インタビュー
「FFXIV」吉田直樹プロデューサー パッチ6.3インタビュー
第十三世界での物語は佳境に。「喜びの神域 エウプロシュネ」やナイト調整方針なども紹介!
2022年12月22日 12:00
- 【ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ】
- パッチ6.3「天の祝祭、地の鳴動」
- 1月上旬公開予定
プレイステーション 5/プレイステーション 4/PC用MMORPG「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ」のパッチ6.3「天の祝福、地の鳴動」が2023年1月上旬に実装される。
2023年は「新生エオルゼア」から10周年を迎える年であり、ファンフェスティバル以外にも様々な企画が予定されているようだ。パッチも、次回の拡張に向けてメインクエストが佳境に入っていく。
今回のパッチでは、アライアンスレイドの新章「喜びの神域 エウプロシュネ」や新ディープダンジョン「オルト・エウレカ」、この拡張では2つめの絶コンテンツ、クリスタルコンテンツの新ステージなど、多くのコンテンツに新要素が追加される。
また、ジョブデザインが現代の「FFXIV」に合わなくなっているナイトの大規模なオーバーホールも予定されている。インタビューでは、これら新コンテンツについて吉田氏のおすすめや見どころなどを聞いてきた。なお、本インタビューは、第74回プロデューサーレターLIVE放送後の11月21日に収録したものとなる。
3つの目玉コンテンツのイメージを包含したタイトル
――パッチタイトル「天の祝祭、地の鳴動」についてお伺いします。タイトルの前半は「ミソロジー・オブ・エオルゼア」のイメージかなと思いますが、地の鳴動というのは、どういったことを意味しているんでしょうか?
吉田氏:今回、コンテンツ量がかなり多いこともあり、タイトルについては結構悩ましかったのです。天の祝祭という部分は今お話しにあった通り「ミソロジー・オブ・エオルゼア」です。第1弾が非常に好評だったこともあり、制作チーム担当者各セクションもかなり力を入れて作ってきています。とはいえ、そこだけをタイトルにするのもなあ、と。全世界からリクエストがあったディープダンジョンを今回久しぶりに実装するので、そのイメージも少し含んでいます。後は、メインストーリーで進行している第十三世界での物語が、今回ターニングポイントに差し掛かっていきます。そこで華やかな印象だけではなく、蠢くものがいるということで「鳴動」と、2つの印象を併せ持つという意味でこういったタイトルになっています。
――今回の目玉コンテンツ3つが合わさったようなタイトルなんですね。では、その中でメインストーリーについてお伺いします。今回はガレマルドが舞台になるようですね。アルフィノとアリゼーはどんなふうに関わってくるのでしょうか。
吉田氏:アルフィノとアリゼーの兄妹は、「旧FFXIV」には登場しておらず、「新生エオルゼア」から僕たちが作り上げてきた、ある意味NPC側の主人公のような存在です。もちろんプレイヤーである光の戦士が主人公ではありますが、ストーリーの中でプレイヤーの皆さんと一緒に成長していくキャラクターとして描かれています。「暁月のフィナーレ」で1回目のフィナーレを迎えた時に、暁のメンバーは次に目指すことを見つけるために、やりたいことをやろうということで一回散らばる形になってから、2パッチぶりの登場になります。たぶん、2パッチ続けて出ていないのは初めてだと思います。まずは久しぶりの帰還ですね。
いま展開している第十三世界を舞台にした物語の中になぜあの2人が合流することになるのか、そして今後も一緒に行動するのかが、長く続けている方にとっては見どころになるかと思います。もう1つは、闇に飲まれてしまった第十三世界、ヴォイドという異世界から原初世界に、ある意味巻き込まれる形で連れて来られたゼロが、光もあるし、緑もあるという豊かな世界で暮らす人々に触れていくことでどう変化していくのか。そもそもゼロの過去はどうなっているのか、そういったことに踏み込んでいくことになりますので、そちらも大きな見どころです。
――ゼロはクールでカッコいいキャラクターですね。今までヴォイドにいたせいで、もの知らずなところもあって、いろいろな魅力があるキャラクターですね。
吉田氏:ありがとうございます。そもそもゼロのあの性格というか、どうしてああいう考え方をするようになったのかというところにも注目していただけるといいかなと思います。
――今回、メインストーリーに登場するダンジョン「雪山冥洞 ラピス・マナリス」はガレマール帝国方面ではないかと言われていますが、久しぶりにメインストーリーの舞台となるのですか?
