【特別企画】

「Rez」発売から22年周年。激動の時代に生まれた、音と光でプレイヤーの本能を刺激する3Dシューティングを振り返る

【Rez】

2001年11月22日 発売

 今から22年前の2001年11月22日、セガのシューティングゲーム「Rez(レズ)」がドリームキャストとプレイステーション 2で発売された。

 「Rez」は、ソリッドな3DCGで構築された電脳世界を飛び、世界を侵食するウイルスを破壊しながら進んでいく三人称視点のシューティングゲームで、画面のエフェクトや効果音を意図的にBGMのリズムとシンクロさせることで、プレイヤーの高揚感を煽るシステムを導入している。

 本稿では現在エンハンスが配信中の本作のリマスター&VR機器対応版「Rez Infinite」のスクリーンショットを使用し、22年前に発売された「Rez」の魅力を振り返ろう。

画像は全てPS4版「Rez Infinite」のもの。解像度やアスペクト比が変わっていること以外は基本的に「Rez」と画面構成は変わらない
【『Rez Infinite』 アナウンストレーラー | PS5™ / PS VR2】

セガの自社ハード撤退と他社ハード参入が決定した激動の2001年に生まれた

 この「Rez」が発売された2001年は、本作を発売したセガがドリームキャストならびに自社ハードの製造販売から撤退し、他社ハードにもソフトを供給することが決まった激動の年であった。開発は現エンハンスの水口哲也氏が率いるユナイテッド・ゲーム・アーティスツ(UGA、旧セガ第9ソフト研究開発部)が手がけ、元はドリームキャストで開発されていたものを他社ハードへのソフト供給決定を受け、プレイステーション 2版も並行して開発され、2つのプラットフォームで同時発売に至っている。本作はセガ初のプレイステーション 2参入タイトルのうちの1本となった(もう1本は「クレイジータクシー」)。

オリジナルの「Rez」は22年前のタイトルだが、今プレイしても古さを感じさせない
【クレイジータクシー】

 開発には約3年を費やしたとされ、その様子を追ったドキュメントがTV番組で放送されたこともあった。番組ではセガの自社ハード撤退間近で揺れる開発現場を背景に、プロデューサーの水口氏を筆頭とする開発陣にスポットが当てられ、彼らの情熱や葛藤、ときには互いに衝突する様子などが赤裸々に映し出されたのだ。当時はまだ本作がコードネームの「K-project」と呼ばれていた頃で、番組では正式タイトルや発売日も明かされていないという異例の内容であった。

 筆者の「Rez」との出会いは、UGAがその2年前にリリースした「スペースチャンネル5」の記事担当だったことで、引き続き本作の記事担当になったのがきっかけだ。UGAの開発ということで「スペースチャンネル5」と同様、ビジュアルやサウンドにフォーカスした内容ということはなんとなく予想していたが、ジャンルが3Dシューティングだったことには大いに驚かされた。

 ワイヤーフレームとポリゴンで作られた世界は、滑らかでフォトリアルに仕上げる手法の3DCGが主流になりつつあった当時としては逆に新鮮に感じられ、ATARIがリリースしたアーケードゲーム「スター・ウォーズ」やディズニー映画の「トロン」などで育った筆者の心を掴んだ。

電脳空間を舞台とする世界観やステージの表現は、「トロン」(1982)からの影響が強いように思えた

「コール&レスポンス」にフォーカス。光と音、そして振動がトリップさせる

 ゲームはロックオンタイプのレールシューティングで、プレイヤーはワイヤーフレームやポリゴンで構築された電脳世界を飛行し、世界を侵食するウィルス(敵)を破壊しながら進行し、最後に出現するボスを倒せばクリアというシンプルなものだ。プレイフィールは同じセガから発売された「パンツァードラグーン」などに近いが、回避や視点変更の要素はなく、敵の攻撃はロックオンで撃ち落としていくシステムとなっている。

ショットボタンを押しながらレティクルを敵に合わせてロックし、ボタンを離すとショットが発射される

 開発陣が本作で強くこだわっていたのは、ゲームにおける「コール&レスポンス」。プレイヤーが操作をすると、その結果として画面のキャラクターが動いて効果音が鳴る。ゲームにおいて当たり前の仕組みを、プレイヤーが刺激的に感じられるようなようなゲームデザインが施されている。

 ウィルスをロックオンして撃つのが「コール」、それを破壊したときが「レスポンス」で、そのときに発生する効果音がバックに流れているBGMのリズムに意図的にシンクロされ、厚みのあるサウンドとしてプレイヤーに帰ってくる。ロックオンは最大8つまで行え、例えば画面に敵が8体出てきたとき、全てをロックオンして一度に全てを倒したときと、複数の敵を複数回に分けてロックオンして倒したときでは効果音の鳴り方が変わる。3Dシューティングをやりながら、同時に電子楽器を触っているような斬新な体験ができるのである。

