インタビュー

“新エリー都で生活をしてほしい”。「ゼンレスゾーンゼロ」プロデューサーインタビュー

「DMC」や「エヴァ」に影響を受けた「ゼンゼロ」。開発の裏側や今後の展開を訊く

【ゼンレスゾーンゼロ】

7月4日11時頃 配信予定

料金:基本プレイ無料(一部アイテム課金制)

 いよいよ7月4日にリリースが迫っているアクションRPG「ゼンレスゾーンゼロ」。「原神」や「崩壊:スターレイル」などの人気作を手掛けるHoYoverseの最新作ということもあり、グローバルでの事前登録者数が4,000万人を突破するなど、今年最注目のモバイルゲームとなっている。

 これまでにベータテストが3回実施され、プレイしたことがあるという方もいるだろう。実は6月中旬に世界各国のメディアを招いた「ゼンレスゾーンゼロ」のイベントがシンガポールで開催。そこでは配信を目前に控えた「ゼンゼロ」最新ビルドの試遊、プロデューサーを務める李 振宇(リ・ジェンユー)氏へのインタビュー、HoYoverseシンガポールオフィスの見学などが行なわれた。

 本稿では「ゼンレスゾーンゼロ」のプロデューサーである李 振宇氏へのインタビューをお届け。様々なアクションゲームに影響を受けたという同氏が、幅広い層に“アクションゲームを楽しんでほしい”という想いで立ち上げた「ゼンゼロ」の開発の裏側を聞いてきた。

「ゼンゼロ」のプロデューサーを務める李 振宇(読み:リ・ジェンユー)氏
【「ゼンレスゾーンゼロ」トレーラー】

幅広い層にアクションゲームの楽しさを知ってほしい。「ゼンゼロ」開発の裏側や

――本日はよろしくお願いします。早速質問なのですが、李さんにとって「ゼンレスゾーンゼロ」が初めてのプロデュース作品となりました。いよいよ正式リリースを迎えますが、開発中はどのようなプレッシャーを感じていましたか?

李氏:様々なプレッシャーを感じていました。開発当初は“面白いゲームを作れるかどうか”、プレーヤーにとって“面白い体験になるかどうか”ということをずっと考えていました。今はリリースを間近にして、また異なるプレッシャーを感じています。プレーヤーの皆さんの期待に応えられるか、より良いタイトルとして高みへたどり着けるか、永遠の追求になると考えています。緊張感をもって「ゼンゼロ」を皆さんにお届けできたらと思っています。

――最初のプレゼンでは、2020年に開発チームが立ち上がったと仰っていました。当時のHoYoverseは「原神」がサービスを開始して、「崩壊:スターレイル」の開発もスタートしていたと思いますが、「ゼンゼロ」はどういった経緯、コンセプトでチームが立ち上がったのでしょう?

李氏:「ゼンレスゾーンゼロ」は私自身が作りたいと思っていたゲームで、HoYoverseとしては明確な計画が存在しないタイトルでした。私は“魅力のあるアクションゲーム”を作ることに憧れていて、当時HoYoverseでは「崩壊3rd」がリリースされていましたが、もっと幅広い人に“アクションゲームの楽しさを知ってほしい”という想いで開発がスタートしました。

――2020年はコロナ禍の最初期でしたが、開発への影響や苦労を教えてください。

李氏:当時は外出規制であったり、開発チームでもコロナウイルスに感染してしまったメンバーがいて、全体的な開発スケジュールには結構な影響がありました。ですが、開発メンバーは皆同じ志を持っているので、体調が回復したらすぐ業務に戻ったり、オンラインミーティングを活用しながら仕事の進捗を共有するなど、困難の中で一致団結していました。

 一つ思い出に残っているのは、1回目のベータテスト「調律テスト」の時のPV制作ですね。あの映像はアニメーション担当と連絡を取りつつ、私自身が自宅で作ったものでとても印象に残っています。

【「調律テスト」PV「初仕事、お手並み拝見!」| ゼンレスゾーンゼロ】

――本作では“新エリー都”を舞台に「六分街」や「ルミナスクエア」といった様々なマップが登場します。今後はどのようにマップが広がっていくのでしょうか?

李氏:ベータテストの時から様々なマップを用意していますが、リリース版ではより多くのマップやコンテンツが登場します。メインストーリーを進めていただくと、徐々に主人公たちが活動するエリアが広がっていくので楽しみにしていてください。現時点で詳しい内容はお話しできないのですが、今後の更新でもより面白いコンテンツを追加できたらなと思っています。

――これまで3回のベータテストがありましたが、ニコの容姿、特に胸が小さくなっているのが気になりました。規制による影響があるのか、教えていただきたいです。

李氏:個人的にニコは好きなキャラクターで、制作の過程で様々な進化を行なってきました。最終的にはプレーヤーの皆さんの好みもありますが、我々が相応しいと考える容姿になればと考えています。規制による影響などはないです。

「ゼンゼロ」に登場するニコ

――「ゼンゼロ」は街にあるゲームセンターで様々な“ミニゲーム”をプレイできますよね。これはなぜ作ろうと思ったのでしょうか?

