日本への“再挑戦”。「EVE Online」開発者インタビュー
ネクソンとの提携で進む日本向けサービスへの状況を聞く





「EVE Online」

 オンラインゲームパブリッシャーのネクソンと、アイスランドのゲームデベロッパーCCP Gamesは、既報のように7月7日にパートナーシップ契約を締結し、現在共同で「EVE Online」の日本向けサービスを準備中だ。

 既存プレーヤーなら御存知の通り、「EVE Online」はロンドンに置かれた唯一のサーバーから、原則として全世界に区別なくサービスを展開している(法律的な問題から中国だけは別サーバー)。従ってこれまでも日本からプレイすることは可能だったが、クレジットカードによるドル建て決済や、英語の壁を乗り越える必要があった。

 今回準備されている「日本向けサービス」はこれらの壁を取り払い、より多くの人が手軽に遊べる環境を目指すもので、日本語に対応したクライアントソフトウェアの提供と、より手軽な決済手段、ネクソンによる日本語サポートが3つの柱となる。

 この体勢移行に関する情報および連絡は、10月26日未明にCCP Gamesより既存の日本ユーザーに向けて配信されている。その中で、国籍を問わず日本地域からEVEを利用するすべてのプレーヤーについて、2012年4月1日以降、EVE関連サービスの課金・決済をネクソンが担当する旨に言及されている。ただし、影響があるのは決済のみで、それ以外のEVE関連機能・サービスへのアクセスについては、既存のEVE IDで変わらず利用することが可能だという。

 2012年4月1日というスケジュールが言明されたことで課金システム移行の時期は明らかとなったが、では具体的にどのような体制で日本向けサービスの準備が進められているのか。また、「EVE Online」が今後どのように進化してくのか。来年夏にプレイステーション 3でリリース予定でMMOGと連動する世界初のオンラインFPS「Dust 514」との関連なども含め、中枢のスタッフに話を聞くことができた。

 インタビューに答えてくれたのはCCP Gamesで「EVE Online」の制作を統括するクリエイティブディレクターのTorfi Frans Olafsson氏、そしてネクソンで本作の運用を担当する左留間正之(さるま まさゆき)氏。重厚で奥深いEVE宇宙が日本に向けてどのように変わろうとしているのか、既存プレーヤーの方はもちろん、これからプレイしようと考えている方もご一読いただきたい。



■ 日本への再上陸と、新しいローカライズ体勢

CCP GamesのTorfi Frans Olafsson氏
ネクソン 運用1チームの左留間正之氏

──よろしくお願いします。まず、Torfiさんの役割について聞かせてください。

CCP Games EVE Online クリエイティブディレクター Torfi Frans Olafsson氏: 「EVE Online」のクリエイティブディレクターを務めています。全体のゲームデザインやエクスパンションについて、その方針と内容を基本的な部分からチーム内で議論し、決めていく仕事です。また、開発チーム全体のクリエイティビティを統括する立場でもあります。

──はるばるアイスランドからプレーヤーカンファレンスを開催しに来たことも含め、今回の日本展開はかなりの力の入れようですね。2009年にいちど上陸を試みて、そのときは延期したという経緯もありますが、今回はどのような体勢を取ったのでしょうか。

Torfi氏:まず2009年に日本展開を試みた際、日本語の複雑さに対応するための技術的な準備が不十分であったことがあります。その教訓から、様々な言語への包括的な対応を可能とする「Cerberus(ケルベロス)」というローカライズプラットフォームを開発しました。また、技術的な解決だけでなく、今回は現地パートナーとしてネクソンとの強力な提携を実現しました。これにより、日本市場に展開するための理想的な体勢が整ったと感じています。

──2009年のときは、一応日本語は入っていましたよね。あれではダメで、新しいエンジンを開発したとのことですが、具体的にどのあたりが改善されたのでしょう?

Torfi氏:ええ、チュートリアルの日本語化などはできていましたが、色々な問題もあったんです。新しく作った技術は根本から違うものになりました。

 最も大きな違いは、前のシステムが英語を基準として他の言語に置き換えるものであったことに対して、新しいシステムはもっと抽象的なレベルで言語を扱うものになったところです。例えば数を表すときに、日本語では対象の種類によって呼び方が異なります。英語とは語順も全く異なりますよね。他にもドイツ語では名詞に男性形・女性形があったり、ロシア語では複数形に色々な種類があったりと、英語を基準とすると様々な問題があります。

 「Cerberus」はそういった異なる言語で発生する問題を包括的に解決するものになっています。そのシステムの初めての応用例として、現在日本語への対応に取り組んでいます。

──なるほど。そしてもうひとつの“ローカライズ”となるのが、ネクソンとの提携ということになりますね。この提携を決定するにあたって、日本市場に対してどのようなリサーチを行なったんでしょうか?

