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PS3「DUST 514」オープンβインプレッション

世界初のMMO連動型FPSがついに本格始動。その手触りと将来への期待

1月22日より オープンβテスト実施

利用料金:無料

ビジネスモデル:アイテム課金制

PlayStation Storeの「新着ゲーム」から、もしくはタイトル名を直接検索してアクセス
「DUST 514」のプレイ画面

 アイスランドのCCP Gamesは、プレイ料金無料のプレイステーション3用SF-FPS「DUST 514」のオープンβテストを1月22日に開始した。ゲームコンテンツはPlayStation Storeにて無料でダウンロードできる。本作についてはたびたびご紹介してきたが(関連記事)、誰でもプレイできるようになったこの機会に、改めてインプレッションをお届けしよう。

 本作「DUST 514」は、PC用SF-MMORPGである「EVE ONLINE」との連動要素が目玉となる作品だ。数千の星系からなる巨大な銀河系を舞台とする「EVE ONLINE」では、全世界のプレーヤーたちが宇宙船の艦長を演じ、たったひとつのサーバー、たったひとつの宇宙に参加して、プレーヤードリブンの世界を作り出している。その一方で、「DUST 514」でのプレーヤーたちは惑星表面における近接戦闘のスペシャリストとなり、宇宙船の艦長たちが作り出すのと同じEVE宇宙に参加していくというコンセプトだ。

 「EVE ONLINE」はサービス開始から10年目に突入する長寿のオンラインゲームではあるが、最大の特徴は広大な宇宙の隅々までプレーヤードリブンの世界が成立していることだ。プレーヤーが作るコーポレーション(他のゲームではクランやギルドに相当)やその連合体であるアライアンスが軍事、外交、経済を巡る熾烈な争いを展開し、その影響は末端の一般プレーヤーにまで及ぶ。

 「DUST 514」は、そんなEVE宇宙にもう1段階のプレーヤードリブン・メカニクスを追加するコンテンツだ。EVE宇宙での勢力争いは星系単位の支配権を巡る艦隊戦で争われるが、そこに新たなディティールとして各惑星の支配権を巡る地上戦が加えられる。だから、「DUST 514」に参加する各プレーヤーは「EVE ONLINE」の参加者でもあるのだ。

 そういった背景もあり、本作はFPSでありながら、そこらのRPG顔負けの複雑なゲームシステムを内包している。「EVE ONLINE」ゆずりの巨大なスキルシステム、奥深い装備の選択と構成、マーケット、コミュニティ、その他戦場でのアクションに影響するさまざまな要素が、他では見られないものになっているのだ。

 ユニークで巨大な世界観を背景とするゲームであるだけに、システム全体の把握は大変だ。それだけ長く遊べそうな手ごたえもあるが、FPSとしてはとりあえず手軽に遊んでみて好印象を得られるかどうかも大事なポイントである。引き続き、基本的なゲームプレイ要素についてのインプレッションをご紹介していこう。

ポテンシャルたっぷりの戦場表現と、荒削りなアクション要素

「バトルファインダー」から各バトルにアクセス
「アンブッシュ」。両軍入り乱れてシンプルに銃撃戦だ
「スカーミッシュ」。各陣地を巡ってチーム戦が展開
各種の施設や乗り物の活用もバトルの基本

 「EVE ONLINE」との密な連携をウリとする本作だが、今回のオープンβ開始時点では、ほぼ単体のFPS作品として動作するようになっている。現在可能なのは「EVE ONLINE」側のプレーヤーとチャットやメールをやり取りしたり、EVE側のコーポレーションに参加することのみで、相互の金銭のやり取りや、「EVE」側からの戦場の設定など、キモとなる連動要素はまだ実装されていない。

 だから、まずは単体のFPSとしてプレイしていきたい。初回のプレイ開始の際はキャラクター作成から始まる。種族、出身地の指定を求められるが、ゲーム上の意味はあまりないので、EVE宇宙の背景に詳しくなければ何でもよし。初期状態でいくらかの未使用スキルポイントが与えられるが、まずは使用せずに戦闘を開始する。

 現時点では「インスタントバトル」と「コーポレーション契約」2つのゲームモードにアクセスできる。前者は個人戦、後者はコーポレーション単位で参戦するマッチメイクモードだ。

 ひとりで気軽に始められる「インスタントバトル」では、「アンブッシュ」と「スカーミッシュ」という2種類のルールがある。前者はいわゆるチームデスマッチ、後者は陣取り合戦系(「BF」シリーズで言えば「コンクエスト」に相当)の様式だ。

