レビュー

「アストロボット」レビュー

ステージ構成が見事! DualSense効果絶大のテーマパーク的アクション

【アストロボット】

9月6日 発売

価格:
通常版 7,980円(税込)
デジタルデラックス版 8,980円(税込)

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は、プレイステーション 5用アクション「アストロボット」を9月6日に発売する。

 同作は、PlayStation StudioのTeam ASOBIが手がけるタイトルで、PS5にプリインストールされた無料ソフト「ASTRO's PLAYROOM」、PS4で発売されたVR専用ゲーム「ASTRO BOT: RESCUE MISSION」に登場するキャラクター「アストロ」が活躍するスペースアクションアドベンチャーだ。

 今年、12月3日にプレイステーションは30周年を迎えるが、本作ではそんなプレイステーションを代表するキャラクターたちを模したアストロが150体以上も登場する。今回は、SIEからゲームの発売前にコードをいただいたので、早速レビューしていきたい。

【『アストロボット』 - ロンチトレーラー】

DualSense越しに伝わる、アストロの仲間を探す大冒険!

 PS5型の母船で宇宙を旅していたアストロたちは、突如UFOに襲われて、銀河のあちこちに散らばってしまう。プレーヤーは、勇敢なアストロを操作をして、離れ離れになってしまったボットたちを探すために、銀河中の惑星を冒険していくことになる。

 ゲームはステージクリア型のアクションゲームだ。さまざまなシチュエーションの惑星がそれぞれひとつのステージとして登場し、プレーヤーが操作するアストロの前に立ちはだかる。道ゆく数々のステージには、ザコ敵やトラップ、謎解きギミックといった多くの障害が待ち受けており、「ジャンプ」「パンチ」「スピンアタック」「レーザー」といった、「ASTRO's PLAYROOM」でもお馴染みの簡単アクションを駆使して、ゴールを目指していく。

 これまでプレイステーションには、数々のアクションゲームが発売されてきた。「ゴッド・オブ・ウォー」「Demon's Souls」「アンチャーテッド」「Horizon Zero Dawn」など、ハードコアなアクションゲーマーが楽しめる作品から、「サルゲッチュ」「ラチェット&クランク」といった、幅広い層に支持されるライトでカジュアルなものも存在する。今作「アストロボット」に関しては、世界観とアイコニックなキャラクターから察する通りで、後者のカジュアルな性質が強い。

 話がやや逸れて恐縮だが、筆者は幼少期の頃「クラッシュ・バンディクー」「サルゲッチュ」など、ライトなゲームに触れ、年齢を重ねていく中で「ゴッド・オブ・ウォー」のような、ハード表現のアクションゲームを嗜むようになった。

 ド迫力のシネマティックムービーに壮大な世界観、ゲームが進むほど複雑で多彩なアクションの組み合わせが体に染み付く感覚こそ、いつしか3Dアクションゲームの醍醐味だと、感覚を覚えるようになっていたのだ。それ以降、ライト寄りなアクションゲームに触れることはめっきりと無くなってしまった。

 しかし、今作のように簡単操作でステージを攻略するタイトルに再び触れて、凝り固まった考え方は改めなくてはならないと思う。アクションゲームとしてはごくごくシンプルであり、「ゴッド・オブ・ウォー」のような重厚さと真逆に位置するような軽快な体験が、こんなにも楽しいものなのかと再認識させられた気分である。

 というか、今作の前身にあたる「ASTRO's PLAYROOM」をしっかり遊んでおくべきだったと後悔すらした(本稿執筆にあたって後からプレイはしてはいる)。

 2頭身の小さなヒーローが、宇宙の星々を奔走しながら仲間を救出していく旅路は、なんてことのないジュブナイルストーリーのよう。だが、その単純明快さに裏打ちされた簡単なゲーム性だからこそ、“発見”や“スリル”といった単一的な要素の存在感が一層強まる。