吉田氏:今回、とある事件によって行かざるを得なくなるのですが、それならアルフィノとアリゼーに協力を得ようということで同行することになります。新しいエリアというほどではないですが、ちょっと面白い作り方をしています。なぜガレマールの領土っぽい名前なのかということは、これ以上はネタバレになってしまうので言えませんが、物語がいよいよ展開していくので、その辺りと一緒に楽しんでいただきたいです。
――名前が伏せられている討伐・討滅戦も当然メインクエストで戦うことになるのですよね?
吉田氏:まあ、あれだけ四天王って言っていたのだから、四天王であろうということは予想されると思いますが、ずばり書いてしまうと興が冷めますし、あれこれ予想しながらお待ちいただけると嬉しいです。
ノフィカ様はみんなの期待を裏切らないはず!
――次は「ミソロジー・オブ・エオルゼア」についてお伺いします。前回のPLL(FFXIVプロデューサーレターLIVE)の後、SNSではノフィカが双蛇党の募集チラシとどのくらい似ているかが話題になっていました。ここは期待していいんでしょうか?
吉田氏:あれをデザインしたのは「旧FFXIV」の頃なんですよね……。僕がプロデューサー兼ディレクターに就任して、グランドカンパニーというものを立ち上げた時、当時はまだ帝国が侵攻し、3都市エオルゼアは戦乱の時代でした。そんな中で各国は冒険者を勧誘するために3つの党がそれぞれに政策発表じゃないですが、アピールをするという設定で生まれたのがご質問にある募集チラシ。レガシープレイヤーのみなさんには、懐かしいエピソードだと思います。それが10年以上経って、ノフィカを描く流れになるとは(笑)。
とはいえ、期待に応えるのが「FFXIV」チームですから、斜め上すぎでずっこける……みたいなことは、たぶんないんじゃないかなと思います。どう描かれていくのか、そしてまたどういった性格の神様になっているのか、戦うとしたら、どういう攻撃をしてくるのか。僕らも今調整が始まって遊んでいるところですが、いろんな意味で楽しみにしていただいて大丈夫ではないかと思います。
――「ミソロジー・オブ・エオルゼア」の神様は、みんな個性豊かで戦っていても楽しいですね。「喜びの神域 エウプロシュネ」でもどのような感じになるか楽しみです。コンテンツの見どころを教えてもらえますか?
吉田氏:先ほども言った通り、第1弾の好評を受けて、各担当者がかなり気合を入れています。それぞれのボスは、いつも通り分かりやすいギミック攻撃というところを視野にいれつつも、それぞれの担当が新しいことをしようとしています。エオルゼア十二神たちのカッコよさや美しさ、思考の方向性みたいなものを上手くバトルと一体化できているのではないかと思っています。特に、僕もお気に入りなのが一体います。とにかくとてもカッコいいんです。最初はきりきり舞いさせられると思いますが、落ち着いてきたらそのカッコよさにも注目していただきたいです。
――難易度的には前回よりも難しくなっているのですか?
吉田氏:アライアンスレイドは零式とは違って24人でワイワイ楽しめるようなコンテンツを目指しているので、パッチが上がるたびに難易度を上げるような意図はないです。前回と同じくらいの歯ごたえになるようにしていますが、前回と今回、また難しさの方向性が違うかなとは思います。とはいえ、気構えなくても大丈夫なレベルにするつもりですので、その点はご安心ください。
――「輝ける神域 アグライア」のビエルゴ戦では初見の時、盛大に落ちていました。ああいった初見殺しの技も健在ですか?
吉田氏:我々としては初見さんを皆殺しにしたくて作っているわけではないんですよ……。でも、24人でプレイするアライアンスレイドというのは、最初はワーワーしながらすごい勢いで吹っ飛んだり、落っこちたりする、大騒ぎとなる面白さも、ある意味いいところなんだろうと思っています。慣れて落ち着いてくるとどんどんサクサクいけるようになって、プレイヤースキルにばらつきがあったとしても、メンバーたちがうまくカバーしていくことでクリアできますから。そこはいつも通りを目指しています。しかし、そうですね……吹っ飛んだり、落っこちたりが、無いとは言いません(笑)。
今後も拡張に2回の絶シリーズを入れたい
――次は新しい絶シリーズについてお伺いします。「暁月のフィナーレ」では1つの拡張中に2つの絶コンテンツがあるわけですが、やはり2つ出すというのは開発的にはかなり大変なんでしょうか?
