。
ホープカウンティの大自然は、FPSの開けた視点で駆け回るには最高のロケーションで、特に高台や水辺などに立ったときの眺めはどこも画になる美しさだ。ナンバリングのシリーズとしては5作目、スピンオフを含めれば7作目となるわけだが、今回もプレーヤーを飽きさせないシチュエーション作りや、シリーズを重ねるたびに向上していく表現力には敬意を表したい。各地に点在する建物や場所なども、興味をそそるものが揃っていて、思わず立ち寄ってみるとそこにちょっとしたアイテムなどが置いてあったりと、探索へのモチベーションが上がるマップに仕上げてあることにも注目だ。
昨年掲載した開発スタッフへのインタビューでは、開発陣は実際にモンタナ州へと赴き、そこの住人とコミュニケーションして彼らの生活や考え方を取材したことが述べられていて、筆者も実際にプレイをしてみてその取材の成果がゲームに上手く反映されていることがよくわかった。
隅々まで見て歩きたくなるホープカウンティだが、それを許さないのがこの地域を暴力と洗脳と薬物で支配するカルト教団「エデンズ・ゲート」だ。連邦保安官であるプレーヤーは、「ファーザー」と呼ばれる教祖ジョセフ・シードを逮捕するために仲間とともにホープカウンティに向かうのだが、当然ながら歓迎されるはずもなく、“罪人”として彼らの非情な洗礼を受けてしまう。
衝撃のオープニングに限らず、彼らの行動については徹底して“狂気”を強調した描き方をしているのが凄まじい。大音量の音楽や演説をところ構わず鳴らして洗脳し、麻薬を河川に垂れ流して薬漬けにする。罪人(=彼らに従わないレジスタンス達)は有無を言わさず武力で征圧する。血みどろのゴア表現などとも一味違い、プレーヤーの精神面にダメージを与えてくる描写だ。
中でも音声に関しては、ヘッドホンを使って遊んでいるとプレーヤー自身も何か本当に洗脳されそうで、一刻も早くその場所を解放したいという気分にかき立てられる。カルト教団をテーマにした本作らしい演出でもあった。それと音に関してもう1つ、詳しくは言わないがかのプラターズの名曲「Only You」が、プレーヤーにトラウマ的な何かを植え付けるかもしれないこともお知らせしておきたい。
エデンズ・ゲートは、「終末思想」を掲げて救済を説く“ファーザー”ジョセフ・シードを筆頭とする兄弟が、このホープカウンティを支配している。3つのエリアを支配するリーダーとして登場するのは、信仰と暴力によって新たな信者を確保する“洗礼者”ジョン・シード、麻薬と耽美な囁きで信者を“祝福”する“魔女”フェイス・シード、そして元軍人で精鋭の信者を鍛えあげる“兵士”ジェイコブ・シードだ。
各エリアでは彼らと配下の信者達による手荒な洗礼によって苦しめられることになるわけだが、こちらもそれを素直に受け入れるわけにはいかない。捕まっている民間人の救出やカルトの建造物・車両の破壊、占領された基地の解放、そして住人の依頼となるミッションをクリアするなどして教団にダメージを与えることで、地域ごとに設定された「レジスタンスメーター」が増加し、これが一定値を超えるとリーダーとのイベントやミッションが発生。
最終的にこのメーターを一杯にしてリーダーに勝利することで、その地域が解放されるという展開となる。オープンワールドのゲームなのでどういう順番でエリアを解放していくかは自由で、今いるエリアを解放する前に新たなエリアに行くことも可能だ。ただし解放前のエリアには無数の教団信者が徘徊していて、どこに行っても敵と遭遇することになるはず。ホープカウンティを観光気分で歩き回りたいなら、そのエリアのリーダーを倒しておくことをオススメする。
それともう1つ、エデンズ・ゲートと戦う上でその存在に注する必要があるのが、「祝福」という麻薬だ。白いユリのような花から作られるこの麻薬は液体、もしくは気体で、流れているところや揮発しているところを通りかかると周囲がぶれたようなエフェクトに包まれてしまう。またこの祝福を投与されゾンビのようになった「天使」と呼ばれる信者や、「神狼(じんろう)」をはじめとした薬を投与された動物達がプレーヤーに襲いかかってくることもある。
レジスタンスを仲間に入れ、教団に対抗する力をつけていく
強大な教団に対して抵抗しているのは、プレーヤーだけではない。ホープカウンティの多くの住人は、この地に秩序を取り戻すために奮闘するプレーヤーに対して協力的だ。レジスタンスと呼ばれる彼らは、エリアごとに中心人物が存在していて、多くのミッションに関わってくる。またレジスタンスメーターが増えてくると少しずつレジスタンスのメンバーが増えていくようで、街中で教団と戦っている様子も見られるようになるだろう。
