【特別企画】

史上最強のゲーミングチェア「エンボディゲーミングチェア」試座レポート

ハーマンミラーの傑作「エンボディチェア」をゲーマー向けに進化させた納得の1台

【エンボディゲーミングチェア】

7月23日発売

価格:214,225円(税込)

 ハーマンミラーは7月23日より、同社初となるゲーミンググレードのチェア「エンボディゲーミングチェア」を含む、ゲーミングギア3製品を発売した。既報のように、同日より、ハーマンミラーストアにて試座も開始されたので、筆者もさっそくゲーマーを代表して座ってきたのでレポートをお届けしたい。なお、試座開始と同時に予約が殺到し、すでに8月いっぱいまで予約申し込みが埋まっているという。この記事が皆さんの参考になれば幸いだ。

【ハーマンミラーストア】

 試座レポートに入る前に、評価の基準となる筆者のチェア環境について紹介しておくと、ハーマンミラーの代名詞であるアーロンチェアを自宅で20年以上使っているヘビーなハーマンミラーユーザーだ。1994年に発売された現在の名称で言う「アーロンチェア クラシック」のワインレッド(ガーネット)カラーを使い続けており、数年前にオーバーホールも完了し、このまま死ぬまで使い続けるつもりでいる。

 就職して小金を手に入れた20代の若者は、旅行や車、時計やバッグなどに手を伸ばすものだが、筆者の場合、今は亡きゲートウェイのフルタワーPCと、アーロンチェアだった。当時日本でも勃興しつつあったPCゲームを遊び尽くすために、今でいうゲーミングPCとゲーミングチェアに手を伸ばしたのだ。当時で十数万の価格でずいぶん高く付いた記憶があるが、今思えば、恐ろしいほど良い買い物をしたと思うし、今のゲーミングチェアブームの先駆けでもあったと思う。

【アーロンチェア】
筆者の長年の相棒であるアーロンチェア。自宅で現役稼働中

 アーロンチェアの凄さは、筆者が20年使っていることからもわかるように、イスとしての圧倒的な堅牢さ(実際、保証期間が12年もある!)と、背面と座面に全面採用されたメッシュ素材の存在だ。ペリクルという特殊素材で編まれたメッシュは、背中とお尻を適切な強度で支えていくれるため、長時間座っても疲れず、そもそも穴の空いたメッシュ構造であるため通気性が抜群で、長時間座っても蒸れない。

 さらに、たっぷりと曲げられるリクライニング機構や、体の曲線に合わせてデザインされた背面の緩やかなカーブ、体との接地量に応じて数段階に設定されたテンションといった細かい工夫の積み重ねにより、体を後ろに預けてもその快適さは維持される。体をどーんと後ろに預けて最高にリラックスした体勢でのゲームプレイは、筆者にとって最高の時間の1つだ。

 というわけで“最強のゲーミングチェア”とは、ハーマンミラー自身がどう呼称しているかどうかに関わらず筆者の中ではアーロンチェアの事を指しており、現在テレワークで、このアーロンチェアに座る時間がますます増えているが、この想いはまったく揺らがず、日々強固になるばかりだ。

 ちなみに、それでは現行のゲーミングチェアは無用の長物なのかというと、まったくそういう話ではない。一般的なゲーミングチェアは、レーシングコクピットやバケットシートがベースになっており、そもそもの出発点が異なる。通常のチェアではありえないようなホールド感と、姿勢の安定をもたらしてくれるだけでなく、なんといってもそのイスそのものがゲームプレイの時間をスペシャルなものにしてくれる。いわばゲーマーの“スイッチ”を入れるためのチェアだ。

 ただ、筆者のようにゲームを生業とし、日々の生活に組み込まれているような場合、スペシャルさは必要ではない。長時間使用に耐える耐久性と、身体へのサポート機能、体にフィットさせるためのカスタマイズ性、そして日々の生活に馴染むようなチェアが欲しくなる。それがアーロンチェアだっただけだ。

 話を戻すと、そうした中で突如登場したのが「エンボディゲーミングチェア」である。先日ニュースで紹介した際、多くの方が「これエンボディじゃないか?」というコメントをする方が多かったが、確かにこれは完全にオリジナルチェアではなく、「エンボディチェア(Embody Chair)」と呼ばれるオリジナルが存在する。「エンボディゲーミングチェア」はその進化形となる。

