2017年11月7日 07:00
「サドン ストライク 4」のPS4版がついに11月9日に発売となる。本作は2007年の「サドンストライク3」から10年を経ての“復活”となる。本作は“超上級者向け”という言葉がキャッチフレーズに使われている。が、その名の通り非常に硬派で、シビアなバランスを持ったRTSだ。
しかし、スゴイ腕を持ったストラテジーゲーマーのみのゲームかというと、そうではない。難易度設定もあり、イージーならば多くの人が挑戦できる。そして第2次大戦のヨーロッパ戦線における戦いの過酷さ、各軍が体験したであろう厳しい戦場の“雰囲気”を満喫できる、ロマン溢れる作品なのだ。
ゲームファンのみならず、ミリタリーファン、歴史ファン、ミリタリープラモファンなど濃いユーザーにはたまらないゲームだ。それがコンシューマ向けという間口の広い形式で、しかも日本語版として発売されたことを大いに祝いたい。昨今、ここまでミリタリーテイストを体感できるゲームは少ない。「PS4とこのゲームさえあれば数年遊べるからいいや」という勢いでのめり込む人もいると思う。その“本格派”ぶりを紹介したい。
「戦場はこんなに過酷なのか……」、実際の戦いの凄惨さが実感できる本格シミュレーション
「サドン ストライク 4」では、「ドイツ軍」、「ソ連軍」、「連合軍」の3つのキャンペーンが用意されている。ドイツの戦車部隊によるヨーロッパの蹂躙、ドイツが攻め込んだことで起きる独ソ戦、連合軍のオーバーロード作戦(ノルマンディー上陸戦)からの反撃によりドイツ軍が追い詰められていく様など、史実に沿った様々な戦場を体験できる。
本作のゲームプレイでは敵が待ち受けているマップを手持ちのユニットを率いて進軍し、激戦をくぐり抜けながら敵を排除していくことが基本となる。そのバランスは厳しく、ノーマルではかなりのプレイスキルを求められることになる。このきついバランスこそが本作の醍醐味なのだ。
歩兵で偵察を行なうことで視野を確保し、戦車の射程距離を最大限に活かしつつ、待ち受ける敵を撃破する。重戦車などの堅い敵ユニットは軽戦車の機動力を活かして装甲の弱い背面を狙うなど、頭を使えば難局を乗り切ることができる、RTSだからこその戦いを楽しめる。防御力は弱いが射程と破壊力が魅力の自走砲や迫撃砲を巧みな陣形で活かし、敵軍を粉砕したときなど、本当に爽快だ。
しかし、読み間違いや敵の待ち伏せに遭うと壊滅的な打撃を受けてしまう。特に補給車両や修理車両を破壊されてしまうとその時点で戦局が非常に厳しくなってしまうので、かなりの緊張感が強いられる。このためこまめなセーブは必須だ。なお、難易度をイージーに下げればユニットの耐久力が高まり、クリアはぐんとしやすくなる。正直に言えば筆者はイージーでキャンペーンを進めている。それでも緊張感は強く、何度もセーブしたところからやり直しをしている。
この難易度を痛感するのがドイツ軍2つ目のマップ「フランス侵攻」だ。このマップの終盤では、当時のドイツの戦車では打ち抜けない装甲を持つイギリスの戦車がやってきて、こちらを蹂躙するのだ。イギリスの戦車に戦車砲を当てても、正面からの攻撃では弾はその装甲によって次々とそらされてしまう。こちらの戦略次第では、いきなりゲームバランスを崩壊させるような敵ともいえる。もしオリジナルのゲームで、ゲームデザイナーがこんなルールとマップを作ったら「クソゲー」と大激怒間違いなしのバランスだが、当時のドイツ軍が抱いた“絶望”がとても伝わるシーンとなっている。
ではこのイギリスの戦車をどうするか? ドイツ軍は急遽増援により配備された88mmフラック砲で防衛陣地を作り、必死に食い止めるのだ。88mmフラック砲を動かすにはトラックの牽引が必要で、目的地で切り離す。彼らは攻撃には脆弱なので戦車で守らなくてはいけないし、さらなる視界を確保するためにはやられることを覚悟して歩兵を分散させるしかない。史実でドイツ軍はこの圧倒的に不利な戦いを見事征しフランスの首都パリへと進軍を果たす。ドイツの「電撃作戦」が、その言葉のイメージほど楽ではなかったことが痛感できる。
