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SCARZ Absolute、大事な緒戦を落とす!「eXTREMESLAND 2018」が開幕
日本からIgnisなど3チームが応援に駆けつけ、大応援団が編成!
2018年10月18日 23:05
BenQのゲーミングブランドZOWIEが主催するeスポーツ大会「eXTREMESLAND 2018」が10月18日、中国上海にて開幕した。本大会の概要やスケジュールは、前日レポートを参照いただくとして、本稿では初日の模様をお届けしたい。
初日から波乱含みのスタートとなった。オープニングセレモニー直後に登場した我らがSCARZ Absoluteが中東代表のNASRに6:16(BO1)で完敗したのだ。
NASRはアラブ首長国連邦のプロチーム。国際大会の実績がほとんどなく、HLTVの世界ランキングも付いていないというほぼ無名の存在だ。ただ、中東自体は「CS:GO」の盛んな地域のひとつで、中東予選もパキスタンやサウジアラビアなど国別予選と中東予選の2段階で行なわれ、熾烈な競争を勝ち抜いてNASRが出場権を獲得している。距離的な問題から、アジアではなく「CS:GO」最強エリアである欧州のチームを相手に練習を行なっているとされ、アジア勢にとっては未知のチームであり、油断できない相手だ。
初日は、1日で16試合をこなす過密スケジュールの関係から、一発勝負のBO1。バンピック(マップ選択)の結果、Dust IIがチョイスされた。Dust IIといえば、「Counter-Strike」が、「Half-Life: Counter-Strike」と呼ばれていたMODの時代から存在する伝統のマップ。リニューアルを経て2018年から国際大会のマッププールに何度目かの復活を遂げた。
Dust IIはマッププールに戻ってからまだ間がないこともあり、練習不足を理由に露骨に嫌ってバンするチームも居れば、開拓の余地の多さから一発逆転を狙って積極的に取りに行くチームもいる。観戦者の立場としては、定番マップであるInfernoやMirageと比較すると、“何か”が起こる期待感があり、見ていて楽しいマップだ。
ゲームはSCARZ Absoluteがカウンターテロリスト、NASRがテロリストでスタート。始まってすぐわかったのは、NASRは非常に強いチームだと言うことだ。アサルターのhavoK選手、breAker選手をツートップに、中央を抑えるスナイパーとしてNami選手、彼らの連携が序盤から非常に上手く機能している。とりわけ素晴らしいのはNami選手。 SCARZ AbsoluteのスナイパーReita選手のスナイパー対決をたびたび制し、チームを勢いづけた。
一時、2:7まで突き放されたが、Reita選手の踏ん張りにより、5:10で前半戦を折り返した。テロリスト有利とされるDust IIで、このスコアならまずまずの結果で、十分逆転圏内だ。
攻守交代直後のエコラウンドは、SCARZ Absoluteが見事に勝利し、さっそく反撃の狼煙を上げる。しかし、相手にも多くのキルを取られ、辛勝といった感じで、絶対的な有利を確保しきれなかった。振り返ると、これが致命傷となった。2ラウンド目でNASRの2人が武器を買い、1ラウンドに勝利し、武器を購入したSCARZ Absoluteの動きを完全に読み切り、待ち伏せで撃破。エコラウンドを負けたNASRがまさかの5人対0人の完全勝利で2ラウンド目をものにした。
その後はまさにNASRのワンサイドゲームとなった。スナイパーの優劣が勝敗をわける中央の戦いは、スタートポジションの不運も重なり、Nami選手に先に入られてはReita選手が撃たれるケースが増え、SCARZ Absoluteの選手達は、次々に横から、後ろから攻撃され、数を減らされていった。数を減らされると途端に不利になるのが「CS:GO」の特徴で、NASRは最小限の人数で入り口を抑えるSCARZ Absoluteに対してたくみに数的優位を創り出し、各個撃破していった。
