インタビュー

【TGS2022】「謎迷宮」で唯一無二の謎解き体験を! 「超探偵事件簿 レインコード」小高和剛氏インタビュー

「ダンガンロンパ」とは別のもう1つの柱。「僕的にはかなり手応えがある!」

【超探偵事件簿 レインコード】

2023年春 発売予定

価格:未定

プレイ人数:1人

 スパイク・チュンソフトは、Nintendo Switch用ダークファンタジー推理アクション「超探偵事件簿 レインコード」を2023年春に発売する。価格は未定。

 本作は、「ダンガンロンパ」製作陣が再集結して手掛けるダークファンタジー推理アクション。記憶喪失の探偵見習い「ユーマ」と、ある契約に基づきユーマに取り憑く「死に神ちゃん」の2人が、雨が降り続く奇妙な街で未解決事件に挑んでいく物語となっている。

【超探偵事件簿 レインコード [Nintendo Direct 2022.9.13]】

 今回、東京ゲームショウ会場にてシナリオを担当するトゥーキョーゲームスの小高和剛氏に本作の世界観やストーリー、開発秘話などについて話を聞くことができた。

トゥーキョーゲームスの小高和剛氏

「ダンガンロンパ」とは違う新しい柱「超探偵事件簿 レインコード」

――今回本作で「ダンガンロンパ」の製作陣が再集結した経緯を教えてください。

小高氏:もともと「超探偵事件簿 レインコード」は「ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期」の発売直後から動き出していて、僕がスパイク・チュンソフトを辞める前からすでに企画はスタートしていました。

 企画が通ったところぐらいで会社と相談して、僕が会社の外からやってみたいという話になりました。サウンド担当の高田(作曲家、音楽プロデューサーの高田雅史氏)は自分の会社をしていましたし、デザインの小松崎(イラストレーターの小松崎類氏)もスパイク・チュンソフトを退職してフリーで活動していました。その面子を集めて会社を作ろうということで「トゥーキョーゲームス」ができました。そこから、スパイク・チュンソフトとトゥーキョーゲームスで開発しようという話になりました。

――「ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期」発売直後からということは約5年前からということですが、もともと「ダンガンロンパ」とは違うものを作ろうと思って構想は始まったのでしょうか

小高氏:本作は「ダンガンロンパ」が終わって次のものというわけではありません。「ダンガンロンパ」は「ダンガンロンパ」という柱で、それとはもう1つ違う柱にしたいなとの思いがあります。「ダンガンロンパ」シリーズは2010年代を代表する推理アドベンチャーかなと考えていて、その前には2000年代に「逆転裁判」シリーズですね。その上で、2020年代の推理アドベンチャーというものを確立させたいなと。

 それには、今からは3Dで作らないといけないなと思い、「ダンガンロンパ」とは別の柱として3Dの推理アドベンチャーを作りはじめました。ですので、本作は完全3Dです。町中を動き回り、殺人事件の捜査も3Dとなっています。

――3Dということは操作感もガラリと変わるのでしょうか。

小高氏:そうですね。ただそんなに難しい操作はなく、街中歩いて調査するのはある意味「ジャッジアイズ」シリーズのような、いろいろなところに立ち寄って、街中を進んでいるという感覚を与えたいと思っています。移動して背景絵が変わる2Dよりはシームレスに動けるようになっています。

――今回はプレーヤーがキャラクターを自由に動かすことができるということですね。

小高氏:そうですね。オープンワールドというわけではないですが、1つの架空の街があり、その中にビジネス街やスラム街、繁華街などそれぞれいろいろなエリアがあります。そのエリア内をある程度自由に歩くことができる形です。ですので、オープンワールドで移動にすごく時間がかかったりするというような事もないです。そこはいいとこどりをしようかなという。1番近いのは「ペルソナ」シリーズかも知れませんね。

――本作は完全3D推理アドベンチャーということですが、「ダンガンロンパ」からゲームシステムもガラッと変わったのでしょうか。

小高氏:殺人事件が起きて、その謎を解く流れは一緒です。ただ、解き方が「ダンガンロンパ」の場合は「学級裁判」で、みんなでワイワイ言いながら謎を解いていったと思います。本作では「謎迷宮」という場所で謎を解いていきます。「謎迷宮」はダンジョンになっていて、異世界を歩きながら謎を解きます。そしてダンジョンは、謎を解けば解くほど形が変わっていきます。

 1番目指したかったのは、謎を解くごとにどんどん景色が変わっていく、という表現です。「ダンガンロンパ」は謎解きの「学級裁判」の際に、景色が変わりませんでした。そこで、「謎迷宮」という異世界のダンジョンで謎を解く形にしました。

