【特別企画】

刀 森岡氏も予想を外す反響。「イマーシブ・フォート東京」はより“ディープな体験”に舵切り

15万人動員「ザ・シャーロック」、完売率97%「江戸花魁奇譚」の大成功を受け

【イマーシブ・フォート東京】

3月1日 リニューアルオープン

利用料金:7,800円~(個別チケット制)

 3月1日より、東京・お台場にある「イマーシブ・フォート東京」がリニューアルオープンする。それに先立ち、「イマーシブ・フォート東京」を運営する株式会社刀CEOの森岡毅氏やクリエイター陣による記者会見が2月4日に行われた。

 「イマーシブ・フォート東京」は、「テーマパークを超える、完全没入体験」をコンセプトにした世界初となるイマーシブ・テーマパーク。発表会では既報の通り、アトラクションの内容が刷新され、3月1日からは4つのイマーシブシアター(体験型シアター)に注力していくことが明かされた。

 また、発表会では今後イマーシブシアターがどのように進化していくのか、また新演目はどのようなものなのかなど、興味深い話を聞くことができた。本記事ではその新戦略や新演目の内容について、より詳しくご紹介していこう!

USJ再建の立役者、株式会社刀代表取締役CEOの森岡毅氏がイマーシブシアターの未来像を語る

よりディープな体験をメインに大幅路線変更……その新コンセプトとは?

 発表会でまず登壇したのは、刀代表取締役CEOの森岡毅氏。森岡氏は、2024年3月1日にオープンした「イマーシブ・フォート東京」のこれまでの1年を振り返りつつ、イマーシブシアターがどのような方向に向かっていくのかを語った。

 それによると、「イマーシブ・フォート東京」はこれまでのライブエンターテイメントをいかにアップデートできるかの挑戦だったとのこと。持ち運べる情報端末の登場で、森岡氏はこれがエンターテイメントの大きなライバルになると感じた。特に意識したのは、デジタルコンテンツに対抗するライブエンタテインメントを生み出す必要性だ。

 そこで森岡氏は、ファンが「生」の体験を求め、アーティストのライブの需要が高まっていることに着目。そして行き着いた答えが、ライブでしか味わえないような興奮や一体感、臨場感などだ。これをライブエンタテインメントにフィードバックすると、「目の前で起こっていることをゲストとして見るのではなく、目の前で起こっていることに対して当事者として巻き込まれるという体験」=イマーシブシアターが答えとなったという。

 特にイマーシブシアターは、今までのテーマパークと異なり、100人が同じ体験をするのではなく、一人ひとりが、毎回違う体験をできることに優位性がある。加えて、森岡氏は役者やアーティストなどのライブエンターテイナーが希望の持てない社会であることを懸念しており、そのために彼らが才能を活かせる場を用意したいという願いがあったという。

 実際、「イマーシブ・フォート東京」では過去1年に300名近いエンターテイナーが働いている。だからこそ、新演目では、しっかりとお客様を喜ばせていくライブエンターテイメントになるよう、アップデートしていくのだと語る。

 このような背景から、「イマーシブ・フォート東京」の第二期戦略として考えられたのが、濃密さや体験のリッチさなど、ライブの“一番いいところ”に対して焦点を当てていく方向だ。実は、この方向に行き着くまでには、第一期の戦略で予想を外したことが影響している。

 そもそも、ディープなイマーシブ体験というのは、理解して普及していくまで、ある程度時間がかかると考えていたという。そのためライトな体験を用意し、段階を追って慣れ親しんでもらうように意図して用意していた。ところが、実際は来場者の7割以上がディープな体験チケットを購入しており、事前予測を大幅に超えた。そこで今回、ディープな体験をメインにする方向に決めたのだという。

ディープな体験への路線変更。だがライトな体験のファンもいたらしいので、その決断には忸怩たるものがあったであろうことは想像に難くない

 特に、ディープな体験への加速を決定づけたのは、「ザ・シャーロック」や「江戸花魁奇譚」の大成功だ。「ザ・シャーロック」は初年度だけで15万人の動員、「江戸花魁奇譚」は14,800円の高額チケットにも関わらず完売率97%という快挙だ。

 ちなみにこの97%については、残り3%は開演できない日があったためで、実際の営業日でいえば完売している。また日本の漫画をモチーフにした「東京リベンジャーズ イマーシブ・エスケープ」の顧客満足度も99%とシアター形式のアトラクションとしては驚異的な高さ。この3つの演目ついては、さらなる大幅なアップグレードを計画しているという。

 そして、これら人気演目のアップグレードに加えて登場するのが、最高級のイマーシブシアターとされる「真夜中の晩餐会 Secret of Gilbert’s Castle」だ。これは、実際にコース料理を食べながら参加する貴族の晩餐会のような世界で、特別プレミアムな体験ができるアトラクションとなる。開演は連休前を予定しているとのことだ。

「ザ・シャーロック」は2幕構成の新作としてリメイク! ついにあのライバルも登場する
「江戸花魁奇譚」はマルチエンディングのバリエーションが増加し「もうひとつの結末」が待っている
「東京リベンジャーズ イマーシブ・エスケープ」は東京卍会のメンバーとの濃厚な個別体験を増やす予定
「真夜中の晩餐会 Secret of Gilbert’s Castle」の価格は2万円くらいで検討中とのこと。

