「G413 メカニカルゲーミングキーボード」レビュー

G413 メカニカルゲーミングキーボード

上位モデル譲りの高機能はそのままにスタイリッシュな常用モデル

ジャンル:
  • ゲーミングキーボード
発売元:
  • ロジクール
開発元:
  • Logitech
プラットフォーム:
  • Windows PC
価格:
13,380円(税別)
発売日:
2017年6月15日

「G413」は2色展開。日本国内ではシルバーはAmazon.co.jp専売モデルとなった

 まるで自分の肉体の一部かのごとく吸い付くように手に馴染んで欲しい。ゲーマーなら常にそう考えずにはいられないのが、キーボードやマウスといった入力デバイスだ。いずれもPCを使用するために必須のデバイスであるため、PCの低価格化に伴って入力デバイスも常に激しいコスト要求に苛まれてきた。その結果、安価ながら通常の用途であれば特に問題なく文字を入力できる、ポインタを操作できる、というものがPCに標準で付属し続けている。常用に問題ないとはいえ、これら標準付属の入力デバイスのコストダウンは極まって久しく、その性能や耐久性を犠牲にしていることは、PCユーザーなら誰の目にも明らかだ。とはいえ、入力デバイスに多くを求めないという人が多数なのだから、それも仕方のないことだろう。

 その一方で、キーボードやマウスを酷使するPCゲーマーや、一日中PCに向かうプロフェッショナルに向けた製品が隆盛を極めている。どの世界でも、自己の能力が一定レベル以上に達した時、道具の良し悪しが結果を左右することはあり、タフでハイクオリティな製品が求められるシーンがあるからだ。筆者の知る限り、ゲーム開発の現場に、私物のキーボードやマウスを持ち込む人は少なくない。自宅と職場のPCの入力デバイスを共通にして、常に快適な作業環境を得たいからだ。また、プロゲーマーに限らず、ネットカフェでのゲーム大会参加に際して、当然のようにMYキーボード、MYマウスを持ち込む強者の姿をこの目で見たこともある。

 これらの入力デバイスにこだわりを持つ人たちに、昔から支持されているキーボードといえば、メカニカルスイッチを採用したモデルだ。コストの安いメンブレン式が大勢を占めていた時代には、メカニカル式のキーボードは、もはや絶滅危惧種かと思ったものだが、PCゲーム向けの高級キーボードとして息を吹き返し、デバイスメーカー各社がそれぞれ趣向を凝らした製品を拡充するようになった昨今では、その選択の幅も大きく広がっている。

 ゲーマーから定評のあるCherry製のMXキースイッチを採用したゲーミングキーボードを販売するメーカーが多いなか、Cherry製のMXキースイッチを採用したモデルを販売しながらも、オムロンと共同開発した独自の「Romer-G」メカニカルスイッチを採用したモデルを販売しているのがロジクールだ。今般、日本国内での製品リリースを前に、同社のゲーミングキーボードブランド、Logicool Gシリーズのラインナップに新たに加わった「G413」モデルをお借りすることができたので、早速その感触をこの手で確かめてみた。

 本稿では、「G413」が、その真骨頂であるゲームプレイのみならず、職場でのドキュメント作成や日常的なSNSといった普段使いでも活用できるかという視点で、「G413」のレビューをお届けしたい。

ビジネスマンに最適!!「G413」は所有欲を満足させる大人向けモデル

 まずは、「G413」の特徴を整理しよう。「G413」最大の特徴は、何より見た目にカッコイイことだ。廉価なPCキーボードとは一線を画した外観は、パッケージを開封して手に取った瞬間から、オーナーを満足させてくれる。これは、筐体トップのベゼル部分に航空機グレードのA5052アルミニウム合金を使用していることが大きい。スリムタイプながらテンキーの存在するフルキーボードで、幅445mm、奥行132mmの省スペース仕様となっていることもスタイリッシュさを醸し出している。

 キートップのLEDはRGB3色による1,680万色フルカラーではなく、カーボン筐体はレッド、シルバー筐体はホワイトの単色仕様だ。キートップイルミを楽しんでいる層には物足りないかもしれないが、単色5階調のバックライトのみという仕様は、大人の品格を感じさせる。

 ケーブル部分を除く重量は1,105gと、ずっしりとした重量感がある。アルミ仕上げと相まって、この重量感も高級感につながっている。もっとも、G413の1,105gという重量は、アルミ仕上げではない「G810」や「G610」と比較して、むしろ100gほど軽い。この重量差は、「G413」にはメディアコントロール専用のキーが省略されていることと、キーのLEDライトに関する仕様差から来るものだろう。