連合軍の反撃のきっかけになった「オーバーロード作戦」では、映画「プライベートライアン」でも描かれた過酷極まる“ノルマンディー上陸作戦”におけるオマハビーチの戦いを体験できる。圧倒的な防御火力が設置されている海岸で、歩兵達はろくに遮蔽物もない中、突進しなくてはならない。指示するプレーヤーは戦力を膨大に消費しながらも作戦を成功させなければいけない焦燥感に駆られる。
敵はバンバン長射程の迫撃砲を撃ってくるし、こちらはどう進軍して良いかもわからない。しかし、この砲撃をやめさせるにはもうとにかく前に進むしかない。フォーメーションも装甲車の守りも考えられず、とにかくユニットを選択して進撃させる。しかも上陸できたとしても、さらに内陸の視界の端ぎりぎりから攻撃が来て歩兵をなぎ倒してしまうのだ。一瞬も気が抜けない上に多方面で起こる戦いに注意を向けなくてはならない。
このように書き出すと「難しすぎるんじゃないか?」と感じさせてしまうが、繰り返すが、これが良いのだ。時にはセーブしたところからやり直さなくてはいけない。場合によっては最初からやり直すことにもなる。しかし、苦戦を経ることでうまいユニットの動かし方、敵の配置、うまいユニットの動かし方、味方のポテンシャルの活かし方……様々なものを学び、過酷な戦場をより有利に、犠牲を最小限に戦えるようになる。
経験を活かし、名指揮官として過酷な戦場を戦い抜ける爽快感をきちんと体験できるようになる。何度でも同じマップに挑戦し、うまく戦えるようになる、その楽しさを追い求めるゲームなのである。オフィシャルサイトではパッケージに封入されているものと同じマニュアルをダウンロードできるので、購入を検討している人はこちらを熟読するのも良いだろう。
司令官の能力を駆使し、ユニットを的確に配置して戦え!
ここからはゲームのシステムを紹介していきたい。各キャンペーンには7つのシナリオが用意されており、クリアしていくことで次に挑戦できる。シナリオをクリアすることで戦績によって“星”が与えられる。これは「ドクトリン」と呼ばれる司令官の特性を利用するポイントとなる。
各軍には「歩兵ドクトリン」、「機甲ドクトリン」、「支援ドクトリン」を担当する司令官が割り振られている。星を使うことで「歩兵がスモークグレネードを装備する」、「ダメージを軽減できるが動けなくなる土嚢シェルターを積み上げられる」といった能力を獲得できる。
シナリオはクリア後でも何度でもプレイできる。各司令官によって獲得できる能力が違うので、シナリオを把握していればより有利に戦える。また星の割り振りはリセットでき、シナリオをクリアするほど貯められる。イージーでクリアした後、その星をノーマルで使えるのでプレイするほど軍を強力にできる。初期にノーマルで断念したマップもイージーで星を貯めてからリベンジ、というプレイも可能だ。
各シナリオの設定はかなり特徴的だ。「凍った湖で戦闘」、「歩兵のみで敵陣地を偵察」「敵からの攻撃を耐え忍ぶ」など状況が極端なことも多い。その中で、歩兵、機甲ユニット、補給車両や修理車両を駆使して生き残りを目指す。本作には「生産」という要素はなく、初期戦力とシナリオの展開に合わせて追加されるユニットが頼りだ。時には敵から奪ったり、遺棄されている敵兵器を“鹵獲”する場合もある。
歩兵とわずかな戦車で進むソ連軍の「スターリングラード攻防戦」では、修理車を鹵獲しないとにっちもさっちもいかないという過酷な状況からスタートする。しかも補給車両がないので燃料切れを起こした場合は置いていくしかなくなる。後で補給車両を持った部隊と合流できるので、この時に戦線復帰させることも可能だ。様々な状況で臨機応変に戦う事が求められる。
