インタビュー
“ザ・ジャパニーズ"をXboxの大きな武器に! Microsoft Gaming グローバル パートナーシップ ディレクター 加藤芽奈氏インタビュー
2024年9月26日 19:57
Xboxの2024年の戦略を紹介する「Xbox Tokyo Game Show 2024 ブロードキャスト」が公開となった。今回の「Xbox Tokyo Game Show 2024 ブロードキャスト」の大きな特徴は日本国内のパブリッシャーによるタイトルを中心に据えたこと。これまでもXboxはTGSで配信を行っていたが、Xboxの主力タイトルとしては海外タイトルの紹介の割合が大きかった。今回はっきりと日本のタイトルを前面に出してきたことで、Microsoftの日本への意気込みが伝わってきただろう。
今回、この「Xbox Tokyo Game Show 2024 ブロードキャスト」で何を伝えたかったか? 日本のパブリッシャーのゲームタイトルに何を期待しているのか? 配信に先がけMicrosoft Gaming グローバル パートナーシップ・ビジネスデベロップメント部門、パートナーシップ ディレクターの加藤芽奈氏が番組の内容を紹介、インタビューでその想いを語った。
加藤氏はソニー・コンピュータエンタテインメント(現:SIE)でプラットフォーム、ハードウェアのビジネスに関わり、ワールドワイドスタジオの立ち上げ、JAPANスタジオにも関わった人物だ。SIEで国内戦略を進めていた人物がXboxのキーパーソンとしてXboxの日本でのサードパーティーとのつながりを担当していく。「Xbox Tokyo Game Show 2024 ブロードキャスト」の内容を紹介すると共に、日本とアジアがXboxにとってどのような意味合いを持つのか、語ってもらった。
日本発のタイトルを大きくアピールした「Xbox Tokyo Game Show 2024 ブロードキャスト」
加藤氏は自身の前歴と、今回放映された「Xbox Tokyo Game Show 2024 ブロードキャスト」の内容を改めて紹介した。加藤氏は1999年にソニー・コンピュータエンタテインメント(現:ソニー・インタ ラクティブエンタテインメント、SIE)に入社。プラットフォーム、ハードウェアのビジネス ディベロップメント、ワールドワイドスタジオの立ち上げ、JAPANスタジオでのビジネス ディベロップメントに従事していたという。
そこからコンサルティングファームのEY Japanで勤務、デジタル製品の企画開発を担当するスタジオを立ち上げた。加藤氏がMicrosoftに入社したのは2023年の7月、グローバル パートナーシップ・ビジネスデベロップメント部門、パートナーシップ ディレクターとしての仕事は、わかりやすくまとめれば「日本のパートナーシップのディレクター」というところ。これまでは主に"裏方"としての仕事を務めてきた加藤氏だが、今回、Microsoftのゲームでの日本とアジアの戦略を担う人物としてスポットが当たることとなった。
今回の「Xbox Tokyo Game Show 2024 ブロードキャスト」は自身が担当する「日本とアジアにおけるXboxの働きかけ」がしっかり伝わる内容になったと加藤氏は語った。
「Xbox Tokyo Game Show 2024 ブロードキャスト」はファーストパーティーと共に、加藤氏が担当するサードパーティーにも大きくスポットが当たった。今回は日本、そしてアジアを拠点とするパートナーのゲームが充実している。今回紹介されたタイトルは24本。かなり盛りだくさんな内容だ。Game Pass対応タイトルも多く含まれており、その大半は日本で開発されたゲームだ。
今回紹介されたタイトルのうち5本は番組終了時より配信開始となっている。その中でGame Pass対応タイトルはスクウェア・エニックスの「聖剣伝説3 TRIALS of MANA」、「聖剣伝説 LEGEND OF MANA」。キュー・ゲームスの「オール・ユー・ニード・イズ・ヘルプ せーのでもふくるポン!」、MONKEYCRAFTとバンダイナムコゲームズの「みんな大好き塊魂アンコール」。さらにGame Passに対応していないタイトルだが、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジー ピクセルリマスター」も配信が開始された。
Xboxは「より多くのプレーヤーにより多くのゲームを」という信念と共に、様々なデバイスでゲームを楽しめる環境を提供していく。この目標を達成するために日本とアジアの市場は非常に大事だと加藤氏は語った。そして、様々なプレーヤーにリーチするためには「アジアで開発されたコンテンツ」は欠かすことができないものだという。現在開発中のゲームタイトルは1,400本を越える。その中から「Xbox Tokyo Game Show 2024 ブロードキャスト」では16本の日本とアジアで開発しているタイトルを紹介していく。
