インタビュー

「3D ファンタジーゾーンIIダブル」インタビュー

3DSに最適化する=ワイド画面化、そして遊びやすくなった「オパオパの涙」

3DSに最適化する=ワイド画面化、そして遊びやすくなった「オパオパの涙」

――それが3DSでも遊べるようになったと。ここから、いよいよ3DS版の話が聞けるわけですね。……どこかでこんな展開があった気がしますが、それは置いときましょう(笑)。

奥成氏:3DSに「オパオパの涙」を移植する、第2期のラインナップの4本目のタイトルとして加えると決めた際、いくつか期待もありました。今回は中身はエムツーさんのオリジナル開発タイトルなので、「今までのタイトルより3D化の自由度が上がるんじゃないか」と。これが先ほど「本気の3D」と言っていた話です。

 それからPS2の「コンプリートコレクション」では、いろんな「ファンタジーゾーン」シリーズのタイトルの中の1本として、ある意味「おまけ」として入っていたけれども、今回は単体で遊べるようになるのだから、それ自体がちゃんと楽しめるようになっていなければならないので、システム16版をベースにはするけれども、逆に「いかようにでも料理してくれ」という話をしました。

 それに加えて、実は、PS2版自体もまだまだディスク版がリピートを繰り返して販売されていましたし、PS3でもPS2アーカイブスとしても販売するという話が出ていたので、「PS2版をプレイしたお客さんにも、もう1度遊びたくなるようなタイトルにしなければだめだ」ということを伝えました。

堀井氏:システム16版はこちらとしてはおまけとして作っているつもりは毛頭なかったんですけれども、今回はそれ以上に、ということで、勢いあまって2本収録されることになったんですけれどもね。

――(笑)。

堀井氏:これまでの3D復刻タイトルと1番違うのは、システム16リメイク版は我々が作ったものなので、今回解析の手間というものがまったくない、そしてソースコードがあるのでエミュレーションによる部分を極限まで減らして、これはエミュレーターのテクノロジはほぼ入っていないぐらい、ということになっちゃっているので……一言で言えば「やりたい放題できるようになった」という点ですね。

 同じ「オパオパの涙」ですけれども、これまではシステム16の都合上、オブジェクトが127枚しか出せなかったんですけれども、3DS上で動いているシステム16のVDPではなぜか2,048枚まで出せちゃったりとか、そういうことになっています。

奥成氏:今回の「ダブル」は、システム16リメイクの移植版ではあるんですけれども、「システム16という枠組みを部分的にとっぱらって作ろう」という話も最初にしました。その理由には、「ファンタジーゾーン」でも検討して実際に手を付けてみたものの、実現できなかった「ワイド画面の対応」があります。初代「ファンタジーゾーン」では、単にワイド化するだけでなく、ワイドに対応してかつ、ゲームバランスを維持するということが「移植」としては難しかった。

 ギガドライブタイトルを除いた、アーケード移植タイトルは、「3D スペースハリアー」からずっとワイド画面に対応してきましたが、「ファンタジーゾーン」だけ実現できなかったのは、ワイド画面に対応したゲームバランスを改めて作り直すことがエミュレーションベースでは難しかったからなんです(敵の出現位置や弾のスピードなどを1つ1つ調整する必要がある)。今回はゲームバランスの部分から3DS向けに見直した「ファンタジーゾーンII」を作ろう、というところから始まっています。ワイド画面に対応、という時点でシステム16ではないですからね。

堀井氏:実は初代「ファンタジーゾーン」の時もワイド画面への対応に関しては相当チャレンジしていたんですが、もし、技術的にワイド画面に対応したシステム16が作れたとしても、バランス調整までの時間はないだろうなあ、という話もあって。解析も含め、バランス調整に相当期間がかかるということで断念しました。(※「3D ファンタジーゾーン オパオパブラザーズ」のインタビュー参照)

奥成氏:今回は、まずワイド画面に対応させるというところからスタートしました。

堀井氏:最初からワイド画面に対応するということで作り始めたところ、いつのまにかプログラマーがゲームバランスも取りながらゲームを作るようになっていったので、すんなりバランスよくプレイできるようになっていきました。

奥成氏:ワイド化するということは、画面横幅が違うゆえに、移動スピードなどを調整する必要が出てくるんですよね。

堀井氏:そのあたりははっきり「違う」とわからない程度に追い込むことはできました。作っている最中は4:3の画面用の位置から敵が出てきておもしろいことになっていたりしましたが、ソースコードがあるので対応するのもスムーズで。「ファンタジーゾーン」のときに本当にワイド画面に対応させようとしていたら、大変だっただろうなと。

――ワイド画面でプレイしていて思ったんですが、窮屈さがないんですよね。のびのびと遊べる。オリジナルにあった要素は再現しているけれども、3DSの画面に合わせた表現方法だったり、自由度の高さみたいなものが感じられて。

堀井氏:そこは3DSでここまで11タイトル作ってきたノウハウと、「ファンタジーゾーンII」を作るのが2度目ということもありますね。

――話を伺っていて気になったのですが、3DS版はシステム16リメイク版と同じスタッフが手がけてらっしゃるんですか?