Torfi氏:おっしゃるとおり、私たちは2009年に日本展開をするつもりでした。その時は技術的な問題できちんとした日本語対応ができず、延期という決断を下したわけですが、実はその時から日本市場を研究していたんですよ。

 日本は非常にダイナミックなオンラインゲーム産業を持つ国ですし、厚いゲーム文化もあります。私たちは英語圏を中心としたゲームの運営には慣れていますが、日本では時差もありますし、言葉の壁もあります。したがって、現地パートナーと提携する必要性はかなり早い段階から感じていました。ほぼ2年間はパートナー探しに費やしたと思います。

──日本には多数のオンラインゲーム企業があります。その中でネクソンをパートナーとして選択した理由はどのあたりにあるのでしょうか?

Torfi氏:ネクソンには良い点が多々あります。もちろん、日本で1番大きなオンラインゲーム企業であることも重要です。ですがそれ以上に、CCP Gamesは協業する相手として「ムツカシイ」会社なんです。

 かたくなに頑固な場合もあれば、急に予定を変えることもしばしばです。そのようにチャレンジングな会社と色々なレベルで協力できるパートナーはそう多くはありません。私たちはこれまで、日本のほとんどのパブリッシャーと会って来ました。 その中で考え方がもっとも我々に近かったのが、ネクソンでした。

──ローカライズについてもネクソンの協力があって、ということになりますか。

Torfi氏:いろいろありますよ。例えばIMEの対応とか、日本でどういったPC、OSの環境に対応する必要があるか、ですとか。私たちのほうでなかなか調べられなかったことについて、ネクソンに色々とサポートしてもらっています。これからも、日本語版クライアントについてネクソンのフィードバックが益々重要になります。

ネクソン 運用部 運用1チーム 左留間正之氏:そうですね、日本語版クライアントが届いてからが協力の本番という感じで、ネクソン社内で一斉にテストなどをするつもりです。



■ 知的なゲームとして成長を続ける、世界の「EVE Online」

超ハードコアなSF設定がウリのEVE宇宙

──一方、EVE Onlineは、世界で堅実な成長を続けてきたタイトルでもありますよね。現状はどんな感じなのでしょうか?

Torfi氏:CCP Gamesは最初は5人しかいない会社でしたが、EVE Onlineのサービスを通じ、現在ではスタッフの数は600人、上海、アトランタ、レイキャビク、ニューカッスルに拠点を構えるようになりました。この数年来、堅実に成長してワールドワイドの企業になったと自負しています。

 また、「EVE Online」の展開でいうと、現在は英語、ロシア語、ドイツ語で提供しています。オンラインゲームとしてのEVEはもちろんですが、パッケージ版や、EVE世界からスピンアウトした小説作品も販売しています。小説は現在2作品出ていて、近く3番目の作品が出版される予定です。

──EVE Onlineの世界設定はハードコアSFファンもビックリの緻密さですが、小説まで出ていたとはすごいですね。

Torfi氏:非常にコアなゲームですので、世界のその深み、ディティール(詳細)に対して、プレーヤー達がどれほど関心を持っているのか、私たちにとっても大変興味深いことです。

──EVEの世界が、実は遠い未来の人類の世界であるという設定を知ったときには衝撃を受けました(笑)

Torfi氏:ええ、現在から25,000年後の未来です。そして、ここにも注目して欲しいのですが、EVEの世界には“エイリアン”は存在しません。登場する種族はすべて人類の子孫たちです。というのも、EVEでは、どれだけ技術や社会が進歩しても、人類の性質は良い意味でも悪い意味でも残っていくということをテーマとしているからです。それがすべてのプレーヤーの思考や行動への問いとなり、EVEの世界を作り出す基礎になっています。

10月16日に行なわれた日本初のプレーヤーカンファレンス

──そういった設定の深さもあって、EVEはプレーヤーの年齢層が高いゲームになっていますね。先日のプレーヤーカンファレンスでも、30代、40代の方が中心だったように思います。そういった、舌の肥えたプレーヤーを相手にするなかで、特に気をつけていることはありますか?

