インタビュー

5周年は前例なしの大規模アプデに。「リネージュM」リード開発者インタビュー

基盤づくりを経て、日本独自コンテンツも構想中

【リネージュM:「Ep.aspired BLADE」】

5月29日 実装

リネージュM開発室海外Lead Managerのソ・ウォンガプ氏

 エヌシージャパンが運営する「リネージュM」において、5月29日に5周年記念アップデート「Ep.aspired BLADE」が実装された。

 このアップデートは、「神聖剣士」、「竜闘士」、「君主」の3職業を対象とした大規模クラスケアを中心に、その他の職業のクラスケアの情報や、「クラスチェンジキャンペーン」、「スキルブック交換イベント」などのイベントが行われる。

 また、6月に実装予定の新PvPコンテンツ「ジグラット」の情報も公開された。

□「5th Anniversary特設サイト」のページ

 今回は、「リネージュM」海外リード兼日本開発チーム長として、「リネージュM」の日本サービス当初から開発に携わってきた、ソ・ウォンガプ氏にメールインタビューを行った。このメールインタビューではリリース当初の苦労や日本向けの独自要素、今後のアップデートにかける意気込みといった興味深い情報を聞くことができた。さらに、10周年を目指して今後も開発を運営していくことに対する意気込みも伺ったので、ぜひ最後まで読んでいただければと思う。

開発の5年間は「リリース時のインパクトに勝るものはない」

 ソ・ウォンガプ氏は、日本の「リネージュM」携わってきた5年間を思い出すと、「リリース時のインパクトに勝るものはありません」と語る。韓国ではすでにリリースされていたが、日本向けにコンテンツの調整や、ストア環境の違いに関する対応、開発元のNCSOFT社内の協業部署や、エヌシージャパンとの協議を繰り広げていて、1つの問題を乗り越えると、2つの問題が発生するような状況だったという。「本当に目が回るほど忙しく、徹夜が続く状況で、神経を研ぎ澄ました」と当時を振り返る。

 それだけ細心の注意を払っても、リリース直後のレベルが低いプレーヤーが、強力なアクティブモンスターに襲われてクエストの進行が止まってしまうという想定外の事態が起き、すぐに臨時メンテナンスを行って対応をしたこともあるという。その時はすぐに対応ができたとのことだが、プレーヤーの成長などを確認しながら、「プレーヤーの不満を少しでも解消していくことを第一に考え、自分なりの目標が達成できたので、すべての苦労が報われたのは心に残っています」とした。

リリース時のインパクトが最も大きいのだという。バランス調整の難しさを感じるエピソードだ

 それでは「リネージュM」の開発において、日本のプレーヤーに向けて最も大切にしていることは何だろうか。ソ氏は「『リネージュM』はゲームの特性として、“競争”にフォーカスされがちですが、日本のプレーヤーの関係性を見ると、敵ではなく“パートナー”という印象を受けます」と話す。この点は日本の「リネージュM」がポジティブに推移している部分だという。「そのため競争に集中するだけでなく、プレーヤーが一緒に楽しめる体験を提供したいと考え、意識してコンテンツに盛り込んでいます」とのことだ。

 日本向けにコンテンツの調整を行っており、今も様々なフィードバックを受け取っているという。「すぐに応えられることもあれば、返答に悩むこともあります。ですが、すべての意見をエヌシージャパンのサービスチームと協議し、ユーザーの意見を考慮して、開発を進め、今後も着実に反映していきます」という。

3職業同時のクラスケアは前例なしのアップデートに

 ソ氏は、「リネージュM」の5周年アップデートについても詳しく語ってくれた。今回のアップデートでは、神聖剣士、竜闘士、君主の3職業をメインにクラスケアが行われ、「ジグラット」という新規コンテンツや、新規召喚システム「聖物」が追加される。ソ氏によると、「3つの職業を対象とした大規模なクラスケアは韓国でも事例がなく、2つの『エピソード』級アップデートを同時に実装する大型アップデート規模になりました」のだという。

 一方で、1つのアップデートとして実装するには大規模すぎるのではないかという懸念もあったという。しかし、日本の「リネージュM」と韓国サービスとのコンテンツ実装速度に1年以上の差がある中、すでに情報が公開されている過去のシステムを中心に体験するような状況にあった。また、実装できるコンテンツボリュームにも制限があるため、さらに楽しさや面白さを提供するにはどうすればよいか、常に悩んでいたという。

 そこで、今回のアップデートでは日本でも韓国と同じ内容が実装される。日本のプレーヤーの満足度を、最優先に考えた結果だとした。5周年アップデートはプレーヤーの期待に応えることを目指しており、「リネージュM」の進化と共にさらなる楽しさを提供したい、とした。

かなりの大規模アップデートになる「Ep.aspired BLADE」

日本のプレーヤーに感謝し、次の10周年に向けて進化していく「リネージュM」

 日本のプレーヤーからのフィードバックを受けて、5周年アップデートおよびそれ以降のアップデートやイベントにどのように反映していくかについても伺った。「この5年間、サービスを行いながら現地化の比重を高め、着実にアップデートしてきた」と振り返る。しかし、韓国サービスでコンテンツがリニューアルされるにつれ、日本独自コンテンツの管理が難しくなり、老朽化が懸念される部分があったという。

 今回のアップデートでは、韓国サービスと同様の最新化を行い、まずは基盤を固める作業を並行して進めている。そして、日本サービスに対する方向性を確立し、基盤を固めてから日本独自のコンテンツやイベントを追加していけるよう準備中であることを強調した。

 次の周年、特に10周年に向けて「リネージュM」をどのように進化させ、プレーヤーにどのように楽しんでもらいたいかについては、「10年ですか。まだ遠いと感じますが、今までの5年間以上にドキドキする期間ですね」と、期待と興奮を表現した。

 また今後の方針としては、現在の「リネージュM」をプレーヤーが自分なりのプレイスタイルで楽しみながら、そのアイデンティティを失わないことが重要だと考えている。コンテンツ面では「リネージュM」の根幹を保ちながらも、みんなで楽しめるイベント要素を積極的に加え、お祭りを楽しむような楽しさを提供していきたいとのことだ。

5周年を迎えた「リネージュM」だが、次の大きな周年である10周年に向けてさらに進化を続けていくのだろう

 日本向けの独自の展開や、特別なイベントについては、「まずは基盤を固める期間を経てからになりますが、新たなコンテンツや楽しさの反映を計画しています。日本オリジナルイベントの企画を定期的に行っていきたいですね」と述べた。また、日本独自の変身やマジックドールの製作も進行中であり、ある程度準備が整った段階で公開する予定だという。日本のプレーヤーにとしては非常に楽しみだ。

 最後に、日本のプレーヤーへのメッセージをくれた。「サービスの開始からわが子を育てるような大切な気持ちで『リネージュM』と共に歩み、いつの間にか5年という歳月が経過しました。その間、大変なことも嬉しいこともありましたが、5周年という長い間、いつも楽しんでいただき、愛してくださる日本のプレーヤーの皆様のおかげで、より愛情を持って対応することができたと思います」。

 さらに、「この先も次々とアップデートを行っていきますので、より思い出に残る楽しさをお伝えできるよう、今まで以上に頑張ります。改めてリネージュMを愛してくださってありがとうございます」と締めくくった。