主人公は能力を持たない「探偵見習い」。「死に神ちゃん」と周りの「超探偵」と協力して謎を解く

――本作の主人公「ユーマ」と相棒「死に神ちゃん」のキャラクターについて教えてください。

小高氏:「ユーマ」は記憶を失っているので、序盤はテンパった状態です。基本的な性格は自信がなくオドオドしていますが、真っ直ぐな少年です。立ち位置としては、大きな探偵組織に所属している「見習い探偵」です。自分が「見習い探偵」であることは覚えているのですが、どうして「死に神ちゃん」と契約したかは覚えていない状態です。

 そして「死に神ちゃん」は、昔からいろいろな人に憑りついて事件を解決させてきた人物です。ただ、謎解きが得意ではないので「謎迷宮」を作って解かせることを生業としている死神です。

 「死に神ちゃん」と「ユーマ」は、「死に神ちゃん」がちょっと意地悪な教育係となって、「ユーマ」を立派な探偵に育てているという関係です。また「死に神ちゃん」は人間社会と切り離された存在なので、人間の常識などは全く通じず、トラブルメーカーでもあります。そんな「死に神ちゃん」に「ユーマ」が振り回されているという感じですね。

主人公の「ユーマ」
相棒の「死に神ちゃん」

――「ユーマ」は「死に神ちゃん」に憑りつかれたことはことも覚えていないのでしょうか。

小高氏:「ユーマ」は記憶喪失になっているので、ゲームが始まった当初は「なんで君がいるの? なんで契約したの? わかんない」という状態ですが、物語が進むにつれてその辺りもわかってきます。

「ユーマ」は「死に神ちゃん」との出会いも忘れてる

――本作で登場する探偵は特殊能力を持った「超探偵」だと伺いました。一体どんな能力を持った探偵なのでしょうか。

小高氏:まだ詳しい能力まではお伝えできませんが、事件の捜査に使われる能力です。能力は「超探偵」たちが所属している巨大な組織で培われるもので、本作では「超探偵」がいっぱい出てくるのですが、みんなそれぞれ超能力を持っていて「ユーマ」はその人たちの力を借りながら事件を捜査していきます。

 「超探偵」たちはキャラクター数も多いので「ダンガンロンパ」の超高校級のように、「超探偵」たちの能力は段階的に発表できると思います。

「超探偵」たち

――「ユーマ」が他の「超探偵」の力を借りながら事件を捜査するということは、基本的には1人で捜査するのではなく、周りの人たちの力を借りながら物語が進むのでしょうか。

小高氏:「ユーマ」はあくまでも「見習い探偵」なので、超能力を持っていません。ですので、いろいろな「超探偵」たちとの交流もこのゲームの肝になります。街中を自由に歩き回れるので、「ダンガンロンパ」の好感度イベントのようなサブクエストもあります。

 サブクエストで、「超探偵」たちと仲良くなれるような要素もあります。ただ、仲良くなるのはやり込み要素に近いので、仲良くないからといって捜査に協力してもらえないということではありません。

事件の謎は異世界ダンジョン「謎迷宮」を移動しながら解いていく

――目の前で起きた事件の謎解きを異世界で行なうのはあまり聞かない設定です。どうして異世界で謎を解くという設定にしたのでしょうか

小高氏:異世界で謎解きをするのは、人類初のゲーム設定だと思います。謎解きモノはゲーム以外にも小説やテレビドラマでもみんな見ていると思いますが、謎解きにはみんなが面白いと感じられる要素が絶対にあるなと思っています。

 また、推理ゲームはあまり海外では作られない日本独特のジャンルだとも思っていて。日本らしさのある推理アドベンチャーで勝負したいという気持ちが凄くある一方で、ゲームで推理をするのがあまり好きでない人もいると思うんです。

 そこで、そういった人たちがどうやったら振り向いてくれるのかなと考えた時に、ゲームならではのダイナミックな表現を使って、3Dダンジョンで謎を解くとどんどん道が進んでいくという形なら面白いのではないかとなりました。

 学級裁判場のような1カ所に留まらず、どんどん景色が変わっていくにはどうしたらいいだろうというところからスタートしていった感じです。謎を解いているだけなのに派手に見えるのが1番目指しているところです。謎解きの新しい楽しみ方として、プレイ動画を見ても「何それ! 面白そう!!」と思ってもらえるようにしています。

――景色が変わっていくというのは具体的にどういうことでしょうか。

小高氏:最初、牢獄だった場所が1つ謎を解くと違う部屋に変わってしまうような感じですね。完全に異世界なので何でもできて、裏を返すと実際に事件が起きた現場に変化して再び調査ができる……といったこともあります。

