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2023年の注目ハード「PSVR2」。SIEが語るそのポテンシャルとは?【CEDEC2022】

PSVR2ヘッドセットの概要を紹介

【CEDEC2022】

開催期間:8月23日~25日

 最終日を迎えた開発者向けカンファレンス「CEDEC2022」。本稿では、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの高橋 泰生氏らによるセッション「PlayStation VR2で拡がる世界」について紹介する。

 2023年初頭に発売が予定されている「PlayStation VR2」。今回の「CEDEC2022」では、UnityよりPSVR2の「フォビエートレンダリング」に特化した講演が行なわれるなど、注目度の高いハードウェアだ。本セッションでは、SIE自ら「PSVR2」の特徴や進化点を紹介し、PSVR2のポテンシャルをさらに理解できる内容となっている。

本セッションはSIEの高橋氏、秋山氏によって行なわれた

PlayStation VR2のハードウェアをおさらい。4K HDR 120Hzディスプレイや3Dオーディオなど、PSVRから“没入感”が進化

 まずは、PlayStation VR2のハードウェアを紹介。常に“最高の遊び場”を提供してきた「PlayStation」プラットフォームは、VR元年と呼ばれる2016年にPlayStation VRを発売した。PSVRはPS4に接続していたが、時が経ちVRの可能性が増大。現在の水準にあったVR機器となるのが「PlayStation VR2」であり、そのハードウェアはPSVRに比べ、大幅に進化している。

 ディスプレイの解像度は、片目2000×2040(両目4000×2040)となり、PSVR比で約4倍の解像度となっているほか、PSVRに引き続き有機ELディスプレイを採用しているため、“真の黒”を実現することが出来る。リフレッシュレートは120Hzに対応し、より滑らかな映像を見ることが可能となった。

PSVR2は白く洗練されたデザインに
両目4000×2040の4K HDR 120Hzディスプレイを採用

 また、視野角は110度となり、PSVRより拡大。軽量でありながら、視野角とのバランスが取れるフレネルレンズを採用しているほか、専用の赤外線カメラを内蔵し、視線トラッキングが可能となっている。

 この機能は、対応ゲームにて視線によるコントロールなどが可能になるほか、視線に合わせてレンダリング解像度を調整する「フォビエートレンダリング」のために必要となっている。

視野角は110度。軽量なフレネルレンズを採用している
視線トラッキングのため、専用のIRカメラを搭載。対応ゲームにて活かせるほか、フォビエートレンダリングに必要となってくる

 そのほかにも、没入感を高める機能として、ヘッドセット内にモーターを搭載し、ゲームプレイに応じてフィードバックされるほか、PS5の3Dオーディオ技術「Tempest」にも対応し、音響面でも没入感を高めている。

 PSVRでは、PlayStationカメラを使用したトラッキング方式を採用していたが、PSVR2では、ヘッドセット内に搭載されたカメラによってトラッキングする「インサイド・アウト・トラッキング」に変更。重心バランスの最適化や、PS5との接続をケーブル1本にすることで、利便性も向上している。

ヘッドセット内にモーターを搭載。ゲームプレイに応じてフィードバックを感じることが出来る
「Tempest 3D オーディオ」に対応し、立体感のあるサウンドを楽しめる
「インサイド・アウト・トラッキング」に変更。外部にカメラを設置しなくてもいい
PSVRに比べ、装着感が向上。軽量化も果たしている
PSVRでは専用ユニットを介していたが、PSVR2ではケーブル1本で接続可能

 セッション内では、付属する「PlayStation VR2 Sense コントローラー」についても紹介。オーブ型のデザインにより持ちやすくなっているほか、アダプティブトリガー、ハプティックフィードバックなど、「DualSense」の機能も引き継いでいる。

 「PlayStation VR2 Sense コントローラー」には、ボタンを押さなくても、指が触れるだけで認識する「フィンガータッチ機能」を搭載。VR空間内でのハンドジェスチャーが豊かになるとのことだ。

PlayStation VR2 Sense コントローラー
オーブ型のもちやすいデザイン
「DualSense」のボタンを引き継ぐ
ボタンに触れるだけで認識するフィンガータッチ機能
アダプティブトリガーなどの機能も搭載する

 ここまでPSVR2の機能が紹介されたが、PSVRと比べ圧倒的にパワーアップしていることがわかった。次にPSVR2のシステムに移っていく。

「コントローラーどこ?」に便利なシースルービュー。プレイエリアのカスタムも簡単なPSVR2のシステム

 続いて、PSVR2のシステムが紹介された。PSVR2では、トラッキングのために搭載されたカメラを使用して、外の様子を確認できる「シースルービュー」を搭載。ヘッドセットをつけた後、コントローラーを探す際に役立つ機能だ。なお、シースルービューは、外の様子を確認するための機能で、録画ができないことが明かされている。

 また、シースルービュー機能を用いたプレイエリアの設定が可能。ここでは動画を用いながら解説しており、部屋の環境を認識しながらカスタムができるため、安全に設定することが出来るという。なお、プレイエリアを記録しているため、同じ部屋であれば再度設定する必要はない。