 だが、このようなディープな演目をメインとするため、これまでのライトな体験ができるアトラクションは一度終演となる。これにともなって価格制度も変更される予定だ。

 これまでは、1dayパスを6,800円を支払い、見たい演目があれば追加課金する方式だった。だが森岡氏はライトな体験がなくなる以上、1dayパス制を廃止して自分が欲しいアトラクションのチケットを買っていくスタイルに改めることを考えた。

 仕事帰りに寄って、ちょっと映画を見て帰ろうかなというノリで、平日に仕事で疲れた人々の需要も満たす構えだ。そこで、施設の形態も見直し、顧客の動線を変更する予定としている。顧客が来場し、明るい雰囲気の中で自由にアトラクションを選ぶ、そんなイメージでのリニューアルだ。そして最後に、「演劇好きの方、そして謎解き好きの方に最高の刺激となるアップデートになるので、この面白さと感動が届いてほしい」と締めくくった。

新たな動線を活かした施設内レイアウトは、まるで映画館の待合室を思わせる

「真夜中の晩餐会 Secret of Gilbert’s Castle」と「ザ・シャーロック ジェームズ・モリアーティの逆襲」の気になる内容は?

 続いて開発者の二人が登壇し、「真夜中の晩餐会 Secret of Gilbert’s Castle」と「ザ・シャーロック ジェームズ・モリアーティの逆襲」の紹介が行われる。

 まず、「江戸花魁奇譚」を手掛けた刀クリエイティブディレクターの興山友恵氏が登壇し、贅沢でミステリアスな一面を持つという「真夜中の晩餐会 Secret of Gilbert’s Castle」についての概要が説明された。

 舞台は19世紀ヨーロッパ貴族の邸宅で、とある晩餐会の招待状をゲストが受け取るところからスタートするという。ゲストは豪華シャンデリアがある食堂にて、リッチなディナーコースに舌鼓を打つ流れだ。興山氏によると、人生には光と影があり、ゲストは登場人物のひとりとなり、光と影を体験してもらいたいという。

 もちろん、ただの晩餐会を体験するのではなく、さまざまな物語に巻き込まれるのはほかの演目と同様だ。特に個別体験に関しては「いまだかつてないレベル感」とのことで期待できる。最後に「登場人物の衣装などもとてもきらびやか。贅沢でミステリアスなこの真夜中の晩餐会、ご期待ください」と締めくくった。どのような料理が出るのかも含めて、いろいろ気になる演目といえる。まさか殺人事件とか起きる流れにはならないとは思うが……。

「江戸花魁奇譚」でのフィードバックをもとに濃密にストーリーを美しく仕上げいくと興山氏
誰しもが一度はこんなところでご飯食べてみたいなというような晩餐会ですと興山氏
料理は前菜、メイン、デザート、そしてウェルカムドリンクのスパークリングワインも用意していますとのこと

 続いては、刀シニア・クリエイティブディレクターの津野庄一郎氏による「ザ・シャーロック ジェームズ・モリアーティの逆襲」の紹介だ。

 本演目はこれまでの「ザ・シャーロック」を序章として再構成し、二幕制の物語として再誕した。「イマーシブ・フォート東京」屈指の人気アトラクションだけに、その注目は大きい。

 津野氏によると、一番のポイントはシャーロック・ホームズの永遠の宿敵、ジェームズ・モリアーティ教授とのこと。そして第一幕ではベーカー街で起きた連続殺人を解決すべくホームズとワトソンが奔走するが、第二幕では今まで明かされることがなかったこの連続殺人事件に隠された裏の真実が現れるという。

 津野氏によると、シャーロック・ホームズとジェームズ・モリアーティの対決を「しっかりと堪能していただけるような構成」とのことなので、これまでの「ザ・シャーロック」を体験したゲストは確実に楽しめるアトラクションに仕上がっているだろう。最後に、「世界中で聖書の次に読まれているシャーロック・ホームズの世界に自分が入り込めるので、ぜひ皆様遊びに来てください」とした。どのような体験になるのか、期待大のアトラクションに間違いない!

「ザ・シャーロック」を体験してない方にも一幕で理解してもらえるし、セリフの変更やシーンの追加もあるので体験済のゲストも楽しめると津野氏
二幕制にしたのはイマーシブシアターは凄く歩き回るので休憩の意味もあるとのこと
「ザ・シャーロック」はいろいろなオープンチャットなど壮大な考察合戦が繰り広げられており本当に嬉しく思っていますと津野氏

 最後に質疑応答があり、さまざまなメディアから運営などについての質問が飛び交った。なかでも個人的に気になったのは「今際の国のアリス」が今後どうなるかという質問だ。

 森岡氏によると、2024年夏から始まって大絶叫がこだまする人気演目だが、こちらも2月で終演とのこと。とはいえ、いろいろと「構想中です」や「行間を読んでください」というコメントもあり、続編や大規模アップデートも期待できるのではないかと思う。

 大胆な方針変更ゆえに今まであったアトラクションがなくなってしまうのは残念だが、まずは目玉となるイマーシブシアターのアップデートには期待したい。