【特別企画】

まだ全貌を見せない次世代レースゲーム「Forza Motorsport」詳報

新生「Forza」はチューンナップがキモ! レイトレーシング、ピットインの最終仕様は夏までお預け

【Forza Motorsport】

10月10日発売予定

価格:9,680円より

 2017年の「Forza Motorsport 7」の発売以来、実に6年振りの新作となる「Forza Motorsport」。Xboxのフラッグシップレースゲームシリーズとしてついにナンバリングを廃し、従来のように前作からの継ぎ足し、改良ではなく、過去の遺産を全部捨て、完全に作り直した作品となっている。

【Forza Motorsport - Official Trailer】

 Xbox Games Showcase 2023では、カバーカーと発売日がアナウンスされ、2023年にリリースされることが確定した。会場では開発チームによるBCDセッションも行なわれたので、その模様をお届けしよう。

【Turn 10 Studios】
クリエイティブディレクターのChris Esaki氏(左)と、Turn 10 GMのDan Greenawalt氏

 最初にお断わりしておくと、「Forza」ファン、レースゲームファンが知りたい情報は、今回のBCDセッションではまだ明らかにされなかった。発売日とカバーカーの発表、最新ビルドを使ったトレーラーの公開はあったものの、肝心の試遊はなく、最新トレーラーもまだゲームの核心を語っていない。ゲームの仕様はまだ確定していないという印象を強く持った。

 とりわけ、レース中のリアルタイムレイトレーシング表現は、「グランツーリスモ7」ですら到達できなかった前人未踏の領域として、新生「Forza Motorsport」の最大のセールスポイントとなるが、Turn 10 GMのDan Greenawalt氏によれば、まだ「最終的にどういう仕様になるか確定していない」という。

【リアルタイムレイトレーシング】
こちらは一年前に公開されたリアルタイムレイトレーシングのデモ。ボディへの対向車の映り込みをはじめ、あらゆるものが映り込んだ衝撃的な1枚だ
こちらは最新トレーラーより。表現がやや大人しくなっているのが気になるところ
【Forza Motorsport - Official Gameplay Demo - Xbox & Bethesda Games Showcase 2022】

 今回のオフィシャルトレーラーも、わざわざWindows PCで収録したものと断わりを入れている。言い換えれば、Xbox Series Xでは、現在のビルドのグラフィックスは、同じフレームレートを出せないということだ。映像はXbox Series Xを遙かに上回るハイスペックPCで収録したものと思われるが、今後さらに最適化が進むにせよ、4K/60fps/レイトレーシングオンは、どうもXbox Series Xでは難しいようだ。

 ではどうするのか。それはつまり、Series Xのセールスポイントであるネイティブ4Kを捨てるのか、あるいは「Forza」が金科玉条としてきた60フレーム固定表示を捨てるのか、あるいはやっぱりレース中のリアルタイムレイトレーシングはオフになるのか。ユーザー側は厳しい選択を迫られることになる。

【ガレージ】
ガレージでは、「GT7」同様、レイトレーシングをオンに出来る模様

 ただ、レース中のリアルタイムレイトレーシングは実際にBCDセッションのデモで実際に確認することができた。今回確認できたのはクルマのボディへの映り込みで、中でも衝撃を受けたのはボンネットビューの映像だ。ボンネットには、湖面に映る逆さ富士のように目の前の風景が逆さに精細に描かれているが、それがクルマが進むにつれて動的に変化していく。今まで見たことのない風景であり、コクピットビュー内に様々な光をもたらした「Forza Motorsport 5」以来の衝撃だ。

 そしてもうひとつ隠されていたのがピットインの仕様だ。「Forza Motorsport」は「グランツーリスモ」と並んで、コンソール向けのリアル系レースゲームとして確立された存在だが、ほぼ唯一にして最大のウィークポイントが、ピットインのプロセスをまったくカットしてしまっているところだ。

 特に現行の「Forza Motorsport 7」ではトレーラーであたかもリアルなピットインが可能になると見せかけておいて、実際には、従来シリーズと同様に、無人のピットに赴き、パラメータ処理だけでピットイン作業を行なうという仕様で、大きな批判を浴びた。