吉田氏:PLLやインタビュー等でもお話している通り、絶シリーズのコンテンツは「FFXIV」の中でも最高難度であり、ギミックのメカニクスも当然複雑です。でも理不尽な複雑さだけでは面白くないので、キャラクター性とかストーリー性とか、そういった物語をコンテンツに盛り込むように作っています。そもそもコンテンツ企画の難易度自体がずば抜けて高いのです。また企画立案フェーズがクリアできたとしても、今度はその紙に描いた企画が机上の空論にならないように、ものすごい数のギミックを破綻なくプログラムとして組み上げていき、ようやくそこから実際にプレイしての検証が始まります。
8人のプレイヤーが十数分、想定解法通りの動きを続けていくことができるのかを確認し、調整し、最終的にギリギリの数値を付けてクリアできるように保証するのは、本当に尋常ではない難しさです。そして、調整にもかなりの時間がかかります。そういった制作難易度なので、これを企画・制作できる人間の数は少なくて、ゲームデザイナーが例えば100人いたとしても、その中で2、3人しか企画できないだろうな、といつも感じています。何が一番しんどいかと問われたら、そこですね。
――絶シリーズの担当者はずっとかかりきりになってしまうんですか?
吉田氏:絶シリーズの場合だと、企画からリリースまで1年弱かかります。でもそのレベルのゲームデザイナーを、ひとつのコンテンツだけに集中させることは難しく、複数のコンテンツを担当してもらうことになります。実は今回の絶担当者は、パッチ6.2の「異聞シラディハ水道零式」のボス企画・制作も担当していました。「異聞シラディハ水道零式」はボスごとに担当者を替えていたのですが、最終ボスを担当するなどしてくれました。
ただ、絶シリーズ自体は、前回の拡張である「漆黒のヴィランズ」、つまりパッチ5.Xシリーズでも2回やりたいと思っていたのです。新型コロナウイルスの影響で全員が急に在宅勤務になって、まる3か月くらいのスケジュールが吹き飛ぶことになり、6.0である「暁月のフィナーレ」を優先するという決断をしたことで、2回予定していたうちの一方「絶竜詩戦争」をやむなく延期させていただきました。
今回は、在宅の開発環境がかなりできたこともあって、当初の予定通りなんか2回実現できる運びとなりました。プレイヤーの皆さんも楽しみにしてくださっていますので、間に合わせようとやってきました。ちょうどこれからが絶調整の最盛期です。絶は公開ぎりぎりまで調整が続きますので、ご期待にそえるよう頑張ります。
――前回は途中でオルシュファンを助ける演出があったりと、ファンとしては感動的な演出がありましたが、今回もああいったストーリーはあるんでしょうか?
吉田氏:ストーリー性はありますが、前回ほど強烈なものにはしていません。今回は、今後の絶シリーズのことを考えて、「ストーリー演出をやりすぎない」ということも課題にしています。今後の拡張でも、2回の絶シリーズのリリースを目標にしたい、と考えていますが、これ以上演出コストを盛りすぎると、それができなくなる可能性が高くなるのです。そうすると、結果として自分たちの首も閉まるし、プレイヤーの皆さんに対しても提供できるコンテンツが減ってしまいます。ですから、あまり演出に過剰なコストをかけないようにという意識共有はしていました。
そろそろ演出のレベルとして、「絶アルテマウェポン破壊作戦」くらいにしておかないとまずいんじゃないかなと(苦笑)。ある程度、皆さんに想像の余地を残すような形がいいのではないかという話はしています。
クリスタルコンフリクト新ステージはワイワイ遊べるギミック重視
――次はディープダンジョンについて、タイトルの「地の鳴動」にもかかわってくるところですが、「オルト・エウレカ」という名前からはどこにあるのか想像もつかないです。
吉田氏:スクリーンショットでアラグ帝国が絡んでいるような画像が出ていましたが、現存するエオルゼア地域の中でアラグ帝国といえばこの場所というとどこだったかを考えていただければ、なんとなく想像できるのではないかと思います。
――今回は81レベルからのスタートになるのですね。これは理由があるのですか?