 マジカルな感じの絵を作りたい、というところが発想のスタートなので、「謎迷宮」自体にはルールがないんです。まだピンと来ないかもしれませんが、今後予定しているPVを見ていただければわかると思いますので続報をお待ちください。感覚としては、謎を解きながら進むディズニーランドのアトラクションに近いのかもしれません。ただ、独特な唯一無二の謎解き体験にはなると思います。

――なるほど。唯一無二の謎解き体験が魅力であり、プレーヤーに楽しんでもらいたいポイントになっているということですね。

小高氏:そうですね。ただ唯一無二がゆえにわかり辛さやハードルの高さみたいなものが多少あるかもしれないとは思います。しかし、絵が派手なのでプレイはしやすいかなとも思っています。街を探索して、事件が起きて、「超探偵」という個性的なキャラクターたちともやり取りできるというわかりやすいキャッチーさも残しています。

近未来ではない現代的なサイバーパンクの世界

――本作では雨がやまない街が描かれています。この設定になったのはどういった経緯でしょうか。

小高氏:まず、探偵ものをやりたかったというのがあって。本作では「超探偵」と呼んでいるいろいろな探偵が出てくるものをやるうえで、パッと明るい街にするよりは、シャーロック・ホームズではないですが、ロンドンのようなちょっとダークな街にしたいと思っていました。

 そこからどのように個性的にしようかとなったときに、雨が降り続いていて水溜りにネオンが光っているような、サイバーパンクとスチームパンクと雨を組み合わせてみるといいなとなりました。ならばいっそ雨が降り続いていれば面白いかもなと。そうなると探偵もレインコートを着ることができて、その姿が絵にもなるなぁという感じです。主人公たちは、基本的にレインコート姿で傘を差したりはしません。

――映像の中には人の上に浮いている傘のようなものも見られました。あれはどのようなものでしょうか。

小高氏:頭の上に浮いていたのはドローン傘ですね。この世界ではドローン傘というものが発展していたり、街中にも排水溝がたくさんあります。雨を逃がす構造も街の見た目の特徴かなと思います。

 PVの中にも実はたくさん排水溝が映っているのですが、ネオンなどを貼ってかなりおしゃれにしてあります。街中に馴染んでいるのでわかりにくいかもしれませんが、よく見ると排水溝が結構あるんです。また、実際にプレイして街中を歩いてみると結構目に付くと思います。ほかにも街の個性として、てるてる坊主がいっぱいあったりもします。

――今作のテーマがサイバーパンク×探偵と伺ったときに異色の組み合わせのように感じたのですが、どうしてこの組み合わせになったのでしょうか。

小高氏:ジャンル的にはあまりないですよね。ただサイバーパンクといっても近未来にするためのサイバーパンクではありません。本作の舞台となる国は、日本でもどこでもない国です。「ダンガンロンパ」は日本とは明言していませんが、どこか日本のような雰囲気がありました。ただ、今回は舞台を本当にどこでもないところにしたかったので、その差別化としてサイバーパンクのテイストを入れています。

 実際近未来のサイバーパンクにしてしまうと、テクノロジーが今と違う気がします。何が進歩していているのかというところまで考え出してしまうと、トリックが作れなくなってきます。密室となっても、その近未来では壁をどこでも通り抜けられるようなテクノロジーがあるかもしれませんよね(笑)。

 そんなことを考え出すとどんどん気になってミステリーが作れなくなってしまうので、組み合わせはよくないなと。なので時代背景はこの現代と同じで、ミステリーとはぶつからないようになっています。単純に全然違う国を作りたかったというのがサイバーパンクを取り入れたベースになっています。

雨が降るサイバーパンクさを感じる街

――完全に架空の国が舞台なんですね。

小高氏:そもそもドローン傘を作るほど雨が降る街なんてないはずです。この街ではそれだけ雨が降るし、テクノロジーをそこに集約している。それがサイバーパンクのように見える。変えたのはテクノロジーではなく文化です。

 その設定を1つ1つ作って街に反映させていくとめちゃくちゃ時間がかかりました。プロップの段階からとにかく時間がかかっています。例えば街にある植物は、水槽のような箱に入れて紫外線を当てて栽培していますが、これは雨しか降っていない街でどうすれば育てられるかを考えて作りました。

 同じように、細かい部分1つ1つについて「この街ではどうなっているのか」の設定を作っていったところ、すごく時間がかかって5年ぐらいかかりました。ただその分、この街にしかない文化ができています。