またプレーヤーは、エリアのあちこちで出会う武器を携えたレジスタンスを傭兵「ガンフォーハイヤー」としてその場で雇うことが可能だ。雇ったガンフォーハイヤーは最大2人を方向キーにセットすることで、一緒に戦ってくれる。武器を持っていれば本当に誰でもすぐに雇えるので、特に自分が強くない序盤では活躍してくれるはずだ。
ガンフォーハイヤーには、9人(実際には人間6人と動物3頭)の特別な「スペシャリスト」がいて、それがこれまでのプレイレポートなどでも紹介してきた、ニックやグレースをはじめとするキャラクター達である。彼らはマップ上にアイコンで表示される場所に点在していて、対応するミッションをクリアすると仲間になり、いつでも呼び出せるようになる。道ばたで雇える一般的なガンフォーハイヤーとは異なり、スペシャリストと呼ばれるだけの非常に個性的なスキルでプレーヤーをバックアップしてくれるのだ。
筆者はこの製品版でも、犬のブーマーのスキル「ポインター」(付近の敵全員にタグ付けする)による索敵能力には世話になりっぱなしで、そのサポートによって多くの教団基地を1度も発見されない状態で攻略している。ちなみにスペシャストの中にはこのブーマーの他に、クーガーの「ピーチズ」とグリズリーの「チーズバーガー」の2頭の「ファングフォーハイヤー」(牙を武器に戦う彼らはこう呼ばれる)が登場することも判明した。ブーマーと同様に、それぞれが人間には真似できないような能力を発揮する、非常に頼りになる存在であった。
彼らガンフォーハイヤー及びファングフォーハイヤーは仲間になっている、または雇っていればいつでも呼び出せる。解除した場合は一時的に呼び出せなくなるが1、2分で復帰する。ただし敵に倒されてしまった場合は、復帰に20分程度の待ち時間を必要とする。
本作をプレイしてみて感じるのは、敵味方を含めキャラクターの個性付けがこれまで以上にしっかり設定されているということ。敵味方のミッションに絡む主要キャラクターはもちろん、通りすがりのガンフォーハイヤーにも名前が付けられていて、会話のパターンも異なり、単純な脇役とは思えない扱いだ。逆に今回、主人公に明確なキャラクター付けがされていないことで、彼らの存在感をより引き立てている。その一方、登場キャラクターが主人公を盛り立ててくれるので、プレーヤーキャラクターとプレーヤー自身の一体感はこれまで以上に強く感じられるようになった。
FPSとしての完成度は言うまでもなく、様々な武器を使いこなすタクティカルな戦闘の楽しさはこれまでのシリーズ同等、あるいはそれ以上だ。1つの武器でも弾丸の選択で効果が大きく変わるので、それも頭に入れて戦えば選択肢はさらに増えるだろう。筆者はもっぱらスナイパーライフルか弓でのステルスプレイを優先していて、とくに弓で射る矢を色々と変えて戦闘を行ない、かの名作映画のバンダナを巻いたヒーローの気分に浸っていた。
本作でもやはり高く評価できるのはプレーヤーの選択肢の多さで、これは単にクリアルートの選択だけでなくプレイスタイルにも直結している。その代表となるのがガンフォーハイヤーの存在であり、彼らの誰を優先して登用するかで戦い方は大きく変わってくる。FPSがあまり得意でなくても、彼らの力を借りることでクリアできるようなバランスになっている手応えでもあった。
今回ゲームプレイはオフラインで行なったため、Co-op(フレンドをガンフォーハイヤーとして雇える)や「ファークライアーケード」(コミュニティのプレーヤーが作ったマップをプレイする)などのオンライン専用モードは体験できていないのだが、そちらも必ず楽しいものとなるはずだ。
圧倒的な強さを持つ狂気のカルト教団を、レジスタンスの仲間とともに少しずつ攻め落としていく展開は必ず熱くなれるはず。ストーリーは最初から最後までかなり衝撃的なので、そのあたりは覚悟して挑んでみてほしい。
© 2017 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. Far Cry, Ubisoft, and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the US and/or other countries. Based on Crytek’s original Far Cry directed by Cevat Yerli. Powered by Crytek’s technology “CryEngine.