2017年12月15日 17:49
「The Elder Scrolls V: Skyrim」(以下「スカイリム」)は、筆者にとって最高に魅力的なオープンワールドのファンタジーRPGだ。いわゆる西洋ファンタジーの雰囲気を前面に出した独自の世界観を構築しながらも、主人公自身はドラゴンの力を使える「ドラゴンボーン」という選ばれし者であるなど、日本のファンタジーRPGのような派手な設定と物語性が盛り込まれているところも気に入っている。
そんな「スカイリム」がPSVRのコンテンツ「The Elder Scrolls V: Skyrim VR」(以下「スカイリムVR」)となって帰ってくるという。当初聞いた時はドラゴンとのバトルだけなど、一部のコンテンツを軽くVRで遊べるお試し版みたいなものかと思っていたが、なんとフルバージョンが遊べる状態でリリースとなる。これはTESシリーズ好きとしては試してみずにはいられない。筆者にとってPS VR初挑戦のコンテンツとなった。
なお、筆者は個人的にVRコンテンツをいくつも見てきた。より臨場感のある体験型VRである「VR ZONE SHINJUKU」にも行って多くのアトラクションを遊んだ事もあるし、こちらから一切操作は行なえず、ただ流れてくる3次元映像を楽しむだけのスマートフォンを使ったVRコンテンツも見てきた。また、より能動的に操作して遊べる、Samsungの「GearVR」も購入して体験済みだ。今回はPS VRとこれらの比較という観点も入れてチェックしてみたい。
視界全てがタムリエル。夢に見たあこがれの冒険がここに
今回、初のPS VR体験となったが、まず驚かされたのは世界への没入感だ。PS VRではヘッドセットの他にイヤフォンも装着してプレイできるが、イヤフォンのボリュームがデフォルトだとかなり高めだったこともあり、プレイ中は外部の音が遮断されるため、かなりの没入感となっていた。
「スカイリム」のオープニングでは、主人公は手かせを嵌められ、馬車に乗せられて護送中の状態から開始する。囚われの身のため、こちらからは何も行動できず、周囲の人の会話を聞いたり、馬車の向かう先を眺めたり、周囲を見渡す事しかできない状態だ。
この冒頭のシーンからものすごい没入感なのだ。周囲を見渡せばそこには地続きの異なる景色が広がっている。これまでの「スカイリム」でもコントローラ操作で周りを見渡すことができたが、VRの場合、特にコントローラなどで能動的に操作をしなくても顔を動かすだけでこうした景色が見渡せるのである。
この時の周囲の人の会話の演出も臨場感を高めてくれる。主人公の向く方向によって声の聞こえ方が異なるようになっており、話してる相手に向き合うとはっきりと会話の内容が聞こえ、別の方向を向いていると少し聞こえにくい感じになっていた。
こうした細かい演出で没入感を高めている点には感心させられた。勿論全ての会話は日本語になっているので、英語が苦手な人でもあまり気にせずに楽しめる。そしてストーリーの進行と共に主人公を自身の手で操作し、ドラゴンの襲撃をかわしつつ、逃げ回ったり歩き回ったりするようになっていく。
こうしてみると、「スカイリムVR」はPS VRのコンテンツとして非常にベストマッチなコンテンツであるように感じた。というのもオープニングのシーンはただ周囲の背景を見渡せるだけという、ここだけならどんなVR機器でも利用できるVR動画と変わらない状態だ。それが段階を経て、自身で操作してゲームとして遊べるようになっていく展開は、まさにVRの進化の過程を身をもって感じられるような感触だった。
個人的に楽しかったのは、自然の景色を色々眺める事だ。正直最初のうちはゲームの進行を忘れて、周囲の景色を見て回る自然探訪をしまくってしまったほどだ。タムリエル世界の自然を満喫するのはやはりTESシリーズ好きには非常に楽しい。特に夜空に2つの月が同時に出現するビジュアルは幻想的で現実を忘れて、タムリエルの世界観に浸りきることができた。