さらにKONAMIからはアップデートされた「METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER」の最新ビジュアル公開、「たぬきポンと夏の思い出」は、名作ゲームにインスパイアされた可愛らしい感じのゲームであり、幅広い層のプレーヤーが楽しめる作品だ。コーエーテクモからはXboxで初めての「アトリエ」シリーズ、「ユミアのアトリエ ~追憶の錬金術士と幻創の地~」が発表となった。この3作はファンからの反響を特に期待していると加藤氏は語った。
ほかにも注目すべき要素としては、NetEase GamesとBad Guitar Studioの「Fragpunk」が10月10日にXbox Series X|Sでクローズドβテスト予定。アトラスの「メタファー:リファンタジオ」の予約注文の詳細が明らかになる。さらに11月8日には「野狗子: Slitterhead」もXbox Series X|Sでリリース予定だが、こちらの独占インタビューも行っている。スクウェア・エニックスの「ドラゴンクエストIII そして伝説へ」は11月14日Xbox Series X|Sでリリースされる。
加えて「Xbox Tokyo Game Show 2024 ブロードキャスト」では韓国のD-ZARDによる「ASURAJANG」、そしてIKINAGAMESの「The Starbites」こちらはターン性のストラテジーだ。加藤氏はXboxにとってアジアはマーケットとしてだけではなく、アジア発信のコンテンツは非常に大事だと強調した。これからも力を入れて一層パートナーシップを深めていきたいと語った。
このほかファーストパーティーの情報として「インディ・ジョーンズ/大いなる円環」の日本語音声の公開。11月5日に「Starcraft 1 & 2」をGame Passで配信する。神々やモンスターそして人間たちが戦いを繰り広げていた神話時代を舞台にした「Age of Mythology: Retold」では中国の神話も盛り込まれる。「オーバーウォッチ2」はアニメ「僕のヒーローアカデミア」とコラボレーションが行われる。「Fallout 76」は「ペッツ」という新しい要素が追加となる。
最後に加藤氏は「アジアではこれからあらゆるデバイスの上でXboxをプレイしていただける人がさらに増えて行くという予測を持っています。コンソールプレーヤーも過去最高となり、『Xbox Tokyo Game Show 2024 ブロードキャスト』は喜んでもらえると思っています。日本、アジア、世界のユーザーにありがとうございますとこの配信で伝えたいです」と言葉を結んだ。
次章では複数のメディアによる合同インタビューで、これからのXboxの戦略を掘り下げていきたい。
日本のパブリッシャーをサポートすることが日本の市場を元気にする
――今回の「Xbox Tokyo Game Show 2024 ブロードキャスト」のテーマはどのようなものですか?
加藤氏:「ファースト、サードパーティ共に、非常に強いタイトルのラインナップがそろった」ということを伝えたいです。それがしっかり伝わる内容になったと思います。
――アジアでの盛り上がりというのはここ数年で感じるようになったのでしょうか?
加藤氏:昔日本にXboxが来たとき「黒船」と呼ばれましたが、「外国から来るもの」というイメージがあったかと思うんです。私たちとしてはXboxは色々なデバイスでプレイ可能になるという所に重きを置いており、アジアの成長の大きさに期待しています。コンソールに限らず、PC,、クラウド、Windowsのハンドヘルドデバイスなど、様々なハードで遊べる。これはアジアにとって遊べる環境が広がっている状況だと思います。これまでリーチできなかった地域での成長に期待しています。
Game Passにより、コンソールだけでなくXboxを楽しむことができるようになりました。様々なハードでゲームを遊びやすい環境が整い始めており、私たちの成長の鍵だと思っています。先日発表した「Fire TV Stick」で「Xbox Cloud Gaming」が遊べるようになったのもその一環です。ヘビーなゲームユーザーじゃなくてもXboxへの扉が開ける、というのは、手に取っていただきやすい環境ができつつあると思っています。
――クラウドなどコンソール以外のユーザーの伸びが大きいという所はあるのでしょうか?