吉田氏:レベリングに使っていただくコンテンツですので、参加可能レベルを低くし過ぎると過去の2つのディープダンジョンを誰もやらなくなってしまうためです。役割としては、レベル50を超えたら「死者の宮殿」があって、その後に「アメノミハシラ」があって、「南方ボズヤ戦線」「ザトゥノル高原」があって、今回の「オルト・エウレカ」と、レベリングのバトンが渡されていくような感じです。
新規で遊び始めた方がコンテンツで遊びながらサブジョブのレベルを上げてもらいたいという思いがあります。レベリングに必要な部分だけならソロでも十分遊べるようになっています。深層へ向かおうとするとソロではかなりきつくなりますが、そういうチャレンジングな部分とレベリングという両方の要素を持ちながら作っています。
――「オルト・エウレカ」だけの新要素はありますか?
吉田氏:もちろんギミック的なものや、プレイヤーが使える新しい要素は入っていますが、基本ルールは変えず、カジュアルに遊べるという部分も変えていません。ですので、そこまで革新的な何かがあるというわけではないです。これまで遊んでいた人にとっては、正統続編として、安心して遊べると思っていただけるようにしています。
――クリスタルコンフリクトについて、今回の新ステージはどんな感じになるのですか?
吉田氏:最終調整はこれからで、今はとりあえず面白おかしく組み上げられている状態です。これからガチガチにやりこんで、本当にここまでのギミックでいいのかを時間をかけて調整している最中です。これは次回のPLLをお待ちいただきたいです。
パライストラはステージギミックがなく、視線を切る場所も上手く活用でき、スプリントレーンもいい場所に配置されています。そのため、ガチ対戦をするならパライストラという評価になっているかなと思います。クラウドナインは視線や射線が通りやすく遠距離がやや有利といわれていますね。回復キットの配置場所も含め、いずれどこかで調整したいと思っています。ヴォルカニック・ハートは時間をずらしながら一定周期で降ってくるボムを上手く有効活用することで大ダメージを与えたり、ノックダウンを取れたりと、結構戦略的なステージで、エッセンスとしては面白く仕上がりました。
それを受けて、追加される新ステージは、ワイワイとプレイでき、しかも若干のギミック要素を上手く活用するようなところも出していきたい。ヴォルカニック・ハートと同系統ですが、キャラクター性とか見た目の面白さにも今回はチャレンジしていますので、その辺りも期待していただきたいです。
――確かにスクリーンショットを見るかぎり、かなり個性的なステージですね。
吉田氏:今回はそうですね。次の拡張までになんとかもう1回くらい新ステージを出せたら、みたいな話はしています。現状は、非常に多くの方に遊んでいただいているので、他のPvPコンテンツも含めて、飽きないような追加やバランス調整をやっていきたいと思っています。
ナイトは現代「FFXIV」に合うよう全体をオーバーホール
――ナイトのバランス調整についてPLLで言及されていました。ローテーションが大きく変化するということですが、どのように変わるのでしょうか?
吉田氏:ナイトは「旧FFXIV」の途中で、「ジョブシステム」そのものが追加された時に登場したジョブです。その際の特徴を引き継ぎながら「新生エオルゼア」を迎え、「蒼天のイシュガルド」の時に、メカニクスが複雑になるよう作られて、そのままなんとかやりくりしてきた結果、他のジョブに比べてアクションの前提条件が多かったり、瞬間的なダメージを出す、いわゆるバーストをベースとしたプレイスタイルではなくなったりしています。
このように、積み増しを繰り返してきたことによって、他のジョブに比べると玄人向けである上に、コンテンツやボスのギミックによって、火力が出しにくい、いわばコンテンツ相性のブレが大きくなってしまいました。それを、現代風「FFXIV」というか、今の他のジョブのような使い勝手でちゃんとジョブの特性がでるように、既存のアクションのイメージは残しつつも、その使われ方とか、アクションの効果の発揮方法の多くに手を入れます。
小技がやたら多かった部分は綺麗にしましたので、かなり使いやすくなっているのは間違いないと思います。クセは間違いなく減るし、そこを目指して調整しています。もちろん、そういった部分が好きだった、と仰るかたもいらっしゃるとは思うのですが、一旦綺麗に整理しよう、というのが方針になっています。
――以前に、ナイトは遠距離攻撃もできるタンクだったけれども、敵のサークルを大きくした結果あまり効果的ではなくなったということもおっしゃっていましたが、そういった部分も変更されるのですか?
