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ロジクールが放つハイエンドゲーミングキーボードの新提案「G512」インプレッション
ROMER-Gメカニカルスイッチがついに進化! “赤軸”相当の軽いキータッチが魅力
2018年4月25日 15:00
ゲーミングデバイス世界最大手のロジクールは4月25日、2018年の国内モデルを発表した。第一弾となるのはゲーミングキーボード「G512 CARBON」と、ゲーミングスピーカー「G560」の2製品。「G560」は、「Logicool G」待望の新カテゴリとなる製品で、同社としては久々となるメディア向け発表会を開催して、そのインパクトをアピールした。本稿では、ゲーミングキーボードの新モデル「G512」を発表に先駆けて体験することができたので、インプレッションをお届けしたい。
ロジクールは、世界を代表するゲーミングデバイスメーカーとして、ローザンヌに開発拠点を持ち、常にゲーミングシーンに新風を巻き起こす斬新な提案を行なうメーカーとして知られる。
ゲーミングキーボードで言えば、2017年は、下一桁が世代、下二桁目がカテゴリ、下三桁目がグレードを表わすという従来の命名法則をあっさり廃棄し、モデルによっては型番の設定すらも止め、複数のアプローチで新たな提案を行なった。
具体的には、ロジクールがここ数年推進してきた“ワイヤレスゲーミング”の集大成として提案されたワイヤレスゲーミングキーボード「G613」(2017年9月発売)、フローティングキーに改良型のROMER-Gキーを採用した新時代のハイエンドモデル「G413」(2017年6月発売)、eスポーツアスリート向けに特化したプロ仕様のテンキーレスモデル「PRO」(2017年3月発売)、そして日本では密かなベストセラーとして多くのゲームファンに愛されているメンブレンタイプのゲーミングキーボード「G105」の後継モデル「G213」(2017年10月発売)と、少しずつ時期をずらしながらいずれも一芸に秀でた充実したラインナップを揃えた。
過去の進化パターンでいえば、ハイエンドモデル「G91x」、それに次ぐ「G81x」、あるいはその下のモデルを対象に、下一桁を増やすマイナーチェンジモデルをリリースし、数年に一度、欠番を使った新モデルをリリースするという形で展開してきたわけだが、ゲーミングデバイスの競争が熾烈化してきた現在、毎年斬新な新モデルを提案しなければゲームファンを満足させられなくなっているわけだ。
ロジクール担当としては、型番だけではどれが新しくてどれが上位なのかわからないという管理上の問題が発生しているのだが、ゲームファンにとってはそういうことはどうでもいい話で、テクノロジーレベルは常にフラットで、好みや付加機能で選べばいい、という非常にわかりやすい時代になってきている。
というわけで、2018年最初のモデルとなる「G512」だが、見た目は昨年リリースされた「G413」と同じだ。ボディに航空機グレードのアルミニウム合金、メンテナンスが容易なフローティングキー、そして改良型のROMER-Gキー、USBパススルーなどを搭載。「G413」が提案したシンプルなデザインに最高の性能を収めた“新時代のハイエンドゲーミングキーボード”という哲学はそのまま受け継がれている。
「G413」との最大の違いは何かというと、ロジクール伝統のROMER-Gキーが、2種類に分かれたことだ。従来のROMER-Gキーは「ROMER-Gタクタイル」と命名され、新たに「ROMER-Gリニア」が登場した。
この両者は何が違うのかというと、メカニカルスイッチのベストセラーとして、ロジクールも複数モデルで採用しているCHERRY MXのように、採用しているスイッチが異なるのだ。当然、打鍵感も変わってくる。「ROMER-Gタクタイル」と名前を変えた従来のROMER-Gキーは、CHERRY MXでいえば茶軸に一番近い。クリック感、押下圧とも中程度で、カシャカシャとした打鍵音が特徴となっている。これに対して「ROMER-Gリニア」は、赤軸に近い感触で、クリック感はなく、軽量かつリニアなストロークが特徴となっている。
ちなみに、CHERRY MXの人気スイッチには、茶軸、赤軸に加えて、青軸がある。明確なクリック感、カチャカチャとした機械的な打鍵音が特徴で、いかにも“メカニカル”なフィーリングから、“メカニカルキーボードといえば青軸”という誤解もあるほどで、国内外のプロゲーマーにも愛好者が多い。ロジクールのラインナップでは「G710」、「G610」等で採用されており、今回の「G512」への採用は見送られたが、要望があればラインナップに追加される可能性はゼロではないだろう。