――ほかにも制作においてこだわられた点はありますか

小高氏:街の設定や人々の暮らしなどから派生する部分も大変だったのですが、1番時間がかかったのは「謎迷宮」のところです。異世界という話をさせていただいたときにピンと来なかったかもしれませんが、それは制作現場でも一緒でした。僕が「謎が具現化するんだ」と伝えても、「謎迷宮」がどういったものでどうやって謎を解いていくのかがはっきりピンと来ていない(笑)。そんな状況で、現場でシナリオを作りつつプレイアブル画面を作るという工程を行ったり来たりして制作したので、とても時間がかかったんですよ。

 世界も新しいし、ゲーム体験も新しい。謎解きの組み立て自体は「ダンガンロンパ」の「学級裁判」と同じように、みんなが謎について議論して、途中気になったところでミニゲームが始まり、ミニゲームを解くとまた議論に戻っていくような形になっています。それを迷宮に落とし込むにはどうしたらいいのか、ミニゲームはどういったものが「謎迷宮」には相応しいのだろうというところを組み立てていく必要がありました。謎を具現化した世界をみんなで固めながら進めて行ったので、とにかく時間がかかりました。

「言弾」から「解刀」へ

――「ダンガンロンパ」では論破するときに「言弾」を打ち込んでいました。そして本作では事件の矛盾を「解刀(かいとう)」という刀で叩き切ると伺いました。本作で刀を取り入れた理由を教えてください。

小高氏:今回は洋刀がモチーフです。「ダンガンロンパ」は弾丸で、同じモチーフは使わないと決めていました。ただ、ノンストップ議論を進化させたものを3Dでやりたくて、その中で何ができるかと考えたときに銃でなければやはり刀かなとなりました。また「解刀」も「解答」との言葉の語呂合わせでうまく引っかかって、言葉遊びで面白いなという結論に至りました。

Nintendo Switchでできる新しい謎解き体験をして欲しい

――街探索と「謎迷宮」という要素があるとかなりのボリュームがあるように感じられます。

小高氏:街と「謎迷宮」の2つのパートがあり、特に「謎迷宮」は事件ごとに全く違うものになっていて、Nintendo Switchではあまりない大きさの容量になっています。Nintendo Switchで発売されるソフトとしては、珍しいタイプのゲームになると思います。

――かなり容量も大きいようですが、Nintendo Switchで展開されるのはどうしてでしょうか

小高氏:僕たちの中では、携帯機でプレイできることが非常に大きいです。「ダンガンロンパ」もずっと携帯機で展開していましたし、できたらゴロゴロしながらプレイしてもらいたい気持ちもあります。電車などの中でもプレイしてもらえたらうれしいですね。

 推理アドベンチャーは本のように楽しんでもらえるようなものだと思っていますので、その観点からも本作とSwitchは親和性が高いと思います。ちょっと空いた時間にちょっと遊ぶというような遊び方でも、楽しんでもらえるのではないかと思います。

――最後に続報や発売を楽しみにしているプレーヤーに一言お願いいたします。

小高氏:ずっと、僕がコンシューマゲームのシナリオを書くことが「V3」以来できていなくて、アニメや実写ゲームはありましたが、コンシューマゲームとしては本作をずっと作り続けていました。いつ出せるか、いつ発表できるか。僕的にはかなり手応えがあるので、ずっと心待ちにしていて、やっと今回ありがたいことに発表できました。ユーザーさんの反応もとても良くて、嬉しかったです。

 まだまだ街中で何ができるのか、「謎迷宮」はどういったところなのかなどのゲーム性を明かしていません。また「ユーマ」や「死に神ちゃん」、「超探偵」たちのキャラクターもここからどんどん明かされていきます。

 本作は、唯一無二の謎解き体験が待っています。絵を見るまではわからないかもしれませんが、替えの効かないゲームというところがアピールポイントです。「ダンガンロンパ」を制作していた時から意識していますが、他では替えが効かない「ダンガンロンパ」の楽しさは「ダンガンロンパ」でしか楽しめないし、「レインコード」は「ダンガンロンパ」の代わりにはならない。そのゲームにはそのゲームだけの楽しさがあるというところを1番気を付けています。本作でしか味わえない、全く新しい感覚を体験してほしいと思います。

 この後ももっと面白い情報が出ますし、プレイしてもらったら期待以上に面白いと感じてもらえると思います。また想像以上に死に神ちゃんがかわいいので、プレイするときを待ちながら続報を細かくチェックしてください。本作はワールドワイドで展開していくので世界中で盛り上がれたらいいなと思います。

――ありがとうございました。