【特別企画】
こ、これは「鬼滅の刃」……じゃない!? 霹靂一閃の勢いでサ終する「鬼殺の剣」を遊んでみてパクリゲーかどうか検証してみた
2020年4月28日 09:14
- 4月24日 配信開始
- 4月29日10時 サービス終了予定
「週刊少年ジャンプ」で連載中の吾峠呼世晴氏による人気漫画「鬼滅の刃」。人を食らう「鬼」に家族を皆殺しにされ、その上妹を鬼にされてしまった主人公「竈門炭治郎」が、家族を殺した鬼と、妹を人間に戻す方法を探すために戦う……という開幕からヘビーで陰惨なストーリーが展開される本作だが、物語展開の面白さや、敵役の鬼も含めたキャラクター造形の巧みさから今や国民的とも言えるほどの凄まじい人気を誇っている。
去る3月16日にはプレイステーション 4向けのアクション「鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚」と、モバイル向け非対称対戦サバイバルアクション「鬼滅の刃 血風剣戟ロワイヤル」が発表され、公式のゲーム化を今か今か楽しみに待っている人も多い今日このごろ、お隣韓国で「鬼滅の刃」そっくりなゲームが配信されてしまった。その名も韓国Tennineの「鬼殺の剣(原題:귀살의검、グィサルの剣)」である。
本作では和風の世界観を背景に、主人公の限りなく炭治郎っぽい男性キャラクターが家族を殺されてしまい、どうも復讐の旅に出るっぽい感じである。さらに竈門禰豆子を新しい解釈で魔改造したような女性キャラクターや煉獄杏寿郎はじめ柱っぽい方々が登場するような、なんとも名状し難いゲームになっている様子。あまりに気になったので韓国Google Storeに潜入し、早速プレイしてみたのでこちらの模様をお伝えしよう。
なお、Tennineは韓国ゲームメディアGameMecaの取材(参考、韓国語)によれば「『鬼滅の刃』と関連もないし、盗作でもない」と主張していたようだが、一転して謝罪文とともに4月29日10時に本作のサービスを終了することを明らかにしている(参考、韓国語)。配信が4月24日に始まったので、そのサービス期間はわずか5日。発表に合わせてストアページもクローズされてしまったので、今後このゲームが日の目を見ることはない。
【4月29日追記】予定通り4月29日にサービスが終了された。(参考)
「鬼殺の剣」では炭治郎っぽい主人公が水っぽい剣技を使って戦うぞ!
さて、本作で最も注目すべきはやはりキャラクターの造形である。イメージビジュアルはあまり「鬼滅の刃」を知らない人が見たら「ああ、今流行ってる『鬼滅の刃』のゲーム」ね、と思うほどに、主人公キャラクターの造形やロゴデザインが本家のものに酷似している。
もちろん「鬼滅の刃」を読み込んでいる人からすれば、主人公キャラクターの顔にあるのが痣ではなく傷だったり、ストーリー上ものすごく大事な意味があるイヤリングをしていなかったり、髪型が違ったり、羽織の色と柄が違ったり、日輪刀(?)の鍔のデザインが違ったり……ということにすぐ気づくものと思うが、パッと見の印象は顔立ちや表情が似ていることもあって、一瞬空目してしまう感じではある。
ゲームのバトルパートは右向きの強制横スクロールで進み、画面端から現われる敵にキャラクターたちが自動で攻撃しつつ、適宜画面右下のボタンを押してスキルを発動しつつ進む、という作りなのだが、「水の呼吸」の使い手である炭治郎っぽいこちらの主人公のスキルは明らかに水属性の斬撃である。それぞれ水柱を発生させて範囲に大ダメージを与えたり、高速で往復移動をして敵を切り払ったりと、意外とカッコよかったり便利だったりするのがなんとも言えない感じを醸し出す。ちなみに画面左下に表示されているアイコンはクールタイムが長めの必殺技のようなもので、主人公のものは発動すると水っぽいのオーラを纏って一時的に攻撃速度などの基礎性能が上昇する、という自己強化系のものになっている。これはあれかな、全集中かな?
炭治郎っぽいキャラクターが日輪刀っぽい刀を片手に、水っぽいスキルを使うのが面白かったのでほかの“っぽい”キャラクター達も使ってみたかったのだが、ガチャは武器とキャラクターが同時に排出されるタイプで、5回回してみたところ恐らく低レアにあたる星3キャラクターしか獲得できなかった。一方武器は運良く☆5を2本(片方は七支刀)獲得できたので、直前までバトルパートで手に入れた「槍」を装備していた炭治郎っぽい主人公は、強力な七枝刀を片手に暴れまわる剣士となった。ただやはり今後二度と試す機会は訪れないであろう局面であるだけに、“禰豆子や柱っぽい”キャラクターを引けなかった自信の運の無さを恨むばかりである。
ちなみにバトルパートはステージ制で、先に進むにつれてストーリーが展開していく。韓国語が読めないのでストーリー本体に関してはなんとも言えないのだが、バトルも「森で蜘蛛を倒す」、「やたら喋る手鬼っぽいボスと戦う」、「無限城っぽいマップで太鼓を持っていない上に手がカマのようになってる響凱っぽいボスと戦う」というシーンがあり、絶妙に本編そのままだったり、微妙にズレていたりするのがなかなかのものである。
どうみてもパクリゲーでした。迎えた結末は5日間でのサービス終了
本作ではストーリー進行やガチャでキャラクターを獲得し、レベルやアクティブ&パッシブスキルを素材を用いて強化していくようなシステムが盛り込まれている。戦闘パートにしてもスキルを使うとカットインが入ったり、必殺技の使用時は1種だけではあるものの日本語でのセリフが入っていたりする。武器も同じレアリティで剣や槍など多数の種別があり、それぞれ持ち替えたり強化したりすることもできる。
こうしたそこそこ複雑な育成要素もありつつ、バトルパートでのオートや倍速モード、デイリーなどでの課金通貨配布など、昨今のスマホゲームの流行をきちんと抑えているという点で、ゲームそのものの作りは別軸の悪印象ほど酷いものではない。割と難易度上昇が早く、きっちり育成をしないと序盤であっさり詰まるというバランスも正直意外と好みであり、もし完全なオリジナルタイトルとして作られていたらまっとうなゲームとしてサービスが続く未来もあったかもしれないだけに、お粗末な“パクリ”でサービスが終了になってしまうというのは残念な部分もある。
ただし、もちろんこうしたゲームの存在は「鬼滅の刃」ファンや権利者からすればとても許されるものではないし、わずか5日感でのサービス終了は因果応報と言わざるを得ない。ゲームは少なからず先発のタイトルに影響を受けつつ分岐や発展を遂げていくものだが、今回はあまりに露骨であるし、本家の設定ありきの安易な作りになっているのもその一因だ。更に言うなら漫画に限らずアニメ版「鬼滅の刃」のDVD&Blue-rayに特典として付属するゲーム「鬼滅の錬磨」からの直接の盗用も疑われる。
反面、こうしたゲームが発生するのは「鬼滅の刃」の人気、知名度を裏打ちするものでもある。ファンとしては佳境を迎えた漫画の展開をハラハラしながら待ちつつ、大人気が故にものすごい競争率になりそうな単行本のグッズ付き特装版・同梱版の争奪戦に参加してみたり、10月の映画を楽しみにしたり、“公式”ゲームの展開を待ちたいところだ。