Nintendo Switch版「The Elder Scrolls V: Skyrim」レビュー

The Elder Scrolls V: Skyrim

Joy-Conが生む臨場感、持ち運べる楽しさ!
Nintendo Switch版だからこそ楽しい「スカイリム」

ジャンル:
  • RPG
発売元:
  • ベセスダ・ソフトワークス
開発元:
  • Bethesda Game Studios
プラットフォーム:
  • Nintendo Switch
価格:
6,980円(税別)
発売日:
2018年2月1日

 「ああやっぱり『スカイリム』楽しいわ、もうずっとこの世界にいたい」コントローラを握り、何度こうつぶやいたことだろう。「The Elder Scrolls V: Skyrim(以下「スカイリム」)」のNintendo Switch版がついに発売されたのである。

 「スカイリム」が最初に発売されたのは2011年、もう7年近くに本作は登場したのだが、昨年末にVR版が発売され、今回、Nintendo Switch版が発売された。その魅力はやはり「中世ファンタジー風の冒険」にあると思う。この世界を旅する臨場感、没頭できる感覚はやはり素晴らしい。

 そして壮大なスケールと自由度を持ったゲームシステムが、常に新しい物語を生む。同じゲームでありながらプレーヤーが紡ぐ物語はプレーヤーの数だけ存在する。たとえ1度クリアしたとしても、再度プレイし直すと全く別な展開となるだろう。だからこそ本作はこのように様々なハードに移植され、プレーヤーを増やしてきたのである。

 加えて、Nintendo Switch版ならではの楽しさがある。特にJoy-Conでプレイする感覚はとても楽しい。加えて今作は外に持ち出すことも可能なのだ! 今回は「スカイリム」ならではの魅力と、Nintendo Switch版の感触を語っていきたい。

 なお、弊誌では2011年の最初の「スカイリム」のレビューや、昨年末に出た「The Elder Scrolls V: Skyrim VR」のレビューも行なっている。特に最初のレビューでは細かいシステムなども紹介しているので、より詳細なゲーム情報に関してはこちらを参照して欲しい。

【意外と知らない SKYRIM】

果てしない冒険の世界へ! 一介の旅人が英雄になる楽しさ

 「The Elder Scrolls」シリーズの世界は「タムリエル」という大陸が舞台になっている。エルフやドワーフといった様々な種族が出てきて、文明レベルは中世ヨーロッパ風という、「指輪物語」を始まりとする「中世風ファンタジー世界」であるが、種族や歴史は独特のもので、非常に濃く、深く設定されている。「スカイリム」はそのタムリエル大陸でも北の方にあるスカイリム地方を舞台としている。

 プレーヤーはいきなり“囚人”として他の囚人と共に馬車に揺られているのがゲームのスタート場面となる。馬車に同乗しているのはウルフリック・ストームクロークという王。彼はタムリエルの多くを支配している帝国側の勢力に捕まり、処刑されることとなっている。旅人である主人公はストームクローク一派と間違われ、巻き添えで処刑されそうになるのだ。何もわからないまま処刑台に頭を乗せられる主人公、しかしまさに斬首されそうになるその瞬間、伝説の怪物であった「ドラゴン」が襲いかかってきて、主人公は命からがら脱出する。

 ドラゴンの混乱の中、ウルフリックを救出しようとするストームクロークと、帝国軍との戦いも始まる。主人公は手助けをしてくれる男と共に何とか脱出し、リバーウッドという村にたどり着く。ここからが本当の旅の始まりとなる。目の前には広大な大地、そして戦乱が始まっている世界、さらに伝説のドラゴンの復活という大きな危機が提示されている中、主人公がどのような役割を果たすのか、全てはプレーヤーの手にゆだねられているのだ。