 難しいことは考えず、ゲームに求める刺激をありのままに受け取れるから、娯楽の純度が高い。今作はそこにDualSenseの機能を使ったフィードバックが加わり、さらにそれらの存在感がブーストされる。結果、ただアストロを動かしているだけなのに楽しい。ここは「ASTRO's PLAYROOM」と同様だ。

 当然ながら「アストロボット」に複雑な成長システムは存在せず、奥深くて感動的なシナリオもない。昨今のゲームに登場する魅力的な要素を肉付けするシステムは必要最低限で、攻略に絡むことすらない。あくまで、アストロの冒険譚にフォーカスした潔さ、あるいはミニマリズムが、ゲームの持ち味となっている。

 要素を極力そぎ落とし、シンプルを極めた今作のゲーム性に、プレーヤーが何に頭を使うかと言うと、せいぜいギミックを解き明かすくらいのものだ。代わりに、アストロの冒険はコントローラー越しにリアルタイムでフィードバックされ続けるので、アクションゲームの体験が高次元に昇華されているのを肌身で感じられる。直感的に進められるゲームメカニズムと、その手応えをダイレクトに伝えるDualSenseを使った仕組みの相性は「良好」というほかない。まさしくPS5ならではのゲームだ。

 先に紹介した通り、今作のゲームプレイはとても単純なものだ。アストロを操作して、道中の障害を乗り越えつつ、所々にいるボットたちを救出しては先へと進む。操作に複雑な部分はないが、敵は多少ひねりを効かせないと倒せない場合もある。パンチが効かないので、レーザーで上から倒したり、敵の背面に回って導線を掴み、体を回して遠心力をかけながら吹き飛ばしたり。いずれも敵は見た目からして明らかに“悪いヤツ”とすぐに分かるデザインで、直感的にどうやって倒せば良いのかさえもわかりやすい。

 そしてそんなヤツらをヒーローの如しマントを身につけたアストロが、敵を打ち倒しながらステージのゴールへと目指していく。敵は倒すたびに「やられた!」と、言わんばかりに大げさな飛び方で雲散霧消する。感覚的に敵と戦い、あたかもそれが正解であるかのように演出されるアニメーション、加えてコントローラー越しに伝わる感触の気持ちよさは、テーマパークのアトラクションに近いものがある。

 非常にシンプルな勧善懲悪モノの冒険譚は、手にすぐ馴染む直感的な操作性とレスポンスの良さ、DualSenseがもたらす体験によって、独特の形で成立しているのだと考えている。

ステージ構成が秀逸。新たな発見が生む“うっかり寄り道”が止まらない

 ひとつひとつのステージには数体のボットが隠れており、操作はシンプルとはいえ、一回の攻略だけで全てのボットを救出し切るのは少し難しくできている。

 もちろん、時間をかけて探し出せば、初回で全てのボットを見つけることはできるだろう。しかしながらそれが難しいのは、隠し部屋や、隠しルートがかなりあるから。加えて、隠しルートを見つけて、その先で捕えられたボットを見つけられる...と思いきや、ステージによってはその先がワープポイントだったりして、全く異なる別のステージがアンロックされるようなこともある。

 人によるとは思うが、ボットを探す過程でこういった未知のステージが突然出現すると、ついつい挑戦したくなってしまう。また、隠れているボットが単純に見落としやすい場所にいる場合もあって、二度目のプレイで思いもしない場所にいたなんてことも多かった。

 その救済的な役割をするのが、クリアしたステージをもう一度プレイすると登場する鳥型のメカだ。スタート地点のすぐ目の前で呼び出せるこのメカは、レーダーを用いて近くに隠れているボットの居場所を教えてくれるお助け役。探すのが難しい場合は、積極的に利用してもいいだろう。各ステージ内で拾えるコインを集め、一定数を支払うことで呼び出す仕組みとなっている。