加藤氏:現在そのデータは私の手元にはないので正確にはお答えできませんが、ゲームに限らず様々なコンテンツでクラウドは成長しています。私たちもクラウドの成長に期待しています。クラウドに特化すると言うことではなく、様々な働きかけをしていきたいと思っています。プレーヤーのニーズは現在広がっています。私たちはそこに応えていきます。
――加藤さんはこれまでもサードパーティーとの業務をしてきたとおもいますが、Xboxとしてサードパーティーと話をする中で今までと違ってきた、というようなことはありますか?
加藤氏:クロスプラットフォーム、マルチプラットフォームの流れは大きくなったと感じています。私たちとしてもコンペティター(競争相手)が活躍することで業界が活性化する事だと思いますし、パートナーの方々が元気になる事でコンテンツが売れ、ユーザーが増えるというのがビジネスにおいて大事だと思います。
そう言う意味でサードパーティーの方々のXboxへの興味は私が着任する前からですが強く感じています。感触としては徐々に良くなっていると考えています。
――加藤さんご自身は国内のパブリッシャーの大手と付き合うことが多いのでしょうか、それともインディーのゲームメーカーが多かったりするのでしょうか。
加藤氏:現在の私自身の担当は大手パブリッシャーさんです。インディーは別のチームの担当で私もサポートはしています。私は日本においてリーダーシップとして全体を見ているのでそういうところでサポートしています。私自身は前歴からインディーズの開発者の知り合いも多く、ネットワークもあるので、インディーズチームに橋渡しもしています。
――インディーで有名なところとして「パルワールド」がありますが、このタイトルをXboxでサービスしたとき、反響は大きかったですか?
加藤氏:こちらも正確な資料は私の手元に今ないですが、「パルワールド」は日本のゲーム業界において大きなインパクトがあったと思います。良い意味で刺激を受けました。世界中でニュースとして取り上げられて話題になりました。現在も引き続きXboxでサービスしているタイトルとしてサポートしています。
――加藤さんは日本の市場をどのように捉えていて、アジアとはまた違った取り組みをしている、というような所があればお教えください。
加藤氏:私はサードパーティーとのお仕事が大きな業務ですが、その視点から言えば日本のパブリッシャーさんにとって、日本の市場がホームグラウンドです。このため日本の市場は日本のパブリッシャーさんにとって非常に大事な存在です。「自分の足下のマーケットが元気じゃないと何も始まらない」という想いは強く感じます。ここは私たちとしても注力していきます。
他のアジアと異なるところは、ゲームのプレーヤーもパブリッシャーも、すごく成熟しているところです。ゲームの歴史が非常に長く、アメリカやヨーロッパと比べマーケットのサイズは小さいかもしれませんが、影響力や持っているコンテンツやIPの独特なもの「ジャパニーズ」というのは、Xboxにとっても特別です。ここは他のアジアと大きく違うところだと思っています。
私たち日本チームは日本のパブリッシャーをサポートすることが日本の市場を元気にすることだと思っています。そういう意味でも他のアジアチームと比べても特別です。歴史が長いパブリッシャーさんが多いので、そのパブリッシャーさん達が生み出すタイトルも職人技的なところがあり、コンテンツも独特でバリエーションもすごい。だからこそ日本発というのを意識することが、日本の市場を元気にしていくと思います。
――今回発表したタイトルで一押しタイトルがあれば教えてください。
加藤氏:個人的に「塊魂」はカラフルで好きなんです。とっても日本的で好きです。今回の大きなタイトルではアトラスさんの「メタファー」ですかね。「METAL GEAR SOLIDΔ」も“ザ・ジャパニーズ"という感じで、世界に誇れるタイトルだと思います。「オーバーウォッチ2」の“ヒロアカコラボ”も面白くて、話題を集めると思います。今回の「Xbox Tokyo Game Show 2024 ブロードキャスト」は非常にバリエーション豊かで、アジアらしい盛りだくさんな内容になったと思います。私自身も楽しみです。
――最後にユーザーへのメッセージを。
加藤氏:今回の「Xbox Tokyo Game Show 2024 ブロードキャスト」はこれまでになかったフランチャイズが初登場し、特にスクウェア・エニックス様から多数のタイトルが発表されたり、インディーズも元気です。本当にこれからのXboxに期待をしていただけるブロードキャストになりました。是非見てみてください。
――ありがとうございました。