インタビュー

「真・三國無双 ORIGINS」インタビュー。“真・三國無双の根底にある面白さを見つめ直す”

【真・三國無双 ORIGINS】

2025年1月17日 発売予定

価格:
通常版 9,680円(税込)
TREASURE BOX 17,680円(税込)※グッズのみ8,000円(税込)

 コーエーテクモゲームスは、プレイステーション 5/Xbox Series X|S/PC用アクション「真・三國無双 ORIGINS」を2025年1月17日に発売予定だ。同作は「真・三國無双」シリーズの最新作であり、9月26日より9月29日の4日間で開催される「東京ゲームショウ2024(TGS2024)」にも出展する。

 今回はそんなTGS2024が控える中、「真・三國無双 ORIGINS」のプロデューサーを務める庄 知彦氏と、ディレクターの関口 和敏氏にインタビューを実施した。これまでナンバリングとして続いてきたシリーズが、なぜ「ORIGINS」と名乗るのようになったのか、また今作はこれからの無双シリーズのどのような位置付けの作品になるのか。いち過去作ユーザーとして気になる質問をあれやこれやとぶつけてみた。

 なお、TGS2024で出展される試遊版の先行プレイレポートも同時に公開中だ。そちらと合わせてチェックしてもらえると、より「真・三國無双 ORIGINS」の魅力を実感いただけるはずだ。

「真・三國無双 ORIGINS」プロデューサー・庄 知彦氏(右)、「真・三國無双 ORIGINS」ディレクター・関口 和敏氏(左)

「真・三國無双」の原点的な面白さを表現。「ORIGINS」に込められた想い

――本日はよろしくお願いします。早速ですが、あらためて今作がナンバリングを外し「真・三國無双 ORIGINS」と名付けられた経緯についてお聞かせください。

庄氏:今の時代だからこそ楽しめる「真・三國無双」ってなんだろう、と考えたときに、初代の「真・三國無双」を立ち上げた際の“タクティカルアクション”というところをしっかり見つめ直して、今だからこそ実現可能な「真・三國無双」を作ろうと原点回帰を図り、「原点」=「ORIGINS」という名前をつけています。「真・三國無双」の最新作ではあるので、ナンバリングをつけるという話もあったのですが、「真・三國無双」の1番の根底にある楽しさをしっかり見つめ直すことにしました。

 また、今回からオリジナルの主人公を操作することになり、今までのナンバリングとはゲーム全体のフローと、描いているものも異なります。もっと言うと、今作では「赤壁の戦い」までの歴史を物語として密に描くなど、これまでのナンバリングとは異なるところも多いので、やはりナンバリングではなく、原点を意味する「ORIGINS(オリジンズ)」と、付けました。これからリブートしていくっていう気持ちも込めて、ロゴも新しいデザインにしています。

――今作では「三国志」の世界にオリジナル主人公が登場します。この主人公を通して「三国志」の世界を描く上で、意識しているポイントなどはあるのでしょうか?

関口氏:オリジナルの主人公を登場させるという方針を立てたとき、これまで「三國無双」をプレイしていない方だったり、「三国志」に詳しくない方でも自分を投影しつつ、「三国志」の世界をわかりやすく楽しめるように記憶喪失・過去を失ったという設定を採用しました。その過去を紐解いていくのもストーリーの醍醐味ではあるんですが、それはあくまでサイドストーリー的なところとしています。「三国志」をわかりやすく、1人の人物の視点から時系列に沿って展開していくのを極力意識しています。

 今までのシリーズでは群像劇として描かれ、各勢力・時代が飛び飛びでした。「三国志」の有名なエピソード、有名な戦いを体験していくものが多かったのですが、今回は「三国志」の最初のきっかけとなる「黄巾の乱」から順番に、濃密に描いていきます。具体的に言うと、今まで「黄巾の乱」はほとんどのタイトルで“一戦で表現”していましたが、“一章レベル”で描いています。ここまで「黄巾の乱」を描くのは、「真・三國無双」としては初めてです。

 もう一つ、魅力ある英傑たちが、それぞれの信念のもと戦い合う群像劇の側面も、「三国志」の物語としてすごく魅力があるところです。“そこ”を邪魔してはいけない。変な言い方ですが、オリジナル主人公は遺物になってしまう懸念がありました。やはり描くべきは「三国志」なので、オリジナル主人公としての面白さを表現しながら、いかに英傑たちを魅力的に描くか、というところは、かなり苦労しています。

――「真・三國無双 ORIGINS」では、過去作とは違い、色合いや絵づくりにどこかに渋みを感じられます。これは過去作以上に史実的というか、歴史ドラマ的な側面を強調しているからなのでしょうか?

