2017年11月9日 12:00
「コール オブ デューティ ワールドウォーII(以下「CoD: WWII」)」は毎年発売される「CoD」シリーズの最新作だ。米国での人気はもちろんだが、日本でも“ゲーム実況文化”を代表するタイトルとして大きく人気となった。本作を心待ちにしていたシューターも多いだろう。
今回の「CoD: WWII」はその名の通り第2次世界大戦がテーマとなる。「CoD」は初期作品が第2次世界大戦を扱っており、その後「コール オブ デューティ4 モダン・ウォーフェア」から近未来を扱う作品が多かった。今回の「CoD: WWII」は10年ぶりの第2次世界大戦ものであり、「原点回帰」と呼べるものである。
当時の過酷な戦い、人と人が血みどろで争う凄惨な戦闘風景を描き出す本作は、特に「キャンペーン」でその戦争の“意味”を考えさせる深いテーマ性を実現させている。そしてコミュニティに力を入れた「マルチプレーヤー」も魅力的だ。この2つに加えてユニークな「ナチゾンビ」と、ボリュームたっぷりな作品になっている。本シリーズのファンのみならず、これまで「CoD」を触ってこなかった人は、そのクオリティの高さに驚かされるだろう。
今回のレビューではこの3つのモードの魅力を語っていきたい。本作はさらにやりこむことで大きな魅力を発揮する作品である。ぜひ、「CoD: WWII」の魅力溢れる世界に飛び込んで欲しい。なお、「CoD: WWII」はXbox One、Windows版も発売されている。本稿ではPS4版を取り上げたい。
過酷な戦場で描かれる男達の熱いドラマ。何故人は殺し合わなければならないのか
「CoD: WWII」の最大の魅力はキャンペーンであると言える。主人公はテキサス生まれの青年ダニエルズ。彼は戦友達と共に過酷な戦いを戦い抜いていく。ノルマンディー上陸作戦からパリの奪還、ドイツへの進軍と戦いは続いていく。
映画「プライベートライアン」以降の、凄絶なオハマビーチの描写は今作でも健在だ。ほとんど何も遮るものがない海岸で、当たれば一撃で絶命してしまう機関銃弾、体を引き裂かれてしまう砲弾の中に飛び込み、敵陣にたどり着かなくてはならない。耳をふさぎ、身をかがめて「もう嫌だ」とうずくまりたくなる戦場の恐怖を見事に再現している。
その後も激しい戦いをダニエルズはくぐり抜けていく。戦場では“敵も人間”などと言っていられない。出会ったら殺さなければこちらが殺されるのだ。時には至近距離で出会ってしまい、お互い武器を手放したまま、つかみ合い、もみ合う場面もある。掴んだヘルメットを相手の顔面に叩きつけ、相手が動かなくなるまで振り下ろさなければ助からない。人間同士がなぜここまで残酷に殺し合わなくてはならないのか、戦争とは何なのか、プレーヤーは戦場の“狂気”を体験し、戦争について思いを巡らすこととなる。
戦場での「人間ドラマ」も注目だ。お調子者の親友ザスマンなど同期の仲間は軽口をたたき合う気の良い奴らだ。部下の命を第一と考えるリーダーのターナー中尉と、彼と対立し、時には自分や部下の命まで差しだそうとするような強引に作戦を進めようとするピアソン軍曹。2人の考えの違う上官を持つダニエルズ達は不安を募らせていく……。戦場で何を信じるか、どう行動すれば良いのか、激しい戦いの中プレーヤーは多くの“迷い”に直面していく。
戦場は刻々状況が変わる。その中を時には英雄的に、時には泥臭く戦っていく。敵兵が殺到してくる恐怖や、戦車の頼もしさ、火炎放射器の恐ろしさなど、1人の歩兵としてみる戦場を本作は非常にうまく表現している。仲間達は戦場できちんと個性が感じられる描写があり、戦いを重ねることで思い入れが生まれてくる。ゲーム的には彼らが近くにいると、救急キットや弾丸を補給できたり、一定時間敵がわかる様にしてくれたりと、仲間と連携することでより有利に戦えるようになる。
