インタビュー
「常に世界一を意識している」Absolute JUPITERインタビュー
日本FPS界のトップランナーが今年の「VALORANT」シーンや愛用モニター「XL2546K」について語る
2020年12月2日 00:00
- 11月収録
Riot Gamesの5対5シューター「VALORANT」がリリースされてからというもの、日本のFPSシーンはかつてないほどの盛り上がりを見せている。今や多くのeスポーツチームが「VALORANT」部門を持ち、賞金付きの国内大会も頻繁に開催されるようになった。そして、この盛り上がりの一端を担っているのが、国内最強チームAbsolute JUPITERだ。
Absolute JUPITERは「CS:GO」の国内最強チームとして、長きにわたって日本FPS界のトップに君臨し続けたカリスマ的存在だ。そんな彼らが長年プレイした「CS:GO」をいち早く離れ「VALORANT」に移行したのは、国内シーンにとって衝撃だっただろう。しかしそのおかげもあり、国内FPSシーンは「打倒Absolute JUPITER」の目標のもと、ぐんぐんレベルが上がっているのだ。
今年の「VALORANT」競技シーンは、Absolute JUPITERにとって厳しいものだっただろう。国内では追われる立場となり、アジア大会では途端に挑戦者となる。しかしそんな重圧のかかる立場にあっても、彼らは国内シーンに寄り添い、そして毅然と戦い続ける。彼らは今のFPSシーンに対して何を想い、そして何を見据えて大会に臨んでいるのか。リリース直後に行ったインタビューを踏まえ、今回はLaz選手とcrow選手がインタビューに応じてくれた。
Absolute JUPITERから見ても、国内FPSシーンのレベルは着実に向上している
――ご無沙汰しています。前回のインタビューでの宣言通り、「VALORANT」競技シーンは一時Absolute JUPITERの連戦連勝でした。(※1)これはなにが勝因でしたか?
crow: 「CS:GO」で培った知識や経験は蓄えとしてありましたが、僕らは「CS:GO」からの移行を決めてから、「VALORANT」にオールインで打ち込む、と決めていました。
Laz: “オールインの姿勢”のおかげもあって、「VALORANT」移行後の練習は質・量ともにかなり向上しました。連勝できたのは、この練習のおかげでもあると思います。
※1……Absolute JUPITERは立ち上げから10月の「EDION Valorant Cup」まで、出場したBティア以上の大会を全て優勝していた。
――連勝していたときは、嬉しいと感じていましたか?それとも、当然だと感じていましたか?
Laz: 感覚的には当然という感じでした。ただ、他のチームの成長速度に驚きましたね。日本の「VALORANT」シーンは、個人技はもちろんチームワークや戦略性もどんどん上がってきています。
crow: 僕は安心感が一番大きかったですね。日本のシーンのレベルがどんどん上がってきていて、勝ち続けるのはとても大変でした。
――初めはAbsolute JUPITER一強の構図でしたが、10月に開催された「EDION VALORANT Cup」ではSCARZに敗戦しファンを驚かせました。あの敗戦の感想をいま一度聞かせて下さい。
crow: 当時は大会が続いていて、過密なスケジュールの中練習が満足にできなかったので、しょうがないかなと思っています。加えて、SCARZは僕たちの戦術への対策がしっかりできていました。
Laz: SCARZは最新メタをしっかり研究していて、各エージェントの使い方をしっかり把握していました。手強い相手でしたね。
――次にSCARZと対戦する際は、どのような対策を練って臨むつもりですか?
Laz: それは秘密です(笑)。
crow: ただ、相手がやりたいことをする前に、自分達のやりたいことを押しつけていこうと思っています。
――この敗戦から日本の「VALORANT」シーンのレベルの向上は感じましたか?
Laz: 敗戦前からレベルが上がってるのを感じていました。日本の競技シーンはランクも活発で、プレイヤースキルがどんどん上がっていると思います。これからは、より戦術的な部分に焦点をあてるともっとレベルが上がると思います。
crow: 僕もレベルが上がっているのを感じますね。「VALORANT」シーンでは国内大会が非常に多く開催されていて、これからもおのずと成長していけるのではないかと思います。
――国内シーンにおいて、SCARZの他にはどのチームを警戒していますか?
crow: Crazy RaccoonとREJECTですね。この2チームに限らないんですが、日本のチームは個人技のレベルが高く、それを活かしてくることが多い印象です。
Laz: 僕はDetonatioN GamingとREJECTを警戒しています。日本のチームはチームワークを合わせるのも他のアジア圏のチームと比べると得意な傾向があると思います。僕たち含めて、自分たちの強みをさらに伸ばしていきたいですね。
――「VALORANT」の国内での盛り上がりについては、どのように見ていますか?