関口氏:これも一番最初の方針です。せっかく兵士もいっぱい出せるので、現行機のマシンスペックを最大限に使った上で、「真・三國無双」の原点的な面白さを表現するために、“臨場感溢れる戦場”が必要だろう、と。その方針の元、戦場の空気感を表現しようとしました。

 一番最初にCGディレクターが用意してくれたコンセプトアートは、飛び交う矢の雨の下で大軍団同士がぶつかり合うというものでして、「これをゲームで表現しよう」といったところから始まっています。その延長での空気感だったり、火の粉の感じだったりというのが出てきました。

 さらに、物語のテイストも、そうした雰囲気に寄せたいという思いがありました。従来のシリーズは、どちらかと言えばケレン味が強い物語だったと思います。それも、とても魅力あるゲームですが、本作では戦場の空気感にあわせて、歴史ドラマのような雰囲気を強めにしていこうと考えていました。

 一番最初は冒頭のシーンから作っていこうと思い、一つはケレン味たっぷりに大軍同士がぶつかり合っているところからバトルを展開していくもの、もう一つが旅する主人公が困窮する民を救い、関羽と出会う歴史ドラマのような雰囲気を感じさせるシーンと、2パターンがありました。どちらが良いのかを検討したところ、歴史ドラマの方向性に決定しました。伴って、キャラクターデザインも少し渋めなものになっています。

庄氏:CGディレクターの吉田が、開発と本当に密にやり取りをしてくれていて、関口が話した通りの、我々が期待していた以上のものをしっかり作ってくれているな、と思いました。

――攻撃アクションや部隊を使った戦闘要素の部分で、過去作から意図して差別化した点はありますか?

庄氏:差別化というとアクションとか操作周りに関しては、今回完全新作というのを意識して作っているのですが、シリーズファンの方ができるだけスムーズに楽しんでいただけるように、“ボタン感覚”というのを大事にしてそこをできるだけ継承しようとしています。◻︎ボタンだったら通常の攻撃、△ボタンだったら強い攻撃だったりとかです。シリーズユーザーの方が入りやすいような操作感にしようというのはありました。

 ただ、その上でゲーム性をそのままにするというより、戦うアクション性や戦術的な「戦法」といった要素に関しては、今までのシリーズのいろんなものを見直して、それぞれの良いところを参考にしながら、今作ならではの一番ベストな形に全部落とし込んでいった形になります。

 アクション性を高めるという部分は、毎回シリーズごとに考えて実際に取り組みはしています。今作は原点回帰なので「元の一騎当千の爽快感をどうやったら楽しめるのか」ということを考え、アクションに関しても、それなりに歯応えがありつつ爽快感がしっかり味わえるようブラッシュアップして、今作ならではのものを作りました。「戦法」も“タクティカルアクション”のタクティカルな部分を、「こういう風に操作系に取り入れられたらいいよね」って今までのシリーズで色んな経験のもとで作っていったという感じです。

関口氏:私は庄からのオーダーでひとつよく覚えているのが、「ユーザーを殺しにかかれ」(笑)

一同:(笑)

庄氏:これは難しいところがあって、「真・三國無双」ってユーザーさんが多様化して求められるものが本当に色々あるんです。どれも本当に大事なお客様だと思っているのですが、海外の市場を考えたときに、爽快感とか簡単な気持ち良さの方向に振っていくと、海外だと魅力としてウケ難いところもあります。初期の「真・三國無双」って結構シビアだったんです。苦労した上での爽快感というのが、ゲームとして目指していたところだったこともあり原点回帰ということで、近年の作品よりはやっぱり“手応え”……「殺しにかかれ」って……(笑)

関口氏:攻防の“防”の部分は意識的にデザインしているところです。「汜水関の戦い(※試遊版の話)」では回避しなければいけない攻撃や、ガードをしないとつらい場面も多かったと思います。攻撃で押し切れて気持ち良く戦えるところもあるのですが、それだけでは突破しにくい。

