【特別企画】

日本のeスポーツに黒船到来。NASEF JAPAN、高校生大会「NASEF JAPAN MAJOR」を発表

1stタイトルは「フォートナイト」。学生向けのキャンプや学校向けのメンバーシップも発表

3月20日発表

 北米教育eスポーツ連盟 日本本部(NASEF JAPAN)は3月20日、2021年度の活動構想を発表し、NASEF JAPANが主催するeスポーツ大会を独自で立ち上げる構想を明らかにした。対象は高校生で、タイトルは「フォートナイト」。詳細については4月中旬頃に公式サイト等を通じて発表予定。

【NASEF JAPAN】
登壇者。左よりNASEF JAPAN内藤裕志氏、NASEF JAPAN代表 松原昭博氏、NASEF JAPANトーナメントディレクター 小澤智史氏

 今回はNASEF JAPAN初の発表会ということで、NASEFの基本的な情報が共有された。NASEF JAPANは、日本の高校を対象にしたeスポーツ団体 全国高等学校eスポーツ連盟(JHSEF)とパートナーシップを交わしている北米教育eスポーツ連盟の日本本部。支部ではなく本部として、アジア地域へのリーダーシップの役割も担いつつ、NASEF本部の活動実績をフル活用する形で、JHSEFとは別軸で日本の教育現場へのeスポーツを活用を目指していく。JHSEFが、“eスポーツを文化に”と、あくまでeスポーツを主語にした団体であるのに対して、NASEF JAPANの主語はあくまで教育であり、“eスポーツは人材育成のためのツール”と捉えているのが大きな違いとなる。

【活動の目的は人材育成】
「eスポーツは人材育成のためのツールとしか捉えていない」と言い切る松原代表
次世代に通用する人材をeスポーツを使って生み出す

 4月以降に活動を本格化させるNASEF JAPANは、定期的にセミナーやサミット、シンポジウムを開催し、教育関係者や報道関係者を対象にすでに数年の経験の蓄積があるNASEFの研究成果を日本の教育現場に惜しみなく共有していく。学生に対しては、3泊4日のキャンププログラムを用意し、共同生活をこなしながらチームビルディング、コミュニケーション、トレーニングなどを実施し、高校生の将来に繋がる学びの機会を提供する。アメリカ仕込みのどのようなeスポーツ教育が行なわれるのがぜひ覗いてみたいキャンプだ。

【NASEF JAPANの活動内容】
セミナー
教育サミット
学生向けのキャンプ・プログラム

 そして今回の発表で驚かされたのは、日本の高校生向けeスポーツ団体であるJHSEFに先駆けて、学校向けのメンバーシップの募集を開始したことだ。日本のパートナーであるJHSEFは、久保公人氏の理事長退任や、新型コロナの影響もあって、設立開始から、1年半近くが経過しているにも関わらず、まだ加盟校の募集を始められていないのに対して、NASEF JAPANは4月の本格始動と同時にいきなりメンバーシップの募集を開始する。

【メンバーシップ】
教員個人でも加入できるため、eスポーツ部を作る前段階から加入できるのがユニーク
メンバーシップに加入すると全国高校eスポーツ選手権を含む、高校eスポーツ大会出場権が得られる。つまりJHSEFとNASEF JAPANは一体となって動いていることがわかる

 JHSEFとNASEF JAPAN、母体は共にサードウェーブだが、JHSEFは文科省の後援を受け、毎日新聞と足並みを揃えながら運営している団体なのに対し、NASEF JAPANは米国のNASEFの承認さえ取れれば動ける組織になっており、運営ロジックの違いがスピード感の違いとなって現れている印象だ。

 メンバーシップに加盟した学校に対しては、NASEFが提要するeスポーツエコシステムの枠組みを提供する。具体的にはチームの司令塔になるような人材や、eスポーツ大会を支えるエンジニアやクリエイターといった人材育成のカリキュラムをサポートしていくという。ちなみにメンバーシップフィーは無料。これは予算不足に悩まされる学校教育の現場としてはかなり魅力的な提案と言える。