【エンボディチェアと比較】
左がオリジナルのエンボディチェア、右が新発売のエンボディゲーミングチェア。見ての通り、基本的に同じチェアで、新ファブリックを採用することでゲーミンググレードに昇華させている

 エンボディチェアは、ハーマンミラーファンならご存じの通り、ハーマンミラーが、代表作である“アーロンチェアを超えるチェア”を生み出すことを目標に2009年に発売された最新世代のハイグレードオフィスチェアだ。価格もアーロンチェアより高く、デザイン性もさらに洗練されており、同社の新たなフラッグシップとして君臨し続けている。アーロンチェアにとってある意味最強のライバルと言っていい。

 このエンボディチェアがゲーミングチェアになると発表された時、正直なところ筆者自身が一番驚いた。ついにアーロンチェアを超えるゲーミングチェアが、ハーマンミラーから現われた可能性が出てきたからだ。エンボディをベースにしている時点で、すでに負けている可能性が若干あるが、それがさらにロジクールの協業によりゲーミング用途に最適化されているというではないか。

 それはどれだけ凄いのか、そしてハーマンミラー自身がゲーミングを名乗るチェアとは果たしてどういうものなのか。といったことがどうしても自分自身の目と体で確かめて見たくなり、今回メディア向けの試座に飛びついた。もはや取材ではなく、(俺の)アーロンチェアより上なのか下なのか、それだけを確認するために。

 さて、ハーマンミラーストアでは、ハーマンミラージャパンのスタッフと、ロジクールを代表してブランドアンバサダーの岸大河氏が迎えてくれた。発売開始の7月23日よりエンボディゲーミングチェアと、同時リリースされたゲーミングデスクとモニターアームがまとめて配置された専用エリアが、ハーマンミラーストア2階奥に構築されており、そこにはデスクとチェアのセットが2組配置されている。

【エンボディゲーミングチェア】
ようやく対面できたエンボディゲーミングチェア。背面上部のGのロゴがコラボチェアであることを静かに主張している

 スタッフの皆さんとの挨拶もそこそこにさっそく座ってみると、確かな手応えを感じさせる上質な座り心地で、担当者の説明がまったく頭に入ってこないレベルで、たちまち魅了された。「これは完全に負けた」と思った。そして「買うしかない」とも思った。「しかし、家にオーバーホールしたばかりのアーロンチェアがあるのに、また20万円クラスのイスをもう1台買うと言ったら妻がなんというだろう? 『お尻は1つしかないのに高いイスを2つも買うなんてあなたは馬鹿ですか?』ぐらい言われるんじゃないか。どう説得しようか」といったことを座りながら考えてしまうぐらい魅力的だった。

【岸大河氏と意見が一致】
ロジクールGブランドに精通している岸氏はすでに何度も座っており、史上最高のゲーミングチェアと断定。意見が一致した

 おそらくエンボディチェアを知る人は、筆者の勝ち負けは完全にどうでもよく、オリジナルのエンボディチェアとの違いが知りたいはずだ。実はそここそにエンボディシリーズ最新作としてのエンボディゲーミングチェアの魅力が詰まっている。

 エンボディチェアとエンボディゲーミングチェアの違いは、大別して3つある。順番に説明していこう。

 まずはじめに、ファブリックがまったく異なる。エンボディチェアの最大のセールスポイントである体にフィットさせるための4層構造はそのままに、表層のファブリックが完全に別なものに張り替えられている。オリジナルのエンボディチェアは、極小の穴の空いたメッシュ状の薄いファブリックが採用されているのに対して、エンボディゲーミングチェアのそれは、やや厚みのあるクッション状のファブリックになっている。適度な反発があり、お尻や背にほどよく馴染み、サラサラしていて肌触りが抜群に良い。

 ここだけの話、筆者はアーロンチェアで、たっぷり幅広の座面を最大限に活かして素足であぐらをかいて座ったりするが、集中しているとメッシュを支える樹脂素材のフレームや、ペリクルメッシュが足の甲や太ももに食い込んで痛いことがある。エンボディゲーミングチェアのファブリックはビーズクッションをやや硬くしたような適度なふかふか感があり、あぐら座りにも優しそうだ。

