【特別企画】
ファミコン版「スペランカー」38周年。“史上最弱”とうたわれた探検家の活躍は現在も語り継がれ、愛される存在に
2023年12月7日 00:00
- 【スペランカー】
- 1985年12月7日 発売
本日2023年12月7日は、ファミリーコンピュータ版「スペランカー」の38回目の誕生日だ。他に例のないLEDが搭載されたカートリッジでアイレムから発売された本作は、“史上最弱”とうたわれた探険家の洞窟探検を描くアクションゲームで、そのシビアな操作性やルールにより、ときに不名誉なレッテルを貼られてしまうこともあった。
その発売から40年近くが経過し、クラシックゲームに対する意識も変わった現在は、本作に対する評価もずいぶん変わってきたようだ。
現在はTozai Gamesが権利を所有し、その移植版やリメイクをリリースしているので、ゲームを遊んだことがある人も多いはず。本稿では2013年に発売された「スペランカーコレクション」のプレイステーション 3版を使用して、筆者が知る限りの本作の魅力を振り返ってみたいと思う。
PCからファミコンへ。大幅なアレンジが施され、ほぼオリジナルの内容となった
「スペランカー」の元祖は、今からちょうど40年前の1983年に、北米のMicroGraphicImageがPCのATARI 400/800で発売した同名タイトルで、それとほぼ同等のCommodore64版(1984年、Broderbund販売)が「オリジナル版」として「スペランカーコレクション」に収録されている。
タイトルの「スペランカー(Spelunker)」は英語で「洞窟探検家」を意味し、その名の通り探検家が洞窟内を探険し、ギミックやアイテムを駆使して最深部を目指していくというゲームになっている。各ステージはそれぞれテーマに基づいて設計されていて、例えばステージ1は「エレベーター」を使った細かな横穴の探索、ステージ2は繊細な操作で「ロープ」をジャンプして移動するなど、ステージを象徴するギミック名が開始時に表示される仕組み。高所から落ちるとミスになるルールもあるが、ファミコン版ほど極端ではなく、自分の身長のより高い足場を飛び降りて進んでいくポイントも存在する。
そして本題となるファミコン版「スペランカー」は、オリジナル版から2年後の1985年に登場した。アイレムがBroderbundの許諾を得て移植したものだが、比較をしてみるとその内容はかなり違っていることがわかる。……というより、国内では恐らくこのファミコン版のほうが知名度が圧倒的に高いので、筆者も含め「スペランカーコレクション」に収録されたオリジナル版をプレイして、「えっ、こんなに違うの!?」と思った人のほうが多いのではなかろうか。
当時のアイレムで開発責任者だったスコット津村氏(現Tozai, Inc.共同創業者兼エグゼクティブプロデューサー)は過去のインタビューや「スペランカーコレクション」内のコメントで、単なる移植ではなくファミコン版オリジナルの「スペランカー」を目指したことを語っていた。シビアな操作や主人公が弱いルールは意図的なゲームデザインで、やり込むほどに面白くなるように作り込んだそうだ。また子供達が洞窟探険をする映画「グーニーズ」に影響を受けたとも。
舞台となる洞窟は、上下左右にスクロールする幾層にも分かれた広大なマップで、4つのステージに分かれている。オリジナル版で設定されたステージごとのテーマは部分的に継承されているが、全体的なレベルデザインはファミコン版オリジナルのものだ。
本作の特徴的なゲームデザインとしてフィーチャーされるのが、主人公の“史上最弱”を象徴する、段差からの落下によるミスだ。自分の身長(16ドット)より低い落差(14~15ドット程度)でもミスになるというのが定説で、ちょっとした段差やロープを下りようとしたとき、「えっ、ここで!?」みたいなミスが頻発する。
極端なところでは、ステージ1や2にある長めの坂道の下りでピョンピョン跳ねながら移動していたらその落差でミスになるなんてこともあり、同年9月に発売された「スーパーマリオブラザーズ」を代表するジャンプアクションに慣れていると、面食らうことは間違いない。
洞窟内のロープやハシゴから跳び移る操作のシビアさも、この落下ミスの衝撃を強調することとなった。十字ボタン横とジャンプボタンの同時入力がことのほかシビアで、アバウトに操作をすると滑り落ちるようにミスになってしまう。落下した場合も下まで落ちずに、規定の高さで止まってしまうのがまたもの悲しい。
このようなシビアなゲームデザインは、当時のユーザーの印象を大きく左右したわけだが、当時遊んだ筆者には本作に対するネガティブなイメージがまったくない。確かに操作感覚や落下ミスの設計は高い難易度に直結していたものの、あくまでゲームデザインの一環という認識で、操作にラグも感じられず軽快だ。筆者の当時のゲームに対する個人的なネガティブファクターの「動きがガクガク」、「不条理な敵の攻撃」、「無意味に長い」、「キャラが出過ぎて画面がチラつく」といった要素もなく、1985年のタイトルとしてはゲーム画面も綺麗にまとまっている。アイレムのゲームは、どのゲームも画面がカラフルで綺麗に見えたのが好きだった。
「スペランカー」は後に同じアイレムからアーケードゲームとしてリリースされるわけだが、ステージ構成がよく似ていたことも興味深い。家庭用とアーケードなのでシステム面で違いはあるものの、ともに全4ステージ構成で、ステージ最後の扉を開くとエレベーターで深層に進める演出があり、最終ステージにはゴールではない意味深なピラミッドがある点なども共通している。ファミコン版の2周目以降をプレイできるゲームデザインもアーケードゲーム的であった。
ゲームのサウンドは、オリジナル版から引き継がれたタイトル画面やゆうれい出現時の曲以外は、アイレムのオリジナル楽曲。メインBGMは2ループ目になるとリズムが入るとか、隠しアイテムを取ったときのBGMが効果によって違うとか、意外に凝っているのが楽しい。そしてあのミスをしたときのメロディは、ゲームをやり込んだファンにとっては本作を象徴するサウンドである。
愛すべき洞窟探険家の活躍は、主にリメイクタイトルで現在に受け継がれる
聞けば「スペランカー」とは、プロフェッショナルな洞窟探険家を意味する「ケイバー(Caver)」よりも経験の浅い、趣味的に活動する探検家を意味するそうだ。ファミコン版のパッケージイラストの主人公らしき人物の姿を見る限りは、そこまで経験が浅いようには見えないが、探検の道具は現地調達で、ちょっとしたところでミスになってしまう点などには、そんな意味が込められているのかもしれない。
そんな愛すべき探険家「スペランカー」と出会える機会は現在、「元祖みんなでスペランカー」や「みんなでワイワイ!スペランカー」といったリメイク版が主となっている。これらはファミコン版の魅力でもあったゲームデザインを継承し、マルチプレイ可能な探索アクションとして昇華させ、高い評価を得ている。
今回使用した「スペランカーコレクション」も現在もPS3とPS Vitaで配信中。対応ハードがあればプレイも可能で、筆者も両方所有しているが、いつでもプレイができるよう、現行のハードでも発売してほしい気持ちもある。多くのファンから愛されるひ弱な探検家の伝説(!?)は、後世まで語り継がれてほしいものだ。
(C) 1983-1984 Timothy G. Martin. (C) 1985-2013 Tozai, Inc.
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Spelunker is a trademark of Timothy G. Martin and Tozai Games is a trademark of Tozai, Inc.
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