処刑される寸前、ドラゴンの襲撃が! 主人公は命からがら逃げだす
広がる広大な平原。冒険の始まりだ

 今回、筆者は数年ぶりにがっつり「スカイリム」をプレイしてみた。まずNintendo Switch版ならではの要素を紹介する前に、本作そのものの魅力を語っていきたい。「スカイリム」はやはり「ファンタジーRPG」として非常に優秀だ。雪に包まれた山々の間を街道が引かれ、その道は平原に続いている。道を進んでいると画面上方の方位を示すバーに様々なアイコンが浮かぶ。それはダンジョンや石碑、建造物のマークだ。そのマークに導かれ進んでいくことで、盗賊達のアジトや、農場、城などを見つける事ができる。

 本作の面白いところはそこからかなり壮大な冒険が始まることだ。「スカイリム」の主人公はスキルの少ない初期でもいきなり大冒険ができる。何の気なしに入った洞窟で盗賊が持っていた宝物から壮大な冒険が始まることもあるし、重要な場面に居合わすようなこともある。もちろん住民が抱える小さなもめ事に介入したり、1つのダンジョンで解決する冒険も多い。そういう大小様々な冒険を通じて、プレーヤーごとの「サーガ(英雄譚)」が形作られていくのだ。その数は膨大であり、世界は非常に広大で、まさに「終わりなき物語」を楽しめる。この冒険の楽しさこそが本作の大きな魅力だろう。

 筆者は何度か他機種版の「スカイリム」をプレイしているが、今回は筆者は最初に行動範囲が広がるホワイトラン地域の冒険はそこそこにして、北西方向のソリチュードに馬車で向かい、吟遊詩人になるべくクエストを進めた。吟遊詩人クエストはいきなりかなり遠くのダンジョンを冒険するという過酷なもので、寄り道をしながらこなしていった。

今回のメインウエポンは片手武器と魔法で進めてみることに
生産も進めてみることに。スキルポイントが全然足りない

 プレイスタイルとしては近接武器を右手に握り、左は魔法を使うスタイルにして、特に破壊魔法の雷撃系を使うようにしている。装備は防御力重視の重装備だ。生産の楽しさもわかったので、鍛冶も上げているのだが、ちょっと器用貧乏にしてしまったようで、強めの敵に苦労している。このため青い山の花と小麦で作る回復薬を常備するようにした。おかげで錬金術のスキルまで必要になってきてスキル管理が大変だが、じっくりキャラクターを強くしようと思っている。

 「スカイリム」はやはり自由度が良い。どのような順番でどのように進めても良いのだ。そして筆者のように複数回プレイしてもそれぞれ違うアプローチができる。もちろん筆者自身が「スカイリム」が好きだというのも大きいが、やはりこの選択肢の多さと、それがちゃんと面白い冒険に繋がるバランスが実現できているのが、「スカイリム」の人気の秘密だと思う。初心者にはもちろんオススメだが、他機種版を持っている人も、この機会にNintendo Switch版に触れてみてはいかがだろうか?

【スクリーンショット】
キャラクター作成。ネコ型人間カジートや、竜型人間アルゴニアンなども選べる
ドラゴンの襲撃から生き延び、冒険を始める
最初の大きな街・ホワイトランでは、様々なクエストが待っている
今回はソリチュードでの冒険を進めてみた

剣を振り、弓を撃つ、そして屋外の冒険も! Nintendo Switchならではの世界

 Nintendo Switch版の大きな特徴は「様々なプレイスタイルで遊ぶことができる」というところにある。据え置き型のTVモードでも、グリップを取り付けた一般的なコントローラーと、両手にそれぞれコントローラを握る遊び方ができる。「スカイリム」はこのJoy-Conを握った状態のモーションコントロールに対応している。今回はこのJoy-Conでのプレイと、携帯モードを集中的に遊んでみた。

 Nintendo Switch版ならではの特徴はやはりJoy-Conにあると思う。Joy-Conを振るとキャラクターが剣を振るこのアクションが楽しい。Joy-Conは手首を軽く振るだけで剣を大きく振ってくれるし、連続攻撃ができるので、超時間プレイしても疲れない。