それではさっそく、「G512」のインプレッションに入っていきたいが、大前提としてキーボードのスイッチの違いは、良し悪しではなく、完全に好みの問題だ。値段が高いから良い、質が高いから良い、というものでもなく、触り比べて自分に合ったキーを選ぶのがいい、としか言いようがない。「G512」は、その“選択肢が増える”というのが大きなセールスポイントであり、しかもハイエンドモデルにバリエーションが用意されるのは、ロジクールのゲーミングキーボードの歴史の中でも初めての試みだ。
今回筆者は、新進気鋭の「ROMER-Gリニア」を2週間ほど使ってみた。限られた時間でできるだけ使用時間を増やしたかったため、ゲーミング専用マシンではなく、原稿執筆マシンに導入してみた。この原稿もすべて「ROMER-Gリニア」で書いている。
筆者自身は、本業で使用しているキーボードはメンブレンだ。メンブレンというと、安価で低耐久、ノーブランドキーボードの代名詞みたいなイメージがあるが、クリック感がなく、押下圧も低めで、打鍵音も静かというメリットもあり、長時間打鍵していても疲れにくいため、20年以上に渡って愛用している。ここ10年使用していたのは、“史上最高のメンブレンキーボード”と呼び声の高い富士通のLibertouch。羽のように軽いキーストロークで、一切の圧力がなく、脳で考えた内容をダイレクトにテキスト化できる感じが特に気に入って、生産終了後も直接修理を依頼して使い続けていたほどだ。
メンブレンキーボードの弱点は構造上、耐久性が低いところだ。昨年、ついに物理的な限界が訪れ、新たなメンブレンキーボードを物色していたところに、10月、ロジクールからゲーミンググレードのメンブレンキーボード「G213」が登場し、乗り換えた次第だ。Libertouchほどではないが、軽快な打鍵感で、入力速度は従来のメンブレン比で4倍、RGBライトや耐水性も備えており、ちょっとデカすぎるように思うが、まずまず気に入っている。
一方、ゲームマシンに使うキーボードは、仕事柄、評価も兼ねて最新ゲーミングキーボードを使うようにしている。ロジクールやRazerの主要メーカーの主要モデルは大体使っている。純粋な好みを言えば、ゲームをプレイする際にマウス可動エリアを広く取りたいため、ロジクールの「G310」や「PRO」、Razerの「BlackWidow X Tournament Edition Chroma」などテンキーレスが好みだ。
そのような視点から「ROMER-Gリニア」を評価すると、メンブレン派にもとても親しみやすいメカニカルキーボードだ。低価格帯が多いメンブレンキーボードではほとんど見られない、無駄の無いソリッドなデザインが好印象で、パームレストも完全にそぎ落としている、キーボードの手前の空いた空間にマウスを置くという使い方ができる。キータッチは、メンブレンほどではないものの軽量で、クリック感もほとんどなく、静か。全体的にメカニカルスイッチ特有のクセがない。何のためらいもなく「G213」からそのまま乗り換えられる。
スペック的には、ゲーミンググレードのメカニカルキーボードということで7,000万回の高耐久性、1,000Hz(1msの応答速度)の高速レポートレートを誇る。もっとも、ロジクールのゲーミングキーボードは基本的にすべてこのスペックを備えているため、だから凄いという話ではないが、一般的なメンブレンキーボードの耐久性が1,000万回以下、「G213」の耐久性が2,000万回と比較するとメカニカルキーボードの丈夫さは群を抜いている。ちなみにCHERRY MXキースイッチの耐久性は5,000万回、昨今雨後の竹の子のように増えているCHERRY MX互換キースイッチは、さらにそれを下回る、とされており、「G512」はそれらよりも高いことになる。
そのほか「G512」は、「G413」では赤もしくは白の単色だったキーライトがRGBカラーに強化し、フルカラーのイルミネーションが楽しめるようになっている。「G413」同様、キートップ(ファンクションキーはキーサイドも)のみのライティングで、控えめなところが気に入っている。
今回はメンブレン愛好家の視点から「G512」を評価するという、やや変則的なインプレとなってしまったが、個人的には「ROMER-Gリニア」は、「ROMER-Gタクタイル」より好みのキータッチで、メンブレンユーザーも十分カバーしうる味付けになっているため、メンブレン好きが多い日本でも人気モデルになるのではないかと思う。留意点としては、初代「ROMER-G」がそうだったように「ROMER-Gリニア」にも「ROMER-G」固有のクセがある。長く使うものなので、この記事を読んで即「よし、気に入った! 買うか!!」といきなり決めるのではなく、ぜひ店頭で触り比べてみてから自分の1台を選んで欲しい。