【シースルービュー機能】
【プレイエリアをカスタマイズする様子】
画面内でエリアをみつめていく
最終的には、コントローラーを使用して細かい設定をする

 また、PS5の周辺機器「HDカメラ」を使用することで、自身のVRをプレイしている姿を映しながら、配信が可能となっている。

 また、対応コンテンツで360度の視界を楽しむ「VRモード」と、非VRコンテンツを仮想空間の巨大な画面に映し出す「シネマティックモード」が引き続き登場。シネマティックモードはアップグレードされ、フルHD解像度で120Hzまで対応し、HDRも楽しめる。メディアコンテンツやVRに対応していないゲームを視聴可能だ。

「HDカメラ」を使用することで、自身の姿を映し出すことが可能
VRモードとシネマティックモードが登場。シネマティックモードが、フルHD120Hzまで対応する

「Horizon」に「バイオハザード」が登場! PSVR2でリリース予定のタイトルを紹介

 PSVR2のハードウェアやシステムについてわかったところで、PSVR2に登場予定のコンテンツが紹介された。「何よりも大事なのはコンテンツ」と語った高橋氏。6月3日に配信された「State of Play」で発表されたタイトルを振り返った。

 最初にアクションゲーム「Horizon」シリーズのVR版「Horizon Call of Mountain」を紹介。トレーラーを流しながら、4K HDRディスプレイ、3Dオーディオ、アダプティブトリガーなどPSVR2の機能を、余すことなく使用していると語った。

【Horizon Call of Mountain】
「PlayStation VR2 Sense コントローラー」を活かした手の操作
臨場感あふれる映像が楽しめそうだ

 また、サードパーティー作品についても紹介。カプコンの「バイオハザード ヴィレッジ」では、ストーリーモード全てでVR体験が可能となっている。ドミトレスク夫人を“目の前”で体感できるという。

 また、そのほかにも「The Walking Dead: Saints & Sinners」や「No Man's Sky」を紹介。このほかにも様々なタイトルがリリース予定だと明かした。セッションでは、PSVR2を支えるコンテンツ制作に移っていく。

バイオハザード ヴィレッジ
The Walking Dead: Saints & Sinners - Chapter 2: Retribution
No Man's Sky

制作ツールに“クイズ機能”!? PSVR2を支えるコンテンツ制作ツールとは

 最後に、PSVR2のコンテンツ制作を手助けする制作ツールが紹介された。PSVR2の開発環境は、PS5のSDKと連携しており、高速SSDによる読み込みスピードや、レイトレーシングを含めたグラフィック機能などを利用でき、PSVR2対応タイトルを容易に開発できるという。

 また、制作エンジン「Unity」や「Unreal Engine」にも早期から対応し、柔軟なゲーム制作に対応している。

PS5のSDKと連携し、対応タイトルを容易に開発可能
「Unity」や「Unreal Enigine」にも対応している

 さらに「PlayStation VR2 Sense コントローラー」について、ほかのVRプラットフォームと類似した入力ボタンの配置にしており、PSVR2へ対応しやすくしているという。

 そのほかにも、レンズの特性に合わせて、画面中心部を高画質に、周辺領域を低解像にして、効率的にレンダリングを行なう「Flexible Scale Rasterization」に対応。視線の位置によって、中心視野を高解像度にする「フォビエートレンダリング」と組み合わせることで、より効率的にレンダリングを行なえるとしている。

コントローラーは、ほかのプラットフォームと配置が類似している
レンダリングを効率的に行なう「FSR」に対応。PSVR2のフォビエートレンダリングと組み合わせることができる

 ヘッドセットモーターを使用したフィードバックの設計も容易にできるよう、サンプルプログラムを用意。マシンガンとショットガンの違いや、歩く・ジャンプするなどの振動体験を、クリエイターが試すことができる。

 高機能になったVRヘッドセットによって、制作時の問題点が増えそうだが、そこは診断ツール「VR Trace」を用意。開発中のVRアプリケーションの問題点を診断できるとのことだ。なお、PSVR時代からあったという「VR Trace」だが、PSVR2の新機能に対応するアップデートが施されている。

ヘッドセットフィードバックには、サンプルを用意することで、クリエイターが直感的に実装可能
開発中のVRアプリケーションの問題点を診断するツール「VR Trace」
PSVR2の新機能にも対応している
開発機を接続せずに、開発できるリモート開発環境も用意

 開発するアプリケーションの、不適切な実装と、適切な実装を見分けることができるツール「PlayStation VR2 Comfort Sample」を用意。このツールには、クイズ機能があり、クリエイターが「こういう問題が発生するんだ」と直感的に理解できる機能が用意されているという。

「PlayStation VR2 Comfort Sample」にはクイズ機能を搭載。実装時の問題を理解できる

ハード・システム・開発環境、様々な面で進化したPlayStation VR2。次のVRは何をもたらすのか

 2016年のPSVRから、あらゆる面で進化を遂げたPSVR2。ユーザーの利便性向上に始まり、コンテンツ制作まで十分な配慮がされており、SIEの“VRを普及させたい”という思いが伝わる講演だった。

 2023年初頭発売予定のPSVR2。PSVR第2世代は、PS5やゲーム業界に何をもたらすのか。今後の続報に期待したい。