【特別企画】

「グラディウス」がリリースから38年。数多くのアーケードゲーマーを虜にした名作タイトルの当時としては画期的だったシステムなどを振り返る

【グラディウス】

1985年5月29日 稼働開始

画像はPS4版「アーケードアーカイブス グラディウス」より

 アーケードゲームは1970年代から大勢の人に遊ばれてきたものだが、筆者が始めてプレイしたのは1979年から80年にかけてのことだったと記憶している。小学生だった80年代前半は「インベーダー」から始まり、「平安京エイリアン」や「ルパン三世」、「ドラキュラ」、「パックマン」、「ギャラクシアン」などをプレイしていたが、中学2年に学区外のレジャー施設へ遊びに行った時に見た「ゼビウス」には大きな衝撃を受けたものだ。

 それまでのゲームは原色系の色使いが多かった印象があったが、金属的なグラフィックを前面に出した「ゼビウス」はグラフィック面でもさることながら、地上と空中で攻撃を撃ち分けるといった要素や、ソルやスペシャルフラグといった隠し要素なども盛り込まれ、それまでのアーケードゲームにはない魅力を与えてくれた。

 その翌年となる1985年、筆者が良く通っていたゲームセンターのひとつに、地元デパート・ダイエーで営業していた「ダイエーレジャーランド」があった。デパートの最上階といえばレストラン街というイメージがあったなかで、そこはフロアの1/4がゲームセンター。その部分のみ照明が落とされ、テーブル筐体が所狭しと並んでいたのだが、ある日その中の1台に人だかりができている。何が稼働しているんだ? と思いながら覗いてみると、モアイが口から何かの弾を吐き出すところを、青く美しいレーザーが貫いているシーンだった。このときの衝撃たるや、その後には経験することがなかったほど。それが筆者と「グラディウス」との出会いだった。

 本稿では、「グラディウス」の稼働38周年を記念し、当時の思い出を振り返っていく。

当時はこの、美しく青く伸びるレーザーとモアイが大量に吐くイオンリングに目を奪われたものだ
雑誌「マイコンBASICマガジン」の1985年7月号記事を見ると、このときはゲームタイトルが「超時空ファイター グラディウス」だったのがわかる
「グラディウス」ストーリー

 亜時空星団バクテリアンから母なる星グラディウスを守るため、超時空戦闘機ビックバイパーが今、暗黒の空間に飛び立つ。バクテリアンの総攻撃は激しく、宇宙各所に配置してあるスペース・コロニーからエネルギー・カプセルを奪い取って進撃してくる。そのカプセルを取り戻し、パワーアップしながら敵を撃墜せよ。目指すは、敵要塞ゼロスだ。

当時では珍しい3ボタン。ビックバイパーを操作し最終面を目指す

 プレイヤーは自機であるビックバイパーを操作し、敵を倒しながらパワーアップカプセルを回収して自機をパワーアップさせ、最終面を目指して進んでいく。本作の原型となったのは、同社が1981年に稼働を開始させたタイトル「スクランブル」だ。縦画面の中を横スクロールしていく自機を操作し、ショットだけでなくミサイルも使用して敵を倒すのだが、そういった部分が「グラディウス」にも受け継がれている。

 横画面横スクロールで進行する「グラディウス」では、「スクランブル」よりもボタンの数が増えて3つになった。8方向レバーとショット、ミサイル、そしてパワーアップボタンを使いこなす必要がある。しかし、この当時のゲームは使用するボタンは多くてもせいぜい2つほどで、3つというのは非常に珍しい部類。それゆえに最初は操作方法で戸惑う人も多く、慣れるまではショットとミサイルを両方押しているという人も良く見かけた覚えがある。

 「グラディウス」の記事を掲載した雑誌「マイコンBASICマガジン」1985年7月号の記事にも「ボタンは2つにしてほしかったと思うのは私だけかな?」と書かれていたことからも、3つボタンというのがレアだったのがわかるだろう。ちなみに、3つボタンを使用するこの時期のゲームとして思い出すのは、カプコンの「ガンスモーク」とSNKの「ASO」なのだが、デビューはどちらも「グラディウス」よりも半年ほど遅い1985年の晩秋だった。

このような感じで書かれていたのだが、慣れてくるとショットとミサイルが別になっているほうがプレイしやすくなるのはご存じの通り

 本作はゲーム画面の最下段にレベルメーターが設置されており、左から順に「SPEEDUP」→「MISSILE」→「DOUBLE」→「LASER」→「OPTION→「?(BARRIER)」と並んでいた。プレイ中、特定の敵編隊や赤い色の敵を倒すと出現する赤カプセルを回収するごとに、SPEEDUPから順に右側へとパワーアップゲージが移っていき、?の時に再びカプセルを取るとSPEEDUPへと戻る。パワーアップゲージが自分の欲しい場所で光っている時にパワーアップボタンを押すと、自機がパワーアップするというシステムは、今ではお馴染みといっていいだろう。