初めての戦闘にもかなりドキドキさせられた。何しろ敵との距離が近い。特に近接武器を持った敵は本当に手を伸ばせば届きそうなほど間近にやってくるので、その臨場感は尋常ではない。また相手が人間の場合ならまだしも、自分と同じくらいのサイズの蜘蛛やら自分より巨大なドラゴンを相手にした時はもう無我夢中で武器を振り回して戦っていた。こんなに緊張感のある戦闘は最近では体験していなかった。初めてゲームに触れたときや、ハードの進化で表現が変わったときの体験を思い出させた。
そして個人的に気分がよかったイベントは「ドラゴンシャウト」取得時の演出だ。序盤で洞窟に潜り、その終点で主人公は壁に刻まれたシャウトを習得することになるのだが、そこでの自身の身体に吸い込まれていくようなな演出は視点の近さも相まって気分が高まりまくった。
さて、VRと言えば気になるのが、VR機器特有の「VR酔い」だが、残念ながら本作でもVR酔いは起こる。しかし、酔いの感覚は割と緩やかにくる感じなので、VR酔いに弱めの筆者の場合は、15分くらいを目安に自身の状態を確認しつつ、ちょっと怪しい感じになってきたら早めにヘッドセットを外すようにプレイしてきた。
本作ではメニューを開くとゲームが一時停止の状態になるので、その状態にしてからヘッドセットを外せばゲームの進行には支障がない。また、15分前後くらいの状態でヘッドセットを外してちょっと休み、再開するのを繰り返していたら、VR酔いがほとんど起こらずに続けてプレイできた。VR酔いに弱い人はこの辺りを目安にプレイするのをお勧めしたい。
直感的にプレイできる「PS Move」、特に近接戦闘が楽しい!
それでは次により踏み込んだ形で、「スカイリムVR」の操作性に触れていこう。本作は通常のコントローラの他にスティック型のコントローラ「PS Move」にも対応している。今回はどちらもプレイしてみた。
まずはコントローラでの操作だが、こちらは従来のスカイリムと遜色なく操作できるので、以前本作をプレイしていたユーザーなら何の違和感もなく操作できるはずだ。もちろんVRなので視点がTPSではなくFPSに近くなるため、それによる感覚の違いは多少あるが、それさえ気にならなくなれば全く違和感なくプレイできる。
なお、PS VRの場合、視点変更は自身の顔を振ることで多少の調整は行なえるが、より大きく向きを変える場合にはコントローラを使用する事になる。この際の回転の設定については、操作時にゆっくり回転させる「スムーズ」と1回の操作で大きく視点を変える「スナップ」設定の2種類がある。デフォルト設定でプレイしていてプレイに違和感があったり、VR酔いが気になる場合、この辺りの設定を調整することで、改善する場合があるのでチェックしておくといいだろう。スナップはVR酔い対策向けの設定だが、個人的にはスムーズの設定で問題はなかった。
そしてPS Moveを利用する場合、事前にPS4にPS Moveをコントローラとして認識させておく必要がある。またゲームを開始してしまうとあとから変更はできないようになっており、これの変更についてはゲーム起動時のVR設定からPS Moveを使うように変更してから開始する。
PS Moveを操作した時の臨場感は一言で言えば“ハンパない”。戦闘時におけるPS Moveの利用はPS VRとの相乗効果も相まって没入感がかなり高まる。ビジュアルも含めて1度は試しておきたいのはやはり魔法だろう。PS Moveを敵に向けてトリガーを引くだけで手のひらから魔法が放射される。初期の段階でも雷撃と火炎の魔法は使えると思うので、これは是非試してみてほしい。PS Moveの振動もあり、画面上の見え方とは異なるが、まさに“魔法の杖”を使っている感覚が楽しめる。
一風変わった操作という意味では弓矢も面白い。左手に持ったPS Moveを縦に構えて右手のPS Moveのトリガーを引きながら後ろに引っ張ることで矢を引き、トリガーを離す事で矢を放つ。若干通常の弓矢を撃つアクションとは異なるが、弓矢を撃ってる雰囲気は満点だ。
片手武器と両手武器については基本的な操作は同様で、右手のPS Moveを振るだけで敵に攻撃できる。トリガーを引きながら振る事でスタミナを消費する強攻撃も可能だ。振り幅は少なくても斬るアクションになるので、腕を大きく振りすぎて疲れるといったことはなく、手首のみのスナップで敵をバサバサと斬れる感触はむしろコントローラで敵を斬るよりもスムーズに攻撃できて、心地よかった。逆に街中などでもちょっとした手の揺れで武器を振りまわしてしまうため、街に入った際には、左手のPS Moveの△ボタンを押すことで武器をしまって移動した方が余計なトラブルに巻き込まれずに済むだろう。
