【特別企画】

高校生限定の「フォートナイト」大会「NASEF JAPAN MAJOR」決勝レポート

eスポーツ大会×教育の行方はいかに?

【NASEF JAPAN MAJOR Fortnie Tournament Summer 2021】

6月19日オンライン開催

 NASEF(北米教育eスポーツ連盟)は「教育ツールとしてのeスポーツ」の普及を目標に、アメリカやカナダで教育活動を行っている団体だ。そのNASEFの日本本部であるNASEF JAPANが昨年設立され、eスポーツ教育普及活動の一貫として中高生向けのeスポーツ大会を開催している。

 今回開催された「NASEF JAPAN MAJOR Fortnie Tournament Summer 2021」は、NASEF JAPANが主催する高校生限定の「フォートナイト」大会だ。こちらはNASEF JAPAN開催の大会としては過去最高の規模で、5月31日から行なわれていた予選には全国から総勢216名の高校生が参加し、そして6月19日に開催された決勝大会には、予選を勝ち進んだ強豪42チームが参戦した。

 大会冒頭ではNASEF本部のケビン・ブラウン氏によるメッセージが流れ、ブラウン氏は「友人と協力して勝利へ向かうその過程から何かを学んで欲しい」と力強く語った。本大会を通じて生徒たちは何を学び、そしてどのチームが優勝するのか。高校生たちの雄姿をお届けしたい。

【NASEF JAPAN MAJOR Fortnie Tournament Summer 2021】
実況の大和周平氏(左)と解説のZELARL氏(右)

【NASEF JAPAN MAJOR Fortnite Tournament Summer 2021】

ノーマークだった「漆黒のクレラップ」が2連続ビクロイを決める!

 まずは本大会のルールを紹介しよう。本大会はデュオ(2人)によるポイント制大会で、全3マッチの合計点から最終的な順位が決定される形式になっている。マップはシーズン7のノーマル仕様で、壁越しに索敵できる「リコンスキャナー」や、壁を打ち抜いて攻撃できる「レールガン」など、公式大会やアリーナでは使用不可になっている強力な武器も入手可能になっている。

本大会ルール

 ポイント表を見てみると、Victory Royaleチームで10ポイント入手可能なのに対し、エリミネートに対して付与されるのは1ポイントとなっており、高順位を獲得することがキルよりも優先されるバランスになっていることが分かる。従って本大会で注目すべきは、誰が序盤に強力な武器と建材を確保し、立ち回りを意識して如何に終盤を生き残れるか、という点になってくる。

 第1マッチがはじまると、まずはどのチームも戦闘を避け、建材と武器を着実にそろえていた。前述の通り本大会の形式では序盤のキルよりも後半にどれだけ生き残れるかが勝利のカギになってくるため、最初の内はリスクを冒さずにしっかりと態勢を整えたい。また本マップには車やジャンプパッドといった移動手段も豊富に用意されているため、移動への心配も少ないのが特徴だ。

使用マップ

 ストームが縮小するにつれ、移動中のチームを中心に徐々に脱落者が増え始めるが、中には見事な立ち回りでキルを稼いでいるチームもあった。中でも特に注目されていたのはN高等学校仙台キャンパスの2人で構成される「イノシシ舐めんな」チームだ。N高等学校はeスポーツ大会では常に好成績を残す強豪校であり、本チームは予選を1位通過したことからも優勝候補と目されていた。

注目チーム「イノシシ舐めるな」

 「イノシシ舐めんな」の強みは役割分担がうまくできていた点だろう。このチームは一人が建築と索敵を、もう一人が戦闘を担っており、デュオの試合を十分に理解した立ち回りになっていた。一人が建築を編集し、その瞬間にもう一人がフリックショットで敵を捉える、そんな見事な連携プレイからは、日頃の練習が伺えるようである。

 試合終盤にさしかかり第5ストームが縮小を終えると、マップはかなり狭くなっているが、それでも27名も生存者がいる。選手たちの高校生らしからぬ腕前が、この生存率の高さを裏付けているのだろう。どのチームも序盤に蓄えた建材を余すことなく使っており、高低差のある戦いが繰り広げられていた。またどのチームも強力な索敵武器である「リコンスキャナー」を獲得している様子で、画面をスキャナーの波が覆い尽くしている。

画面を覆うスキャナーの青い波

 敵に位置がバレていることが前提という異様な条件の中、続く第6ストーム縮小で一気に試合が動いた。エイム力勝負になる近接戦で多くのプレイヤーが脱落し、また中には建築の壁が厚すぎてストームに追い付かれてしまっている選手も見られた。注目されていた「イノシシ舐めんな」もこの時点で脱落してしまう。

 そして勝者となったのは、終盤戦で早くからハイグラウンドを確保していた「漆黒のクレラップ」だった。こちらは千葉県立沼南高等学校のあにょ選手と、神奈川県立川崎高等学校のくれら選手から構成されたチームで、配信にはあまり映らなかったものの、二人とも最後まで生存しており、またVictory Royaleに加えて10エリミネートを確保していたため、総合得点20点でダントツの1位で第1試合を終えた。