 しかし、これも当時はなかなか理解するのに苦労した部分で、慣れるまではレベルメーターのどの位置にパワーアップゲージがあるのかを即座に把握できず、パワーアップするのにも手こずった。このように、ボタン数の多さやパワーアップゲージでのパワーアップといった新規要素が盛り込まれていたことも、「グラディウス」の人気に一役買っていた。

赤い敵を倒すか特定の敵編隊を全滅させることで、赤いパワーアップカプセルが出現する。1つ取ると、レベルメーターのSPEEDUPにパワーアップゲージが灯り、そこでパワーアップボタンを押すと自機がスピードアップするという仕組み。今では悩む人はほとんどいないと思われるが、当時は斬新だったのでなかなか身体が覚えなかったものだ
SPEEDUPは、自機の移動速度を上げるパワーアップ。2速でかなり早くなるので、慣れるまでが大変。速度をダウンさせる方法はないため、パワーアップしすぎには注意だ
MISSILEのパワーアップは、自機から右下に向けてミサイルが射出されるようになる。ミサイルは地形に沿って下ってはくれるものの登らないので、例えば火山の奥に敵がいるような場合は、そこへ移動してからミサイルボタンを押す
DOUBLEでパワーアップすると、ショットが前方と右斜め上へ同時に出るようになる。ただし、画面内に1発しか撃てないほか、レーザーとの併用は不可能。一見弱そうだが、装備するステージによって強くも弱くもなる
LASERを装備すると、メインショットが敵を貫通して前方へと伸びるレーザーになる。ただし、地形には阻まれる。上下に幅広い攻撃判定を持つので、使い方によっては障害物の陰に配置されている敵をも攻撃が可能。ダブルとは併用不可だ
OPTIONは、自機と同じ装備を持つ無敵の発光体。1度のパワーアップで1つ、最高で4つまで装備することができる。早い段階で4つ装備することが、攻略のカギ
?はバリアで、装備すると自機前方にバリアが張られる。前方からの敵弾などを一定回数防いでくれるのだが、背後から飛んでくる弾には無防備。過信は禁物なので、油断しないように

 パワーアップカプセルを回収してレベルメーターのパワーアップゲージを移動させ、自機をパワーアップさせていくという手順も斬新だったが、中でも特にインパクトが強かったのが「オプション」の存在。何も知らない時に見て感じたのは、自機の動きをトレースして動く、なぜか弾の当たらない物体が増えていくパワーアップ。似たようなものに、少し前にリリースされた「ツインビー」が採用した“分身”があったが、自分が足を運ぶゲームセンターには導入されていなかったこともあり、重ねてオプションの存在を謎のものにしていた。

 しかし、他の人のプレイを何度も見ているうちにオプションがとんでもなく強力なパワーアップということがわかると、これまでのモヤモヤが一気に晴れたように思えたもの。

 オプションを装備するごとに“現時点の自機のパワーアップ状態を反映した、当たり判定のない攻撃機が増えていく”のだから、その攻撃力に当時は驚かされた。自機の火力が最大で5倍にもなるのだから、MAXパワーアップ時などはこの攻撃力で、敵が出現した瞬間に軒並みなぎ倒していける爽快感を得られる。これこそ「グラディウス」の最たる特徴のひとつだ。

それまでのシューティングゲームとは一線を画すパワーアップだった“オプション”は、自機と同等の火力を持つ、敵弾にも当たらない無敵の分身。自機がパワーアップすればオプションの攻撃力もアップするほか、地形を無視しての配置も可能。オプションを自在に使いこなすことが、攻略へのカギとなる

 オプションだけでなく、見た目の美しさと強力な破壊力を兼ね備えたレーザーにも目を奪われたもの。この時代、連射装置といったものはほとんどなく、ショットはいわゆる手連(手動での連射)をしなければならなかった。ところが、レーザーを装備すると敵を貫通して一気に撃破するだけでなく、上下に移動すれば途中で触れた敵をなぎ倒し、さらにはショットボタンを押しっぱなしでも問題ないという、いいことずくめの武器。

 初心者の中には、そのような面を見て真っ先にレーザーを装備してしまう人も当時は多かった。とはいえ、レーザーにパワーアップした瞬間から難易度が急上昇するので、諸刃の剣ではあるのだが……。

レーザーの美しさは、当時稼働していたアーケードゲームの中でも群を抜いていた。それでいて威力があるのだから、一刻も早くパワーアップしたくなる。しかし、装備すると急に敵のスピードがアップしたり弾を撃ってくるようになるので、危険度も増してしまう
レーザーは、ラインの上側にも当たり判定がある。わかりやすいのは2面最後のザブ地帯で、自機目がけて上から襲ってくるザブが、レーザーから距離が離れた位置で破壊されているのが確認できるだろう

 このようなパワーアップを駆使して先へと進んでいくのだが、各ステージごとにガラリと変わる背景なども特徴のひとつと言える。

 例えばステージ3には当時、イースター島にある謎のオブジェクトとして知られていたモアイをモチーフにした、「グラディウス」独自のモアイが配置されていたほか、ステージ4は火山が天井側から突きだしていたり、星が瞬く以外は一切の背景がないステージ5など、プレイヤーを飽きさせない工夫が凝らされていたのだ。そのようなステージが「グラディウス」には7つ用意されており、バラエティ豊かなステージ構成にも魅了されたもの。ここで、それら全7ステージを簡単な攻略と共に紹介しておこう。