「これは情報戦の敗北だな」と感じたのは、投げものがフェイクなのか、本格侵攻の予兆なのか、判別が付いていなかったところだ。また、NASRの独特な布陣も最後まで攻略できていなかった。SCARZ Absoluteは基本的な動きを読まれた上で、陽動作戦にいいように揺さぶられ、完全に手玉に取られていた。今年、MVP PKやRenegadesといったアジアの強豪に国際大会で勝利し、世界トップランカーのfnatecも追い詰めたSCARZ Absoluteだが、ここまで完敗といっていいゲームは筆者も久々に見た。
インゲームリーダーのcrow選手は、試合前、少ないなりにNASRのデモを研究し、相手がDust IIを残してくると見切った上で、各メンバーに作戦を与えていた。それなりの手応えを掴んだ上で臨んだ試合だったにもかかわらず、まさかの完敗を喫し、試合終了後のインタビューでもまともにコメントできないほど意気消沈していた。チームの頭脳として常にクールなcrow選手がここまで落ち込んでいるのは初めてだ。
これは国際試合のほぼすべての結果がデモという形で公開されてしまう「CS:GO」ならではのエピソードで、SCARZ Absoluteは、ここ数年で国際大会への出場機会が増えた結果、“追う立場”からいつしか“追われる立場”に代わっていっていることを実感した。これこそが「CS:GO」の恐ろしさであり、20年近い歴史と伝統を持つゲームの重みと言えるだろう。
試合後、リーダーのLaz選手は「勝てなかったんですけど、まだ終わっていないので、次に向けて気持ちを切り替えていきたい」とサバサバした表情で語ると、元コーチで現5人目の正式選手となったReita選手は、「戦術的にいいように揺さぶられて調子に乗られてしまったってところですか。後半のセカンド(第2ラウンド)を落として、そこでお金を削られてAWPを出せなくなってキツくなってしまいました」と振り返ってくれた。IGL(インゲームリーダー)のcrow選手は憔悴しきった表情で「勝てると思っていたんで……、今はちょっと言葉が出ないですね……」と語り、視線を落とした。
明日に向けては「いつも通りやるだけ、いつも通りやれれば勝てると思います」(Reita選手)、「デモを見直して、敗因を調べて明日に活かしたいと思います」(crow選手)、「応援ありがとうございます。まだ敗退が決まったわけじゃないので、明日に向けてしっかり取り組んで行きます」(Laz選手)と前向きなコメントを得ることができた。
ところで初日観戦していて楽しかったのは、日本から大応援団が編成されていたところだ。GALLERIA GAMEMASTER CUPでプレイオフに出場した2位から4位のチームの選手達全員に、サードウェーブから“eXTREMESLAND 2018観戦ツアー”を副賞として贈られており、3チームから12人(3人はパスポート紛失等の理由で不参加)の選手達が参加していたのだ。BenQの日本法人であるベンキュージャパンやサードウェーブの関係者も含めると日本人は20人近くに達し、海外勢としては最大規模の応援団だ。
ところがSCARZ Absolute対NASRの一戦は、サブステージで行なわれたため、メインスタンドからは観戦できないという事態に。そこで急遽プレスルームを開放し、eXTREMESLAND 2018観戦ツアー一行のための即席のパブリックビューイングが行なわれた。参加したメンバー達は、GALLERIAの日本語配信はVPNを介さないと視聴できないなど、近いようで遠い環境に若干戸惑っていたようだが、その後に行なわれた他のメインステージでの試合も含めて「CS:GO」の国際大会の雰囲気を楽しんでいたようだ。
さて、初日はSCARZ Absoluteが緒戦で敗れたため、本日はこの1試合のみで、明日、モンゴル代表のD13と敗者同士の対戦を行ない、勝った方がグループリーグ突破を掛けた最終決定戦を行なう。明日は負ければ即敗退が決定、2連勝すれば決勝トーナメントに勝ち進める。
最終決定戦の相手は、本日敗れたNASRで、SCARZ Absoluteとしてはリベンジマッチとなる。本日行なわれた試合はBO1だったため、途中で戦術を修正できないまま負けが確定してしまったが、明日以降はすべてBO3で争われる。SCARZ Absoluteがどのように修正してくるのか、NASRに対して果たしてリベンジを果たせるのか、明日の戦いに注目したい。