【特別企画】

日本の空をよりリアルに美しく! 「Microsoft Flight Simulator World Update I: Japan DLC」詳報

【Japan World Update】

9月29日実装予定

 日本では4年振りの開催となったXbox Showcaseで、Microsoftは「Microsoft Flight Simulator」に関してどのようなものを発表するのか。日本に絡めたコンテンツというのは容易に想像できたが、日本は日本でも、DLCという規模で、しかも完全無料、Xbox Game Passにも対応という大盤振る舞いまでは予想が付かなかった。有料という選択肢も当然あっただろうと思われるが、今回の発表には「日本市場を(再び)取りたい」というMicrosoftの強い意志を感じた。

 もともと日本はフライトシム大国で、ピークの1990年代後半頃は、秋葉原にフライトシム専門店が点在し、「Microsoft Flight Simulator」を含む様々なフライトシムタイトルや、フライトスティック、シーナリーと呼ばれるコンテンツパックが販売されていた。メイドカフェやフィギュア店の代わりに、フライトシム専門店が軒を連ねる(というとやや大げさだが)時代があったのだ。

 当時、同時平行してリリースされていた姉妹作「Combat Flight Simulator」も、第2弾では第二次世界大戦の太平洋戦線が舞台になり、そのほかにも様々な傑作フライトシムがリリースされていたこともあり、当時は程度の違いこそあれ誰もがフライトシムを愉しみ、PCゲーマー≒フライトシマーという時代もあったように記憶している。今回発表された「Japan World Update」は、そうした熱狂を再び日本に取り戻して欲しいという想いがこめられた大型アップデートだ。

【日本向けのイメージイラスト】
Xbox Series Sを小脇に抱えたサイボーグ少女

 その一方で、「『Microsoft Flight Simulator』は英語版じゃないか、日本など重視してないじゃないか」という意見も当然あろうと思われるが、Microsoft自体はすでにローカライズすること自体を、マーケット重視とは捉えていない。Microsoftは、ゲームプラットフォーマーとして極めてユニークな試みとして、グローバルで単一かつ統一されたレギュレーションでゲームをリリースするようになっており、これに合わせてもうずいぶん前に各リージョンに存在していたローカライズチームを解散しており、Azure AIを基軸にした本社主体のローカライズに移行している。

 この新しいローカライズ方式の強みは、世界同時発売が可能なことだ。各リージョンのローカライズ/カルチャライズ時間をゼロにできるため、あっさり世界同時発売ができる。弱点は、AIベースでは吹き替えまではできないことだ。このためXbox Game Studiosタイトルは、「Gears of War」、「Forza」クラスのファーストパーティータイトルすら日本語字幕のみで英語音声のままとなっている。現在はそうしたチャレンジの過渡期で、「Microsoft Flight Simulator」のように英語版のままリリースされたり、日本語字幕表示が不自然な部分が残っていたりしているが、解決は時間の問題だと思われる。「Microsoft Flight Simulator」についても、ローカライズ自体はスタートしており、来年以降になりそうだが、アップデートで対応されるものと見られる。前置きが長くなってしまったが、まさに今が「Microsoft Flight Simulator」を愉しむ絶好の機会と言えるわけだ。

 さて、それでは本題である「Japan World Update」について解説していきたい。まず「Japan World Update」含まれるコンテンツは以下の通り。

・より精度の高いデジタル標高マッピングを日本全域に展開
・6都市(仙台、高松、徳島、東京、宇都宮、横浜)を高解像度3D写真測量で再現
・6 か所の空港を精細モデルで実装(八丈島、慶良間、釧路、長崎、下地島、諏訪之瀬島)
・日本の世界遺産や歴史的建造物、橋、寺院など20カ所のランドマークを導入
・日本の空港を使った新たなランディングチャレンジ

 「Japan World Update」のポイントは2つ。1つは、標高データがより精細になり、2DベースのBingマップの弱点だった標高データに基づく描写が物理的にリアルになることだ。Neumann氏へのインタビューでは、その精度は5メートル単位まで精細化されたということで、それらがもたらす日本の風景はいよいよ実写に近づいていく。

【風景がより自然で美しく】
日本一高い山 富士山もよりリアルに
瀬戸大橋を中心とした瀬戸内海の風景もより美しく

 もう1つは、6都市、6空港、20ランドマークと、ボリュームたっぷりの高精細データが一気に追加されるところだ。「Microsoft Flight Simulator」をプレイしている方ならご存じの通り、マーケットプレイスにおいて、空港や飛行機、ランドマークなどの高精細データが1つ1つ小売りされている。サードパーティー製で価格はそれなりに高く、最も多い価格帯は2,100円だ。しかも日本のコンテンツは含まれておらず、なかなか購入まで踏み切れないところだが、今回はすべて日本のコンテンツばかりが大量に、かつ無料で提供される。海外のフライトシムファンは「日本ばかりズルいぞ!」という声が出ても不思議ではないぐらい明らかな優遇で、日本のフライトシムファンにとってはかなり嬉しいアップデートだ。

【マーケットプレイス】
欧州への出張族はよく利用するウィーン国際空港。Gaya Simulations制作で価格は2,350円

【都市】
こちらは東京。新宿のランドマークである高層ビルが屹立している
こちらは横浜。隅々まで見事に描かれている

【空港】
釧路空港
八丈島空港
慶良間空港

【ランドマーク】
夕焼けが似合う奈良 法隆寺
ぜひ旋回しながら眺めたい広島 厳島神社
こちらは機内から見た兵庫 姫路城
最新のランドマークもしっかり実装。東京湾アクアラインの風の塔

 惜しむらくは、新たな遊びの追加となる飛行機のアップデートはなかったところ。個人的には三菱スペースジェットなど、国産の飛行機が実装されれば、興味関心を持つ人も増えるだろうし、オンラインコミュニティもより盛り上がるだろう。そして多くのフライトシマーが待ち望んでいるヘリコプターは、今しばらく開発に時間が掛かる見込みで2021年実装予定ということだ。

 「Japan World Update」のアップデートサイズは10GBほど。ゲームのアップデートとしてはとんでもない規模だが、「Microsoft Flight Simulator」は細かいアップデートすら数GBが普通なので、特にデカい印象がないのが逆に凄い。とはいえ、専用サーバーでのアップデートはそれなりに時間が掛かるため、時間に余裕を持ってアップデートを行ないたいところ。

【飛行機】
飛行機は、公式、サードパーティー含めてまだ選択肢は多くない。今後の充実に期待したい

 Neumann氏は、今回のアップデートを「はじまり」と表現している。今後、日本以外の様々なエリアのコンテンツが充実していくことになりそうだが、現実世界の変化とともに、ゲーム世界もどのように変化していくのか、その成長が楽しみだ。

【Jorg Neumann氏】