Torfi氏:そうですね、日本のマーケットを見てみると、世界平均よりも高い年齢層が中心になっていると思います。私たちの調査によれば、世界のプレーヤー平均年齢は30歳以上でした。他のオンラインゲームを多数経験してきた、ベテランプレーヤーの方が多い印象です。

 そういった大人なプレーヤーが多いこともあって、私たちは「考える人」のためのゲームを目指しています。現実のような戦略、戦術、 産業、兵站、企業運営、外交、ビジネスそして巨大スケールの世界です。

 こんな例もあります。EVEの中で大きなコーポレーションを運営していたプレーヤーが、実際に企業を立ち上げたのです。そのプレーヤーはEVE宇宙の中で、数百人のメンバーを管理し、生産や兵站を動かす方法を学んだといいます。現実世界では学び得なかったことを、EVEの中で学べたということ。これを私たちは素晴らしく思っています。



■ 「EVE Online」と「Dust 514」

「Dust 514」。EVE宇宙の惑星上の戦いを描くオンラインFPS。Playstation Network上で来夏配信予定
「EVE Online」では艦艇やステーション内のデザインなど詳細化が進んでいる
アバターも共通のものが使える見込み。今のうちに「EVE」で作っておいても良いかも

──その「EVE Online」の世界は、来年夏にプレイステーション 3でリリース予定のFPS「Dust 514」にも繋がってきますよね。そちらのほうではSCEと仕事をされているのだと思いますが、それも日本展開に対して重要な意味があったのでしょうか?

Torfi氏:「EVE」と「Dust 514」はひとつの世界で連結されるゲームですので、異なるゲーム間でのプレーヤーのコミュニケーションが重要です。ですから「EVE」でサポートする言語は、「Dust 514」でも重要になります。ですが必ずしも全く同じになるわけではありません。

 「EVE」でサポートする言語をいつ「Dust 514」に導入するかについては、今の時点では言えません。もちろん、両タイトルの間で、なるべく多くの言語でコネクションを作れるようにしたいので、できればなるべく速く、「EVE」と「Dust 514」を日本語で提供したいと考えています。

──ネクソンさんのほうでは、SCEさんと何かやっていたりはするんですか?

左留間氏:……ないです(笑)。

──言えないじゃなくて、ないんですか(笑)。

Torfi氏:必ずしも何もないというわけではなくて、例えば東京ゲームショウのような場でCCP Gamesブースのようなものがあれば、その中で「EVE」と「Dust 514」を両方紹介して、ネクソンとSCEさんが参加するようなケースがありえるでしょう。

──少し話題を変えて、将来的に「EVE Online」の日本プレーヤーが増えて、そして「Dust 514」のプレーヤーも来るとなると、唯一のサーバーであるTranquilityサーバーに接続する人数が爆発的に増えるわけですよね。そういったアクセス量の急増にはもう備えてあるんですか?

Torfi氏:サーバーはロンドンにあるのですが、新しいことをやる際にはこれまでも実際にテストを行なってから発表をしてきました。「EVE Online」では非常に大きな負荷を扱い、問題に対処する経験を積んできましたので、「Dust 514」に対しても大きな自信を持っています。

──ちなみに、現時点で最大同時接続数は何人くらいですか?

Torfi氏:これまでの最大は60,000人を超えていたと思います。サーバー全体では200くらいのコアが稼働していて、ひとつの世界を形作っています。

──それぞれのコアはゲーム内の各地域を管理する仕組みになっているんでしょうか。

Torfi氏:そうです。ゲームの中で星系がひとつの単位になってます。世界全体で7,000あまりの星系があるのですが、ひとつのコアでひとつの人口密度の高い星系を管理していることもあれば、ひとつのコアでたくさんの人口密度の低い星系を管理していることもあります。

──例えばThe Forge星域のJita星系はなぜかEVE宇宙の首都みたいになっていて、ものすごい人口密度になっていますよね。あれも1つのコアで管理しているのでしょうか。人が多すぎてたまに入れなくなったりしてますが(笑)。

Torfi氏:はい、1つのコアで管理しています。ですが現在、それをうまく分割して複数のコアで処理できるような仕組みを取ろうとしています。もっと多くのプレーヤーが1度に入れるようになりますよ。