Laz: 「VALORANT」シーンは、僕らが最初予想してたよりも盛り上っていてとても嬉しいです。
crow: 今国内FPSシーンはすごく盛り上がっていて、「CS:GO」時代から考えると天と地の差に感じますね。今後は選手単体だけではなく、「VALORANT」コミュニティ全体にフォーカスした番組などをしていただけると、さらにコミュニティの発展につながるのではないかと考えています。
あと一歩届かなかった宿敵Vision Strikers、Absolute JUPITERがアジア最強になるまでの課題とは
――次に、国際シーンについてお聞かせください。Absolute JUPITERの皆さんは、日頃どの程度海外シーンを研究していますか?
Laz: 海外シーンは普段からよくみていますね。特に大会で結果を残した戦術はチーム全員で共有するようにしています。
crow: 大会を中心に、NA・EUトップ層の試合は全て見ていると思います。
――日本と海外の「VALORANT」環境はどのように違いますか?
crow: 日本のチームはセットが丁寧な印象がありますね。海外だとセットを一応するんですが、雑に押し切ることも多い印象があります。
Laz: 恐らく日本のチームの多くはVision Strikersの戦術を参考にしているのだと思います。メタについては、NAとEUでもメタが違っていて、各地域でいろいろメタが形成されていると思います。
――Absolute JUPITERはこれまでに2度アジア大会に参戦されましたが、どれもまだ優勝を収めるに至っていません。これは何が原因だと分析していますか?
crow & Laz: Vision Strikersが強いからですね。 (※2)
※2……過去にAbsolute JUPITERが戦ったアジア大会『AfreecaTV Asia Showdown』、『A.W EXTREME MASTERS Asia Invitational』はどちらもVision Strikersが優勝している。
――Vision Strikersは前回のインタビューでライバルとして挙げられていましたね。『AfreecaTV Asia Showdown』で敗北した時は、どのような印象でしたか?
Laz: ただただ、勝ちたかったです。
crow: 「あーこれは強いなー」って思いましたね(笑)。ただ、自分達の課題点がいろいろ見つかって、いい経験になったと思います。
――『A.W EXTREME MASTERS ASIA Invitational』で改めて再戦した時、何か対策は練っていましたか?
Laz: Vision Strikersに勝つための練習もしていましたが、完成度が足りませんでした。その時点でやれるだけのことはやれたかと思います。
crow: 本当に勝ちたかった一戦でした。僕たちは勝てるレベルまで来てると思っていたんですが、取らなければいけないラウンドを落としてしまったり、なかなか勝ちきれませんでした。
――両チームの差はどこにあると考えていますか?
Laz: Vision Strikersの強みはハッキリ言って全部です。その中でも特に連携力と戦略性が頭一つ、いや二つくらい? 抜けているように感じます。
crow: 彼らはアドリブ力も非常に高いと感じています。その場で各個人で判断する力が強いですね。
――悔しい敗戦だったかと思いますが、“アジア最強になる”という目標に変わりはありませんか?
crow: はい。変わっていません。今まで足りていなかった戦術研究量を補填するために、最近XQQコーチが加入しました。今後は2コーチ体制でメタにすぐ対応できるので、今までの課題は解決されると思います。
Laz: Vision Strikersは世界レベルのチームだと思っています。自分たちがこれから日本の「VALORANT」シーンを更に盛り上げて、日本チーム全体がより競争的にプレイできる環境が整えば、自然と自分たちのレベルも上がっていきます。Absolute JUPITERが世界レベルのチームになれば、Vision Strikersとも戦えるようになると思っています。
――そして、世界一になるという最終的な目標も変わっていませんか?
Laz: 変わっていません。最終的な到達点はやはり世界一です。
練習も大会も両方頑張る、Absolute JUPITERの「オールインの姿勢」
――現在の練習環境についてお聞かせください。「CS:GO」時代からの変化などはありますか?
Laz: 現在は週6フルタイムで練習しています。メタにあわせて短期間で一気に仕上げる練習がメインですね。今はオンラインでの練習がほぼ100%です。
crow: 「CS:GO」時代よりも1日の練習時間を長めにとるようになりました。特にXQQが加入してから、反省会の質が高くなりました。今までとは違う観点からの指摘などがあってとてもありがたいです。
――リリース直後とは違い、ゲームにも慣れ、エージェント構成も固まってきたかと思いますが、現在の練習は何に重点を置いているのでしょうか?
Laz: 細かいチームワークなどの向上はもちろんのこと、メタへの対応に一番重点を置いてます。
crow: あとは、相手チームの特徴に合わせた対応も練習しますね。
――ファンの間では、大会が多いせいでAbsolute JUPITERは疲労が溜まっているのではないかという憶測も散見されますが、実のところはどうですか?