 大軍団戦では、味方と共に突撃し、一緒に活躍するプレイスタイルもあります。逆に腕に自信のある方は、1人で突撃する方法もありますが、よほどの猛者でなければ苦戦を強いられると思います。あとは、戦術的な立ち回りを重視するプレイスタイルもありますね。うまく味方の行動を補助できれば、そこが軸に自軍が有利になっていき、増えていく味方と一緒に行動して楽になる、という設計です。たとえば、「汜水関の戦い」では、正面突撃の袁紹だけではなくて、別方面から進軍する孫堅が奇襲をかけて、より戦況が楽になるというようなところです。

庄氏:やっぱりプレイヤー自身が自分で上手くやったからという成功体験とか、そういうものの上にある爽快感が、我々の目指す一騎当千の爽快感だと思っています。関口から話があったように、戦術的に立ち回ることで、今まで以上に一騎当千の気持ち良さを味わえるようになっていると思います。

関口氏:随行武将の無双乱舞(絶・無双乱舞)では、一撃で1,000人倒せるものもあります。今回は画面内に本当に数千人レベルがいるので、開発している我々としても脳汁が出ます(笑)

庄氏:殺しにかかるときは本当に殺しにかかるので、ぜひそういう場面も含めてお楽しみにいただけたらと思います。難易度の設定もそうですし、関口が説明してくれたように戦術的に立ち回ったりすることで、本当に気持ち良く戦えたりできます。アクションゲームが苦手な方から、近年の比較的アクションとして簡単になってきている「真・三國無双」のファンの方も楽しめるように作っているので、そこはご安心いただければなと思います。

――単刀直入にお聞きしますが、今作の軍師キャラクターはビームを撃てるのでしょうか?

庄氏:無双的にはビームと言えば諸葛亮ですが、ビームの撃てるアクションはあります(笑)ただ、軍師キャラを操作できるというのは別の話です。

関口氏:一応、主人公も撃てますね。

庄氏:ビームは格闘ゲームの「三國無双」からのお約束でですからね。私が実際に実機をプレイしたとき、諸葛亮を簡単に倒してしまったからなのか撃って来なくて、「撃たないの?」みたいな(笑)

 流石に撃たせないとマズいだろうって話をしたら、「ちゃんと撃つきは撃つので大丈夫です」と。そんなやり取りがあったくらいなのでご安心ください。

武器ドロップやハクスラ要素もあり! 今作の育成システムについて

――過去作ではキャラクターの成長に従って新アクションが増える要素だったり、いわゆるハクスラのような遊びもやり込み要素としてあったと思います。今作でもそういったものはありますか?

庄氏:はい、それはあります。

関口氏:武器のドロップ、ハクスラ的な要素はもちろんありますし、主人公の成長に従って武器の技が解放されていきます。「武芸」も成長に従ってどんどん種類が増えていく形となっています。

庄氏:今回はこれまでのシリーズとは違って、操作するのはあくまで主人公というのがあるので、その分シリーズの中では成長要素が一番充実していると言って良いと思います。主人公を通してプレイしていくゲームになっているので、レベルが上がっていくのもそうですし、武芸とかスキルの習得であったりとか。武器の種類とかも、主人公1人でずっと遊ぶことを前提として、そういったやり込みとか戦闘要素をしっかり作り込んでいます。ここまで1人のキャラクターの成長要素を密にやるのは、シリーズでも初めてです。

関口氏:結構、特徴的な成長システムになっていると思います。色々な武器を使い分けていくと、その分だけ、より早く強くなっていくシステムです。「剣」が一番オーソドックスな使い勝手ですが、色々な武器で操作感がちょっと違っていたりしますので、成長のために武器を切り替えていくうちに、手に馴染んでいくという……そういった面白いシステムになっています。ぜひ、色々試してみていただければと思います。

庄氏:「護衛兵」という主人公の配下の部隊も成長要素の一つです。最初は人数が少なく、TGS版では20人程度ですが、もっともっと増えていきます。ゲームを進めて護衛兵の人数が増えていくと同時に、「戦法」自体の種類も増えていき「自分はこういう戦法が好きだから」もしくは「ああいう戦場だから今回はこの戦法にしよう」だとか、成長要素の面もお楽しみいただけるかなと思います。