堀井氏:そうです。システム16版のスタッフが3DSに移植しています。だから、以前システム16版の作成途中でこまごま削っていった仕様を復活させたりしています。一例を挙げると、これはスタッフの中でも気づいた人がほとんどいなくて、僕はガッツポーズしたんですが、前線基地を壊したあとの残骸は、システム16版では処理速度が足りなくなると画面の外にいったときに消す処理をしていたのですが、3DS版では山のように溜まります。そういった細かいところはずいぶん余裕が出ましたね。

――今までの3D復刻プロジェクトと話が逆になっているんですね。いつものパターンではエミュレーションで3DSのパワーを食われている関係上、元のゲームの再現で苦労しているから、性能的に下の環境を再現するのでいっぱいいっぱいで、パワーアップするという話にはなっていなかったですよね?

堀井氏:そうですね。今回は逆ですね。調整にしても自分たちで作っているものだから、「どこをいじればいいのか?」と探すところから始めなくていいので。

奥成氏:それと、このタイトルの開発中に「オパオパブラザーズ」がリリースされて、お客さんの声のフィードバックももちろんありましたし、制作スタッフの中でもいろんな意見が出てきたんですね。

 前作の反響の中でも1番気になっていたのは、ノーマルの3DS本体だと「弾が見づらい」という話でした。今回の「3D ファンタジーゾーンII」では弾が大きく見えるようになっています。たぶん、普通にプレイしていると気がつかないし、先ほどプレイされていて「弾が大きくなったな」とは思わなかったと思うんですが。

――視認性が上がったなとは思いました。3DSでプレイしても見やすくなった。明らかに違うな、と思いました。それは弾だけではなくて、いろんなものがはっきり見える……それは「ファンタジーゾーンII」の絵作りのテイストだと思うんですが、「オパオパブラザーズ」では感じられなかった部分です。

左は「オパオパブラザーズ」の画面。右の「ダブル」での敵弾と比較してみよう

奥成氏:その他にも初心者救済策として、弾の視認性以外に、難易度を最低にすると、近づくだけでコインが吸引されるという仕様が追加されています。

――あれ、気持ちいいですね。キュイーンってコインが自機に吸い寄せられていく。ぜひ味わって頂きたい夢の機能ですね。

奥成氏:「ファンタジーゾーン」を1度もプレイされたことがない方は、みんなあのコインが落ちていくのに気がつかずにそのままスルーしちゃうんですよ。「拾う」という概念がないので。今回は難易度を下げてもらえれば、ある程度近づいて敵を倒すと、すぐにコインが吸い寄せられてくれますので。「あ、これはコインを集めるゲームなんだ」ということがわかって頂けると。

 逆に今回、プレーヤーが任意に変更できる設定は難易度やボタンコンフィグくらいにしています。調整部分に関して、連射速度とかの項目がないのは、最初の状態で最適化してあるからなんです。

――確かに、今までのシリーズからすると設定項目がかなりシンプルになりましたね。初期設定でもかなり遊びやすいと思いましたし。

「ファンタジーゾーンIIダブル」の設定項目。これまでのシリーズに比べるとかなりシンプルにまとまっている

奥成氏:「オパオパの涙」に関しては、「途中セーブ」がありますので、難易度を含めて、真のエンディングに到達しやすくなっていると思います。ラスボス直前でセーブすればマルチエンディングも全部ではないですが続けて見られますし。

――中断セーブを使いこなせば楽になりますよね。「オパオパブラザーズ」の時、ラスト前でひどい状態のまま中断セーブしちゃって、移動中にラストをツインボムだけでクリアしたのを思い出しました(笑)。

堀井氏:便利機能の存在がわかっていても使わない方も多いみたいですね。

――「使ったら負け」と思っている方も多そうですね(笑)。

堀井氏:僕も含め、昔堅気の人も多いと思いますね。そういう方々のためにも3DSで遊んでもらうためのバランス、調整にしているということです。だからPS2のシステム16版でプレイされていた方は、難易度の調整にも気づかれると思います。