飛んでる青い鳥型のメカが近場に隠れたボットの位置を教えてくれる
隠された地下部屋がステージの至る所にある
ステージ攻略中にワープして、全く別のステージが開拓される

 「アストロボット」には、およそ50以上の惑星が登場するが、その一つひとつがバリエーションに富んでいる上、初見では予想だにしない場所に隠し部屋の入り口が多々ある。

 ただの道中の仕掛けかと思えば、実はもうひと工夫あるといった感じで、初見でそれが見つけられなくても、二度目の挑戦では「なんだ、こんなところにあるじゃないか」とアハ体験さならがの発見もあり、プレイすればするほどステージの構造に感心する。ステージはどれも基本的に一本道で、ゴールまでの見通しはいいはずなのに、意外と気付けないのだ。

 しかも、隠されているのは部屋やボットだけではなかったりもする。ステージ選択画面では、アストロが銀河と惑星への移動手段に用いるDualSenseを模した乗り物「デュアルスピーダー」に搭乗しているが、このステージ選択画面でとあることをすると、未知の惑星が見つかる場合もある。当然、そういったところにもボットたちがいるので、攻略するステージ以外の場所にも、隈なく探索の目を向けておきたくなる。

何もないだろうと思って入ったスペースに通路が続いていた...
前方だけが進める場所とは限らない。寄り道すると想いもよらない小ネタが見つかるかも?

仕込まれた豊富なアクション。フィードバックの気持ち良さがいい!

 今作ではステージごとに何かしらのテーマ性が備わっていて、アストロは冒険中に宝箱からアイテムを入手することがある。アイテムの効果はさまざまで、そのステージ限定でR2ボタン、L2ボタンを使った特殊能力が使えるようになる。

 例えば、グローブのようなアイテムを獲得すると、スプリングの作用によって異様に伸びるストレートが放てる。壁を殴って破壊するほか、少し離れた敵に対しても有効的な攻撃手段になり得る。ブルドック型のメカを拾えば、お尻からのジェット噴射で離れた足場も難なく飛び移ることが可能だ。タコ型のメカは、原理こそよくわからないが、アストロの体をバルーンのように膨らませ、プカプカと風船の要領で高所へ移動できる。

 状況に応じてこれらの特殊な力を使い、ステージギミックを処理したり、敵と戦ったりする。これらこそ、「アストロボット」のアクションに関する魅力要素の一つだ。基本的にそのステージだけでしか使わない能力なので、ある意味ではステージの仕掛けといった見方もできる。

 そしてポイントは、どれもR2ボタン、L2ボタンを使用することだ。DualSenseには、この2つのボタンの重みが変化する「アダプティブトリガー」機能が備わっており、グローブのパンチやブルドッグのゼット噴射もそれぞれ異なるフィードバックを得られる。アストロの冒険を体感する本作は、この機能を使った感触の気持ち良さもぜひ味わってほしいところだ。

アイテムを拾うとさまざまな能力が使えるように
ネズミサイズにまで身体を縮めて小さな隙間にも入れる能力
身体を風船のようにして浮く。アストロの身体は一体どうなっているのだろうか

 今作のようにカジュアル寄りなアクションゲームにおいても、やはりボスとのバトルパートは付きもの。特定の行動パターンでこちらに攻撃を仕掛け、それらを掻い潜ったのちに、訪れた念願のチャンスに攻撃を叩き込む。ダメージを受けたボスは、次に新しい行動パターンを織り交ぜ、プレーヤー側の凡ミスを誘う。このような攻防戦を数回繰り広げてようやくボスは倒されるのだが、ここでもDualSenseがもたらすフィードバックの気持ち良さは忘れ難い。

 崩壊する足場に合わせた的確な振動の強弱、ボスの攻撃エフェクトが手元のスピーカーから鳴り響く音響の立体感、スキを突いて重たい一撃を与えるときに、相応の手応えが指先でも感じられるトリガーボタン。ディスプレイの中で繰り広げられるアストロの死闘を、DualSenseが持つ仕組みでプレーヤーへと伝える。