 ゲーマーにとって最も重視すべき機能面では、すでに同社の「G910R」、「G810」、「PRO」で実績のある「Romer-G」スイッチが採用されている。先にも触れたとおり、LEDカラーはRGB3色ではなく単色5階調の仕様だが、反応ストローク長1.5mm、総ストローク長3mm、押下圧45gと、キーをタイプする上での実質的な機能差はない。ゲーマーにとって特に重要な反応ストローク長1.5mmというのはかなり浅めで、打鍵してみると、キーを認識するまでのストローク感という意味ではCherry製MX RGB Speed軸(シルバー軸)キースイッチの1.2mmとそう変わりなく、指の第一関節から先に少し力をかけただけで、もうキーが認識されるのかといった印象だ。

言葉で説明するのは難しいが、写真で見ると一目瞭然。異なる形状のキーキャップならキーボードに目をやって確認しなくても触覚でキーを確認できる

 さらに「G413」ならではの機能的な特徴として、ゲーミング用のキーキャプが12個付属している。交換用キーキャップは、フルキー側の1~5キー、W、A、S、Dキーに加えて、Q、E、Rキーを交換する想定で、LEDライトが該当する文字の形に透過するように成型されている。標準のキーキャップでは、キートップ部分が、なだらかな凹面を描いているのに対し、この交換用のキーキャップは、キートップの中心が一段下がった平面になっており、キーの上部と左右から中心部に向かってエッジを立ててカットしたようなデザインのタクタイル仕様となっている。

USBポートは残念ながら3.0ではなく2.0仕様。とはいえ、Bluetoothデバイスやワイヤレスマウスのトランスミッター、充電用ポートとして活用できる

 その他、FN+F8でのゲームモードへの移行や、「G810」、「PRO」と同じくゲームプレイ中の入力精度を高める26キー同時認識とゴースト除去、Logicool ゲーミングソフトウェアによるキーボードマクロといった機能がサポートされている。また、専用キーは省略されていても、FN+Fキーによってマルチメディアキーと同様の操作を行なうことができる。

 加えて、筐体上部側面の右側には、USB2.0ポートが1ポート存在し、PC本体にキーボードを接続するケーブルのUSBコネクタを2つとも接続することにより、キーボード側にUSBポートを取り回すことができる。USB2.0仕様であることから、大量のデータ転送には不向きだが、スマホ用の充電ポートとしたり、マウスやヘッドセットを接続するには十分役に立つ。この機能が不要なら、このパススルー用ポートを接続しなくてもキーボードの動作上は何の問題もない。

上位モデル譲りのスイッチ性能とキーキャップ

テンキーを備えたフルキーボードだが、右側のWindowsキーが省略されているため108キーボードということになる

 続いて、「G413」の使用感についてお伝えしていきたい。スリムタイプながら「G413」のキーピッチは標準的な19mmが確保されている。ただし、キー全体の周囲をベゼルで覆ってしまわないフローティングデザインであるためか、キーの高さが通常のキーボードより高く感じられ、相対的にキートップの面積が一般的なキーボードより小さく感じる。もっともこれは視覚的な錯覚にすぎず、キーボードを直視しないで普段通りタイプしていると、打鍵位置はまったく変わらないことから、この点はすぐに気にならなくなる。

フローティングデザインを採用するため側面からみるとキーストローク長がよくわかる。キー押下状態でベゼルまでの間隔は1ミリ程度

 むしろ軽い新鮮さと共に意外な印象を受けたのは、キーをタイプしたときの打鍵感の方だ。理由のひとつは、前述したストローク長からくる感覚の違いにある。Cherry製MXキースイッチ採用の「G610」の反応ストローク長が2mm、総ストローク長が4mmあるのに対して、「G413」では、それぞれ1.5mm、3mmと浅い。キーが沈み込む全体の長さの半分でキー入力が認識されるということに違いはなく、反応ストローク長の違いもわずか0.5mmにすぎないが、実際に触ってみるとかなり軽いタッチでもしっかりとキー入力を掴んでくれるのがわかる。

 反対に総ストローク長の方は1mmも違うのに、キーを完全に押し下げるまでに移動する量に「G610」との違いがさほど感じられない。試しにできるだけストローク全体を使わないで、認識点ギリギリを狙ってタイプを続けてみると、押下圧45gの確かな抵抗感と認識点通過時のわずかなクリック感はあるものの、意外にもCherry製MXキースイッチと固めのメンブレン式とのちょうど中間くらいの打鍵感であった。

