インタビュー
スウェーデン大使に聞く「DreamHack Japan」が日本で開催される意義
「二つの国のゲーマーたちを繋ぐ架け橋となるようなイベントになってほしい」
2023年4月16日 11:26
- 4月14日収録
- 会場:スウェーデン大使館
LANパーティーという文化をご存じだろうか。LANパーティーとは参加者たちがPCを持ってひとつの会場に集まり、普段はオンラインでプレイしているようなゲームを、仲間たちと顔を合わせてオフラインでプレイすることを楽しむ文化だ。日本国内で耳にする機会はあまり多くないが、欧米では何万人という規模のLANパーティーが開催されることもしばしばあり、その代表格といってもいいイベントが「DreamHack」だ。
1994年にスウェーデンでスタートした「DreamHack」は、はじめは地元のプログラマーやゲーム好きが集まる小規模なイベントだったが、ゲーム及びeスポーツ文化の発展に伴って成長し、昨年11月に米国で開催された「DreamHack Atlanta」では21の国から2万7千人以上を集めるなど、今では国際的なゲーミングイベントになった。そんな「DreamHack」がこの5月、「DreamHack Japan 2023 Supported by GALLERIA」として幕張メッセで開催される。当イベントではメインとなるLANパーティーの他に、アーティストのライヴパフォーマンスや、ストリーマーやタレントによるエキシビションマッチの開催なども予定されており、まさにポップカルチャーの祭典というにふさわしい複合的なイベントだ。
そんな「DreamHack Japan」はその開催にあたりスウェーデン大使館からもサポートを受けており、4月14日には都内のスウェーデン大使館でキックオフパーティーが開催された。会場には駐日スウェーデン大使のペールエリック・ヘーグベリ氏をはじめ、日本eスポーツ連合会長の岡村秀樹氏、さらには自由民主党副幹事長の山下貴司氏なども姿を見せていた。本稿では、「日本でDreamHackが開催されることの意義」をテーマに、ヘーグベリ大使とDreamHackスタッフのヘンリック・ヨハンソン氏へ行ったインタビューの模様をレポートする。
――今回、大使館はどのような経緯で「DreamHack Japan」のサポートをするに至ったのでしょうか?
ヘーグベリ氏: われわれ大使館は日本とスウェーデン間の関係向上のため、日ごろから色々なものに目を向けています。政治や経済のことばかりが仕事ではなく、二国間の文化交流を促すのも重要な使命です。日本の方はあまり意識されていないかもしれませんが、実はゲームやeスポーツといった領域はスウェーデンと日本の大きな文化的共通項なんです。日本は世界に誇るゲームメーカーを多数有していますが、同じようにスウェーデンもゲームの分野が得意で、Minecraftやキャンディークラッシュといったゲームはもとをたどればスウェーデン発祥のものです。
そういった背景があるため、日本で「DreamHack」を開催したいと相談を受けたとき、これは二国間の交流を促すとても良い機会だと思い、大使館もサポートをすることに決めました。「DreamHack Japan」がスウェーデンと日本の文化が融合したイベントとなり、日本の方々がスウェーデンに興味を持つキッカケになってほしいというのが我々の想いです。
――「DreamHack Japan」は東アジア地域で開催される初の「DreamHack」となります。なぜ数ある国の中から日本が開催国に選ばれたのでしょうか?
ヘーグベリ大使: それは日本のゲーマーたちが「DreamHack」のような大きなイベントを必要としているからだと思います。というのも、日本にはご存知の通り活発なゲーム文化がありますが、その反面ゲーム文化の真価がまだ世間に認知されきっていないように思います。私は専門家ではありませんが、日本ではまだまだ、子供がゲームにのめり込むことに対して懸念を持っている親御さんも多いと聞いています。国内でLANパーティーイベントがあまり開催されていないのもこういった事実を反映しているでしょう。「DreamHack」はそんな日本のゲーム文化をより良い方向へ推し進めるひとつの機会になるはずです。
ヨハンソン氏: 「DreamHack」の大きな魅力のひとつは、自分がコミュニティの一員であるという感覚を得られるところにあります。多くの人は普段ゲームをひとりでプレイしていると思いますが、「DreamHack」に来れば何千何万人のゲーマーに囲まれ、同じ趣味や情熱を持った人とたくさん出会うことができるはずです。「DreamHack」に来ればゲーマーであることの素晴らしさを再認識できるはずですから、日本のゲーマーの皆さんには是非この感動を味わってほしいですね。
ヘーグベリ大使: 私は小さいころよくボードゲームを挟んで父と会話していましたが、今では子供たちとゲームを通じで交流しています。ゲームとは本来ソーシャルな遊びであり、人と人とをつなぐ力をもっています。「DreamHack」を通じてそれが日本の社会にも伝わるといいと思っています。
――「DreamHack」もそのいい例ですが、スウェーデンはデザインや発想力に富んだ国として有名です。それはなぜでしょうか?
ヘーグベリ大使: 第一の要因は教育システムにあると思います。スウェーデンの学校では児童生徒の個人性に着目することが推奨されていて、先生方は彼らが何を好きで、どんなことに情熱を傾けているのかをよく把握し、それを伸ばそうとします。そういった状況で育った子供たちは、自分の好きなことに真っすぐで、またアイデアも豊かになります。
それから、地理的な要因もあるでしょう。スウェーデンは極北の小さな国ですから、昔から他国に物を売らなければならない状況にあったため、発想力が重視されたのだと思います。また今のスウェーデンでは人口の25%が移民と言われていますから、そういった多様性もアイデアの源になっているのでしょう。
――スウェーデンと日本の関係という視点からは、「DremHack Japan」をどのようなイベントだと捉えていますか?
ヘーグベリ大使: 「DreamHack」を通じてスウェーデンと日本のゲーマーたちやクリエイターたちが出会い、イベントの後も交流を続けてくれるようになるのが私の一番の願いです。これがキッカケとなって二国が共同開発したゲームが生まれたとしたら、それほど素晴らしいことはないでしょう。
ヨハンソン氏: スウェーデン国内では多くの人が日本のポップカルチャーに対して関心を持っていますから、「DreamHack Japan」を契機に初めて来日する人も多くいると思います。まずはそういう人に日本を楽しんでもらい、また日本の方々にもスウェーデンに興味を持ってもらいたいですね。
ヘーグベリ大使: 今スウェーデンではパンデミック後の旅行先に日本を挙げる人がとても多いんですよ。来年には全日空が東京からストックホルムまでの直通便を開通させる予定ですから、これからさらに二国間の交流が深まることを期待しています。
――「DreamHack Japan」を通じてスウェーデンに興味を持った日本人にはなにを勧めますか?
ヘーグベリ大使: やはりまずはスウェーデンを訪れてほしいですね。6月には「DreamHack Summer」がスウェーデン南部のヨンショーピング市で開催されますから、是非行ってみてください。6月はちょうど日本の春のような気候で、とても過ごしやすいですよ。ヨンショーピング市には綺麗な湖が沢山あるほか、キャンディーの街としても知られていますから、きっと楽しめるはずです。
ヨハンソン氏: それからピクルスも有名ですね、日本人の方はきっと好きだと思いますよ。