 どちらも1ラウンドの時間制限は15分間。「アンブッシュ」では両チームが保有する各80個の“予備クローン”(復活チケットに相当)が枯渇すると勝敗が決まる。「スカーミッシュ」ではマップ中に複数配置された対空砲陣地の争奪戦を通じ、いずれかのチームの「MCC(モバイル・コマンド・センター)」が破壊されると勝敗が決まるというルールだ。

 各戦場の広さは、歩いて回るとちょっと広い、乗り物を使うとちょっと狭い、くらいのスケール感。1セッションに参加できる最大32人のプレーヤーにはちょうど良い広さである。戦場には「大型レールガン」や「ブラスター」といった備え付けの砲台のほか、弾薬補充ができる補給施設、占領すると味方の出撃が可能になるクローン培養施設など各種施設が存在し、情報量は多い。

 そこにさらに、各プレーヤーが呼び出す各種車両が跋扈するようになると、いよいよ戦場の躍動感が増していく。敵の所有する各施設や車両は近づいて「ハッキング」すると奪取が可能だ。特に車両に関しては自然に発生するものではなく“誰かがマーケットで購入したもの”なので、奪取することで相手に与える戦力的・経済的ダメージを想像するに痛快である。

 戦場の風景は参加プレーヤーの蓄財傾向やスキル的成長に基づいて変化していく。金持ちプレーヤーによる戦闘車両の投入、戦場外からの砲爆撃による支援、あるいは「EVE ONLINE」連動後には実現する、軌道上からの宇宙戦艦による砲撃などが、さらに戦場を彩っていくことだろう。兵器の売買が行なわれるマーケットシステムについても「EVE ONLINE」との本格連動が始まれば、コーポレーション単位の作戦がいっそう独特なものになるはずだ。

ゲームパッド、PlayStaion Move、マウス&キーボードの3系統の操作ができる。パッドの照準補正がほとんど効いてないのでマウスがとても有利
出撃画面。利用可能なスポーンポイントを選べる。出撃時の装備はデフォルトの基本セットまたは自分で作成したプリセットから選択する

 そんなわけで、「DUST 514」の戦場には、EVE宇宙に根付く人々の生きた血が流れこもうとしている。そのためのベースとなる現在の戦場表現も情報密度が高く、上々の雰囲気だ。その一方で、純粋なFPSとしての完成度はまだまだ荒削りな段階にある印象である。

 特に大きいのは、パッド操作時のエイミング補助がほとんど機能していないことだ。ある程度相手に照準を合わせると自動的に追従する、コンシューマー機でのFPSでは一般的な機能だが、本作ではこれをオプションでONにしても効果がほとんどなく、相手の裏を完全にとっても照準が微妙にズレて無駄弾を空に撃ったあげく返り討ちに遭う、といった理不尽な出来事がよく起こる。

 その一方で、本作ではマウス&キーボードによる操作をサポートしている。マウスは素早く正確なエイミングが可能であるため、撃ち合いにおいて高いアドバンテージがある。筆者の場合、パッド操作ではK/Dレート1.0も微妙なところ、マウス&キーボードではK/Dレート3.0以上も珍しくない。

 パッドで気楽にプレイできるのがコンシューマー機FPSのメリットのひとつであるし、開発側は、エイミング補助機能を強化してこの差をもう少し埋め、より戦術要素を重視したバランシングを目指すべきではないかと思う。

 そのほかにも本作では、他のFPSでは当たり前にクリアされているような基本部分の甘さが目立つ。細かいものが多いので箇条書きで指摘しておこう。

  • スポーン直後の無敵時間など保護措置がなく、スポーンキルが多発する
  • 足音・被弾音などのサウンド演出が貧弱で、耳を使った立ち回りが難しい
  • アサルトライフルのアイアンサイトが見づらく、射撃中に敵を見失いやすい
  • ジャンプ中に妙なひっかかりが生じてちょっとした段差を越えられないことがある
  • 地形的にへこんだ部分などにハマって動けなくなることがある
  • しゃがみ操作がトグルになっているが、ダッシュで解除できずスムーズな行動が難しい
  • 操作のカスタマイズが不可能。日本語キーボードで一部利用できない機能がある

 などなど。なにぶんまだβテストの段階であり、さまざまな問題点が浮かび上がるのは承知の上だ。特にこれら、FPSとしての操作性、立ち回りの面白さ、勝負の公平感を担保する基礎的な部分についてはプレーヤーから開発側に向けて多数の指摘があるはずだから、早期の改善を期待しておきたい。

射撃はヘッドショット効果もあり、狙いが良ければ勝負は一瞬。敵が多い場合でも障害物をうまく使って立ち回れば勝機があるが、最後に求められるのはやはりエイミング
「スカーミッシュ」では各拠点をハッキングして占領・維持することで相手のMCC(モバイル・コマンド・センター)にダメージが入る。味方との連携が重要だ

(佐藤カフジ)