 自発的に大振りな攻撃で隙を晒し出すボスは、アクションゲーム慣れしたプレーヤーにとってはごく簡単なギミックを処理する感覚かもしれない。だが、コントローラー越しに得られる体験のおかげで、少なくとも“一撃を入れてやった感”は手応えとして残る。逆にアクションゲームがあまり得意ではないプレーヤーにとっては、ゲームのボスバトルと手元に感じるフィードバックのインタラクティブな体験が、刺激的で記憶に残りやすいものだと感じられるに違いない。

攻撃を避ける場面もDualSenseの効果でスリルが増幅されている
わかりやすく攻撃の隙を晒してくれる

拡張する「ベースキャンプ」にも仕掛けあり。PSらしいコレクション要素も

 プレーヤーが助けたボットは、活動拠点の「ベースキャンプ」へ移送される。ここでは助けたボットたちがアストロの帰りを待っている。ボットの数が増えると、ベースキャンプの各地にあるオブジェクトを動かしたり、ベースキャンプ内で身動きが取れなくなったボットを救出したりできるようになる。

 ほかにもステージのどこかに隠されたパズルのピースを一定数回収すると、ベースキャンプ内の設備が増えていく。ゲームを進めていけば、その進行状況に応じて、何かしらのイベントが発生し、殺風景なベースキャンプも徐々に拡張されていく。

 今回のプレイでは、ガチャマシンのような設備「ガチャラボ」を開放することができた。あちこちで拾えるコインを消費して、アニメーションするボットのフィギュアを入手できる。冒頭で軽く触れはしたが、今作にはプレイステーションタイトルのキャラクターを模したスペシャルボットが多数登場しており、救出済みの彼らのフィギュアを獲得すると、ベースキャンプ内でスペシャルボットに固有アニメーションが追加される。

 スペシャルボットの元ネタの作品は、直接タイトル名は言及されないものの、わかる人はわかる見た目やアニメーションが仕込まれている。元ネタを知っていると「ああ、それっぽいかも」とニヤニヤできるワケだ。プレイステーションポケットのような見た目のメカに話しかければ、ガチャで獲得したスペシャルボットをいつでも眺められる。コレクション要素を兼ねているのだろう。触れたことがある作品のスペシャルボットを見ていると、だんだん原作タイトルをまた遊びたくなる懐かしさに駆られる。

ボットをたくさん救出すればベースキャンプ内の邪魔な岩を動かしたり、足場を作ったりできる
「ガチャラボ」ボットのカプセルトイが入手可能
ゲームを進めればベースキャンプの中でイベントが発生することも?

PS5を所有しているなら遊ばないともったいない!

 思えば初代プレイステーションから、専用コントローラーの姿形は大きく変化を遂げてきた。アナログスティックすらまだなかった初代PSのコントローラーは度重なる進化を経て、今や多くの機能を内包し、現行の最新ゲームタイトルを存分に楽しませてくれる重要なピースとなっている。

 「アストロボット」は、PS5ならではの強みと体験を、再度アピールするに相応しいアクションゲームと言える。単純なゲーム性であっても、DualSenseひとつでプレーヤーの没入感が大きく変わるというハードの特性を、改めてユーザーに教えてくれているようだ。

 実際、「ASTRO's PLAYROOM」の延長上にあるような作品のため、そうした理解はおそらく合っているだろう。「ASTRO's PLAYROOM」がプロローグで、「アストロボット」はゲーム本編。そんな風にも捉えられる。

 ネタバレになるので詳しくは明かさないが、過去のプレイステーションタイトルをプレイしてきたユーザーには、ちょっと嬉しい要素が散りばめられていたりする。PS5を所有しているユーザーならば、誰にでもおすすめできるタイトルなので、ぜひ「ASTRO's PLAYROOM」と合わせてゲームを楽しんでいただければ幸いだ。