キャンペーンの1番の魅力はやはり“リアリティ”だ。当時の兵士達が見ていた風景、立っていた戦場、使っていた兵器や道具……それらの描写には開発者達が力を込めて収集し、その時代を学び、理解した圧倒的な迫力がある。兵士達がどのように武器を運搬していたのか、どのように行軍していたのか、そういったディテールがしっかりと伝わってくる。自分が戦場にいて、その風景を見ているかのような気持ちにさせてくれる。
ゲームとしての“楽しさ”も大きい。本作はこれまでのシリーズのように他のキャラクターとしてプレイする場面も用意されている。戦車や戦闘機での戦うシーンだけでなく、パリ奪還を目指す女レジスタンスとしてナチスが接収している建物に侵入するシチュエーションまであるのだ。スパイ気分を満喫できる要素まで盛り込まれているのは本当に楽しい。
「CoD」シリーズはマルチプレイこそ本編で、キャンペーンはゲームの一部だ、という見方もある。本作のキャンペーンは内容は充実しているものの、もちろんやりこむことでこの楽しさは膨らむが、一回のクリアまでなら7~8時間でクリアできるボリュームである。しかし、その内容が良いのだ。戦争とは何か、かつて軍人として戦場を巡った兵士達はどんな地獄を見たのか……。
「戦争はいけない」と口に出すことは簡単だ。しかし一旦戦争が始まれば、こういった体験をする兵士達がいる、という事実は、重い。戦争について考えさせられる、「戦争文学」という側面も「CoD: WWII」のキャンペーンは持っていると思う。ぜひプレイして貰いたい。
これぞマルチプレイ! オーソドックスで充実したゲームモード
「CoD: WWII」のマルチプレイに関しては先行βテストでも触れているが、今作は「スタンダード」というところは1つのキーワードだろう。「コール オブ デューティ アドバンスド・ウォーフェア」などの近未来装備による特殊能力はなく、第2次大戦の兵器で戦っていける。
βテストでも感じていたことだが、「みんなうまいなあ」というのが正直なところだ。筆者がオンラインFPSをプレイし慣れていないというのはあるが、いつも成績は下の方で、ちょっと凹む。本作の対戦はカジュアルであり、あいた時間などにちょこちょことやれる手軽さがある所も大きな魅力だと思う。人気の高いモードならば、すぐに対戦が始まるところもうれしい。
筆者のお気に入りは陣地を奪いあう「ドミネーション」で、これだと撃ち合いだけでなく、陣地を取る方でも活躍が可能なため、筆者でも活躍できる。少しはマップがわかってきただけあって動き方もちょっとだけましになったと思う。
正式サービスになってきちんと体験できた要素と言えば、ロビーである「司令部」だろう。ここではプレーヤーキャラクターとしてMMO空間となっているロビーを歩き回れる。昨今の流行のオンライン機能であり、デイリーミッションを受けたり、報酬を貰ったり、購入できる。
他のゲームでもそうだが、オンラインでのロビー機能というのは特に米国では流行のようだ。「NBA 2K17」もオンラインコミュニティ機能がメインになっていたし、ファン同士を繋ぎ、より強固な繋がりを作るという方針が見えている。MMORPGのように「積極的にゲームをしなくても顔だけ出す」というようなプレーヤーも出てくるかもしれない。
そうなるとボイスチャットもしたくなるが、例えばプレイステーションネットワークのパーティチャットだと、最大で8人までしかできないのはネックになりそうである。オンライン機能は今後ソフト、ハード両面で強化されていきそうだ。「CoD: WWII」はパーティを組んでマルチプレイの各モードに参加できるなど機能も充実している。このロビーがさらなる交流を生み出すかは注目したいところだ。
「CoD: WWII」のマルチプレイではやはり「WAR」モードが面白い。正式サービスでは高射砲を巡る戦いに加え、ノルマンディーの戦い、戦車での戦いが加わっていた。ノルマンディーは枢軸側が圧倒的に有利なビーチの攻防からスタートになる。これがもう、ホント連合国側がきつい。2回挑戦したのだが、両方とも守りやすく、攻めにくいのを痛感した。