タイタン級の艦船。所有には莫大な財力と組織力が必要であり、事実上は巨大アライアンスだけが所有できる。全長は20kmにも及び、その巨大な質量は近隣の重力にも影響を及ぼす
いっぽう小型船はこんな感じ。タイタン級と並べると点にしか見えない大きさ

──先日のカンファレンスでは、少人数のグループがもっと活躍できるようなエクスパンションを予定していると言っていましたね。具体的にどういった変更が加わるのかを教えて下さい。

Torfi氏:たくさんの変化が伴います。今回のエクスパンションは大きな企業に対して、環境の変化に合わせられるかどうかのチャレンジを与えるという側面もあります。いかに現状を分析して、新たな戦術を取ることができるかということです。具体的にポイントとなるのは、ゲーム中で最も大きく強い、Super Capitalの艦船(タイタン級とスーパーキャリアー級)に対するバランス調整です。

──端的に言うと、弱くする?

Torfi氏:そうです。沈みやすくなります。どういうことかというと、これまでSuper Capital船は、プレーヤーがゲームからログオフするとしばらくした後に世界から消えていました。しかし、その間に撃沈できるかというと、そうでもなかったのです。それが、今回のエクスパンションから変更されるようになります。以前では戦闘を行なっていたとしても、ログオフすると15分後に艦船が消えていました。しかし今回のエクスパンションにそのような方法が戦略にならないように工夫されています。戦闘が相手によって続けられている場合は、世界に残るようになります。

──24時間ログインし続けてないと、いつ一方的に攻撃されて沈むかわからないということですか(笑)

Torfi氏:戦場から遠い、どこか安全な区域に移動してからログオフすることが必要になるでしょうね。

──そこを敵対コーポレーションの誰かに付けられていたら大変ですね。

Torfi氏:それが「EVE」です(笑)

──あとはなんといっても、「Dust 514」に向けて、という部分ですね。最近のエクスパンションで惑星上の産業施設マネジメントができるようになったり、ステーション内部をアバターで動きまわるという部分が実装されています。だんだんディティールが増していっている印象ですが、やはり「Dust 514」に向けた準備という側面も大きいのでしょうか。

Torfi氏:まさにそうです。星系の支配要素や、惑星管理の部分は「Dust 514」につながる基盤となる部分です。そういった方向で継続的なエクスパンションを加えていきます。

──例えば、「Dust 514」をプレイするのが本命なプレーヤーが、あらかじめ「EVE」をプレイしておくとおトクな部分もあったりしますか?

Torfi氏:「EVE」と「Dust」は同じ経済基盤の中で展開していきます。もちろん存在するコーポレーションも同じものです。そういう意味では、「EVE」の世界に友達や同じ会社のメンバーがいると様々な利点があるのも確かです。

──力のあるコーポレーションに所属していて、社長が友達だったりすると、かなり良い感じだったり?

Torfi氏:おっしゃるとおりです。



■ 日本語版のサービスでは何が変わる?

EVE宇宙の支配組織マップ。まだまだ日本コミュニティの存在感は薄い

──日本語版サービスの開始時期というのは、まだ確定されていないんですか?

左留間氏:ええ、まだ明確なことは申し上げられないのですが、年内に第一歩が踏み出さればと考えています。

──課金についてですが、既存のプレーヤーはCCP Gamesに直接クレジットカードで月額料金を支払ったり、PLEXを購入したり、またはゲーム内で稼いでタダでプレイしていますよね。日本語・日本でのサービスが開始されてからはどうなるんでしょうか?

左留間氏:PLEXなどを買うためにネクソンポイントを使っていただくような形になります。そのご案内はCCP Gamesさんから既存プレーヤーの皆さんにお知らせする予定です。

──ネクソンさんがサービスを開始して以降も、既存のプレーヤーさんが従来通りの方法でプレイを継続することは可能なのですか?

