インタビュー

【TGS2022】Microsoft Gaming CEO フィル・スペンサー氏インタビュー

Xbox版「FFXIV」はまだ諦めない! 「Call of Duty」は今後もプレイステーションに提供へ

9月17日収録

 東京ゲームショウ2022にゲームプラットフォーマーとしては唯一オンライン出展したXbox。初日の15日にXbox Streamを配信し、22本の新作タイトルを発表。うち13本は日本産と、日本のゲームコミュニティを強く意識した配信となった。

【Xbox Stream】
ホストはご存じ、フィル・スペンサー氏

 Microsoft Gaming CEO フィル・スペンサー氏は、昨年に引き続きお気に入りの「みんなのゲーミング」Tシャツを着用し、日本を含むアジアでXbox Series Sが好調なセールスを記録していることを報告。そのうち半数は新規ユーザーということで、Xbox Game Passや、Xbox Cloud Gamingといった強力な新サービスが、アジアのゲーム市場に大きなインパクトをもたらしている状況をアピールした。

【Tokyo Game Show 2022 Xbox Stream】

 そのフィル・スペンサー氏は、ここ2年間は、すべてオンラインのみ、録画のみでの参加だったが、今年は東京ゲームショウに合わせてサプライズ来日し、日本のゲームクリエイターと会い、会場では日本のコミュニティを交流するなど濃密な時間を過ごすことができたようだ。本稿では、2019年11月のXboxのプライベートショウ「X019」以来となったフィル・スペンサー氏単独インタビューの模様をお届けしたい。

【みんなのゲーミング】
配信時、フィル・スペンサー氏が着用していたスタッフTシャツが話題になっていた
スタッフTシャツには「みんなのゲーミング」と書かれている。微妙なゆるさが良い

日本で再びシェアを伸ばしつつあるXbox。そしてその原動力であるXbox Game Pass

フィル・スペンサー: まずはじめに、やっと東京ゲームショウに戻ってこられて嬉しく思う。最後に日本を訪れたのが2020年の1月で、その間、日本のゲームクリエイターやファンから遠ざかっていた。今回は、初日にキーノートを実施して、16日には同僚のサラ・ボンド(Xbox Creator Experience Head)と一緒にゲームショウの会場を回り、ファンのエナジーを感じることができてとても嬉しかった。それでは質問に答えようか。何でも聞いてくれ。

インタビューに応じるフィル・スペンサー氏。マスクは当然黒だ

――今回インタビューの機会を与えてくれてありがとう。まず最初に伝えたかったのは感謝。X019でインタビューした際、「日本市場を諦めない」と語ってくれたが、実際、Xbox Series Xのローンチでは日本はTier1になり、その後、Xbox Game Pass、Xbox Cloud Gaming、Xbox Design Labと、次々にグローバルと同等のサービスを展開してくれた。このことについてまず日本のXboxファンを代表して感謝を伝えたかった。

フィル・スペンサー: 良かった。こちらこそありがとう。

――この2年間の様々な取り組みによって、日本でもXboxが売れるという状況が再び起きつつある。このことをXboxのトップとしてどのように見ているのか?

フィル・スペンサー: Xbox Series X、Xbox Series Sは、過去に比類のない強力なローンチとなったが、日本においてもゲームクリエイターやコミュニティから強力なサポートを受けられている。我々はまだまだやるべきことがあり、多くのチャンスがあると考えており、引き続き投資しながら展開を強化していきたいと考えている。日本のゲームコミュニティのサポートには感謝している。

――先日のキーノートでは、Xbox Series S購入者の半分が新規ユーザーだと発表した。売れている実感は私ももっていたが、半分が新規というのは驚きだった。この要因は何だと考えているか?

フィル・スペンサー: それだけ今世代のゲームコンソールとしてXbox Series Sが魅力的なのだと思う。なんといっても安く、それが新規ユーザーにもわかりやすい価値になっているのだと思う。Xbox Game Passとの相性も良く、この組み合わせが、新たな価値を生み出しているのではないだろうか。

――X019のインタビューでは、Xbox Oneにおいて、日本での失敗から多くことを学んだと語っていたのが印象的だったが、この失敗は、Xbox Series Xの展開において、どのように活かされたのか?

フィル・スペンサー: それはもう多くのことだ(笑)。X019では日本をTier1に戻すと話したと思うが、Xbox Series Xのローンチでは、日本もグローバルローンチとタイミングを合わせ、サービスも同等のものも提供し、時間に対して多くの投資を行い、クリエイターやコミュニティと話をしていくということを大事にした。これらはXbox Oneでの失敗から学んだことであり、日本市場での経験が、今の我々を支えていることは間違いない。

――X019で発表した内容で唯一不満なのが、「FFXIV」がまだXboxでプレイできないことだ。すでに3年が経過したが、やはり無理なのか?

フィル・スペンサー: ハハハ、確かにそう発表した(笑)。当然、我々はまだ諦めていない。これはMicrosoftとスクウェア・エニックス、両社のゲームファンに対するコミットメントであり、今後も引き続き調整を続けていくつもりだ。

――Xbox Series Sは世界でも日本でもよく売れていると感じているが、その一方で、上位モデルであるXbox Series Xは依然としてなかなか手に入らない状況が続いていると思う。Xbox Series Xの生産体制の見込みを聞かせて欲しい。いつになったら欲しい人に手が届くようになるのか?