【クッション性のある新ファブリック】

 その上で、当然のことながらエンボディチェアの優れた身体サポート機能がそのまま載ってくる。これについて全部説明していくととんでもなく記事が長くなってしまうので、Web上に無数の記事が存在するのでぜひ製品名で検索して参照いただきたいが、3行で短くまとめると、ハーマンミラーが“ピクセルサポート”と呼んでいるエンボディ独自のピクセル状の層の存在、そして“バックフィット調節”と呼んでいる背部のS字カーブの調整機能により、人間の体の個体差を吸収し、誰が座っても抜群のフィット感が得られるようになっている。この良さは座った瞬間に分かる。

 さらに1点だけ追記しておくと、アーロンチェアに20年座り続けている筆者が思う、アーロンチェアのほぼ唯一と言って良い弱点が、ふともも裏側の位置に当たる座面のもっとも手前の部分、ここが硬質フレームになっていることだ。これは座面、背面ともに、ペリクルメッシュをフレームの枠で支える構造になっているため仕方がないのだが、アーロンチェアの強みである無敵のペリクルメッシュがここだけ適用されず、太ももにこの硬いフレームが直接当たり、それが座り心地をわずかに下げている。

 エンボディチェアはここを完全に克服しているだけでなく、強みにしている。先述したようにアーロンチェアがフレーム構造を採るのに対して、エンボディチェアはピクセル構造を採用しているためフレームがそもそも存在しない。座面の先端部はまるで滝が流れ落ちるようにファブリックが配置され、太もも裏にあたる部分はもちろんのこと、その下まで張り巡らされており、くるっと丸め込む形で収納されている。

 凄いのここからだ。この座面の“長さ”を、両サイドの取っ手を持って前後に押すことで、長さを3インチ(約7.5cm)ほどの幅で調整できるのだ。浅く座りたい、深く座りたいという座り方が調整できるだけでなく、座面の長さそのものが調整できるのだ。しかも、エンボディゲーミングチェアのクッション上のファブリックになっているため、さらに座り心地がパワーアップしている。こここそ、アーロンチェアを使い続けているからこそ指摘できる「これは完全に負けた」と思ったポイントだ。

【アーロンチェアの弱点】
筆者が思うアーロンチェアの唯一の弱点は、このフレーム構造がゆえの座面先端部分。フレーム無しでフルメッシュチェアができれば最強なんだが……(無理)

【エンボディゲーミングチェアの強み】
太もも裏が当たる座面の先端部分、ここの作りが芸術的に滑らか過ぎる上、長さまで調節できる。これはズルいだろう

 2つ目は、いかにもゲーミングらしい要素だが、座面と背面に熱対策が施されている。熱対策は2段階になっており、1つは座面と背面にそれぞれ別デザインで設定されたくぼみ。これが熱を外に逃がす効果があるという。もう1つはクッション状のファブリック自体には、銅粒子(Copper Particles)が織り込まれており、これも熱を吸収する効果があるという。今回は少し座っただけなので、どの程度効果があるかどうかまではわからなかったが、ゲーミングチェアらしい要素と言える。ファブリックを触って少しひんやりする印象があったが、それが銅粒子の効果なのかもしれない。

【クーリングフォーム】
この溝が熱を逃がし冷却効果をもたらすという。また、ファブリックには銅粒子を織り込んでおり、こちらに冷却効果あるようだ

 そして3点目が価格だ。ある意味でここがエンボディゲーミングチェアの一番凄いところかもしれないが、2社が協業し、2年に渡ってマーケティングリサーチを掛け、新たなファブリックを導入し、機能性を向上させているにもかかわらず、オリジナルより“安い”のだ。エンボディチェアが232,100円(税込)に対して、エンボディゲーミングチェアは214,225円(税込)と2万円ほど安い。

 担当者によれば「ゲーミングカテゴリに参入するにあたり、ゲーマーに対して少しでも割安感を感じて貰うための戦略的な価格設定」ということだが、とにかく値下げをしないことで知られるハーマンミラーのハイエンドチェアとしてはかなり破格の価格設定と言える。当然、オリジナルと同じ12年保証が付いており、エンボディチェアを欲しかったノンゲーマー層も巻き込んで争奪戦が起こることは間違いない。

【ハーマンミラーストア】
ハーマンミラーストアの購入ページ。7月28日現在、「在庫あり」で1週間程度でお届けになっている

 ハーマンミラーストアでは、冒頭でも紹介したように試座がはじまってから満員御礼が続いているというが、すでに数十台が成約済みで、ハーマンミラー自身もこの反響の大きさに驚いているという。