 振りは縦と横に反応する上に、興奮するとつい振りが大きくなってしまう。接近戦の時はもう敵に叩きつけるように必死に振ってしまう。筆者は繊細な剣の振りよりも懐に飛び込んでがむしゃらに切りつけることが多い。アクションが得意なプレーヤーならば敵の攻撃ををいかにしのいで切りつけるかなど工夫できそうだ。筆者のプレイスタイルの場合、盾のスキルも上げなくてはいけないが、今はちょっと余裕がない感じだ。

 Joy-Conに関しては弓の使い勝手も特筆しておきたい。ジャイロ機能によって右手のJoy-Conを動かすだけで狙いがつけられるのだ。コントローラを使うより直感的な狙撃が可能である。弓は隠密による暗殺が強い。Nintendo Switch版をプレイするならステルスで弓射撃、というプレイスタイルはかなり合っていると感じた。

片手武器はJoy-Conの加速度センサーに対応している。敵に振り下ろすときは思わず力が入ってしまう
ジャイロ機能で微妙な操作ができる弓攻撃。Joy-Conならではの楽しさが特にはっきりと出る攻撃だ

 もう1つ、Nintendo Switch版ならではの機能としてはやはり携帯モードがある。「スカイリム」を戸外に持ち出せるというのは非常に楽しいし、携帯機でのプレイに慣れている人には待ち望んだ機能だろう。筆者はテレビの前でコントローラを振るというJoy-Conのプレイスタイルが大いに気に入っていたので、最初携帯モードは「持ち運べるのは良いよな」程度に思っていたのだが、いざプレイしてみると気が付いたら3時間以上、ぶっ続けで遊び込んでしまった。携帯モードでも全く違和感も不自由もなく「スカイリム」に没頭できた。今回は家の中でのプレイだったが、周りの状況に気をつければどこでもたっぷり「スカイリム」をプレイできるのが確認できた。

 例えば山の中とか、ロケーションを凝って「スカイリム」を楽しむと言うこともできるのも、携帯モードの大きな利点だと思う。今の時期ならば防寒具をしっかり着込んで雪山でプレイ、というのは、とてつもない臨場感が味わえそうである。虫除けをきちんと完備した上で、森の中でプレイするのもありかもしれない。携帯モードは「いつでもスカイリムに行ける」という筆者のようなファンにとってとても魅力的な要素だ。

amiiboに対応、リンクの装備などが入手できる

 そして、Nintendo Switch版「スカイリム」はこれまで発売された追加コンテンツ3つを全て同梱している。第1弾である「ドーンガード」では吸血鬼との戦いがピックアップされる。第2弾である「ハースファイア」では、家のサイズから選べることができる“自宅”の建造を可能にする。第3弾の「ドラゴンボーン」では新マップの冒険まで拡張される。これら全てが最初から同梱されているところも本作の魅力だろう。

 3つの追加コンテンツに関しての感触はThe Elder Scrolls V: Skyrim Legendary Edition」のレビュー「で触れている。「ドーンガード」では吸血鬼と戦うだけでなく吸血鬼になるという選択も可能だ。「ハースファイア」は土地を買い基礎から家を建てることができる。地下室や塔まで建てられるかなりスケールの大きな「自分の家」が建てられるが、家具や扉を作るのに釘や蝶番まで自作していくという細かさも楽しい。まさにハンドメイド感覚である。

 「ドラゴンボーン」はソルスセイムという新たな島での冒険が楽しめる。ボリュームもたっぷりあり、様々な要素が拡張される。ドラゴンに乗れるようになる要素も魅力的だ。Nintendo Switch版ではこれらはすでに実装された状態なので、他のクエストと同じように始めることができる。

