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奇妙なパースの美しいミニチュア、シリンダーが輝くロボ、そしてトラウマガメラ! 「ワンダーフェスティバル2019冬」、一般ブースのユニークな作品達
2019年2月10日 19:25
今年も幕張メッセで開催された「ワンダーフェスティバル2019冬」。弊誌では毎回企業ブースの新製品のレポートを中心に紹介しているが、今回はあえて一般ブースに絞り、いくつかの作り手達の取り組みを紹介したい。
ワンダーフェスティバルは作り手がユニークな作品を作り、そして買い手がその作品に敬意を示し、購入するというのが“基本”であるとおもう。また、商談会と異なり、主役は買い手であり、模型を愛する人達だ。
一般ディーラーブースでも、目立つディスプレイや豊富な商品展開をしているところは結局は商業メーカーではあり、話を聞いたところの多くはワンフェス以外でも販売を行なっているところだった。しかし一般ディーラーブースでは、作り手と買い手がより近く、親しげに言葉を交わし、手作り感のある作品を展示しているところがいいと感じた。今回は話を聞いた数社と、そして多くのブースの作品の写真を届けていきたい。
不思議なパースのかかった、暖かみのある動くジオラマ世界OMORO DESIGN
OMORO DESIGNは筆者の心をわしづかみにしたユニークな世界観と緻密な構成、独特のセンス溢れる世界を凝縮したジオラマを販売するメーカーだ。元々はイラストを手がけており、作品を立体化していった。大きな特徴は動く乗り物が中心となっていること。動力は車の方にあり、ジオラマは電源スペースを気にせず作り込む。
とても面白いのが、車や建物全てがちょっと不安になるような、魚眼レンズで見たかのような強いパースがつけられているところ。車などはとても頭でっかちで、走っている姿は今にも倒れそうなのだが、実は内部に重りなどを入れて調整している。作品を作り込むだけでなく、スムーズな動作をするための作り込みを行なっているという。
「火事現場に急ぐ消防車なのに、いつまでもたどり着けない」など、作品ごとのストーリーも用意されており、細かく細かくチェックするのが楽しい作品ばかりだ。
シリンダーとネジが生む可動ロボの楽しさRobomaniax
Robomaniaxは昨年よりロボットフィギュア「バイザーフォース」の販売を行なっている。3Dプリンターで部品を打ちだし、シリンダーとネジやボルトでパーツを接続、骨格パーツの上に装甲パーツを装着することで独特のカッコ良さを持つロボットフィギュアを販売している。ブースでは積極的にユーザーに触ってもらう試遊晩を展示しており、カッコ良さと“堅牢性”をアピールしていた。
「ムーバルフレーム」や「マッスルシリンダー」といった、80年代リアルロボの流れを感じさせるその骨格は商品の最大の魅力だ。「バイザーフォース」には27個ものシリンダーパーツが使われており、動かすとシリンダーがスライドするのが楽しい。ジョイントも金属製でかっちりとポーズが決まる。指も可動し表情付けができる。販売形態は組み立て式のキットで、工具も付属している。第1弾の「ヴァルキリー」に続き、第2弾の「ヴォーグ」そして武器パーツも販売予定とのこと。
おもしろいのは、琉球銀行とのコラボレーションにより「フルアクションりゅうぎんロボ」も発売されるところ。赤、黄色、青の直球のヒーローロボットのデザインは、琉球銀行のイメージキャラクターである。「フルアクションりゅうぎんロボ」は、「バイザーフォース」の可動骨格を使うことで、独特の雰囲気を持つロボットとなっている。
想いのこもった造形の「トラウマガメラ」! 造形工房キトラ
造形工房キトラは、サラリーマンから原型師としてフィギュア販売メーカーを起業、経済誌などでもインタビューを受けているとのこと。大型の怪獣フィギュアが大迫力で思わず引きつけられてしまった。
今回の目玉は「トラウマガメラ」。ガメラの映画「ガメラ3 邪神覚醒」で、ヒロイン比良坂綾奈が、両親の命を奪った敵としてガメラの姿を思い描いた姿。その憎しみと、イリスからの精神干渉によって、実際のガメラ以上に禍々しく、恐ろしい姿となっている。原型師の岡氏はそのイメージをヒントに、制作が予告された最新版のガメラの姿なども盛り込み、新しく、より恐ろしいガメラの立体物を作り上げた。
瞳のない白い目、身体のデザインはより鋭角的になっている。特にこだわったのが背中。亀の甲羅と言うよりも鱗のような分厚いパーツが重なっており、溶岩流のような皮膚が見える。この甲羅は巻き貝のようなイメージも持たせているという。蹴爪の数など、そのアレンジが大いに楽しい作品だ。キットだけでなく、制作代行も行なうとのことだ。
シックで実在感のある衣装が楽しいドールメーカー・ビジュアドール
一般ディーラーブースはドールメーカーの一角がある。ドール、とその衣装が展示されているそのコーナーはとても華やかな雰囲気だ。ビジュアドールはドールメーカーの1社であり、衣装だけでなく、ドールも販売している。
ドールは、肌の質感、頭身、ウィッグ、胸の大きさ、全体の雰囲気など、メーカーによって異なる。ビジュアドールはドールに加え、各パーツの販売も行なっている。いくつもアルドールメーカー、衣装メーカーの中で筆者が気になったのが衣装だ。セーターや毛糸の帽子など、この時期に合った、実際にあるような衣装を出展しているところだ。
ビジュアドールの衣装のコンセプトはまさに実際に人が着るような衣装とのこと。各パーツの作りはとても細かく、力が入っていると感じた。普通にあるような服で、作り手の世界観をきちんと出す、そういう所が面白いと感じた。
今回はバイファム! より幅広い層へアプローチするRCベルク
RCベルグは弊誌でも積極的に取り上げているメーカーの1つだ。レジンキャストキットを販売するガレージキットメーカーだが、バンダイの「イロプラ」のように、パーツごとに成型色を分け、バリの少なく精度の高いパーツでキットを構成することで、模型ファン以外にも多くのファンを得ている。近年その取り組みは大きく評価され、様々なメーカーとコラボレーションしたキットも売り出している。
そのRCベルグが取り組んだ最新のキットが「銀河漂流バイファム」の主役メカ・バイファムだ。全身にバーニアを装備、手足の可動域を考えたシンプルなデザインなど、バイファムをはじめとした「ラウンドバーニアン」のデザインは後のロボットに大きな影響を与えた。RCベルグはその精密な造形で、バイファムを再現、ワンフェスで先行販売を行なった。
面白いのは今回、多色成形と、一色だけのバージョンをそれぞれ販売したのだが、単色バージョンの方が売り上げが大きいところ。やはりワンフェスに来るユーザーは自分で塗る、という心意気で商品を購入しているのがはっきりわかったという。バイファムはこの後RCベルグの公式ページ内で販売するが、そのときは多色成形の方が好評だ。ガレージキットメーカーでありながら、幅広いユーザーのニーズに応えるRCベルグの取り組みには今後も注目したい。
「RCベルグはなぜ企業コーナー側に出展しないか?」という質問もぶつけてみたが、「一般ブースの人達と共にありたいから」という答えが返ってきた。自分の作りたい物を突き詰めて作り、売る。その考えに賛同しているという。昨今は生産を行なうディーラーとやりとりやサポートがしやすいという理由もあるが、一番はそことのこと。RCベルグは今後も一般ディーラーに出展を行なっていくとのことだ。