 筆者自身の結論はもはや言わずもがなだが、エンボディゲーミングチェアこそ、史上最高のゲーミングチェアと言い切っていいと思う。アーロンチェアは、前傾姿勢にこそ最大の強みがあり、昨今のテレワークや日常の原稿執筆に素晴らしい効果を発揮してくれるが、ゲーミング用途では、エンボディゲーミングチェアが完全に上回っていると言わざるを得ない。「エンボディゲーミングチェアでゲームに浸ってみたい!」。そう思わせる素晴らしいゲーミングチェアだ。

 チェア1台に214,225円(税込)という価格設定は、冷静に考えれば目が飛び出るほど高いが、ゲーミングチェアの保証期間が1年から3年ほどに対して、エンボディゲーミングチェアが12年なのを冷静に考えるべきだ。一般的なチェアの保証期間が5年、日本オフィス家具協会(JOIFA)が定める回転椅子の設計標準使用期間が8年なのを踏まえても突出して長い。筆者自身は、アーロンチェアがそうであるように、良いものを長く使う派だが、ゲーミングギアに対する考え方は人それぞれだ。あなたはどういうゲームライフを送りたいのか、その際のチェアはどういう位置づけなのか、じっくり考えてみては如何だろうか。最後に、取材に協力してくれたおふたりのコメントを掲載して本稿のしめくくりとしたい。

【アームレスト】
アームレストはエンボディチェアと共通。ボタンひとつで上げ下げが可能で、幅も変えられる。かなり使い勝手がいい

【ハーマンミラージャパン マーケティング部 前澤恵子氏】
ゲーマーは“座るアスリート”だと思うんです。たとえば、ランナーの方は、しっかり時間とお金を掛けて、自分に合うシューズを見つけますが、それと同じで、ゲーマーの方も良い椅子に座っていただきたいと考えています。体に負担を掛けずにパフォーマンスを上げるエンボディゲーミングチェアをお選びいただきたいと思います。保証期間も12年ございますので、決して高い買い物ではありません。どうぞよろしくお願いいたします。

【ロジクール ブランドアンバサダー 岸大河氏】
僕も思わずツイートしてしまったんですけど、12年の保証期間、これは相当製品に自信がないとできないことだと思うんです。他のゲーミングチェアだと数年がせいぜいで、それぐらいで壊れちゃうのかな? と思ってしまいますが、エンボディゲーミングチェアだと12年間メーカーが保証してくれるのでむしろ安いなと感じます。あと、僕も30歳を過ぎたんですが、体にガタが来始めていて、良い椅子を使うことの重要性を感じています。良い椅子でパフォーマンスを上げることは大事なんですが、それ以上に体に良い椅子を使うことも大事だなと、もっと若い時にこの椅子に出会いたかったなと思いますね。最後に、良いなと思ったのは、ロジクールGと同じようにカスタマイズ性が高いことです。エンボディゲーミングチェアは、人間の関節のような構造になっていて、しっかりカスタマイズすることで、自分の体にあった最高のフィット感でゲームが楽しめます。ロジクールGユーザーは使って楽しい椅子だと思います。ぜひこの最高のゲーミングチェアを使ってみてください。

【レシオゲーミングデスク】
同時発売のゲーミングデスク「レシオゲーミングデスク」も極めてユニークなプロダクトだ。電動上下昇降機能が付いており、1cm単位で高さを設定できる。写真のように身長180cmの岸氏でも立って作業ができるほど高くできるし、逆に小学生ぐらいの小さな子供でも扱えるぐらい低くもできる。ロジクールからのアドバイスで、ヨゴレと光の反射を防ぐためのマット加工を取り入れ、強い光を当てても反射しない。耐荷重は驚きの113kgで、写真のようにPCを吊り下げたり(フックは別売)、モニターを複数台積んでも楽々処理できる。こちらも12年保証で、価格は223,390円(税込)

【オーリーンモニターアーム】
こちらは厳密にはロジクールとの協業プロダクトではなく、もともとハーマンミラーが扱っている既存プロダクトの最新モデル。デスクワークをトータルコーディネートする枠組み内で取り扱われており、この手のプロダクトにありがちなスプリングではなく、工業用のベルトが使われており、スムーズな動き、指一本で動かせる可動性が特長。耐荷重は9kgで、価格は41,470円(税込)