移動については左手のPS Moveの中央のボタンを使う。設定はデフォルトが「ワープモード」(メニュー上は“転移”と表示)となっており、これを使うと中央のボタンを押すだけで一定距離を飛ぶ感じで移動する。ボタンを離さずに押したままにすると、画面上には移動先を示す水流のような物が表示されるため、ある程度行きたいところを指定して離すことで簡単に移動できるようになっている。
ワープモードはそれ単体で見ると動きがやや不自然になってしまう面もあるが、このモードの真価は重量オーバー時に発揮される。通常、スカイリムではキャラクターの体力によって持てるアイテムの量に制限があり、制限をオーバーするとファストトラベルが使用できなくなるほか、移動速度が大幅に低下してしまう。ところがワープモードでボタンを連打して移動すると、重量オーバー時の通常の歩行と比べても格段に快適に歩ける。いつも重量オーバーで苦しんでいた筆者にとってこれはかなり気持ちがよくて気に入ってしまった。
ただしワープモードにも大きな弱点がある。それは一定以上の高さからの飛び降りができないことだ。普通にスカイリムをプレイしている時は多少ダメージを負うくらい高い崖やちょっとした段差については、気にせず飛び降りてショートカットしてきたが、ワープモードではちょっとの段差ですら移動できない場合があり、そのような場合は移動できる場所を探して移動する必要がある。特に山を下るような場合は道なりに歩かなければならなくなるため、これがちょっとしたストレスになるのだ。
もちろん、移動モードは設定で「直接移動」もあり、こちらを選ぶと同様にボタンを押し続けることで向いた方向にまっすぐ歩くことができる。行きたい方向にPS Moveを向けながら、Moveボタンを押せば移動できるので、左のPS Moveを後ろに向けながら動き続ければ後ずさりながら戦える。もう少し慣れればこういった戦い方も可能だろう。慣れなかった筆者は敵から離れたい時、1度後方を振り向いて、それからひたすら走って逃げて振り返って戦うというやり方をしてしまった。もっと習熟したいところだ。
「スカイリムVR」はPS VRの多くのタイトルがそうであるように椅子に座ってのプレイが前提になる。キャラクターの動きに関しては頭を動かすことで向きを変えられるのだが、PS Moveでは右のコントローラの○ボタンと×ボタンを使っての左右旋回が可能だ。このボタンはとても便利で、ポイント移動と組み合わせかなりスムーズに移動できる。視界外から敵に襲われても体を大きく動かさず、この旋回ボタンで向き合えるので便利だ。
個人的に「スカイリムVR」のPS Moveを使っている際にゲームを円滑に進めるのにベストの装備は近接武器だ。筆者は現在両手斧や両手剣などの両手武器を愛用して戦闘に挑んでいる。従来は割と魔法や弓矢などの飛び道具が好みで、離れたところから敵に一方的に攻撃するのを楽しんでいたのだが、本作ではPS Moveでの近接武器の攻撃が実にスムーズで、前述のとおり、コントローラで操作するよりも敵への攻撃がスピーディーに行なえたのが選択の決め手となった。また敵の懐に飛び込む場合も、ワープモードだとかなりスムーズに入り込めるため、近接戦闘が非常に楽しく感じられた。
魔法は当たると気持ちいいのだが、マジカ消費が予想以上に早く、割とあっという間に枯渇してしまう上に回復にも時間がかかる。この辺りはレベルを上げることでマジカ総量も増えるほか、スキルでマジカ回復の時間を短くすることもできるので、将来的には気にならなくなるかもしれないが、序盤だとちょっと厳しい印象を受けた。また弓矢については矢をつがえても特にマーカーが出るわけでもないため、当てにくく、また当てたかどうかの判断も難しく、ちょっと試して使うのをやめてしまった。こちらもスキルやレベルでフォローできそうだが、序盤から使うのはちょっと厳しい。