吉田氏:もちろん、そういうところも踏まえて手を入れています。
――インビンシブルが強すぎるために、他のタンクよりもリキャスト時間が長いところはどうなりますか?
吉田氏:それはほかのアクションに比べてインビンシブルが強いという、特定のアクションのバランスに関するお話ですね。ジョブ改修を行う際に大切なのは、全体感になってきますので、特定アクションを中心に調整する、ということはないのです。ナイトというジョブを使いやすく、今よりも面白いジョブにするためにオーバーホールしようということが決まった後に、じゃあそういう状態のナイトだとしたら、インビンシブルはどういう立ち位置にあるべきだろう、というバランスのとり方をしていきます。
ですので、インビンシブルだけの質問だとお答えしづらいです(笑)。ただ、ナイトのアイデンティティというところはよく理解しているので、なくなってしまうようなことはありませんし、あまり変わらないと思います。
――気楽に使える無敵技なので、どうなるのか心配です。
吉田氏:今回のオーバーホールは、不都合にしたり、他のタンクジョブと同じにするという意味ではなく、ナイトというジョブの今のシステムが、積み増しによってかなり歪んでしまっているのを全部改めてリフォームしようということなので、インビンシブルだけを取ってどうこうしようということではありません。詳細はパッチノートを見ていただくことになると思いますが、こういうポリシーでこういう方針になるということをPLLで具体的に説明させていただこうと思っています。
雪で傘をさすか否か? 地域別のこだわりに対応するアイデアを企画中
――ブロンズレイクで潜水が可能になるということで驚きました。
吉田氏:あれは、僕も気が付いたら対応が進んでいて驚きました(笑)。とにかく「FFXIV」のシステムやコンテンツは、縦だけではなく、どんどん横にも広がっています。例えば刺突漁も4.0で実装されたものを改めてリニューアルした状態になっている。普通はもうそこで止めて、今後作る新しいマップにだけ提供していけばいいのですが、担当者たち同士で、せっかくシステムがあるんだから「新生エオルゼア」のエリアにも潜れるところがあってもいいんじゃないかと。そこで刺突漁が利用できれば、そういったシステムで遊べる場所が増えるからということを話し合って、担当者同士が連携して、新規マップ制作の合間に少しずつ対応を進めてくれていたようです。そして、公開できるようになったので確認してください、と言ってきたパターンでした。「よくぞやってくれました!」という感想しか出ないです(笑)。
――水中といっても実質新マップの追加みたいなものですものね。
吉田氏:そうですね。「新生エオルゼア」の頃にはプレイステーション 3でも動くようにマップに使えるメモリをかなり極限まで切り詰めています。切り詰めるために見えない場所は作っていません。でもブロンズレイクは景観を美しくするため、折れた柱や遺跡の一部が湖から突き出している。当初は潜る想定じゃなかったから、雰囲気を優先してオブジェクトをバンバン刺しているのですが、実際潜るとなるとそことのつじつま合わせも必要になるので、よくここを選んだなと思うし、実際よくやったなと思います。刺突漁をやらない方もどんな感じになっているのかを、ぜひ一度見に行っていただければ嬉しいです。
――今後も潜れる場所が増えていくのですか?
吉田氏:現時点で、お約束はできないですね……。マップなどの発注と発注の隙間、合間というのは、楽をしたくなるものです。発注がまだ来ないから、ちょっとゆったりしちゃおう、みたいに。サボっているわけではなく、ちょっと気持ちも手も緩めた期間を作ろう。それが長く制作を続けるコツでもあると思うのです。でも、それが「FFXIV」チームの場合は、手が空くからせっかくだし、何かできることをやろうぜとなる。7.0でグラフィックアップデートがあり、僕らがマップに使えるメモリ量も引き上げているので、もしかしたらもっとこうしたいということが出てくるかもしれないですね。とはいえ、優先は7.0やコンテンツに対して必須の作業。その隙間が今後どう活用されていくのかは、開発チームの裁量に任せたいと思います。
――PLLで新しいアクセサリーエモートは、現段階ではまだバグがあるという話をされていましたが、6.3で実装できそうですか?