早い段階から高所に陣取っていた「漆黒のクレラップ」

 続く第2試合、何としても「漆黒のクレラップ」の2連ビクロイは阻止したいところだったが、この試合も彼らの独壇場となる。先ほどの試合ではノーマークだったため配信に映ることは殆どなかったが、改めて彼らの視点をよく見ていると、「漆黒のクレラップ」の強さがハイグラウンドへの貪欲さにあるのが分かった。

 彼らは序盤の内に建材とジャンプパッドを蓄えると、中盤の建築合戦になった途端、ジャンプパッドで他人の建築に飛び乗り、強引にハイグラウンドを奪取していった。そして一度高所を確保してしまえば、地上のリコンスキャナーの索敵範囲外になり、反対にこちらからはレールガンでキルを狙えるという、一方的に有利な状況を作ることができる。さらに自らが使ったジャンプパッドは破壊し、誰も登ってこれないようにする周到ぶり。恐らく彼らは本大会のメタをよく理解し、その上で高所にこだわった戦術を組んできたのだろう。

混戦の中ジャンプパッドで強襲

 他のチームもどうにか「漆黒のクレラップ」を引きずり下ろしたいところだか、地上の戦いが泥沼になっている以上中々ハイグラウンドにまで意識が周らない。「漆黒のクレラップ」はまさに高みの見物でそんな彼らを見下ろしており、そしてレールガンで漁夫の利的にキルを稼いでいく。最後には生き残ったイシシ選手が果敢に勝負を挑んでいく場面もあったが、あえなく撃ち落されてしまう。覆しようのない盤石な態勢を維持し、「漆黒のクレラップ」は第2試合でも20点を獲得。合計点40で勝利は目前だ。

スキャナーの海を上から見下ろす

白熱の第3試合、果たして総合優勝はどのチームに?

 全てが決まる第3試合、「漆黒のクレラップ」が2位に10点以上の点差をつけてリードしている状況のため、2位以下のチームはビクロイを狙うのはもちろんのこと、優勝を狙うにはかなりのキル数が要求されるプレッシャーのかかる場面になった。反対に「漆黒のクレラップ」は無理なプレイをしなくとも、上位に残れば優勝は確実だろう。

 中盤にさしかかり、狭いサークル内での建築合戦が始まると、どのチームも果敢にハイグラウンド獲得を目指して上へ上へと昇っていく。そんな中最初に高所へと躍り出たのは文星芸術大学付属高等学校のKyoryupaka選手と、栃木県立小山高等学校のLoddo選手で構成される「Loddoaimしか勝たん」だった。

ハイグラウンドを確保した「Loddoaimしか勝たん」

 地道に建築を重ねてハイグラウンドを確保した「Loddoaimしか勝たん」は、レールガンこそ無いものの盤石な態勢を整え、地上のプレイヤーに圧力をかけていく。対する「漆黒のクレラップ」は中段層を維持し、こちらも積極的にキルを重ねていった。

 そして終盤戦、最後に残ったのは「Loddoaimしか勝たん」と「漆黒のクレラップ」の2チームだった。狭まりゆくサークルの中、地上から「漆黒のクレラップ」が勇猛果敢に戦いを挑む。すると、地理的には「Loddoaimしか勝たん」が圧倒的に有利なはずだったが、ここで「漆黒のクレラップ」が見事Koryupaka選手を引きずり下ろしキル。1対2の構図になる。

ストームが迫る中戦う「漆黒のクレラップ」

 独り残されたLoddo選手は絶体絶命かと思われたが、しかしここで再び地理的な優位を活かし、そしてストームの力を借りながら、Loddo選手がなんとか「漆黒のクレラップ」を撃破。彼らの3連続ビクロイは何とか防がれた。勝利時のLoddo選手の体力はわずか17、最後の勝負がいかにギリギリだったかが分かる。

何とか生き残ったLoddo選手

 全3試合終えての結果は、第3位に総獲得ポイント32点で「Loddoaimしか勝たん」、第2位に総獲得ポイント35点で「イノシシ舐めんな」、そして栄えある優勝は圧倒的な総獲得ポイント56点で「漆黒のクレラップ」となった。

優勝は「漆黒のクレラップ」

 圧倒的な強さで大会を制した「漆黒のクレラップ」だが、実はチームの二人はどちらも将来的にプロゲーマーやストリーマーなど、ゲーム関連の職に就くことを目標をしているらしく、その分本大会への思い入れも強かったようだ。彼らのようにeスポーツに真剣に取り組む高校生がその力を発揮し、大会を通じて活躍の場が与えられたことは非常に喜ばしいことではないだろうか。彼らは本大会を通じてきっと夢へと歩を進めることができただろう。

 eスポーツ教育をテーマに開催された本大会だが、今後は参加生徒へのレポート課題などを通して、より教育的側面を強化していく予定があるとのことだ。また、今後は「ロケットリーグ」や「リーグ・オブ・レジェンド」など、他のタイトルでも大会が開催されていくようだ。eスポーツ教育はまだまだ発展途上だが、今後の高校生eスポーツシーンにはぜひとも注目してほしい。