【特別企画】
「グラディウス」がリリースから38年。数多くのアーケードゲーマーを虜にした名作タイトルの当時としては画期的だったシステムなどを振り返る
2023年5月29日 00:00
- 【グラディウス】
- 1985年5月29日 稼働開始
アーケードゲームは1970年代から大勢の人に遊ばれてきたものだが、筆者が始めてプレイしたのは1979年から80年にかけてのことだったと記憶している。小学生だった80年代前半は「インベーダー」から始まり、「平安京エイリアン」や「ルパン三世」、「ドラキュラ」、「パックマン」、「ギャラクシアン」などをプレイしていたが、中学2年に学区外のレジャー施設へ遊びに行った時に見た「ゼビウス」には大きな衝撃を受けたものだ。
それまでのゲームは原色系の色使いが多かった印象があったが、金属的なグラフィックを前面に出した「ゼビウス」はグラフィック面でもさることながら、地上と空中で攻撃を撃ち分けるといった要素や、ソルやスペシャルフラグといった隠し要素なども盛り込まれ、それまでのアーケードゲームにはない魅力を与えてくれた。
その翌年となる1985年、筆者が良く通っていたゲームセンターのひとつに、地元デパート・ダイエーで営業していた「ダイエーレジャーランド」があった。デパートの最上階といえばレストラン街というイメージがあったなかで、そこはフロアの1/4がゲームセンター。その部分のみ照明が落とされ、テーブル筐体が所狭しと並んでいたのだが、ある日その中の1台に人だかりができている。何が稼働しているんだ? と思いながら覗いてみると、モアイが口から何かの弾を吐き出すところを、青く美しいレーザーが貫いているシーンだった。このときの衝撃たるや、その後には経験することがなかったほど。それが筆者と「グラディウス」との出会いだった。
本稿では、「グラディウス」の稼働38周年を記念し、当時の思い出を振り返っていく。
亜時空星団バクテリアンから母なる星グラディウスを守るため、超時空戦闘機ビックバイパーが今、暗黒の空間に飛び立つ。バクテリアンの総攻撃は激しく、宇宙各所に配置してあるスペース・コロニーからエネルギー・カプセルを奪い取って進撃してくる。そのカプセルを取り戻し、パワーアップしながら敵を撃墜せよ。目指すは、敵要塞ゼロスだ。
当時では珍しい3ボタン。ビックバイパーを操作し最終面を目指す
プレイヤーは自機であるビックバイパーを操作し、敵を倒しながらパワーアップカプセルを回収して自機をパワーアップさせ、最終面を目指して進んでいく。本作の原型となったのは、同社が1981年に稼働を開始させたタイトル「スクランブル」だ。縦画面の中を横スクロールしていく自機を操作し、ショットだけでなくミサイルも使用して敵を倒すのだが、そういった部分が「グラディウス」にも受け継がれている。
横画面横スクロールで進行する「グラディウス」では、「スクランブル」よりもボタンの数が増えて3つになった。8方向レバーとショット、ミサイル、そしてパワーアップボタンを使いこなす必要がある。しかし、この当時のゲームは使用するボタンは多くてもせいぜい2つほどで、3つというのは非常に珍しい部類。それゆえに最初は操作方法で戸惑う人も多く、慣れるまではショットとミサイルを両方押しているという人も良く見かけた覚えがある。
「グラディウス」の記事を掲載した雑誌「マイコンBASICマガジン」1985年7月号の記事にも「ボタンは2つにしてほしかったと思うのは私だけかな?」と書かれていたことからも、3つボタンというのがレアだったのがわかるだろう。ちなみに、3つボタンを使用するこの時期のゲームとして思い出すのは、カプコンの「ガンスモーク」とSNKの「ASO」なのだが、デビューはどちらも「グラディウス」よりも半年ほど遅い1985年の晩秋だった。
本作はゲーム画面の最下段にレベルメーターが設置されており、左から順に「SPEEDUP」→「MISSILE」→「DOUBLE」→「LASER」→「OPTION→「?(BARRIER)」と並んでいた。プレイ中、特定の敵編隊や赤い色の敵を倒すと出現する赤カプセルを回収するごとに、SPEEDUPから順に右側へとパワーアップゲージが移っていき、?の時に再びカプセルを取るとSPEEDUPへと戻る。パワーアップゲージが自分の欲しい場所で光っている時にパワーアップボタンを押すと、自機がパワーアップするというシステムは、今ではお馴染みといっていいだろう。