関口氏:単純に成長要素として設計はされているので、やり込めばやり込むほど、兵が自分を慕ってどんどん集まってきて様々な戦法が使えるようになります。その結果、自分の部隊でも戦況を覆せるようになる。システム側からも“自分が将”みたいな感じになっていきます。

 護衛兵も「どう実装したら良いものだろう」と当初色々議論があったのですが、やっぱり大軍団戦の形が見えてきたときに、お互い兵士を劇的に動かして戦況が変化したら面白いよね、みたいなアイディアから、「戦法」というものが出来てきた経緯があります。

 「真・三國無双」シリーズは1人のキャラクターが目の前の敵を倒していくと、全体の戦局が動いていく設計の仕方なのですが、そこの“中間”にもう一つ作ろうというのが「大軍団」だったんです。戦場全体の戦局と、軍団同士の戦局、この“軍団同士の戦局”をプレイヤーの介入で大きく動かすというのが「戦法」「大戦法」というものです。ここが今回イノベーションに近しいところで、キモになっているのかなと思います。

庄氏:今回、兵士をいっぱい出すという前提があったから、「絶対護衛兵を復活させるぞ」という指示だけは最初にしていたのですが、気づいたら凄い人数に。「あれ、こんな出せるの!?」みたいな(笑)

 しかも現場の皆のアイデアで「戦法」と絡めて面白い要素に昇華してくれていて、素晴らしいなって思っていました。

――これからの「無双」シリーズにとって、「真・三國無双 ORIGINS」はどういった位置付けの作品になると考えているのでしょうか?

庄氏:初代「真・三國無双」に近しいというか、強いていえば「真・三國無双5」もそうだったんですけども、その世代だからこそ作れる「真・三國無双」。それ以降のベースになるシステムであったりとか、そこをまず構築したいなと今作を立ち上げたときに思っていました。

 ただ、先ほどお話しした通り、「真・三國無双」シリーズって本当に多くのファンの方々に支えられ応援されていて、多様化していて、今回はもちろん全てのシリーズファンに楽しんでいただけるのを目指してはいるのですが。やっぱり、もっとこう従来の作品に寄った方がいいとか、色々な方がいらっしゃるとは思うんです。ですので、今回のこのタイトルが今後の全てを決定付けるのではなくて、今後のベースになり得るであろうシステムを使って、「今度はこういう『無双』が良いんじゃないか」とか、続編になるのか新作になるのか、色々展開していけたらいいなと考えてはいます。

 兎にも角にも今の世代だからこそ作れる「真・三國無双」というもののベースを今回作れたことで、また色々な方向性を作っていけるものになれればなと。今回の「真・三國無双 ORIGINS」が凄い好評であれば、もちろんそういう方向性を伸ばすことも考えますし、「やっぱりこういう方がいい」といったご意見があれば、それを踏まえて作っていくのかなと。今回本当に良いものを作れているとは思うので、そういう風には捉えております。

――最後に発売を心待ちにしているユーザーやシリーズファンに向けてメッセージをお願いします。

関口氏:今、丁度ゲーム開発も佳境に入り、我々もテストプレイができるようになってきている状況です。日々、最後の踏ん張りをしているところなのですが、自分で遊んでいても「面白いものが出来たな」って思います。

 長い伝統的なシリーズで、これまでの良さを継承しつつ、本当に新しい遊び方というものが実現できており、手応えを感じる内容になっています。我々が大軍団同士のぶつかり合いを実現したときの「おおっ!」と思った感動を味わって貰ればと。TGS2024に出展する試遊版の「汜水関の戦い」だけでも凄くワクワクできる表現になっていますので、ぜひユーザーの皆様にも味わっていただきたいです。

庄氏:“原点回帰”というものをテーマに作ってはいるのですが、これまで応援してきてくれた「真・三國無双」のファンの皆さんに、まず本当に触っていただきたい、楽しんでいただきたいというのが第一にあります。関口からも話があった通り、今までのシリーズの色んなところを継承して、新しい面白さを実現していると思います。

 また、ゼロから楽しんでいただけるよう目指して作りましたし、開発現場の皆も凄い意識して、完全新作の面白いゲームを作ってくれたので、海外の全ての皆さんから今まで「真・三國無双」に触れたことがない方、「三国志」に触れたことがない方にも、ぜひ手に取っていただけたら嬉しいです。

――本日はありがとうございました!

【『真・三國無双 ORIGINS』アナウンストレーラー】