Laz: 疲れが溜まっているのは事実ですね。休日は1日丸々寝れてしまいます。ただ、それぐらい頑張りたいと思っているので、苦ではないですね。
crow: 大会続きで大変だった時期はありましたが、大会が多く開催されているのはありがたいことですし、練習も大会も両方頑張っていきたいです。
――エージェント構成も初期と大きく変わっている印象です。例えば初期はブリムストーンを使用していたbarce選手は今はオーメンを多く使っていますね。
crow: そうですね、オーメンがブリムストーンよりもスキルが強く、攻守において万能だからです。
――また、『EDION VALORANT Cup』でReita選手がレイナを、takej選手がジェットを使っているのが印象的でした。普段は逆のことが多い気がしますが、これにはどういう意図がありましたか?
Laz: takejは勢いよくエントリーができるので、それを活かせるジェットをピックしました。
――現状、チームのエージェント構成には納得できていますか?それとも改善の余地があると考えていますか?
Laz: 構成に関しては、メタによって変わるので固定というわけではないです。ただ、現時点では、その時々で最善を選べているかなとは思います。
crow: 今の構成は強いと思っていますが、メタの変化に応じて臨機応変に変更していきたいですね。
最新パッチでは攻めがより難しくなる?
――前回のインタビューでは「VALORANT」をバランス・ゲーム性共に優れたシューターと評されていました。これまでプレイしてきて、この評価に変化はありますか?
crow: 現時点でもすごくバランスは良いと思います。ただ結構な頻度で調整が入るので、バフ・ナーフがによるメタの移り変わりに慣れるのがまだ大変ですね(笑)。
Laz: 「VALORANT」はメタでチーム全体的の動きが変わるのゲームなので、チームワークが試されますね。ブリーチがバフされ、スカイが入ってきてさらにチームワークが重要になってくるのではないかと考えています。
――最新パッチ1.10の印象はいかがですか?
crow: サイファーやキルジョイが弱体化されると、攻め側が今まで以上に裏取りを警戒しなくてはならないため、攻めが難しくなっていくと思います。
Laz: サイファーのピック率は下がり、キルジョイが代わりに使われると思いますね。また、ブリーチのバフはちょっと違うかなと思いました。
――オペレーターの価格上昇は、Absolute JUPITERが得意とするオペレーター×2編成にどう影響しますか?
Laz: どこのチームでも2オペレーターは難しくなると思います。マネーが足りないので。
crow: 今後は、相手から拾って2オペレーター構成を行なうことはあるかもしれませんが、購入するのは1本だけですね。
――他に、エージェントや武器バランスへの意見などはありますか?
Laz: 基本的にはRiotさんにお任せです。ただ、ブリーチのスキルの値段を安くしたり、味方への当たり判定などを変更するといいんじゃないかと思います。それからバッキーとジャッジも強さと値段が比例していない感じがするので、そこの調整も期待しています。
crow: 僕もバッキー、ジャッジが値段以上に強いと思います。ショットガンは調整が難しいと思いますが(笑)。
――新マップの印象はいかがですか? また、今後マップが増えていくことに対してはどのように感じていますか?
Laz: 競技シーンとしては、7マップは欲しいと思っています。新マップは今までのものとかなりタイプが違うなと感じました。好き嫌いは分かれるかもしれませんね。
crow: 面白いマップだと感じました。高所を取れる場所がいくつもあり、他のマップとは戦い方が変わってくると思います。マップが増えていくのは嬉しいです。選択肢があった方が観戦していて面白いですしね。
――新エージェントのスカイの印象はいかがですか?また、何か今後の新エージェントに期待するものはありますか?
Laz: スカイはイニシエーターになると思います。味方のサポートに特化していて、チームの戦術の幅が広がって面白そうです。今後の新エージェントに期待することとしては、各ロールの選択肢が広がるようなエージェントの増やし方をして欲しいですね。どのエージェントにも強みがあって、どれを選ぶかチームによって変わるくらいに出来るのが個人的には理想です。
crow: スキルなども含めて、スカイは非常に強いエージェントではないかと思います。新エージェントに期待するものは、現存のエージェントと異なるスキルを持ったものが見てみたいですね。セージやヴァイパーなどの特徴的なエージェントです。
Absolute JUPITER愛用モニターであるBenQ ZOWIEの「XL」シリーズについて
――Absolute JUPITERは今年、BenQ ZOWIEのアンバサダーに就任されました。どのような活動を行なっているのですか?