ステージ1は火山地帯。といっても、ラストに待ち受ける2つの火山以外はただの背景で、最後に登場する火山のみ火山弾を吹き出す。ミスした時や安全にクリアしたい時は左上の安全地帯に移動し、レーザーを装備して点数を稼ぎたい時は火山左側にオプションを並べて撃つ
ストーン・ヘンジと呼ばれるステージ2は、旧バージョンではステージ1だった場所。上下に無限スクロールするものの、あまり大きく移動しすぎると、どこからともなく飛んできた敵弾にやられてしまう。スクロールは控え目に。ラストの大量ザブ出現地帯だが、フル装備の場合はオプションを縦に並べてレーザーを撃っているだけ。ミスした時は、ミサイルとオプション×1を装備し画面右下で連射すれば、1周目は凌げる
モアイが大量に配置されているステージ3。いわゆるモアイ面で、上級者はレーザーを上下に振るレーザーワインダーを利用して反対向きや陰のモアイを破壊しまくれば簡単。慣れないうちは、ダブルを装備して堅実に進むのもありだ。最後の大量マザー出現地帯は、画面右上でミサイルを撃ちまくればOK
4面の特殊火山地帯は、慣れないプレイヤーにとって最初の壁となる場所。レーザーでもダブルでも、早め早めに敵を倒すことを心がけて進むこと。逆火山が吐き出す火山弾は、ギリギリまで画面左側で粘ると噴火が止まるので、そのタイミングで右へ抜ける。最終防衛線は、装備が整っているなら速攻で上のハッチ2つを破壊できれば、あとは簡単。ミスして到達した場合は、左下でショットを連打すればクリアできる
脳状の細胞魂と、そこから延びる触手が襲いかかってくるステージ5・細胞面。触手を破壊するには、弱点である色の違う部分を正確に狙わなければならない。レーザーでは破壊しづらいので、ここだけダブル装備にするという手も。道中は細胞魂しか出現しないため、ミスすると赤カプセルが回収できず、最弱状態で進むことになるため注意が必要だ
ステージ6は特殊細胞面。途中に出現する細胞壁のような場所は、ショットやダブルでは難儀するので、オプションを目一杯広げてレーザーで破壊しまくる。最後の細胞核は、装備が揃っていれば左端の画面中央でショットを撃てば簡単に倒せるはず。ミスした場合は、下側にある細胞壁のさらに下の部分に潜り込み、細胞核の自爆を待つのが確実
最終面のステージ7は、ゼロス要塞内部。地形が入り組み、破壊しづらい場所にハッチが配置されていたり、背後からダッカーが出現して弾を撃ってくるなど猛攻を仕掛けてくる。画面後方でオプションを縦に配置し、ダッカーを出現と同時に破壊するように対処すれば道中は抜けられる。終盤に後方から電磁バリアが現れるので、上か下に張り付いてやり過ごせばOKだ

 ここまでは、当時としては目新しいシステムや美しいステージ構成を見てきたが、聞くものを魅了するBGMもまた、本作の特筆すべき部分と言えるだろう。コインを入れた時の「ちゃかちゃかちゃん」というSEに始まり、ステージスタート時のBGM、そして面ごとに用意された尖った楽曲が、プレイヤーのやる気を奮い起こさせたのだ。

 また当時の「グラディウス」は、最初に電源を入れた時に暖機運転が行われるのだが、そのときに流れる“モーニングミュージック”が、これまた名曲だった。これを聞きたいがために、テーブル筐体の電源スイッチを切って入れて……とやっていた輩も、この時代には良く目にした。ちなみに、必要以上に電源をオンオフするのは基板にダメージを与える行為なので注意してほしい。

コインを入れた時のSEやネームエントリ時のBGMなど、「グラディウス」の音楽はとかく耳に残るものが多いと感じている。それだけ名曲が揃っているということの現れでもあるのだろう
モーニングミュージックは、今ならばアーケードアーカイブスで手軽に聞くことができる。名前の通り、朝の澄んだ空気が漂う雰囲気をイメージしたBGMが流れる、耳に心地よい1曲だ

 「グラディウス」が与えた影響はすさまじく、稼働後はパワーアップゲージを採用したゲームやオプションが登場するタイトルなどが数多くリリースされている。本作の誕生は、さまざまな意味でアーケードゲームのレベルを1段階上へと押し上げた、と言えるのではないだろうか?

 「グラディウス」がアーケードで稼働してから38年が経つ現在では、プレイステーション 4/Nintendo Switchのアーケードアーカイブスの1本として配信されているので、気軽に遊ぶことができる。そのため、そんなことを考えながら日々プレイしているのだが、2周目の1面が突破できず今日も敗北の2文字を背負うのだった……。

「アーケードアーカイブス グラディウス」のページ

・プレイステーション 4版
・Nintendo Switch版