吉田氏:現在実現しようとして作業をしている新システム、「雨が降ってきたら自動的に傘をさす」というシステムですね。正確にはエモートではないですし、まだ実装途中なので不具合が出るのも当然の時期です。大きめの不具合だったので、実装がパッチ6.3に間に合わない可能性もあり、あのようなお話をさせていただきましたが、今のところ不具合の修正も思った以上に順調に進み、パッチ6.3で実現できそうです。
雨だけでなく、雪が降ったときにどうしようというところで、一昨日に少し追加の打ち合わせをしました(笑)。というのも、日本では地域によって、雪が降っても傘なんかささないよという地域と、傘はさすでしょという地域とのギャップがあり、それを聞いて「ははーん、なるほどね」と。それについては、僕からひとつアイデアを出しましたので、その追加仕様を後に実装しようと思います。そのため、雪に対してのリアクションは今回入れていません。今回は雨と雷雨に関して、降ってきたら指定しておいた傘を、キャラクターが自動的に開く、という設定が可能になります。
――雪はやはり北海道出身者としてのこだわりがあるのですか?
吉田氏:こだわりと言うか、開発チーム内の複数人と話してみると、確かに人それぞれで感覚が違うんですよね。北海道だと寒いのと、湿度が高くないため、雪がサラサラと積もるため傘を差さなくても実は濡れないんです。ぱっぱと払えば、綺麗に落ちてくれることが多いのです。逆に傘をさしていると、傘にめちゃくちゃ積もっちゃうんです。でも北海道の中でも暖かい道南地域だと、感じ方も少し違います。また、本州でも湿り気の多い雪が降る地域だと、降った雪がすぐ融けて濡れるので、「雪で傘?さすに決まってるじゃん」となる。
日本だけでなく、全世界、いろいろな地域に光の戦士がいるので、システムとしてもっと細かく分けてロールプレイできるようにしよう、と僕からアイデアを一つ出しています。それの実装自体はもう6.3には間に合わないのですが、それによってもっとほかの天候についてもこだわりのロールプレイをしようという話をした、というわけです。
――自分らしさが出せる要素は楽しみですね。
吉田氏:これをやることによって、プレイしてくださる方が増えるのか?と言われると、直接的に「増える!」とは言いづらい。でも世界が豊かになって、「アーテリスという惑星に住んでいる」という意味では、小技が効いていいところだと思うので、そういうところにも地道に取り組んでいきたいですね。そういった積み重ねが、人が人を呼んでくれる、という原動力にも繋がると信じています。
新生10周年に向けてゲーム内外で準備中
――ファンフェスが発表されました。日本は2024年ということで、まだまだかなり先の話にはなりますが、すでに準備は始まっているんですか?
吉田氏:始まっています。日本の日程と会場はまだ確定しておらず、やり取りを継続しているところです。なにかトラブルがあって進んでいないというわけではないのですが、いつどこでという情報はもう少しお待ちいただけますか。
――開催の発表自体がだんだんと早くなっているような気がしますね。
吉田氏:日本ももちろんですが、北米や欧州では、ファンフェス参加のために相当な距離を移動されますし、皆さん宿の手配もあります。絶対に参加するぞ!と旅費を貯め始める方もいらっしゃいます。それに今回はもう次の拡張を作りますと公言していますし、実際に開発も進んでいます。グラフィックアップデートの作業も順調に進んでいて、僕の方でテストデータをチェックしながら、ここはここまでにしよう、ここはもう少しやろうとやっています。そういったものの報告やサンプルだしもファンフェスの注目点だと思いますので、ぜひ楽しみにお待ちください。
――やっとリアルイベントが復活してきましたね。
吉田氏:来年は特に新生10周年でもあります。1度失敗して生まれ変わったゲームが10年経った今もなお拡大を続けていて、プレイヤーの皆さんもどんどん増えている、という状態は本当に奇跡としかいいようがありません。その10年という節目のタイミングでこうしてリアルイベントが復活できるというのは、すごく喜ばしいことではあります。ただ、もちろん新型コロナウイルスがなくなったわけではないので、ファンフェスだけではなく、12月のオーケストラコンサートも含めて、お客さまも関係者も感染対策を徹底して、安全を確認しながら楽しんでいただきたいと思っています。
――オーケストラコンサートは、抽選に外れてしまった人も多いようですが、オンライン配信は難しかったのですか?