Laz: 普段使用しているBenQ ZOWIEのモニターの良さを、配信などを通して様々な人に広げる活動を行なっています。BenQ ZOWIEは本当にオススメのメーカーなので、より沢山の方に知っていただけたら嬉しいですね。また「TOKYO GAME SHOW 2020」でBenQの新ブランド「MOBIUZ」への応援コメントを出させていただいたり、BenQ ZOWIEのモニター「XL2546S」をAbsolute JUPITERモデルとして発売したりもしています。
crow: 最新モデル「XL2546K」は発売前に提供もしていただき、みなさんが購入する際に質問があった場合などはしっかりと使用感などを答えられるようしています。
――現在使用しているモニターはどのモデルですか?
crow & Laz: 「XL2546K」ですね。
――XL254xシリーズの最新モデルである「XL2546K」の使用感を教えて下さい。
crow: まずスタンドがとてもコンパクトで、マウスパッドの位置が調整しやすいです。それから、モニターの設定をクラウド保存することができるのが便利ですね。オフライン大会などに出場する際も、何も持っていくことなく自分の普段通りの設定が可能なので、とてもありがたいですね。
Laz: スタンドが小さく、パネルが自分好みの発色になっているのも、とても気に入ってます。ボタンも扱いやすくなり、設定の微調整が楽ですね。「XL2546K」はBenQ ZOWIE史上最高の製品だと思います。
――スタンドが小さくなったことでマウスやキーボードの位置は変わりましたか?
crow: はい、少しだけ真ん中に寄せるようになりました。
Laz: 僕は変わっていないですね。それでも、キーボードやマウスを置ける範囲が広がったのはとてもありがたいです。
――「XL2546K」は高さや角度調整も従来より柔軟になったと聞いています。
crow: 角度や高さの目盛りは他のBenQ ZOWIEのモニターにも搭載されていてとても便利だったんですが、「XL2546K」はさらに細かい角度調整などもできるようになりましたね。日によってモニター位置が変わるプレイヤーもいるので、とてもありがたい機能だと思います。
――モニターセッティングをシェアできる「XL Setting to Share」機能はどのように活用していますか?
Laz: はい、とても便利で活用しています。特に突出した設定にはしていませんが、このような機能があるのはプレイヤー想いですね。
――「XL2546K」は240Hzのリフレッシュレート、0.5msの応答速度、これは業界最速水準です。これに慣れてしまうと、他のモニターでプレイするのは難しくなるのではないですか?
Laz: 性能の低いモニターだと正直やりにくいですね。「VALORANT」の大会モニターは全て「XL2546K」に統一されるとめちゃくちゃ嬉しいです。
crow: 大会などでは240Hzのモニターがあれば大丈夫なんですが、「XL2546K」以外だとやりにくい部分はありますね。個人的には色合いが一番気になるところなので、色の調整が細かくできる「XL2546K」が「VALORANT」のオフィシャルモニターになってほしいですね(笑)。
――今後「XL」シリーズに望むことはありますか?
Laz: 現状「XL」シリーズには非常に満足しています。今後「XL2546K」のスイッチのデータやパネルの設定が、どのメーカーのモニターでも使えるようになるとより嬉しいです。
crow: 「XL」シリーズはかなり洗練されていて、製品には大変満足しています。技術の進歩もあり、開発が大変かとは思いますが、次もこれが使いたい! と思うような製品を待っています!
Absolute JUPITERの目標は「世界一になること」
――最後に、「CS:GO」から「VALORANT」への移行を表明してからまだ1年足らずですが、現時点でこの決断についてどのような感想を持っていますか?
crow: 「VALORANT」に移行して本当によかったと思います。自分達を応援してくれるファンや、配信を見てくれる人などもとても増えました。「CS:GO」ではありえなかった世界にいるようで、最高ですね。
Laz: 僕も移行してよかったと思っています。これからも「VALORANT」のコミュニティ・競技シーンともに盛り上げていきたいです。
――今後の大会に向けての姿勢、そして目標を教えてください。
Laz: これからも最高のパフォーマンスを発揮できる環境を整えて行きたいです。目標は出場大会全勝です。
――大会の他にも取り組んでいきたいことがあれば教えてください。
crow: 配信、動画投稿はもちろん、幅広くメディア出演を行なっていきたいです。
Laz: プロとしてやるべきことは全てやっていきたいです。メディア出演や配信、YouTube投稿なども全力でやっていきたいです。
――改めて、チームの最終的な目標を教えてください。
crow & Laz: 世界一になることです。
――BenQ ZOWIEアンバサダーとして、一言お願いします。
Laz: いつもBenQ ZOWIEのモニターのおかげで安定したプレイができ、結果が出ているのもそのお陰です。BenQ ZOWIEのモニターは僕が人生で出会った中で一番のモニターです。自信を持って人に勧めることができる素晴らしい製品ばかりなので、これからも知らない人にはもちろん、知っている人にはより深く知っていただけるよう広めていきたいです。
crow: ゲームを本格的にやりはじめてからの6~7年間、ずっとBenQ ZOWIEのモニターを使っています。オフライン大会の際はBenQ ZOWIEのモニターかどうかを一番に調べますからね(笑)。これからも一生愛用してきます!
(C)2020 Riot Games,Inc.