戦車での戦いは攻撃側は戦車が進軍するのを後押しし、防御側はそれを阻止する形になる。面白かったのが攻撃側の3ラウンド目で、攻撃側である枢軸軍の戦車の燃料がなくなってしまい進軍ができなくなるというシチュエーション。そこで敵から燃料を奪い給油するというのだ。ドイツの追い詰められた窮乏を描くかのような戦いである。
ここでは敵の補給品から燃料をかっぱらうという「キャプチャーザフラッグ」の様なルールとなる。「WAR」モードは数ラウンドを攻守交代してプレイするので結構プレイ時間が長めだが、「CoD: WWII」ならではの特に楽しいモードである。
大量のゾンビを撃退しナチスの謎を解き明かせ! 「ナチゾンビ」
そしてもう1つの目玉が「ナチゾンビ」である。こちらもオンラインマルチプレイを活かした協力プレイが楽しめるモードだ。襲いかかってくるゾンビを相手にしながらフィールドの謎を解いていくことでゲームを進めていくこととなる。専用のプロフィールやパワーアップ項目もあり、こちらもやり応えたっぷりだ。
ゾンビはウェーブで襲いかかってくる。後半になると耐久力が高く、攻撃力もかなり強いゾンビも出てくる。こちらは最大4人の協力プレイとなる。ゾンビを倒すとゲーム内通貨である「ジョルト」が入手できる。これを消費することでマップを開放したり、武器を購入したり、能力をパワーアップできる。武器はマップ上のケースに収められており、ジョルトを使うことで入手できる。どこに何があるかの把握も大事だ。
マップには様々な装置があり電力を回復させることで作動できる。スイッチを作動させていくことで地下の研究所が明らかになり、このゾンビ共を生み出しているナチスの邪悪な研究が徐々に解明されていくのだ。
序盤こそゾンビの足が遅いものの、素早く、そしてこちらを取り囲もうとしてくる。プレーヤーの協力が必須となるモードなのだが、ゲームに慣れているのかガンガン進んでいく人が多いのはちょっと困惑してしまう。うまいプレーヤーは機敏に動き回りゾンビを固めて殲滅するのだが、筆者のようになれていないプレーヤーはついて行ったはいいものの、ものすごいゾンビに取り囲まれ足を引っ張ってしまう状況も多かった。
このモードではいかに装備を充実させ、仕掛けを作動し、進めていくかが鍵となる。じっくりとプレイし仕掛けを学び、有効なパワーアップを考えるといった“攻略”がかなり求められると感じた。こういった要素は数をこなさなくてはわからない部分ではある。ユーザー達の攻略も盛んになりそうだ。
「CoD: WWII」は、ありきたりではあるが「さすが『CoD』だ」という感想が第一に来た。楽しめるマルチプレイ、ユニークなナチゾンビ、そして強いテーマ性を持ったキャンペーンと、まさにAAAタイトルにふさわしい遊びごたえだ。正直ネガティブ的な感想は、「マルチプレイのレベルが高くて、殺されまくって凹む」というくらいではないだろうか。オーソドックスで迫力たっぷりのマルチプレイは初心者もぜひ飛び込んできて欲しいと思うし、人気を博すと思う。
筆者のお気に入りはやはりキャンペーンだ。ボリュームが少し足りないといういい方はできると思うが、密度があるし、なにより「戦う事の不条理」を痛感させられる。こんな戦場に立ちたくないし、そういう戦いが起きてしまうことに不条理を感じる。今も世界では戦争が絶えないが、本作の戦場描写は、「戦争への甘いロマン」を否定する部分がある。「戦争を起こさないために、我々は何ができるか」を戦争描写で感じさせるのは、ゲームは立派に戦争文学たり得る、ということを示した作品だと思う。
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