【スクリーンショット】
多彩なプレイスタイルが楽しめるのが「スカイリム」のウリ。Nintendo Switch版はさらに楽しさが広がっている

やっぱり「スカイリム」は楽しい! プレーヤーごとに異なる冒険譚

 「スカイリム」の物語の大きな幹となるのがドラゴンボーンの物語である。ドラゴンボーンとは、この世界での伝説の存在であり、ドラゴンの力を吸収し特殊な力を持つ存在のことを指す。ドラゴンボーンというのは追加コンテンツと同じ名前だが「スカイリム」においてドラゴンボーンは、主人公の“運命”そのもののであり、メインストーリーの大きなテーマである。

 主人公はこの特殊な才能に目覚める。ドラゴンを倒すことでその力を吸収し、そして「シャウト」というドラゴン語を使った魔法を習得できるようになる。このドラゴンボーンのクエストはドラゴンとこの地に住む人々の全面的な戦いに繋がっていく。

 主人公は各村々を巡りながら襲撃してくるドラゴンを撃退することになる。弓や剣、盾、魔法など様々な能力を駆使してドラゴンと戦う。ドラゴンは空を飛び、強力なブレスや噛み付きなどを使って主人公を苦しめる。ドラゴンとの迫力溢れるバトルは本作の大きな魅力だ。

広大なマップに次々と描き込まれるロケーション。終わりない冒険を満喫できる
ドラゴンとの戦いは、本作の盛り上がる部分だ。空を飛び強力な攻撃をしてくるドラゴンとどう戦うか

 それ以外にも様々なクエストが用意されている。前述の吟遊詩人を目指すクエストでは、詩歌に詳しいだけでなく、歴史に対しても深い造詣を持つ吟遊詩人達が、最後の最後は言葉巧みにもっともらしい弁舌で、王様を自分達に都合良い方向に丸め込んだりする。語り継がれた吟遊詩人の歌が必ずしも真実ではないという、実際の彼らの詩歌を物語る楽しいクエストだ。

 魔法とは何か、古代文明とは何かを追い求めるウィンターホールドのクエスト、吸血鬼ハンター達の戦いを描くクエストなど大型のクエストは他にもいくつもある。反乱軍であるストームクロークか帝国軍の兵士として戦いに介入することもできる。もちろん大きなクエストだけでなく、町の住人の声に細かく声を傾け、小さなクエストを進めていくのも楽しい。そういった大小の物語を重ねていくことで、ただの旅人であった主人公が、世界の運命へ深く関わる英雄に成長するのだ。

 もちろん世界の命運を脇に押しやり自分のスキルを極めるのも、金策に走るのも良い。ある程度資金とスキルがたまればこの世界は大もうけのチャンスがある。世界を巡り、効率の良いアイテムを作成しながらスキルを上げる。儲かる生産品を見つければかなりの金稼ぎができる。筆者はもう少し冒険を広げたら鉱山で素材を集める事に加え、インゴットを買いあさり鍛冶を上げていきたいと思っている。上質な装備とスキルで防御力を高め、敵の攻撃を受け止められる戦士を作るつもりだ。

冒険を助けてくれる回復薬。小麦と山の花という容易に入手できる素材で作れるのがいい

 「スカイリム」は好きなように冒険を楽しめるゲームである。他機種版でプレイしてどっぷり世界に浸った人も、この機会に新しいスタートをしてはいかがだろうか? 筆者の場合は「エルダー・スクロールズ・オンライン 日本語版」もプレイしていたので、ネコ人間のカジートが故郷の話をしたときに「あああそこか」と頭に浮かんだり、他の地方や歴史に対して本作以上の情報が補完され、より世界を楽しむことができている。もちろん忘れていることや、これまでやってなかったクエストもある。かなり新鮮な想いで冒険を楽しんでいる。

 何度も言うが、やはり「スカイリム」は面白い。間口の広いファンタジー風の冒険がベースにあり、自由度の高いシステムと、独自の世界観、ドラゴンボーンとしての英雄譚など、本作の魅力はとても大きい。その魅力は今でも古びていない。特に今まで「スカイリム」に触れていない人は、この機会に冒険に旅立って欲しい。

【スクリーンショット】
様々な冒険が待ち受けている。何度挑戦しても楽しい