――PS2アーカイブスやPS2の「ファンタジーゾーンCC」をプレイされた方が3DS版をプレイされると「ああ、違うな」と感じて頂けると思うんですけれど、3DSで遊ぶための調整が本当に遊びやすく、わかりやすく、すっきりして見えるという意味での最適化というものをすごく感じました。

堀井氏:触って同じ感触であればいい、という感じです。

――3DSで遊んだときに同じような体験ができる、という。環境は違うのに。

奥成氏:乱暴な言い方をすると、「ファンタジーゾーン」は3DSで遊ぶにはちょっと難しいゲームなんですよね。とはいえ、オリジナルのあるゲームだったので、「オパオパブラザーズ」に関しては「復刻として忠実に移植されていなければならない」という部分から大きく逸脱はできなかったので、そこは便利な要素を加えることで解消していこうと。

堀井氏:「オパオパブラザーズ」をリリースした後いろいろ見ていましたが、拡張した部分を使ってみなさん果敢にゲームに挑んでいらっしゃったんですよね。

奥成氏:追加要素はあくまで外付けというか。オリジナルの上に乗っているものですから。

堀井氏:オリジナルの上に追加要素が乗っていて、その気になればすべてをパージできるような作り方ですよね。

――あくまでオリジナルがきちんと3DSのハード上で再現されているから、外側から武装していった感じというか。

奥成氏:その点で「オパオパブラザーズ」も、あと「3D アウトラン」もそうなんですけれども、基本的に追加要素はたくさんやりましたが、「最終的に追加要素を全部切った状態で遊ぶ」という人がいていい、というつもりで作っています。

 「3D アウトラン」は、便利な性能の車をたくさん追加しましたけど、最終的にオリジナルの設定に戻してアーケードと同じ性能のマシンで挑戦してもらいたい、という意識があったので、性能を変更したとき、見た目が絶対最初のマシンと異なるように作っているんですよ。やはり昔から遊んでる人なら最初の真っ赤なスポーツカーに思い入れがあるじゃないですか。だから、どんなにハンドリングがよくなったり、路肩を走れるようになって「便利だなー、このクルマの方が楽だな」と思っても、最終的に「初期状態のクルマでクリアすることを目指したい」って思うんじゃないかと。それを逆手にとって、マシンをパワーアップさせると最初と同じクルマにはならないようになっています。

 だけれども、今回の「オパオパの涙」に関しては、「これはもう3DSのゲームとして作る」と。なぜなら、元になるシステム16リメイク版は、自分たちで作ったものだし、一本立ちのデビューなので、あえてそこを守る必要はない、ということですね。

堀井氏:自分たちで作ったものだから、解釈を自由に、幅を広げることができたというところですね。そういう意味でもやりたい放題ですね。

――「オパオパブラザーズ」にあった「コインストック」も継続して入ってますし、復活プレイもやりやすいですね。

奥成氏:好評価をいただいた「コインストック」機能はそのまま継続して入れてあります。例によってある程度コインを貯めて頂くと、便利なオプションが追加されていきます。今回は割とすぐ機能がされるようにしてありますので。前作に準じて用意しましたけれども、じゃんじゃん便利にしていただいて遊んで頂けるようにしてあります。

 逆に、「オパオパの涙」の難易度を最高にすると、システム16の制限を外したこともあって、「ファンタジーゾーンCC」以上の難易度になっています。

――表示限界の上限が上がっているから、敵や弾もいっぱい出せる、ということでですか?

奥成氏:ということもあります。全体的に難易度は今回下がっていますので、とくにPS2版をプレイされた方は「歯ごたえがない」って思われるかもしれませんが、難易度最高では、かなり激辛なゲームになっています。4段階の難易度設定ですが、4はほぼ最初から赤い弾を撃ってきますね。

堀井氏:PS2版の難易度を最高にしたやつを僕自身がまだクリアできていないのに、その上を作られると困るんですよね(一同笑)。

奥成氏:PS2版では弾が多すぎると処理落ちするから、ということで制限していたものが、今回は取っ払われているので。PS2版やアーカイブス版でプレイされた方には、チャレンジして頂ければと思います。

「コインストック」。拾ったコインが蓄積されており、電源をOFFにしても残る。貯まったコインストックは、「オパオパの涙」(ストーリーモード)のゲーム開始(ラウンドセレクト)時に引き出して、次のゲームプレイ時の軍資金として利用できる
最高難易度の画面がこれ。赤い弾が見える

(佐伯憲司)