 また、ストローク長やクリック感と同じくらいに打鍵感を左右する押下中のクリック音についても、「G413」が採用する「Romer-G」スイッチでは認識を改める必要がある。典型的なメカニカルキーボードといえば、Cherry製MXキースイッチ(青軸)採用の「G610」のように、カチャカチャとクリック音が鳴るイメージだろう。ところが、「Romer-G」スイッチ採用の「G413」の場合、クリック音を鳴らす機構がスイッチに仕込まれていないことから、わずかに押下中の移動ノイズはあるものの、クリック音はまったくしない。「G610」(青軸)のような典型的なメカニカルキーボードのクリック音を期待して購入すると、ちょっと物足りなくて拍子抜けするかもしれない。

 クリック音がしないとはいえ、総ストロークを超える力でキーを叩いて底打ち音を鳴らすことは可能で、底打ち音から得られる打鍵感は悪くない。しかも「G413」の底打ち音は、騒々しいものではなく比較的おとなしいものだ。とはいえ、まったくの静音というわけにはいかないため、周囲の目が厳しい環境では、それなりに配慮が必要だろう。

 これらのことを総合すると、「G413」は、どちらかというと、軽快なクリック音や激しい底打ち音を響かせながらのタイピングを好む人ではなく、無駄なく静かに柔らかく流れるようなタイピングを好む人に向いている。プログラマや事務職などで、正しいタッチタイプを完全にマスターしている人にとっては、まさに最適と言えるキーボードだろう。

ゲーミンググレードとしての厳しい要求もクリア

 前述した打鍵感のインプレッションが、キーボードとしてどのアプリケーションでも等しく重要な話題だとすると、それを超えたところにあるのが、ゲームプレイに特化した要求だ。ゲームの場合、プレーヤーの入力がゲームアプリケーションに反映されるまでに、ミリ秒単位の即応性が求められるほか、プレーヤーの入力したキーストロークのシーケンスは、完全に正しくゲームアプリケーションに伝達されなければならない。入力の一部を落としてしまったり、入力していないキー入力を加えてしまったりする、あるいは入力したキーが別のキーに差し替わってしまうといった事象は、ゲーマーにとって命取りになりかねない。おおよそゲーマーなるものが、最もキーボードに対する要求が高い人種だと言えるだろう。

「Keyboard Ghosting Demonstration」サイトでのチェック結果。同時入力対象外のSHIFTキーを除いた26キーを認識していることが分かる

 「G413」なら、この点についても安心だ。「G810」、「G610」、「PRO」キーボード同様に、26個ものキーをゴーストを発生させることなく同時認識できるロールオーバー性能は、いかなるジャンルのゲームプレイにも申し分ない。キャラクターの移動などで押下状態を続けながら、別のキーで攻撃を入力するといった操作が多いゲームプレイにおいても、両手の指の数を超える26キーの同時認識があれば十分だ。念のために、複数キーの同時押しが認識できるかチェックできるMicrosoftのサイト「Keyboard Ghosting Demonstration」で確認してみたところ、間違いなく26キーを同時認識できていることが確認できた。

 加えて、ゲームプレイに確実に役に立つのが、「G413」だけに付属するゲーミング用交換キーキャップだ。ファセットキーキャップと命名されたこのキーキャップに交換して、WASDの移動操作を行なうと、その形状からキーが絶妙に指にフィットする。ただし、指へのフィット感だけで言えば、最初からすべてのキーにファセットキーキャップを採用する「G910」や「G310」の方がゲームプレイにアドバンテージがあると言える。

 「G413」には、1~5、W、A、S、D、Q、E、Rの12キー分しか付属しない。このキーを交換するかしないかは、「G413」のオーナー次第だ。12キーすべてを交換しても良いし、まったく交換しないまま使用することもできるし、一部だけ交換することもできる。キーキャップの交換は簡単で、付属のプラーを取り外したいキーキャップに深く差し入れ、挟んだ状態で軽く引っ張るだけで良い。いつでも好きな時に、何度でも変更を行なうことができる。