 「Forza Motorsport」では、ついにピットインをリアルに再現するという。Xbox Games Showcase後に行なわれたFANFESTでは、ピットインのプロセスをいかに短時間で行なうかという体験コーナーが設けられ、最新トレーラーでもよくよく見返してみると、随所にサブリミナル的にピットイン風景を織り交ぜている。つまり、本来なら、今回のデモにピットインの紹介が含まれていてもおかしくなかったはずだが、開発が間に合わなかったのか、何か別の理由があるのか。ピットインの仕様に関する説明は行なわれなかった。

【ピットイン】
トレーラーに数フレームずつ挿入されているピットインシーン
【FANFESTでもピット作業を体験】
タイヤ交換を何秒でできるかという過酷なトライアウト

 ただ、レイトレーシングとピットインの2つの要素を抜きにしても、新生「Forza Motorsport」は、シリーズのファンはもちろんのこと、レースゲームファンをワクワクさせる内容に仕上がっていた。

【HOME画面】

 今回のデモでは、ゲームの基本的な流れについて説明が行なわれた。メインとなるのは過去のシリーズ同様キャリアモードで、レースを繰り返して賞金を獲得し、さらに新しいクルマを獲得して、上位レースにチャレンジしていく。この流れは基本的に変わっていないが、大きく変化しているのは、その過程にチューンナップが大胆に導入されていることだ。

 過去のシリーズのように、クレジットを払えばサクッと各パーツが強化されるという簡易的な扱いは完全に過去のモノになっており、トランスミッション、クラッチ、エンジン、エアフィルターなどなど、細かい項目を、多くのパーツバリエーションから選択できるようになっており、しかもそのパーツは、レースの報酬として少しずつ入手するようになっている。何もかもクレジットで一気に解決するのではなく、少しずつ集めていくわけだ。このパーツは新しい通貨であるCar Pointを消費することでも獲得できるという。

【チューンナップ】
いずれもトレーラーより。パーツチューンナップを経て性能が向上していることが確認できる

 説明を聞きながら、まるで「Diablo」のようだなと思った。武器や防具がクルマのパーツ、ダンジョンがレース。レースを経てドロップしたパーツを装備する、みたいな。少しずつ強くなれる一種のRPG的要素が盛り込まれているのは良いなと思った。逆に言えば、クルマをどんどん乗り換えていくのではなく、キャリアモードを通じて、任意のクルマを少しずつ強化しながら戦っていく仕組みにゲームの作りも変化しているようだ。

 ドライビングモデルもイチから開発し直したということで、サスペンション、ウェイトモデル、物理など、クルマの挙動に関わる部分はすべて革新的に進化しており、いわゆる“乗り味”も相当変化しているようだ。AIも当然大きく進化しており、進化した学習型AIで、よりタイトな競技が楽しめるようになっているとしている。「Forza」の魅力であるコクピットビューも、より精細に、よりダイナミックになっており、先述のレイトレーシングの効果も含めて、さらにリアリティが追求されている。

 細かいところだと、スターティンググリッドが選択できるようになっている。レースゲームにおけるスターティンググリッドは、最後尾から全車を追い抜いていくもの、という不文律があったが、「Forza」ではこれを自由に選択できる。このグリッドの位置によってレースの難易度だけでなく、報酬も変化するという。なお、上位3着により高い報酬が支払われるのは変わらない。それ以外にも、AIの強さやアシストの有無といった難易度設定でも報酬が変化していく。

 クリエイティブディレクターのChris Esaki氏は、新しい時代はすぐ来ており、「発売が待ちきれない」と興奮気味に語った。今回見せたデモの内容は、「Forza Motorsport」が持つ新要素の極一部であり、氷山の一角に過ぎないという。ピックアップできるフィーチャーだけで10以上の要素が入っており、「根本的な進化、新しいゲーム体験を提供できる」と、自信にたっぷりに語ってくれた。

 レイトレーシングについては、個別で質問したところ、映り込みや影など、大別して6つの要素で構成されており、詳細については夏に公開するという。夏というと、gamescomか、プライベートショーかというタイミングになる。というわけで全貌が明らかになるのはまだ少し先になりそうだが、「Forza Motorsport」は我々の高い期待値のさらに上を行ってくれそうなポテンシャルを感じている。完成が非常に待ち遠しいタイトルだ。

【スクリーンショット】