インタビュー

Microsoft Gaming CEO フィル・スペンサー氏インタビュー

「ティアキン」を絶賛! 今後は日本メーカーとのリレーションをさらに深化へ

【Xbox Games Showcase 2023】

6月11日開催(現地時間)

会場:The Novo Theater

 Microsoftは、ゲームプラットフォーマーとしては唯一となるフルスペックのゲームショウケースイベント「Xbox Games Showcase」を、E3シーズンのこの6月のタイミングに、E3会場のLos Angeles Convention Centerすぐ側のイベントスペースで開催した。

 筆者もXbox担当として4年振りにロスに足を運んだが、ダウンタウンに入ったときは、ゲームの看板がひとつもなければ、ゲーム業界関係者で街がごった返すような熱気も感じられず一抹の寂しさを覚えたが、Xbox Games Showcaseに参加している限りでは、まるで往年のE3が復活したかのようで、このロスの地で、ホリデーシーズン向けの新作が続々登場する風景を堪能することができた。

 MicrosoftのXboxチームが、オンラインで済むショウケースイベントをなぜわざわざオフラインでやるかというと、ゲームコミュニティを重視する姿勢を明確にするためだ。今回は、Xbox Games Showcaseに合わせて、ゲームコミュニティ向けのファンイベントFANFESTも同時開催されており、Xbox Games Showcaseをシアターで鑑賞する来場者の過半数は実はゲームコミュニティで、残りを我々メディアや関係者が分け合う形になっている。

【Xbox Games Showcase 2023】
入場者の過半数はゲームコミュニティ
配信終了後、スピーカー達が登場。大歓声に包まれた
コミュニティのサポートに感謝を述べるフィル・スペンサー氏

 Microsoftは、最後発のゲームプラットフォーマーとして、ゲームIPが持つ力と、フランチャイズを継続することの大切さ、そこに紐付くゲームコミュニティの力を理解しており、ゲームメーカーの買収に力を入れつつ、水面下ではゲームコミュニティのロイヤリティを高めることに注力している。何よりもユーザーを大切にする。この姿勢が改めて実感できたイベントだった。

【FANFEST】
盛り上がるFANFEST会場。主役はゲームコミュニティだ

 本稿では、Microsoftのゲームビジネスを担当するMicrosoft GamingのCEO フィル・スペンサー氏に、昨年のTGS以来9カ月ぶりにインタビューすることができたので、Xboxファンはお楽しみいただければと思う。

フィル・スペンサー: ようこそ。Showcaseはどうだった?

――期待以上だった。カプコンや、セガ、アトラスといった日本のメーカーから初公開情報が出てきたのはサプライズだった。

フィル・スペンサー: そうだろう? でも、本当はサプライズじゃなくて知ってたんじゃないか?(笑)

――あのリーク情報は本物だったのか?

フィル・スペンサー: 残念ながらそうだ。アトラスの3タイトルのうち2タイトルは事前に情報が漏れてしまった。

――個人的には、「Fable」を最初に持ってきていたのが良かった。「Fable」は日本でも人気のフランチャイズで、Xboxといえば「Fable」というイメージが強い。

【Fable - Xbox Games Showcase】

フィル・スペンサー: 「Fable」はMicrosoft Game Studio時代に私が最初に取り組んだフランチャイズだ。私にとってもスペシャルなタイトルで、あれが最初に出てくるのは私としても嬉しかった。

――今回、発売日などはアナウンスされなかったが、発売はもう少し先になるのか?

フィル・スペンサー: どうだろうか。ただ、もうプレイできるレベルまでは出来上がっているので、そんなに待たせることはないと思う。

――今回日本メーカーのタイトルの初出し情報が出るということは、Xboxも日本市場で少しずつ力を付けていると受け取って良いのだろうか?

フィル・スペンサー: サラ・ボンドが進めている日本のメーカーとのリレーションは我々にとって極めて重要だ。今回発表したメーカーとはまさに良いリレーションシップが交わせているが、まだ十分ではないより良くしたいと考えているメーカーもある。全体的に言って、日本のメーカーとの関係性は良くなってきていると思う。

――より良くしたいメーカーとはスクウェア・エニックスか?

フィル・スペンサー: そのとおり(笑)。スクウェア・エニックスには友人も多いが、その関係性はもっと進化させられると思っている。Xboxユーザーの中にはスクウェア・エニックスのタイトルを求める人が多いので引き続き努力していきたい。

 実際、アトラスは4年前には、今のような関係はなにもなかった。今回は「ペルソナ」だけでなく、「メタファー:リファンタジオ」のような新作も発表することができた。スクウェア・エニックスとも同じようなことができるのではないかと信じている。

【Metaphor: ReFantazio — Announcement Trailer】

――まさに今、スクウェア・エニックスの吉田さんが、「ファイナルファンタジーXVI」のイベントをすぐ近くで行なっている。この「FFXVI」と、そして彼が担当しているもうひとつのタイトル「FFXIV」も今後Xboxで遊べる日が来るということか?

フィル・スペンサー: 現時点で具体的なアナウンスはできないが、吉田さんはリスペクトできるゲームクリエイターであり、様々なことをディスカッションしてきた関係だ。まさにそういう状態まで関係性を進化させるのが私の目標だ。

――昨年TGSでインタビューした後も、日本でのXboxユーザーは増え続けている。この点についてどのように考えているか?