【NASEFが提唱するeスポーツエコシステム】

 eスポーツ一丁目一番地である、eスポーツ大会、この点もしっかり計画されている。JHSEFが全国高校eスポーツ選手権をホストしているように、NASEF JAPANも高校生向けの大会を独自でホストする。NASEF JAPANはすでにカジュアルなeスポーツ大会として「NASEF JAPAN EXTRA」という枠組みを用意し、すでに3月に「Apex Legends」を競技種目に第1回大会を開催しているが、今回発表された「NASEF JAPAN MAJOR」は、「NASEF JAPAN EXTRA」の上位に位置する本格的な競技シーンを求める高校生アスリートのための枠組みとなる。

【NASEF JAPANが主催する2つの大会】
EXTRAとMAJORは大会という意味では同じだが、EXTRAがカジュアルなワンデートーナメントであるのに対して、MAJORは地方予選からスタートするところが大きく異なる

 タイトルについてはPC版「フォートナイト」が発表された。選定理由は、NASEF本部の評議会で20数タイトルから選ばれた“推奨タイトル”の1つということで、これはNASEF関係者のみならず外部の有識者も含めて揉んだ結果だという。そこでの選定基準は、大前提として学生に人気のタイトルであり、性的なもの、暴力的なものは排除される。それらに加えてチーム戦であり、コミュニケーションやチャレンジの必要性、学生同士で切磋琢磨できるかどうかなどがチェックされるという。

【NASEF MAJOR「フォートナイト」】
NASEF MAJOR初の大会は「フォートナイト」に。詳細は4月中旬が予定されている

 筆者はこうした事情を聞いて、アメリカはさすがにeスポーツが進んでいると思ったし、NASEF JAPANが日本に設立された意図がようやく腑に落ちた。日本のeスポーツシーンは、厳しい言い方をすれば、こういう第三者がチェックして競技種目を決めるという文化がまったくない。JHSEFにしても、JeSU(日本eスポーツ連合)にしても、メーカー側のロジックだけで決まっている。もはや人気かどうかすら関係がない。日本では、もともと広義でのプロモーションの範疇で行なわれる大会が大半を占めるため、必然的な結果と言えるのかもしれないが、競技者、あるいはその予備軍から見れば、本当にその競技シーンに打ち込んで良いのかがわからないし、eスポーツファンとしても観戦に耐えるタイトルなのかがわからない。

【JeSUの認定タイトル(一部)】
日本ではまだ団体認定のeスポーツタイトルを第三者が決めるという文化はない

 たとえば、サードウェーブが主催するeスポーツイベントであるGALLERIA GAMEMASTER CUP、現在はGALLERIA GLOBAL CHALLENGEと名前を変えて大会が継続されているが、2017年に開催された第1回大会の種目は1つも残っていない。「World of Tanks」、「フィギュアヘッズ」、そして「Counter-Strike: Global Offensive」。現在は、「VALORANT」のみだ。人気タイトルで大会を実施するというのは興行として見た場合絶対的に正しく、シニア向けの大会ならそれでも良いかもしれないが、教育的見地からeスポーツを活用する高校生eスポーツの場合、そんなにほいほい競技種目が変わってはたまったものではない。そこでNASEFでは、高校生eスポーツを導く団体として、3年間しっかり打ち込める競技種目を慎重に決めているわけだ。

【第1回GGC】
当時の競技種目は今はすべて消えている。見る側からすると、競技種目はできるだけ同一が良いが、なかなかそうはいかない

 こうしたNASEFのノウハウも、NASEF JAPANを介して日本に導入されるのは頼もしいばかりだ。大会の詳細については追ってアナウンスされる予定だが、発表会では年間スケジュールも公開され、季節ごとにコミュニティリーグが予定されている。これが「NASEF JAPAN MAJOR」になる模様だが、高校生大会を年4回というのは、かなり本気度が高い。将棋種目も「フォートナイト」のみではなく、複数タイトルが計画されているという。詳細発表を楽しみにしたい。

【2021年度NASEF JAPAN活動構想】
ある意味でもっとも驚いたのがこのスライド。文字が小さすぎて読めない以前に、こんなにやるのかと。これが仮にスケジュール通りに活動したなら、間違いなく日本でもっとも活発なeスポーツ団体となりそうだ

【JHSEFとNASEF】
JHSEF理事の大浦豊弘氏(左)とNASEF JAPAN代表の松原昭博氏。共に元サードウェーブで上司部下だった間柄。2人の結びつきは深い