ユニットはまとめて指示を出すことも、1体1体細かく指示することもできる。特に補給車や、修理車両、さらに自走砲などは脆弱なので進軍を指示する特に注意が必要だ。敵が待ち伏せしていると思われる場合は数体の歩兵ユニットを前に出して偵察させることも大事である。物見台や高い建物に歩兵を入れることで視界を確保することができる。強固な建物の場合は、敵の進軍を食い止めるのにも有効だ。歩兵は地雷を始末できるのも重要な能力だ。
各ユニットは様々なサブメニューを持っている。兵員輸送車は乗っている兵士を下ろすことも、長距離を素早く移動させるために乗車させることも可能だ。スピードは遅いが、戦車にも空席があれば歩兵を追加で乗せることができる。基本的に歩兵は敵を見つけると自動で反撃を行うが、司令官のもつスキルによっては、サブメニューからグレネードを投擲させることもできる。他にも、戦車や自走砲は地点を指定しての対地攻撃ができるし、迫撃砲は車両で牽引し移動させることができるなど、ユニットごとにサブメニューを通じて様々な行動を指示できる。これらを活用し有利に戦っていくのである。
シナリオによっては航空戦力を活用することもできる。地点を指定しての偵察、爆撃などが可能で、この時代、空からの攻撃がいかに脅威だったかがわかる。強固な戦車による防衛線も爆撃で崩壊するし、敵の目をあざむき、視野の届かない場所で待ち伏せていても偵察機によって布陣が細かくばれてしまう。逆に言えば、航空戦力を活用し相手を調べ上げ、側面から強襲するということも可能なのだ。
「サドン ストライク 4」は、戦車と航空機が戦場を一変させた第2次世界大戦の“戦い”を実感できる。戦車の進化は圧倒的な戦力差をもたらし、歩兵が塹壕を掘って牽制しても、うなりを立てて迫ってくる戦車には太刀打ちできない。そして航空機により偵察の概念が大きく変わり、爆撃後に進軍という戦いをより優位にする戦い方が確立された。この時代、戦争はどういったものになったのかが端的にわかるゲームデザインは、とても見事だ。
戦場や兵器、そして歴へのリアルな視点こそが本作の最大の魅力
第2次大戦でのヨーロッパ戦線は様々な映画や作品で描かれ、ゲーム化されており、なじみ深い人も多いだろう。「サドン ストライク 4」は膨大な知識と綿密な資料でこれらの戦いを忠実に描いている。戦史の知識が深い人ほど楽しめる作品であり、特にミリタリーファンは本作によって戦場の雰囲気や、各ユニットの活躍に思いを馳せることができるだろう。
モスクワの凍える大地、スターリングラードのガレキだらけの街、フランスのアラスの田園地帯……様々な地方が細かいグラフィックスで描き出され、その地方や時代ならではの風景を描き出している。
そういったリアルで濃密な風景が描かれたマップの中を、戦車や歩兵が進んでいくのだ。敵は塹壕にこもったり、時には戦車を遺棄していたり、様々な姿を見せる。「当時、兵器や兵士がどのように活躍したか」がしっかり伝わってくる。このゲームの描写にヒントを得て、戦車や歩兵が活躍するイラストや、プラモデルのジオラマを作る人も多いのではないだろうか。ゲームで描かれる地形や兵器が“史実”の重さを持っているからこそ、自分の中に持っている「兵器が活躍する風景」がよりリアルに、具体的になるだろう。
筆者は連合軍の2つ目のシナリオ「生け垣の戦い」でのM4A4シャーマンが好きだ。このマップではこの地方独特の生け垣が多数あり、戦車の進軍を防いでいた。連合軍はM4A4中戦車の前面に「ヘッジロウカッター」という生け垣を切り裂くカッターを装着させ、生け垣を破壊しながら進むことにしたのである。「生け垣の戦い」ではこの“現地改修”をきちんと再現している。生け垣を破壊しながら進むことで、待ち構えるドイツ軍の裏をかき強襲することができるのだ。
もう1つ、これはすごいなと思わせたのが「マーケットガーデン作戦」。敵の占領下にあるオランダを孤立させるために空挺部隊により橋を奪取するという奇襲作戦だが、焦りすぎたために部隊は孤立し、ドイツ軍に飲み込まれる。その“史実”を体験できるのだ。シナリオでは歩兵と軽戦車のみで進軍し、敵に位置を知られてしまったために建物に追い詰められ、膨大な戦車に囲まれたところでシナリオクリアとなる。
