ニュース

「大東京トイボックス」漫画家“うめ”インタビュー(前編)

魂は合ってる……! 「東京トイボックス」名言が生まれるまで

魂は合ってる……! 「東京トイボックス」名言が生まれるまで

「東京トイボックス」名言集その1。ディレクターのみに許されるという仕様変更。これによって現場の疲労度は蓄積されていく
「東京トイボックス」名言集その2。百田のつたない企画書を読んだ太陽の返答。なんとなくわかるが、決して具体的ではない

――太陽の「仕様を一部変更する!」、「魂は合ってる」など、こういったセリフを生み出すのには苦労されたのでしょうか? それともスッと出てくるようなものなのですか?

小沢氏: 僕も「魂は合ってる」は好きですね(笑)。

妹尾氏: 実際にこのセリフを使ってくれたという人をTwitterで見かけましたね。自分のプレゼンでことごとく数字が違っていて、「お前これなんだよ」って言われたときに、「でも魂は合ってます」って。自分で言っちゃうんだ、と(笑)。

小沢氏: 「魂は合ってる」は、「東京トイボックス」1話の「魂が違ったんです……」とつながっているんですけど、僕はそのセリフが月並みすぎて嫌いだったんです。それで納得がいってなくて、「大東京トイボックス」1話でひっくり返して、あの状況(面接を受けに来た百田を帰すため)において「魂は合ってる」って言ってしまうのはアリだな、と。そこで回収できて、やっとこの「魂が違ったんです……」も受け入れられるようになりました。

――「仕様を一部変更する!」についてはいかがでしょう?

妹尾氏: これは「東京トイボックス」1話の時点では、太陽の決めゼリフというわけではなかったんですよ。ただ、「仕様を変更する」ということが、スタッフが疲弊してディレクターとぶつかる原因になるということは、取材を通じて頭にありましたね。

小沢氏: このセリフも「大東京トイボックス」含めると何度も使っているんですが、その使いどころによってカッコよく聞こえたり聞こえなかったり、意味も変わっているんです。ただ、「仕様を変更する」ということって、ある意味、ディレクターの華だと思うんですよね(笑)。

 これは取材を続けていく過程で、刺さったというか、自分自身も漫画で変えるところはギリギリでも変えますし。ましてゲームって、マンガと比べると動いているお金や人数も違うので。やっぱり漫画を作っていくなかで、シナリオを書いて、ネームに起こして、ペンが入って、そこでやっとキャラクターがセリフをしゃべっているときの気持ちがわかったりするんです。そうすると……変えたくなるじゃないですか、セリフを(笑)。

妹尾氏: 表情によってセリフが変わるというのは、作画を担当している身としては醍醐味ではありますね。絵じゃなくて、セリフを変える分には……ですが(苦笑)。

小沢氏: 絵を変えてもらうことも多々あります(苦笑)。ただ、漫画に限らず、ものを作る過程って作業じゃなくて、最後までクリエイティブなことだと思うんですよね。漫画を作る上で最初の企画を考える段階だけがクリエイティブで、そこから先の作画などは作業なのかといったら、そんなつまらないはずはないだろうと。最後の部分までがクリエイティブなものだとするのなら、仕様変更は致し方なし、と。

――今、妹尾さんが微妙な表情をされました(笑)。

小沢氏: あと、作中では描いてないんですけど、仙水って仕様変更をしないタイプだと思っていて。最初に自分のクリエイティブ性を発揮する瞬間があって、そこで決めた通りに現場に作ってもらって、最後まで変えないと思いますね。

(後編に続く)

(イマイチ)