左留間氏:それは、ある時点で終了ということになります。技術的な詳細は申し上げられませんが、日本のプレーヤーであると認識された方はネクソンIDを取得していただいて、ネクソンポイントを通じた決済をご利用いただくことになります。ゲーム内でPLEXを買うということについては、ゲーム内のことですので影響ありません。

──なるほど、そうなると既存のほぼ全プレーヤーが影響を受けるということですね。

左留間氏:そうなります。

Torfi氏:これはとても大事なことですので、私たちとしては、既存プレーヤーの皆さんに必ずお知らせをしてから実施していきます。

──先日のカンファレンスにて、各プレーヤーが非常に気にしていたこととして、「EVE」は難しいゲームなので新規プレーヤーがなかなか定着しないと。その敷居を下げるためにコミュニティが機能することはもちろん大事ですが、ネクソンとして何か特別な施策は考えていますか。

左留間氏:まずWEBのほうで、CCPさんと協力して導入部分のガイドやQ&Aを充実させ、新規のプレーヤーが迷わないようにしたいと考えています。また、オープン直後にプロモーションを集中させて、同じ境遇の新規プレーヤーさんが互いに相談できるとか、ベテランの方がたくさんの方にいっぺんに教えることができる、そういう環境を整えたいと考えています。

Torfi氏:私たちの方でも日本のプレーヤーからのフィードバックも受けられるようになりますので、ネクソンの協力を受けながら各種のビデオチュートリアルをつくろうと考えています。年内には動き始めたいと思いますが、どんな形式でやるかはまだ検討中です。

──もうひとつ、既存プレーヤーからの意見として、新規の方が日本のコーポレーションを探す際に全く情報が整備されていない、という現状があります。そのあたりの支援策をネクソンで何か考えていますか?

左留間氏:ええ、先日のディスカッションを聞いていて、プレーヤーの意見が多いところでしたね。明日にでもCCPさんと協議して対策を考えたいと思います。

Torfi氏:ゲーム内で使用言語・地域などを指定してコーポレーションを探す機能があるのですが、今見てみて、日本語が無かったので、直接開発チームにコンタクトをとって追加するように伝えました。入力するテキストに日本語が使えない問題も、日本語版クライアントのリリースの際までに解決したいと思います。また、日本のコーポレーションのリストが前からプレーヤーのWikiにあったのですが、それの現状についても検討したいです。



■ 国柄がにじみ出るEVE宇宙。日本コミュニティは何を生み出すか?

国際色豊かなEVE宇宙。各プレーヤーが思い思いのアバターをデザインして宇宙船の艦長を楽しんでいる

──ぜひ聞いておきたかったんですが、サブプライム問題に端を発する2008年の世界金融危機で、アイスランドは国として大きな打撃を受けましたよね。CCP Gamesにはどういった影響があったのでしょうか?

Torfi氏:おっしゃるとおり、アイスランドは経済危機で、通貨価値が半分くらいになってしまいました。ですが実は、CCP Gamesはお客さんがほとんど海外なので、ほとんど問題はありませんでした。むしろ、それまでほとんど金融産業にいた優秀な技術者がソフトウェア業界に戻ってきたんですよ。そういう意味では、優秀な人材がたくさん採用できるようになって、国としては大変なんですが、私達にとってはいい面もありました。

──なるほど、それを聞いてますます「EVE」の将来が楽しみになりました。宇宙を舞台に大航海を繰り広げるゲームをバイキングの末裔たちが作っているというのも、ロマンがあることですしね。

Torfi氏:まさに。実際、アイスランドという国そのものも、200年くらい、EVEの0.0Sec地域のように王も法律もない、無法地帯であった時機がありました。そういう意味では、EVEの世界観に通じている部分もあるんですよ。

 また、アイスランドは大西洋に浮かぶ小さな国ですが、バイキングの大昔からアイスランド人は船で行けた範囲・各地域で活動をしていたので、昔から広い世界観があると言えます。そういった国際的なバックグラウンドを持つ文化がありますので、200以上の国と地域の人々が集まるEVE宇宙も自然なものに感じられます。そういった部分をお伝えできれば大変嬉しく思いますね。

──最後に、日本のプレーヤーの方々に向けて一言お願いします。

Torfi氏:ロシア語に対応したときには、PvPをメインにプレイし、EVE宇宙の中でも特に独裁的な権力を振るうようなアライアンスを作るロシアのコミュニティができました。ドイツ語に対応したときには、PvEをメインに活動するコミュニティができました。そういうふうに国によって異なるプレイスタイルが出来上がってきているなかで、今回、日本へのローカライズによって、日本のコミュニティがどのような足跡をEVE宇宙の中に残していくか、開発者としてとても楽しみにしています。

左留間氏:世界中の人がプレイしている、壮大な世界観のゲームですので、多くの人たちに知ってもらい、快適にプレイしてもらえるお手伝いをしていきたいと思っています。

──ありがとうございました。




(C) 2003-2011 CCP hf.

(2011年 10月 27日)

[Reported by 佐藤カフジ]