吉田氏:ネットで配信して欲しいというお声はもちろん拝見しています。ですが、あの規模のコンサートの音を、配信技術が上がっているとは言え、どこまでクオリティを高くできるのかというところは、サウンドディレクターである祖堅の稼働を考えると無理があるのです。箱を大きくしてたくさん入ってもらうにしても、僕らが今やれる規模としてはこれが限界でした。ツアー形式にして地方も含め、公演数を増やそうとすると、オーケストラの規模をかなり絞らなくてはならなくなるし、当然僕がMCをやることもなくなってしまうでしょう。全国ツアーでMCやってる暇があるならゲーム作れよって話になりますし、僕もそう思います(笑)。今のこのスタイルが「FFXIV」らしいという気がしなくもないですし、今回終わってから、またみんなで話し合って今後どうしていくかを考えられたらなと思っています。
――今のお話にもありましたが、来年はいよいよ「新生エオルゼア」から10周年になります。これだけ長く続けてきても変えずにいようと心がけているところはどこですか?
吉田氏:実は変わっていないことは、新生して以来ずっと、「今に満足しないこと」です。これは売上とか遊んでいただいているお客様の人数という部分に満足しない、というのはビジネスとしては当然ですが、本質的な意味はそこではないのです。ある程度定型化し、システムパターンを作ったアップデートで、毎パッチに確実に大きな物量を出したうえで、「もっとこんなものがあったほうがいいよね」「だからこそ、もっと新しいものに開発コストを割こう」と、常に現状に満足せずに進んできたつもりです。パターンを作ることで、基礎的なアップデートのコストが読みやすくなる。そこでできた余裕に満足せず、むしろ余裕ができたコストを全部使って、失敗してもいいから、いろいろな価値観を持つ、新しいものを試していこうぜ!ということを、この10年ずっと目標としてきています。
いろんなコンテンツを出すことによって、プレイヤーの皆さんからフィードバックをいただいて、それを踏まえてまたチャレンジをするというのは、「FFXIV」チームのすごく良いところだと思っています。この思想やコンセプトは変えてはいけないところだと考えています。これがあるからこそ、ヴァリアントダンジョンのような新しい考え方のコンテンツもできてきますし、フィードバックを受けつつ、これがまたシリーズ化されていけば、じゃあまたヴァリアントダンジョンとは別のものを作ってみようかということになっていくわけです。進化や発展、というものは、こうやって作り出していくものであり、負荷をかけることで、その速度を上げられる、と思っています。時折失敗してお叱りの声もいただきますが、失敗を怖がったり、めげたりしていては革新も生まれないですしね(笑)
――逆に挑戦していきたい部分はどこですか?
吉田氏:これは常々やっているので、今できていないという意味ではないのですが、一般的な広告/宣伝という範疇を超えて、使用するメディアや媒体、それからプレイヤーの皆さんへのアピールの仕方、ここはもっと可能性がある、と思っています。今はまだ「FFXIV」を遊んでいない人へのアピールの仕方、あるいは、プレイヤーの皆さんとのコミュニケーションの取り方は、「周りでうまくいっているからこれをやってみよう」とか、どうしても人間だれしも安定志向になる部分ではあると思うのです。上手く行っているからこれで良い、というやつです。日本の宣伝チームが中心となり、先陣を切ってこれをやろうとしてくれていますが、まだ周辺がそれについてこれていない部分もある。
ここまでのコンテンツとプロジェクトになったのだから、僕たちが先陣を切ってこういうことをやってみようぜ、という、周りで流行っているからやるのではなく、今が上手くいっているからやるのでもない。そういうところはプロジェクト全体で絶えず挑戦し続けていきたいです。グローバル全体のマーケティング/PRチームも新しい取り組みや、企業とのコラボレーションをどんどん進めてくれています。新生10周年の来年には、その年だけでなく、そこをスタートに、そういった活動も始まる年にしたいですね。また『「FFXIV」チームは、本当にいろんなことするなあ……』と思っていただけるように、チーム一丸でやっていこうと思っています。ゲーム内外合わせて、引き続きよろしくおねがいします!
――ありがとうございました!
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