【特別企画】

「ZENAIM KEYBOARD」スタビライザー動作不良について、東海理化に直接訊いた

“RGBLEDバックライトのコイル鳴き問題”については「現在確認中」

【ZENAIM KEYBOARD】

5月16日 発売(一時販売停止中)

価格:48,180円

 東海理化から発表された国産ゲーミングキーボード「ZENAIM KEYBOARD」。自動車部品メーカーが手掛けるゲーミングデバイスという点や、自社開発となる世界初のロープロファイル磁気センサースイッチ「ZENAIM KEY SWITCH」、販売価格が48,180円とゲーミングキーボードの中でも最高額の部類となっていることもあり、様々な面で話題を呼んだ。

 だが、5月22日、スタビライザーに動作不良が発生していることを正式発表し、今後の販売延期と、8月中の販売再開を目指すことがアナウンスされた。この動作不良は、筆者が購入した個体でも発生しており、ユーザーの1人として「ZENAIM KEYBOARD」に一体何が起こっているのかを東海理化に直接問い合わせ、現状と今後の予定について確認してみた。「ZENAIM KEYBOARD」ユーザーや購入予定者が、本稿を読んで少しでも安心していただければ幸いだ。

スペースキーが“グラつく”? 「ZENAIM KEYBOARD」のスタビライザーに動作不良が発生

 まずは今、「ZENAIM KEYBOARD」に起こっていることをまとめていく。「ZENAIM KEYBOARD」では、スタビライザーを使用しているスペースキーやエンターキー、左シフトキーにおいて、キーの端の部分を連打した場合にキーキャップが外れてしまうという動作不良が発生。

 筆者は、自動車部品メーカーが手掛ける国産ロープロファイルゲーミングキーボードに惹かれ、購入を決意。当時使用していたキーボード(SteelSeries・Apex Pro)に全く不満はなかったが、思い切って購入してしまった。購入手続きが終わって20時3分頃には既に完売しており、注目度の高さが窺えた。

筆者購入の「ZENAIM KEYBOARD」。

 その後、5月20日未明に本機が到着し開封したのだが、すぐに1つの違和感を覚えた。それはスペースキーの両端がやけにグラグラしていること。他のキーについてはほぼ遊びが無く、押すと真下に沈み込むのに対して、スペースキーはむしろ通常のキーボードよりぐらつきが激しい。また、スペースキーほどではないが、エンターキーや左シフトキーもグラグラしており、これら全てのキーにスタビライザーが使用されていることに気づいた。

 スタビライザーとは、スペースキーなど通常より大きい、または長いキーを支えるために装着されているパーツ。端を抑え込むとキーキャップがグラグラしてしまったり、最悪の場合はゲーム中に外れてしまう場合もあるため、スタビライザーが存在している。

問題に挙がっているスペースキー。両端にある十字の棒がスタビライザーで、キーキャップ側にも受け皿がある
左シフトキーにもスタビライザーが存在
エンターキーもスタビライザーがある。以上の3つがスタビライザー付きのキーだ

 筆者は「これは仕様なのか……?」と疑念を抱いたが、カスタマーサポートへ問い合わせはせず、Twitterなどで情報収集を行なうと、スタビライザー付きのキーがグラグラしていると投稿しているユーザーが数名いた。なので、この時点では「これが仕様なのだろう」と判断した。しかし、今回の発表の通り、これは仕様ではなく不具合ということだった。下記動画を見て貰えればわかるが、かなりぐらぐらしており、使い方によっては外れてしまうこともあるようだ。

【ZENAIM スタビライザー動作不良】

 だが、不具合はこれだけではなかった。実際にPCに繋いで通電させると、RGBLEDライティングのコイル鳴きが発生した。最初は自分自身の耳鳴りかと思ったが、キーボードに耳を近づけると「キーン」という甲高い音が鳴っており、LEDをオフにすると音も収まる。これは間違いなくキーボード側の問題と判断し、この時点でカスタマーサポートへの連絡を決意した。

 カスタマーサポートには、LEDのコイル鳴きのみを報告したが、日曜日だったため改めて週明けの連絡を待つことになった。そして5月22日18時にスタビライザーの動作不良について発表があり、筆者のもとにも今後の対応の旨が書かれたメールが到着。さらにその約10分後に、今度はLEDのコイル鳴きについてのメールがあり「現在確認しているため、回答に時間をいただきたい」と記されていた。

