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「HCT 2017 World Championship」、イベントエリアレポート

「ハースストーン」ディレクターのBen Brode氏、ファンと交流し、大いに語る

1月18日~21日開催

会場:Beurs van Berlage

 1月19日、オンラインカードゲーム「ハースストーン」の世界大会「Hearthstorn Championship Tour 2017 World Championship(HCT 2017 World Championship)」が会期2日目を迎え、出場選手8名による初日に勝るとも劣らない熱戦が繰り広げられた。予選ラウンドも終盤にさしかかり、これまでにDOCPWN選手(カナダ)、SAMUELTSAO選手(台湾)、SINTOLOL選手(ドイツ)、SURRENDER選手(韓国)の4人が決勝トーナメントへの進出を決め、逆にHOEJ選手(デンマーク)、KOLENTO選手(ウクライナ)、ANT選手(米国)、NEIREA選手(ウクライナ)の4人が予選ラウンドでの敗退が決まった。明日の会期3日目は、残り4人の枠が決まると同時に、決勝トーナメントの準々決勝が行なわれ、4名に絞られる。

【HCT 2017 World Championship 2日目】
2日目はC、Dグループの予選リーグが消化された。2日目の最終戦となったFR0ZEN選手(米国)とSURRENDER選手(韓国)の一戦は、極めてハイレベルなプレイイングが繰り広げられ、2勝1敗でほとんど負けという状況からSURRENDER選手が強運の引きを見せて逆転勝利を収めた

 ところで、「HCT 2017 World Championship」は、「ハースストーン」の世界一決定戦というだけでなく、最大規模の「ハースストーン」フェスティバルという性格も兼ねている。メイン会場の世界大会と平行して、タバーンエリアでも各種イベントが実施され、来場者の多くが「ハースストーン」を楽しんでいる。本稿では2日目のハイライトとなった「ハースストーン」ディレクターのBen Brode氏のトークセッションの内容も含めてタバーンエリアの模様をお届けしたい。

 タバーンエリアは、中央がカフェ、その周囲にプレイエリア、奥にはステージとソファが配置され、来場者がリラックスして「ハースストーン」を楽しめる空間になっている。これまで「HCT World Championship」が開催されていたBlizzConとの最大の違いは、PCも含めてデバイスを自由に持ち込みが可能なところで、PC版のユーザーが大多数を占めるヨーロッパのイベントらしく、マイPCを持ち込んで「ハースストーン」をプレイしているユーザーが数多くみられた。

 会場にはフリーWiFiが完備され、それを使って、デイリートーナメントが毎日開かれているほか、フリープレイも行なわれ、ステージイベントでは、大型モニターでの実況中継と同時平行して、開発者やキャスターによるトークイベントも行なわれている。トークイベントでは、タバーンエリアの来場者全員が聞き入るかというと、そうでもなくゲームプレイを続けていたり、お酒を手にお喋りを続けている来場者も多く、自由な雰囲気がおもしろい。その奥にはフードコートも用意され、食事を取ることもできるなど、1日中楽しむことができる。

【タバーンエリア】
こちらがタバーンエリア
当日大会の受付を行なっている
ほとんどがプレイエリアだ
奥にはソファと大型モニターで試合を観戦できる
対戦用の機材はすべて持ち込み。ノートPCが多い

Ben Brode氏のトークセッションの様子
「ハースストーン」ディレクターBen Brode氏

 会期2日目のタバーンエリアで特に注目を集めたのが「ハースストーン」ディレクターBen Brode氏の特別ステージだ。「Behind the Cards: Making a Hearthstone Expansion」と題して、「ハースストーン」拡張版の制作工程が語られた。モデレーターは、オランダ出身の「ハースストーン」プロプレーヤーのThijs選手。

 Ben Brode氏が語った「ハースストーン」の拡張版の制作工程は次のようなものだ。「ハースストーン」の開発チームは、イニシャルデザインチームと、ファイナライズチームにわけられており、イニシャルデザインチームは文字通りゲームコンセプトを考えるチームで、ファイナライズチームは最終的なバランスを考えながらゲームとして落とし込んでいくチームとなる。過去の例では、拡張版「グランド・トーナメント」は、イニシャルデザインチームで設計されたカードが、ファイナライズチームによって2枚のカード以外はすべて修正が入ってしまったという。

 拡張版そのものがどのような流れで生まれるのかは、トップダウンとボトムアップの両方のアプローチがあるという。トップダウンは、「ハースストーン」のモチーフである「Warcraft」ユニバースから、“ファンタジーストーリーありき”で、それを「ハースストーン」の世界に落とし込んでいくアプローチ。ボトムアップは、今必要と思われるカードから考えていくアプローチで、わかりやすい例で言えば、すでにスタンダード落ちした「レノジャクソン」は、全体のカードバランスを考えた上で新しいメカニクスをゲームに取り入れたケースで、ボトムアップでデザインされたカードだという。

 カードバランスについては、かなり先の設計まで見据えながら設計していくということで、予測や計画が外れることもあり、常に学びながら調整しているという。興味深かったのは、拡張版単体でのゲームバランスはあまり考慮されていないことで、現行の拡張版は、次の拡張版の開発に影響を及ぼすため、最初から次の拡張版に調整の余地を残しておくという。つまり「ハースストーン」では、カード直接のバランス調整は最小限に留め、次の拡張版でバランスを取り直すという形でバランス調整を行なっているようだ。

 次に「突撃」、「雄叫び」といった「ハースストーン」固有の“キーワード”については、拡張版ごとに徐々に増えていく傾向にあるが、際限なく増やしていくと将来的にキーワードが50個とかになってわけがわからなくなるので、厳選するようにしているという。Brode氏個人の考えとしては、今存在するキーワードをカットしたり、スタン落ちによって自然消滅させる形で原点回帰し、シンプルさを維持したいと考えているという。

 以下、気になったQ&Aをまとめておきたい。2年でスタンダード落ちするルールについては、「常にメタを変え続けるために必要なことであり、現時点でうまく機能していると考えられるため今後も続けていきたい」。ナーフをはじめとしたバランス調整については、「皆さんのフィードバックに加えて、そのヒーローの勝率も重視する」。好きなクラスは「パラディンとハンター」。好きな拡張版は「コボルトと秘宝の迷宮」。「何度も繰り返しプレイできる設計が気にいっている」ということで、今後、「ハースストーン」では単体のアドベンチャーの販売を止め、無料で遊べるような設計になっているが、「コボルトと秘宝の迷宮」のダンジョン攻略は、繰り返し遊べるだけでなく、カードを持っていなくても遊べるところが特に気に入っているという。

【Meet & Greets】
トークセッション後は、Blizzard恒例となっているユーザーが直接質問したり、サインや記念撮影が楽しめる「Meet & Greets」の時間となった