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【夏休み特別企画】ミャンマーゲームマーケットレポート(マンダレー編)
スマホを持つミャンマーの若者達のゲーム事情。そして全人類にウケるゲームとは何か?
(2013/9/2 00:00)
スマホを持つミャンマーの若者達のゲーム事情。そして全人類にウケるゲームとは何か?
今回の旅でとてもありがたかったのは、ミャンマーの人々がとても温かく、我々が日本人だとわかると何でも親切丁寧に教えてくれたことだ。今回接触したショップの店員や、バイクタクシーの運転手、レストランのウェイターなどは、すべて英語を話してくれたため、円滑な意思疎通ができた。これは実はアジアの取材ではなかなか難しいことだ。英語を解する人が多いというのは元英国植民地のプラスの側面と言えそうで、これが近い将来、国として大きな力となって現われてきそうだ。
十数人のミャンマー人との会話から得た一般市民の平均像は、所得は月額100,000~150,000チャット(約10,000円~15,000円)ほどで、ランチは外で700~1,200チャット(約70円~1,20円)ほどのヒン(ビルマカレー)を食べるか、自宅から弁当を持って行く。夕飯は自宅で家族みんなで食べる。ほとんどの人は国の外に1度も出たことがない。日本が好きで、中国のことをとても嫌っている。自宅には尊敬するアウンサン将軍の写真を飾っている、などなど。
彼らの悪い習慣は“ビンロウの噛みたばこ”で、台湾の移動式屋台風設備で、道ばたの至る所で売っている。ビンロウの実と石灰を葉っぱに包んだものを口に含んで噛み込む。するとビンロウと石灰が化学反応を起こして発熱し、その汁を口に含むことで覚醒効果が得られるというものだ。このビンロウはアジアだと台湾でわずかに見られるが、ミャンマーでは国民的な風習になっており、実に過半数の男性の習慣になっている。石灰を口に含むため、口の中は真っ赤に偏食し、歯は溶けてボロボロだ。老婆心ながら、ミャンマーの人々が真っ先に辞めるべき風習はこのビンロウだと思う。
話を戻すと、マンダレーの人々の高価な所持品はバイク、そしてスマートフォンだ。予想はしていたが、ゲームマシンやPCを持っている人はひとりもいなかったし、実際、先ほどのゲームショップ以外ではPCやゲームコンソールを見ることはできなかった。なぜスマートフォンを持つかというと、それが仕事をこなす上で必要不可欠であるためで、みんな無理してでもお金を貯めて買うのが当たり前だという。スマートフォンを手に入れて何をやるのかというと、電話、メール、そしてゲームだ。
ここでミャンマーのスマートフォンのビジネスモデル(2013年8月現在)を再度ご紹介しておくと、ミャンマーではスマートフォンは数千円から数万円で比較的気軽に買うことができる。安いのは見たこともないような中国製のノンブランド品、高いのはサムスンやファーウェイの新モデルという感じで、いずれもAndroidという点では共通しているが、予算によって無数の選択肢が用意されている。日本や海外の多くの国々では、2年縛りにするかわりに本体価格が安くなったり、割賦払いが可能になったりするが、ミャンマーではそのような囲い込みのシステムはなく、月額制も一般的ではない。
利用料金の支払いというと、モバイルショップで販売されているプリペイドカードを使う。5,000チャット(約500円)、10,000チャットなど複数の種類があり、手持ちの予算や利用方によって使い分ける。で、ここからがおもしろいのだが、このプリペイド決済では、電話代だけではなく、データ通信代も払うことができる。これが各国で取り入れられているようなデータ量によって値段が変わる従量制ではなく、時間制なのだ。
具体的には電話が1分50チャット(約5円)で、データ通信が2チャット(約0.2円)。データ通信がかなりお得なビジネスモデルのような気もするが、肝心の通信速度は遅く、接続も安定しないため、利用している人は少ないという。メールやSNS、アプリのダウンロードなどは街で無料のWiFiを拾っているという。ちなみに自宅にはWiFiは高いため引いてないという。この話は1人の話ではなく、複数人の話を組み合わせているが、だいたいのミャンマーの通信事情が見えてくると思う。
そうしたスマートフォンの活用法の中で、人気だったのがモバイルゲームだ。実はミャンマーの人々はスマートフォンを通じてゲームを遊んでいるのだ。それに気づいたのは、街歩きの最中だ。ゼーチョーマーケットの所でも少し触れたが、店番をしている店員は、客待ちの間にスマートフォンやタブレットでモバイルゲームを遊んでいたし、店内の生活スペースでは宿題する子供に交じって、スマートフォンでゲームを遊ぶ子供の姿も見ることができた。
プレイしていたゲームは、「Candy Clash Saga」(King)や「Angry Birds」(Rovio)、「Plants vs. Zombies」(Electronic Arts)など、欧米のカジュアルゲームばかりだ。共通項は、常時接続を必要とせず、通信料は最小限で、オフラインでも遊べて、オンライン要素もあるというモバイル向けのカジュアルオンラインゲームばかりだった。残念ながら日本のゲームは1度も見ることができなかった。日本の製品は、どうしても高価格、高付加価値の方向にいってしまうため、ミャンマーのような新興市場ではどうしてもオーバースペックになってしまうが、それは奇しくもゲーム市場でも同じようだ。
先日ChinaJoyレポートでもお伝えしたように、中国ではひと月の使用量に制限が課せられることが一般的であるため、スマートフォン向けのモバイルゲームは、常時接続方式はできるだけ避け、通信料はできるだけ小さく、そして少なくすることが求められるが、ミャンマーの状況は、中国をさらに先鋭化させたような印象だ。
現在、スマートフォン向けのネイティブアプリ市場は、コンソールゲームを思わせるリッチな表現、PCオンラインゲームのような豊かなオンラインプレイ体験を売り物にしたゲームが増えてきているが、グローバル展開を考えれば、むしろ逆に2歩ぐらい戻った方がいいのではないかという気もする。プラットフォームを問わず、日本のメーカーは企画力、開発力は優れているが、新興市場の消費者の視点で、「どう現地化させるか」という発想が決定的に足りないように思う。
ミャンマーを含めた新興市場におけるコンソールゲーム/PCゲーム市場は、“消費サイズに合わせた商品化”が難しいという点で、始まる前に終わったといっても過言ではないように思うが、モバイルゲーム市場はまさにこれから本格的に幕を開ける。ユーザー数的にはこれから伸びる一方だろうし、5年10年のスパンで考えれば、非常に有望な市場なのは間違いない。そうしたときに、彼らが遊ぶゲームが日本の優れたゲームであって欲しいと日本のゲームファンの1人として願っている。