 こちらの不具合は全固体ではない可能性も考慮して、RGBLEDライティングのコイル鳴きと思われる動画も撮影してみた。極めて小さく高い音のため、環境によっては再現されない可能性もあるが、「キーン」という音がライティングLEDのオンオフにあわせて鳴ったり収まったりしている様子を収録している。

【ZENAIM KEYBOARD、コイル鳴きによる不具合の例】

 様々なユーザーに期待されている「ZENAIM KEYBOARD」。今回のスタビライザーの件で再販スケジュールの延期や、販売分の組み換え作業などと騒動となっているが、今回の詳しい原因はなんだったのか。ZENAIMを展開する東海理化に直接訊いたので、詳細をお伝えしていく。

「ZENAIM KEYBOARD」、スタビライザー不良の原因とは? 東海理化に直接訊いた

 今回「ZENAIM KEYBOARD」で発生している問題について、「ZENAIM」ブランドを展開する東海理化に質問を送付。回答が得られたため、今回の原因の詳細や「ZENAIM KEYBOARD」のテスト内容をインタビュー形式でお伝えしていく。ZENAIMは、この問題に全力で取り組んでいることがわかる内容で、少しでも「ZENAIM KEYBOARD」ユーザーが安心していただければ幸いだ。

“1秒間に20回以上の連打”は想定していなかった。「ZENAIM KEYBOARD」のテスト内容とは?

――今回のスタビライザーの動作不良は、初期ロット・全個体で発生しているという理解でいいのでしょうか?

東海理化: 問題なく使っていただいている方もいらっしゃるため全個体での発生かは不明ですが、ご購入いただいた全ての方にご満足頂けていない状態である以上、ZENAIMとしては改善の必要があると考え、回収の判断をいたしました。

――スタビライザー付きのキーはもともとグラグラする(発表会のサンプルでもそうだった)のですが、これは仕様でしょうか、それとも不具合でしょうか。

東海理化: 仕様上、構造上の不具合であると判断しております。

スペースキーの端を押すと、反対側が浮き上がる。というより、うまく沈み込んでいない

――設計やテスト段階では、今回のような事象は発生しなかったのでしょうか?スタビライザー付きのキーでのテスト内容を教えてください。

東海理化: FPSを主とした使用を想定し使用テストを重ねておりましたが、今回のように1秒間に20回以上連打するような、激しい使用シーンや同等の激しいタイピングに対する想定はしておらず、こちらに関してはテスト不足でございました。

 想定範囲内の使用で問題なく使われている方がいらっしゃる一方で、こういった事態が一部でも発生した以上、速やかに公表し、全てのユーザー様に安心してお使い頂くために設計の見直しをする判断をいたしました。

――挙動を見る限りスタビライザーの動作不良と言うより、受け側の高さの違い(スペースキーの場合、両端の受けが浅く、左右位置で押し込むとぐらぐらする)に起因するトラブルに感じられます。もう少し具体的に今回の不具合の説明をお願いします。

東海理化: スタビライザーによって不具合が起きている状態でございます。特定の使用方法、特定の条件が重なると発生してしまう構造上の不具合があると判断しております。

――私のキーボードでは、通電するとライティング用のLEDがコイル鳴きするのですが、これは不具合でしょうか?

東海理化: こちらは個体差があるようでして、現在調査中および対応策を検討中でございます。

大騒動となってしまった「ZENAIM KEYBOARD」。だが“WELL GAMING”を追求する「ZENAIM」に今後も期待!

 今回、スタビライザーの動作不良によってネガティブなイメージがついてしまった「ZENAIM KEYBOARD」。だが、キーキャップやトッププレートのとても質感は高く、筆者としてはキー自体の押し心地も非常に気に入っている。実際に本稿は「ZENAIM KEYBOARD」を使用して執筆しており、既に本製品の魅力にメロメロだ。

 そのぶん、今回のような不具合の発生は非常に残念だ。「約5万円もするキーボードで動作不良かよ」という声もSNSで一部挙がっているが、利益を無視しての再販延期(事実上の一時販売停止)や、既に販売されているキーボードの回収・組み換え作業の実施は、より幸福なゲーム体験「WELL GAMING」を掲げるZENAIMらしさを感じさせる。

 4月に開催した発表会では、マウスやヘッドフォンのみならず、ゲーミングチェアなどについても書かれたロードマップを公開。数少ない日本のゲーミングデバイスブランドとして、今回の不具合を全て解消したら、今後の製品展開に向かって努力を続けてほしい。