李氏:街にゲームセンターを作ったからには、何かゲームがプレイできなきゃダメだと思ったので(笑)。プレーヤーの皆さんには“新エリー都で生活をしてほしい”ので、現実と同じように“ゲーセンでゲームをする”という没入感を提供するため作りました。

――今回プレイした最新ビルドで、ミニゲーム「ソウルハウンドIII」にはベータテスト時になかった新たなギミックが追加されていました。ミニゲームは今後のアップデートなどは予定されていますか?

李氏:「ゼンゼロ」は常に進歩させていきたいと心がけています。今回の最新ビルドでもさまざまな最適化を施していて、お気付きになった「ソウルハウンドIII」の新ギミックもその一つです。リリース版でも様々なコンテンツが楽しめるので、期待していてください。

ゲームセンターでプレイできるミニゲーム「ソウルハウンドIII」

――李さんはアクションゲームが好きと仰っていましたが、どのようなゲームをプレイしてこられたのですか?

李氏:アクションゲームは数々プレイしてきましたが、特に「デビル メイ クライ」シリーズが好きですね。ほかにもソウルライク系のゲームをよくプレイしていますし、格闘ゲームの「ストリートファイター」シリーズも好きです。

――ゲームのみならず、アニメやマンガも含めて、李さんはどのような作品に影響を受けてきたのでしょう?

李氏:日本のアニメは子供のころからよく見ていて、特に「新世紀エヴァンゲリオン」が大好きです。今でも毎クールごとに様々なアニメ作品をチェックしていますよ。ほかにも美術周りの参考として、欧米のコミックやアニメも見ていて、幅広い作品をチェックしています。

李氏が影響を受けたという「デビル メイ クライ」(画像はシリーズ最新作「デビル メイ クライ5」のもの)
日本のアニメやマンガに大きな影響を受けたという李氏

――4月にメディア向けに配布された「ゼンゼロ」のギフトボックスにはNintendo Switch用のカードケースが入っていました。現時点で「ゼンゼロ」のSwitch版はアナウンスされていませんが、次世代機を含む任天堂プラットフォーム、またXboxプラットフォームでの展開予定はありますか?

李氏:期待はできると思います。私自身も任天堂のファンなので、開発チームも含め実現には期待したいと思っています。一方、リリース時点で「ゼンゼロ」を様々なプラットフォーム(PS5/Android/iOS/PC)でプレイできますが、大事なのはそのプラットフォームでの“プレイ体験”です。

 そのプラットフォームで「ゼンレスゾーンゼロ」のプレイ体験が優れたものであればぜひ提供したいですが、欠けているものであればプレーヤーにとって不公平になってしまいます。現時点での優先事項は発表済みのプラットフォームでのプレイ体験のさらなる改善であり、開発が進んでいけば他のプラットフォームで展開する可能性も出てくるのではと思います。

――5月に発表された「iPad Air」の発表映像や、6月に開催された「WWDC 24」などAppleの発表会で「ゼンレスゾーンゼロ」の映像が使われていました。モバイルプラットフォームの強みはどこだと感じていますか?

李氏:我々はモバイルプラットフォームを重要視にしています。もちろんPCやプレイステーションでの体験も大事ですが、やはり“どこでもプレイできる”というのがモバイルの強みです。Appleの発表会で「ゼンゼロ」の映像が使われましたが、我々は長期的にモバイルプラットフォームでの体験の改善を行なっていきたいと考えています。

メディア向けギフトボックスに同梱されていたVHS風「Switchゲームケース」。任天堂やXboxプラットフォームでの展開も期待したい

――幅広い層に楽しんでもらえるアクションゲームを作るにあたって、導入したシステムや意識したことを教えてください。

李氏:私自身も様々なアクションゲームをプレイして楽しんできましたが、ゲームをあまりプレイしない方、初心者の方には少しハードルの高いジャンルだと感じていました。アクション要素を時間をかけて学習していく過程があると思いますが、ゲーム序盤に何か面白い体験がないと、学習する過程に辿り着かないままゲームから離脱してしまうからです。

 なので「ゼンゼロ」では序盤に面白いと思ってもらえる要素をたくさん置いて、興味をもってもらうきっかけをなるべく多く作りました。そうすれば「ゼンゼロ」を面白いと思ってもらえて、アクションへの学習も楽しいと思ってもらえるからです。基本的に早期にプレーヤーに楽しいと思ってもらえるのが重要だと考えています。

――最後に「ゼンレスゾーンゼロ」を待っているHoYoverseファンに向けて、ひとことお願いします。

李氏:皆さんに「ゼンレスゾーンゼロ」を通じて、アクションゲームの魅力を体験してほしいです。

――ありがとうございました。

幅広い層にアクションゲームを楽しんでほしいという李氏
「ゼンレスゾーンゼロ」は7月4日リリース予定だ