敵をロックして撃つと発生するエフェクトやサウンドが、プレイヤーの快感を増幅する

 各ステージは進んでいくと、ビジュアルとサウンドが次第に盛り上がりを見せていく設計で、さらにプレイヤーキャラクターはアイテムを取るとレベルアップし、その姿とともにショットのエフェクトや撃ったときの効果音も変わっていく。同じステージの同じBGMでも、キャラの姿によって聞こえるサウンドが変わるのも面白いところだ。

敵を倒すと現れるサポートアイテムを取るとレベルアップして姿が変わるプレイヤー。ショットのエフェクトや音も変わる

 さらに本作は映像やサウンドとともに、振動にも重きを置いて演出していた。ドリームキャストは別売りの振動機器「ぷるぷるパック」に対応。一方プレイステーション 2はコントローラーのDUALSHOCK2内蔵の振動機能に加えて、「トランスバイブレーター」という追加の振動演出を発生させる専用の機器が発売されるなど、環境面でも充実していた。セガハード寄りのゲームファンとしては、この差についてちょっと複雑な思いもあった(もちろんそのPS2版も同時に購入したのだが)。

 エフェクトやサウンドにフォーカスしたタイトルではあるものの、リズムゲームとは違い、サウンドが勝手にリズムに乗ってくれるので、ゲームプレイにはリズム感は必要としない。シューティングゲームとしては攻撃がロックオンのみで、敵の攻撃パターンもそれに合わせて作られているので、若干単調に感じるかもしれないが、条件によって変わるマルチエンドがあるなど、シューティングゲームとしてのやり込み要素も用意されている。

ステージが進むと、そのモチーフが世界4大文明を表していることが少しずつわかってくる
惑星の名前が付けられたボスはゲームの大きな見どころとなる。ぜひ動いているところを見ていただきたいもの

 サウンドは当時Wave Master(旧セガデジタルメディア制作部)に所属していたコンポーザーの杉山圭一氏をはじめ、国内外の著名なミュージシャンやDJが手がけている。テクノミュージックを主体としたサウンドが採用され、ステージのビジュアルとも上手くマッチしていた。当時の筆者は、テクノはジャンルとして好きだったものの、その頃のテクノカルチャーに上手く乗れなかったことによるコンプレックスがあり、本作のサウンドについて心の片隅で「ちょっと尖り過ぎじゃね?」みたいに思っていたこともあった。

 その後、2008年のXbox 360でのHDリマスター版や、現行の「Rez Infinite」を改めて体験してからは、若さゆえの薄っぺらいこだわりを恥じ、入手していなかったサントラも改めて購入した。エリア1の「Buggie Running Beeps 01」から続く各ステージのメインBGMとボスBGMは本当に最高なのでぜひ聴いてほしい……。

サウンドとともに、少しずつ変化していくステージの見せ方も巧い
【Rez Infinite Original Soundtrack Promotional Video】

15年の時を経て進化。VR機器対応や新ステージも追加された「Rez Infinite」

 そんな「Rez」は現在、エンハンスの「Rez Infinite」としてプレイすることができる。2016年にリリースされた本作は「Rez」のゲームデザインに加えて、プレイの幅を設けたいくつかのモードが追加され、遊びやすく進化している。

より手軽に、遊びやすく進化した「Rez Infinite」。現行ハード対応ということで、プレイ環境が整った中で遊べるのもいいところだ

 中でも最大の進化ポイントはVR機器への対応だ。VR機器でのプレイ時は、オリジナルではレティクルの動く範囲までしか変えられなかった視点が、頭を動かすことで全方向見られるようになり、自分が本当に電脳空間に入り込んでいるような気分が味わえるようになった。さらに無数の光がステージを形作る「Area X」も登場。本編とはひと味違う3D空間を自在に飛び回れるゲームデザインのもとに作られたこのステージは、VR機器でプレイするとその没入感が倍増する。

 今回の記事制作にあたり、セガのサーバーに現在も残っている2001年当時の「Rez」の公式サイトを眺めてみたところ、当時の水口氏が「これはまだひとつの通過点。まだまだ『Rez』は進化する」とメッセージを寄せていて、それから15年後の「Rez Infinite」で実際に進化の形を提示したのはさすがだと感心させられた。

3D空間を自在に移動できるようになった「Area X」。通常の画面でもプレイできるが、VR機器でプレイすると印象がまったく変わる

 何より、思い出したときにすぐ「Rez」がプレイできるのがありがたく、筆者はPS5にインストールして稼働中。本作を楽しむために、当時よりちょっといいワイヤレスヘッドホンも用意した。今宵もまた22年前に作り出された電脳世界へと潜ってみたい。

□PS5/PS4版「Rez Infinite」のストアページ
□Steam版「Rez Infinite」のストアページ