 実際に交換作業を行なってみると、キーキャップの一部だけ交換、という点に、工夫の余地があることがわかった。ファセットキーの形状の違いを利用して、どんなに焦っても絶対に入力ミスを犯さないための手がかりにすることができるのだ。筆者の場合、何度か試行錯誤を経て、WとRの英字キーに加えて1、3、5の数字キーだけを交換した状態を、ひとまずの標準とすることにした。Wキーを交換するのは、WASD移動のホームポジションにすんなりと中指を置くためで、数字キーやFキーの操作で左手を大きく動かしたとしても、中指さえすんなりとWキーに戻ってきてくれさえすれば、ADを求める人差し指や薬指の位置に迷うことはない。

 Rキーの入力するためにDやEキー上にある人差し指を動かすのは容易なため、必ずしもRキーを変更する必要はなかった。ただ、Rキーを変更すれば、その右隣にあるTキーの位置がわかりやすくなるため、今回はRキーも変更することにした。加えて、3本の指をそのままスライドさせる1~3のとその隣の4のキー入力を間違えることはないのだが、5を変えた流れでひとつ飛ばしに1、3も変更してみた。結果はまずまず良好で、キートップの形状が異なることで、むしろ指の座りが良い。

筆者がカスタマイズしたキーキャップ。1、3、5、W、Rと1つ飛ばしにキーを交換してみた
数字の1、3、5に加えてWとRキーを変更してみた。ゲームプレイ用としてはなかなか良好

 キートップの文字と実際に入力される文字の違いにこだわりがないなら、余ったキーキャップを別のキーと交換してもいいだろう。筆者は余ったEキーを右手側のIキーと交換してみた。同様に2、4キーを、それぞれ7、9キーと交換してもいいかもしれない。

 1~5の数字キーは、他のキーと高さが違うため、フルキー側最上段の1~以外のキーと交換してしまうと高さに違いが出て違和感があるが、違和感が許容できたり、むしろその違和感を利用したい場合には、他のアルファベットのキーやテンキー側のキーと交換しても構わない。大きさの異なるメタキー以外なら、2種類の高さに気をつけさえすれば、どのキーと交換するのも自由だ。

 試しにテンキー側の5キーと、フルキー側の5キーを交換してみたが、感覚的にどちらかというと低い位置にあってほしい5キーが高い位置にあるという違和感があって馴染めなかった。テンキーの数字最上段の7~9キーなら、フルキー用の1~5のキーと交換して高くなっても違和感はないかもしれない。さらに一段上のNUMキーの並びであれば、高さは同一だ。こうした工夫をする楽しみは、「G413」キーボードだけのアドバンテージと言えるだろう。

右手側のIキーをEキーと交換。キートップと異なっても使用者本人が分かっていれば問題ない
試しにテンキー側の5をフルキー用の5と交換。視覚的にアリに見えるが触覚的に中央が高いのは違和感がある

 これまでに見てきた通り、「G413」は、いわば「G610」からマルチメディア系の専用キーを廃し、「G610」では他社からの仕入れ部品であるメカニカルスイッチを自社開発のものに置き換えた製品と言える。ロジクールは本製品の価格をオープンプライスとしながらも、直販サイトのロジクールストアでの販売価格は13,380円(税別)。実質的な機能は同等とも言える「G810」が20,750円で、デザインはより優れていることを踏まえると、「G413」のコストパフォーマンスは良好だ。驚きの価格設定だと言えるだろう。

 「G810」に採用されているRGB LEDを活用した仕様には、もちろん実質的にゲームプレイを支援してくれるものもあるが、イルミネーションということもあって多分に演出的性格の強いものが多い。ティーンエイジャーや若手社会人ならともかく、社会に出て久しいベテランゲーマーにとっては、暗所で映える単色のバックライトくらいが、アルミベゼルと相まって、自室のインテリアと調和するちょうど良い仕様だと思われる。

 以上の点を考え合わせると、この「G413」は、PC付属のキーボードからの買い換えにあたり、一味違った高級機を求める層がステップアップを図るのに最適なキーボードと言える。とはいえ、1万円以上するキーボードという絶対的な価格に躊躇する向きもあるだろう。その場合は、メンブレン式ながら基本的なゲーミング性能を備える「G213」が選択肢となる。ただし「G413」に採用されている「Romer-G」メカニカルスイッチは、7,000万回のキープレスに耐えるタフさを備えていることを忘れてはならない。この数字は、PC付属の廉価なメンブレン式キーボードの約7倍の寿命を意味するのだから。

 ベテランゲーマーと年齢層を同じくする筆者は、本キーボードのデザインのみならず、機能面も大変気に入った。これで13,380円なのだから、個人的には迷わず買いだ。活用の度合いは人それぞれだろうが、それでも誰に勧めても外すことのない製品に仕上がっていることは間違いない。