何とか抵抗を試み、ある程度防戦した上で部隊が全滅必至のところで終了となる。史実ではこの後部隊は降伏する。どうしてこんなことになってしまったのか、上層部の読みの甘さに腹が立つし、兵士達に心から同情してしまう。「戦争はきついな」ということを実感させられるシナリオだ。改めて何があったか、歴史を調べたくなってしまう。
「サドン ストライク 4」をプレイして感じるのは、他のゲーム以上に「戦場の過酷さ」が伝わってくるということだ。与えられたユニットでやりくりするというゲーム性もあるが、手探り状態で進む戦場、思い通りにならない地形と天候、圧倒的な破壊力の兵器、そういった戦争の不条理さ、恐ろしさが実感できる。
膨大な資料と知識で形作られた本作の戦場描写は、他の作品にはないリアルさを持ってプレーヤーの心を揺らすだろう。「戦争ってこんなにきついのか」ということを実感できる作品だ。圧倒的な兵器を持っていても、総合的な戦力差があっても、1兵士、1部隊の命が失われるのはあっという間だ。「戦争は怖い」ということを、“現場”で実感できる作品となっているのである。
日本の場合、こういったゲームを作るのは難しいんだろうなと感じる。ゲームに限らず日本では戦争をこのように俯瞰的に語れる映画や小説も少ないと感じている。敗戦国であるし、様々な配慮から、タブーとなっている部分もあると思う。ユーザーや市場と言うよりも、まず作れない、語れないという環境を感じる。しかし、「戦争はいけない」という言葉を様々な視点で実感するためには、こういったリアルな視点で、戦争を振り返るゲームが必要じゃないかと本作をプレイし、思ってしまった。そういう意味でも、「サドン ストライク 4」は素晴らしい。戦争とはどういうものか、かつて人々はどのように過酷で悲惨な戦いを繰り広げたかが、きちんと伝わってくる。
ただ、よりストレートに「ゲーム」として本作を評価する場合は、もっと練り込める、踏み込めるところがあると思う。本作は基本的に敵がこちらを待ち構えている。もちろん進軍してくる敵に対し戦線を死守する防衛戦も数多くあるが、敵が進軍してくるタイミングはシナリオの小目標ごとに切り分けられ、ある程度決まっている。そして「ユニットを延命させる」というところで難易度を調整しており、ノーマルで厳しく、イージーではこちらの耐久力が上がっているからクリアしやすくなっている。バランスとしてとてもわかりやすい、言ってみればとてもレガシーなところで止まってしまっている。
昨今はAI議論も盛んであり、「生きている(ように感じさせる)敵」を作る方法を多くの開発者が模索している。作り方によれば敵の進軍ルートや、こちらに合わせての敵の“動き”でもっと躍動感のある、“生きている”戦場描写が可能なはずである。戦いは片方が待ち構えている罠に飛び込むだけでなく、両軍が動的に動くことで生まれる“うねり”が戦場にリアルをもたらす。そういう意味で、本作はリアルな「敵との駆け引き」という視点からみると物足りない部分もある。ゲームデザインそのものの話ではあるが、「最新のストラテジーゲーム」という意味では、もっと練り込める、チャレンジできるところがあったと思う。
しかし、この本作にみなぎる職人気質、歴史への深い造詣、FPSやアクションでは描けない戦場の視点、過酷さと、勝利への興奮は、やはり素晴らしい。なにより、こういうゲームを世に生み出す開発者達の情熱は応援していきたい。そしてもう1度、このゲームが日本語で、PS4で遊べるということに感謝したい。
なお、本作は英語のみであるがPC版もSteamで販売されている。刻々と変わる状況に対応するには英語力が必要だが、キーボードとマウスでプレイしたいという人は選択肢としてアリだろう。ちなみに、PC版ではアナウンスがあった「ダンケルクの戦い」を体験できるDLCだが、PS4版でのアナウンスも期待したいところだ。
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