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【CEDEC 2013】「大東京トイボックス」のうめ氏登場!

制作秘話を語る。サイバーコネクトツー松山氏も登場で続編を熱烈希望!

8月21日~23日 開催予定

場所:パシフィコ横浜

受講料:15,000円(デイリーパス)~

 CEDEC 2013最終日となる8月23日、漫画家「うめ」の原作担当、小沢高広氏による講演が行なわれた。

 ゲーム業界を舞台にした漫画「大東京トイボックス」などで知られる小沢氏がCEDEC会場に登場……と思いきや、小沢氏は台風の影響のためSkypeを使用しての出演となった。小沢氏の所在地は日本最南端の有人島、波照間島。台風12号の影響によりフェリーが出航しないため、苦肉の策となったようだ。

 講演は司会がゲーム制作と漫画制作の違いや、Kindleにおける漫画出版などについて聞いていくというものだったが、講演の途中からは会場にたまたま足を運んでいたサイバーコネクトツー代表取締役社長の松山洋氏が飛び入りで登壇し、小沢氏へ「大東京トイボックス」に関する質問をぶつけていった。本稿では小沢氏が語った「大東京トイボックス」に関する話を中心にご紹介したい。

連載復活は「ゲーム業界のおかげ」。松山氏は「大東京トイボックスZ」を提案

波照間島よりSkype中継で登場となった小沢氏。Skype登壇はCEDEC史上初だとか
飛び入りで登壇したサイバーコネクトツー代表取締役社長の松山洋氏
「大東京トイボックス」はテレビドラマ化が決定。ゲームファンなら要チェック!

 うめ作の「大東京トイボックス」は、小さなゲーム会社「スタジオG3」を舞台にしたゲーム業界ドラマの漫画作品。最初は講談社のモーニングで「東京トイボックス」として描かれ、その後幻冬舎のコミックバーズにて「大東京トイボックス」として連載された。取材協力はアクワイア。9月24日には最終巻も発売されるほか、テレビドラマ化も決定されている。

 ストーリーはゲームクリエイターの天川太陽を中心としたもので、開発と納期の葛藤、大手パブリッシャーとの軋轢などが描かれていく。「大東京トイボックス」ではさらに業界の状況に踏み込み、アメリカでの銃乱射事件に絡んだレーティングの問題など、スケールを拡大させていく。

 一方の松山氏は、うめの大ファン。「大東京トイボックス」については気になることが相当あるようで、興奮気味に松山氏に質問を重ねていった。

 そもそもゲーム業界を描こうとしたきっかけは、「打倒島耕作」という企画段階のコンセプトがもとになっている。その時小沢氏がプレイしていた「ボクと魔王」のセリフ回しの面白さに心惹かれて、ゲームを作る人に興味を持ったのだという。

 そこから組織でゲームというエンターテイメントを作っているのはどういう人達なのか、といのがきっかけになっているそうだ。

 松山氏からの「『東京トイボックス』の連載当時はいわゆるゲームバブルもピークを過ぎていて、よくもまあゲーム業界なんて選んだと思ったが、すんなり編集サイドからGOが出たのか?」という質問には、「それが全然通らなかった」と答えた。

 とはいえその理由は企画そのものがダメというものではなく、当時の部長クラスの編集者が「ゲームをやるとバカになる」といった考えを持った人だったらしく、そこでOKが出なかったのだという。

 そこでちょっとズルをして、編集長に直接ネームを見てもらった。「編集長クラスになるともっと世代が上なので逆にゲームを知らない(笑)」というわけで企画が通り、無事連載が開始された。

 続いては、「『東京トイボックス』は2巻で終わり、その後ぽっかり穴が開いたあとコミックバーズで『大東京トイボックス』として再開された。この復活にはどのような経緯が?」という質問。

 これは「ゲーム業界のおかげ」があったそうで、たまたま小沢氏らとあるゲーム企業でゲームのコミカライズを企画していた時、そのゲーム会社の人が企画そっちのけで「東京トイボックス」の続き描けませんか、とコミックバーズに問い合わせてくれたのだという。

 また「『大東京トイボックス』になって突然スケールが大きくなりますが、作風を変えたのは途中からですか?」との質問には、「1巻は1巻だけで完結するようにしたが、1巻の売上がそうそう打ち切りになるようなものではなかったので(笑)、それなら広げることろまで広げてみようとなった」とした。

 そして最後の質問は、「クレジットで取材協力にアクワイアとあり、社長は僕と同い年でもあるのだが、どういった経緯で、どのような形で協力しているのか?」という松山氏の立場からすれば最も気になるものになった。

 小沢氏は、ゲーム業界の文献としてゲームジャーナリスト新清士氏の著書「ゲーム開発最前線『侍』はこうして作られた―アクワイア制作2課の660日戦争」を読んでアクワイアに興味を持ったのだという。

 これを聞いた松山氏は「そうかぁ、くっそお!」と悶絶。小沢氏はアクワイアのインフォに直接メールを送ったところ、1時間半ほどですぐに了解のメールが来て「それからすぐに打ち合わせができて、実に素晴らしかった」と振り返った。具体的な協力の一例としては、「大東京トイボックス」の中で登場する「次元転換システム」は実際の打ち合わせの中で登場したものだったという。

 小沢氏は来場者へのメッセージを問われると、「みんな一緒に頑張りましょう。フィールドは違いますが根っこの魂は一緒だと思っているので、これからも良いコンテンツ作っていきましょう」とした。

 講演後、松山氏は小沢氏へお礼を述べるとともに、「『大東京トイボックス』は完結しましたが、ぜひ続きとして『大東京トイボックスZ』をやりましょう! 今こそ業界は面白いですし、ネタはいくらでも提供しますよ!」と力を込めて訴えていた。まずは最終巻発売にドラマ、そしてもしかしたらサイバーコネクトツー取材協力による続編と、さらなる展開を期待していきたい。

(安田俊亮)