インタビュー

「アストロボット」の「サンダーフォースV」楽曲採用は“仮楽曲”がきっかけだった【TGS2024】

Team ASOBI代表ニコラ・デュセ氏インタビュー

【東京ゲームショウ2024】

会期
ビジネスデイ:9月26日・27日 10時~17時
一般公開日:9月28日 10時~17時
      9月29日 9時30分~16時30分
会場:幕張メッセ 展示ホール1~11(千葉県千葉市美浜区中瀬2-1)

Team ASOBI代表 兼 クリエイティブ・ディレクターのニコラ・デュセ氏

 9月6日の発売以降、いい意味で驚きを持って迎えられた「アストロボット」。プレイステーション 5と、専用コントローラー「DualSense」の機能を活かし、カジュアルながら目一杯遊びを詰め込んだアクションゲームで、間違いなくPS5タイトルの今年のハイライトのひとつとなるだろう。

 TGS2024では、本作を開発したTeam ASOBI代表 兼 クリエイティブ・ディレクターのニコラ・デュセ氏へインタビューできたので、その模様をお送りする。

ハッピーなインパクトを生めたことが嬉しい

 まず世界的に高い評価を受けていることについては、当初は「驚いた」という。ゲーム開発ではゲームの問題点ばかりに意識が行くため、実際にプレイしたユーザーの意見はそこまで把握できていなかったという。

 一方で、今も新しいレビューを読むたびに、「そこを好きになってもらえたのか」「ここが気になるポイントなんだ」と学ぶことが多いという。

 そのうえで、中でも特に嬉しいフィードバックは、「アストロボット」が人々にポジティブな気持ちを生んだことだという。大人と子どもで会話が生まれて世代間の架け橋になっていたり、世界的な暗い情勢が多い中で前向きな気持ちになれたなど、ハッピーな方向にインパクトを与えられたと聞くと、とても嬉しいのだとした。

 ゲームの内容としては、クリアまで長い時間を要するゲームが主流となっている中で、比較的コンパクトながらも質の高い体験を提供する「アストロボット」を評価してくれる人が多いことも嬉しかったという。

気持ち良く遊ぶ「おもちゃのレイヤー」

 ゲームの工夫点はいくつもあるが、絶対的ベースとしたのは「気持ちよさ」の部分だという。シンプルな操作や60FPSのキープもそのひとつとなる。またたとえば、ミスをしてリスタートする場面では、性能的にはもっと速く再開させることができるそうだが、速すぎると休憩できず、逆にストレスになるため、あえて間を取って「気持ちの良い」時間にしている。

 また、誰もが気持ちが良いと感じるものとしてあるのは、本作に仕込まれた数々のインタラクションだ。石だったり缶だったり、あるいは金属の地面も泥の地面も含まれるが、ここにDualSenseのハプティックフィードバックの“触感”が加わることで、ゲーム内のオブジェクトが手元の「おもちゃ」として遊べるようになっている。

 デュセ氏が「おもちゃのレイヤー」と呼ぶこのベースを大切にすることで、ゲームを初めて触る子供からゲーム世代を外れた高齢者まで、「アストロボット」を気持ち良く感じてもらえる。ゲーマー向けの高難易度なチャレンジは、このベースから上乗せで作っていくことができる、という考え方だ。

デュセ氏最大のリスペクトを込めた「サンダーフォースV」楽曲

 ゲーマー向けといえば、本作にはサードパーティを含む様々なタイトルのゲスト参加や引用も特徴となっている。今回は、終盤のシューティングシーンにおいて、セガ「サンダーフォースV」の楽曲を使用した理由について聞くことができた。以降は本作のネタバレを多く含むためご了承いただきたい。

 本作のシューティングシーンは、プレイステーションの歴代ハードが一斉に集まり、ラストに向かって全攻勢をかけるというPSファンなら最高に盛り上がる場面。そこでBGMとしてかかるが、「サンダーフォースV」の「Rise Blue Lightning」だ。

 なぜこの楽曲なのかというと、もともとこの場面での仮楽曲だったからだそうだ。「アストロボット」の楽曲は、まずゲームの場面に仮の楽曲を当てはめ、作曲担当のKenneth C M Young氏に送り、そこでYoung氏がイメージを膨らませてオリジナルの楽曲をつくる、という流れで進められていた。

 デュセ氏は1990年代のテクノソフトが大好きであり、「この場面では『サンダーフォースV』の『Rise Blue Lightning』が絶対合う!」と考え、仮楽曲としてYoung氏に渡していた。Young氏は仮楽曲を受け取った際、「この楽曲は完璧だ」と漏らし、楽曲の制作に難色を示していたそうだ。

 そんな折に、セガとの他のコラボボットなどついて話す機会があり、問題の場面について「楽曲をそのまま使えないか?」と提案してみたところ、「ぜひ使って」と許可が降りたそうだ。そのため楽曲はアレンジせず、初代プレイステーション版のものがそのまま使用されている(「サンダーフォースV」はセガサターンで先行発売されたが、PS移植版もあるため関係性はある、とデュセは語った)。

 ちなみに楽曲がかかる場面では、セガのクレジット、タイトル名、楽曲名が記載されるが、これは「サンダーフォースV」にリスペクトを込めた開発チームの意向なのだとした。

 「アストロボット」の今後については、「秋のアップデートをまずは楽しんでほしい」とした。今回、「今後もコラボボットが増えるのか」という質問を「妻が『せがれいじり』の登場を待ち望んでいる」という提案とともに伝えたのだが、「これについては何も言えない」という回答だった。

 プレイステーションブースでも「アストロボット」の存在は大きく目立っている。今後、プレイステーションの「顔」となっていくのだろうか。「アストロボット」の今後にぜひ注目したい。