フィル・スペンサー: Xbox Series Sは多くのマーケットで潤沢に提供できる環境が整いつつあるが、確かにXbox Series Xはまだそうなっていない。部材の調達に問題があり、問題の解決には今年の年末から来年ぐらいまで時間がかかるかもしれないが、遅くとも2023年中にはXbox Series Sと同じように、Xbox Series Xも手に入るようになるはずだ。

――世界的には物価上昇による値上げトレンドが続いていて、それはゲーム市場も例外ではない。Xboxは今のところ静観を貫いているが、XboxシリーズやXbox Game Passの価格設定について考えを聞かせて欲しい。

フィル・スペンサー: 経済的なモメンタムは、我々のビジネスにとっても重要で、絶えずリサーチしているが、現時点でXboxやXbox Game Passの値上げをするべきではないと考えている。たとえば、Xbox Series SとXbox Game Passの価格設定は、提供しているコンテンツやサービスの価値と釣り合っていると考えている。この価値を価格改定等でむやみに変えるべきではないというのが現時点での考えだ。

――Xbox Game Passが日本のゲーマーにもじわじわ浸透しつつあるのを感じる。コンペティターも同様のサブスクリプションサービスを始めつつあるが、Xbox Game Passの未来の展望について聞かせて欲しい。

フィル・スペンサー: Xbox Game Passは今後も成長を続けていく。それはユーザー数もそうだし、プレイできるコンテンツの数もそうだ。我々の仕事は、新しい魅力的なゲームが、Game Passに加わっていく、この流れを維持していくことだ。引き続きXboxのみならず、PC、クラウドなど、複数の選択肢で、好きな時に、好きな仲間たちとともにプレイできるプラットフォームを目指していく。

――Xbox Series Xがリリースされて約2年が経過しつつあるが、そろそろ新モデルが気になり出している。PS5は、軽量化を目的とした部材の変更をすでに2度実施している。Xboxはそういう話はまだ聞こえてこないが、Xboxコンソールについて改良や新モデルに関する戦略を聞かせて欲しい。

フィル・スペンサー: 我々がXboxコンソールにおいて重視しているのは、消費電力だ。地球温暖化に対する配慮から、ゲームコンソールはサステイナビリティについてもっと注意を払っていくべきだと考えている。たとえば、スタンバイ時の消費電力、プレイ時の消費電力。これらをいかに少なくしていくかということについて検討を重ねている。

――先日のXbox Streamでは、日本発のゲームをXboxに増やすというメッセージが伝わってきた。しかし、私のような10年を超えるXboxファンが望んでいるのは、PS5やSwitchの後追いではなく、Xboxならではの圧倒的なパワー、クラウド等の最新テクノロジーを活かした日本発のエクスクルーシブタイトルだが、これをXboxに期待するのは高望みなのだろうか?

フィル・スペンサー: ハハハ(笑)。決して高望みではない。今回もコジマプロダクションの小島さんをはじめ、多くのゲームクリエイターと会い、ユニークなタイトルをXboxで提供することについて話をしてきたばかりだ。そのことを多くのゲームファンが望んでいることも理解している。日本発のゲームを望んでいることもね。我々としてもXboxチーム共通の意識として、そうしたタイトルを生み出すことにフォーカスして活動しているので期待していて欲しい。

【Xbox Streamで発表された日本タイトル(一部)】
「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」(アトラス)
「二ノ国 白き聖灰の女王 REMASTERED」(レベルファイブ)
「百英雄伝」(Rabbit & Bear Studios)
【小島秀夫氏がXboxとタッグ】

――プラチナゲームズの神谷さんは「スケイルバウンド」プロジェクトを復活させたがっているようだが、復活はあり得るのか?

フィル・スペンサー: (笑)。「スケイルバウンド」については現時点では話せることは何もない。

――では質問を変えよう。Activision Blizzard買収が世界を騒がせている……。

フィル・スペンサー: ああ、やっぱり「スケイルバウンド」の質問に戻ろうか?(笑)

――いや、これはぜひ答えて欲しい(笑)。なぜなら日本には「Call of Duty」シリーズのファンが多く、大きな関心事だから。Activision Blizzard買収後も、「Call of Duty」フランチャイズは、プレイステーションでプレイできるのか、それともプレイステーションを閉め出し、Game PassのキラーコンテンツとしてXbox/PC向けになってしまうのか?

フィル・スペンサー: 我々としては、「Call of Duty」は、今後もプレイステーションに残り続けると考えている。その一方で、まだ契約の途上だが、それらの手続きが完了したら、「Call of Duty」シリーズがGame Pass対応になる。これによって、「Call of Duty」をサブスクリプションサービスとして提供ができるようになる。これが我々が望んでいることで、「Call of Duty」からプレイステーションを閉め出すということではない。

――最後に日本のゲームファンに向けてメッセージを。

フィル・スペンサー: いつも日本のゲームコミュニティの皆さんから多大なサポートを頂いていて大変感謝している。特に日本であまりXboxがうまくいっていないときも変わらずサポートをしてくれていたことを知っているので、現在、日本でユーザーが増えていることを誇りに思っているし、この状況を大変嬉しく思っている。今回TGSに来て見てコミュニティの強さを感じることができた。現在、Xboxが順調に売れる状況になりつつあるが、「ペルソナ」をはじめ、日本のタイトルが次々にXbox Game Passの仲間入りを果たすし、総じてプラスのエナジーを感じられる状況になっている。これからもぜひXboxに期待していて欲しい。