フィル・スペンサー: 愛すべき状況だ。より重要なことは、日本でゲームデベロッパーへの支援を強化することだ。日本のクリエイターがより手軽にXboxのゲームを作れる環境を整備する。それをグローバルのMicrosoft Storeで販売していく。カプコンの「Kunitsu-Gami: Path of the Goddess」のような日本発のタイトルをXboxで取り扱っていく。昨年のTGSで私とサラ・ボンドが日本に行って様々なメーカーとコミュニケーションを行なったが、今年もぜひ行って、我々にとって日本市場が重要であることを理解して貰おうと考えている。

――日本のクリエイターと言えば小島秀夫氏だが、以前発表した彼が開発しているタイトルの続報はないのだろうか?

フィル・スペンサー: 残念ながらまだない。ただ、知ってるかもしれないが、昨年のTGSで来日した際も、小島さんに会っている。新しいゲームについて話を進めている段階だ。

TGSで来日したフィル・スペンサー氏は、小島プロダクションを訪れていた

――東京ゲームショウでは新しい発表を期待していいか?

フィル・スペンサー: まだ我々はTGSで何を発表するかを決めていない。行きたいとは思っているし、もし行くことができれば、日本のゲームコミュニティが喜ぶ新しいゲームの発表ができたらと考えている。

――日本でもようやくXbox Series Xが買えるようになってきた。在庫問題は完全に解決したと考えて良いのか?

フィル・スペンサー: 本日発表したように、グローバルでXbox Series Xの供給を強化している。日本でXbox Series Xを購入することが難しい状況が続いていたのは理解している。解決できるように努力している。

――今回、Xbox Series Sの1TBモデルを発表したが、今後Xbox Series Xの2TBモデルなどの登場にも期待していいのか?

【Xbox Series S(1TB)】

フィル・スペンサー: 現時点では何もアナウンスできないが、ユーザーから多くのフィードバックを受けて、今回Xbox Series Sのサイズを拡張する発表を行なった。今後もプレーヤーのニーズを聞きながら応えていければと考えている。

――「Redfall」は、バグが多く、正直に言って残念な出来映えだった。なぜこんなことになってしまったのか?

フィル・スペンサー: (しばらく沈思する)開発チーム自体は、頑張って作っていたのは事実だが、Team Xboxとしてスタジオが持つビジョンや目標に対して適切なサポートができなかったということだと思う。

――私は、クオリティの高さこそがMicrosoftのゲームという印象を持っていたが、今回でその信頼が揺らいでしまった。ここについてどうケアしていくつもりなのか?

フィル・スペンサー: そう言ってくれてありがとう。まずは「Redfall」をより良いものにしていくことだ。我々はローンチ直後だったから仕方がないと言い訳するつもりはない。より良いものを提供すべく努力していく。今回、「Redfall」で起こったことはMicrosoft傘下のスタジオ全体の教訓として二度と繰り返さないようにしていきたい。

――最近日本に届くXboxの話題はActivision Blizzardの買収話ばかりで、ゲームファンとしてフラストレーションが溜まる。買収はいつ頃完了して、いつから新しいフェイズに移行するのか?

フィル・スペンサー: それはわかっている(笑)。我々も必至に努力を重ねているが、すでに18カ月以上経過しているのは事実だ。我々も早く買収をクローズして、新しいステップに行きたいと思っている。Microsoftは、規制当局と解決に向けて交渉を重ねている。

――それがいつになるのかはわからない?

フィル・スペンサー: 全体をコントロールしているのは規制当局なので、いつクローズするかはわからない。でも日本ではクローズできた(許諾が得られた)ことは嬉しいことだと思っている。いま40カ国で認可されている。

――「Starfield」は、期待通りの大作に仕上がっていて発売が楽しみだ。ちなみに「Starfield」は他プラットフォームへの展開、PS5やNintendo Switchに展開する未来はないのか?

フィル・スペンサー: ない。「Starfield」はXboxとPCのみでプレイする事ができる。

――先ほど行なわれた座談会では、「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」を評価すると語っていた。実際にプレイしているなら、ゲームファンのひとりとして具体的にどのあたりを評価しているのか教えて欲しい。

フィル・スペンサー: 「ゼルダ」はプレイしているよ。私が思うに、ゲームプレイのサイクルに、ユーザーのクリエイティビティが介入できる余地がふんだんにあることだろうか。前作の「ブレス オブ ザ ワイルド」はクリエイターがゲームをコントロールしていたが、「ティアーズ オブ ザ キングダム」はそうではなく、プレーヤー自身がゲームにインパクトをもたらすことができる。ここが最大の評価ポイントだ。「ゼルダ」の開発チームは非常に素晴らしい仕事をしたと思う。

――日本のゲームファンにメッセージを

フィル・スペンサー: 私はいつも日本のプレーヤーやクリエイターからインスピレーションを受けている。日本のゲーム市場でも、Xboxがもっと重視されるように引き続き努力していきたいし、日本のファンからのフィードバックは力になっている。いつもありがとう。これからもよろしく。