なお、PS Move利用の際に注意が必要なのはその他の操作体系だ。ほとんどの操作についてはメニュー上でボタンの指示が表示されるので迷う事は少ないと思うが、筆者はメニューを選び方が最初わからなかった。メニューはトリガーを引いてPS Moveを動かして選択する。これは本作に限らずPS Moveを使ったゲームでの一般的な操作だ。ここもまた、「今回PS VR初体験」というところで苦戦してしまった部分だ。
この他に本作ならではの操作法としては、左手のPS Moveの□ボタンがシステムメニューで、△ボタンがメインメニュー、右のPS Moveの△ボタンを長押しすることでしゃがみ操作、再度押すと立つ動作、このくらいを抑えておけばPS Moveだけで「スカイリムVR」の世界を満喫できる。
そのほかのアイテム利用は事前にメニュー上で使いたいアイテムをお気に入りに登録しておき、左手のPS Moveの丸ボタンを押すことで呼び出して使う事が可能。また、ドラゴンシャウトについては、右手のPS Moveの□ボタンを押すことで利用できる。これについては利用可能になったタイミングで画面上に表示されるので、迷う事はないだろう。
きちんと対処されているVR酔い。PS VRのキラーコンテンツといえる魅力
以上、一通りPS VR版「スカイリムVR」を試してみた。今回、PSVRも初体験だったが、正直ほとんどVR酔いがなかったのは衝撃だった。これはPS VRの素性がよいのかと思っていたが、VRモードの設定メニューを見てみると「視野フィルタ」というものが追加されていた。確かにプレイ中、移動を開始すると周囲が黒くぼかされる表示になっているのには気が付いていたのだが、特に気にならなかったので特に設定をいじっていなかった。
そこでこの視野フィルタをオフにして再開してみたところ、ものの5分くらいであっという間に酔いが回ってきてしまったのだ。同じような感覚は以前、GearVRを使って「minecraft VR」を試した時にもあった。正直、これを遊ぶためにGearVRを導入したのはいいのだが、開始して5分くらいで違和感を覚え、15分くらい無理に連続プレイしたらその日はもう遊べなくなるくらい気持ち悪くなってしまっていたのだ。
つまり、PS VRについてもコンテンツによっては同じようなVR酔いが発生する可能性がある。しかし、「スカイリムVR」はこの視野フィルタがかなり効果的に働いているのが実感できた。こうしたVR酔いの対策もきちんとされており、長時間のプレイに耐えうる作りになっている点は非常に好感触だ。
また、北米版がリリースしてから日本版が出るまでの間に、PS Move利用時の動作が改善されるアップデートが公開されているなど、今後もこうした調整が頻繁に行なわれるようなので安心して遊べそうだ。
1つだけちょっと不満だったのが、ビジュアル面についてだ。VRで見るとテクスチャの粗さが気になる。景色についてはあまり違和感なく楽しめたが、キャラクターの顔などはFPS視点になったことで従来の「スカイリム」以上に粗く感じた。これはPS VRの表示能力もあると思う。ただし、PS4 Proの利用でもビジュアルや挙動の強化は行なわれるので、PS4 ProとPS VRを持っている人は、より美しい世界を冒険できるわけだ。できればこの世界も見てみたい。
本作は元々の「スカイリム」というベースがあるにせよ、PS Moveでの体験も合わせると、PS VRのキラーコンテンツとして成り立つレベルの完成度に感じた。個人的にはPS VRの最大の特徴である没入感の高さがフルに発揮できているように感じる。というのも未だに戦闘になると心拍数が上がる。何度も戦っているのにも関わらず、戦闘が開始すると毎回緊張感が非常に高まるのだ。
それはやはり本作の没入感の高さの影響が大きいのだろうと思う。普段戦うという行為をリアルで行なっていないからこそ、それに慣れてないことの表れであり、冒険を始めたばかりの初心者の感覚が未だに抜けない。
戦うには覚悟が必要だし、戦士の心構えが必要になるんだなと実感できる。こんな感覚はこれまでのゲームではまず味わう事ができなかった。筆者にとって、本作をプレイするためにPSVRを買っても惜しくない非常に魅力的なタイトルに仕上がっていると感じた。
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