しかし、これも当時はなかなか理解するのに苦労した部分で、慣れるまではレベルメーターのどの位置にパワーアップゲージがあるのかを即座に把握できず、パワーアップするのにも手こずった。このように、ボタン数の多さやパワーアップゲージでのパワーアップといった新規要素が盛り込まれていたことも、「グラディウス」の人気に一役買っていた。
パワーアップカプセルを回収してレベルメーターのパワーアップゲージを移動させ、自機をパワーアップさせていくという手順も斬新だったが、中でも特にインパクトが強かったのが「オプション」の存在。何も知らない時に見て感じたのは、自機の動きをトレースして動く、なぜか弾の当たらない物体が増えていくパワーアップ。似たようなものに、少し前にリリースされた「ツインビー」が採用した“分身”があったが、自分が足を運ぶゲームセンターには導入されていなかったこともあり、重ねてオプションの存在を謎のものにしていた。
しかし、他の人のプレイを何度も見ているうちにオプションがとんでもなく強力なパワーアップということがわかると、これまでのモヤモヤが一気に晴れたように思えたもの。
オプションを装備するごとに“現時点の自機のパワーアップ状態を反映した、当たり判定のない攻撃機が増えていく”のだから、その攻撃力に当時は驚かされた。自機の火力が最大で5倍にもなるのだから、MAXパワーアップ時などはこの攻撃力で、敵が出現した瞬間に軒並みなぎ倒していける爽快感を得られる。これこそ「グラディウス」の最たる特徴のひとつだ。
オプションだけでなく、見た目の美しさと強力な破壊力を兼ね備えたレーザーにも目を奪われたもの。この時代、連射装置といったものはほとんどなく、ショットはいわゆる手連(手動での連射)をしなければならなかった。ところが、レーザーを装備すると敵を貫通して一気に撃破するだけでなく、上下に移動すれば途中で触れた敵をなぎ倒し、さらにはショットボタンを押しっぱなしでも問題ないという、いいことずくめの武器。
初心者の中には、そのような面を見て真っ先にレーザーを装備してしまう人も当時は多かった。とはいえ、レーザーにパワーアップした瞬間から難易度が急上昇するので、諸刃の剣ではあるのだが……。
このようなパワーアップを駆使して先へと進んでいくのだが、各ステージごとにガラリと変わる背景なども特徴のひとつと言える。
例えばステージ3には当時、イースター島にある謎のオブジェクトとして知られていたモアイをモチーフにした、「グラディウス」独自のモアイが配置されていたほか、ステージ4は火山が天井側から突きだしていたり、星が瞬く以外は一切の背景がないステージ5など、プレイヤーを飽きさせない工夫が凝らされていたのだ。そのようなステージが「グラディウス」には7つ用意されており、バラエティ豊かなステージ構成にも魅了されたもの。ここで、それら全7ステージを簡単な攻略と共に紹介しておこう。
ここまでは、当時としては目新しいシステムや美しいステージ構成を見てきたが、聞くものを魅了するBGMもまた、本作の特筆すべき部分と言えるだろう。コインを入れた時の「ちゃかちゃかちゃん」というSEに始まり、ステージスタート時のBGM、そして面ごとに用意された尖った楽曲が、プレイヤーのやる気を奮い起こさせたのだ。
また当時の「グラディウス」は、最初に電源を入れた時に暖機運転が行われるのだが、そのときに流れる“モーニングミュージック”が、これまた名曲だった。これを聞きたいがために、テーブル筐体の電源スイッチを切って入れて……とやっていた輩も、この時代には良く目にした。ちなみに、必要以上に電源をオンオフするのは基板にダメージを与える行為なので注意してほしい。
「グラディウス」が与えた影響はすさまじく、稼働後はパワーアップゲージを採用したゲームやオプションが登場するタイトルなどが数多くリリースされている。本作の誕生は、さまざまな意味でアーケードゲームのレベルを1段階上へと押し上げた、と言えるのではないだろうか?
「グラディウス」がアーケードで稼働してから38年が経つ現在では、プレイステーション 4/Nintendo Switchのアーケードアーカイブスの1本として配信されているので、気軽に遊ぶことができる。そのため、そんなことを考えながら日々プレイしているのだが、2周目の1面が突破できず今日も敗北の2文字を背負うのだった……。
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