インタビュー
「VALORANT」ZETA XQQコーチインタビュー「プレイオフ進出はMasters TOKYOに行くための最低条件。ここからしっかり勝ちにいきたい」【VCT Pacific】
2023年5月19日 16:35
- 【VCT Pacific プレイオフ】
- 5月19日17時〜 開催予定
FPS「VALORANT」のアジア地域大会「VCT Pacific」に3月末から参戦中のZETA DIVISION。5月14日にレギュラーシーズン最終戦を迎え、見事勝利を収めてプレイオフ進出に成功した。初戦は本日5月19日17時からとなる。
現地取材を行なっている筆者は、プレイオフを目前に控えたXQQコーチに会いにZETAの韓国ゲーミングハウスを訪れた。選手ごとの細かい話やチームの体制、プライベートの話まで、試合後のインタビューではなかなか聞けないようなロングインタビューとなっているので、お楽しみいただければと思う。
XQQコーチから見た各選手の印象は?
――VCT Pacificレギュラーシーズンお疲れさまでした。昨日SNSでXQQコーチのお散歩写真がアップされているのを拝見しましたが、ゆっくり休めましたか。
XQQコーチ:そうですね。リーグ期間中は散歩などできるだけ身体を動かすようにしてたんですけど、最近休みの間のスパンが短かったのもあってあまり外に出られていなくて。前回まともに散歩したのも、桜が咲いていたタイミングだったんです(苦笑)。
――ソウルで桜の季節というと、だいたい4月中旬ぐらいまでですね。
XQQコーチ:本当は昨日水族館に行く予定だったんですけど、コーチのJUNiORさんを誘っていたら、最終入場時間がオーバーしちゃって、行ったら閉まってたっていう(苦笑)。それで公園に行きました。前回の花見シーズンは人でごった返していたので、今回は空いててちょうどいい感じでした。
――ゆっくりできたようでよかったです。ではVCT Pacificの話になりますが、レギュラーシーズン最終戦でプレイオフ進出を決めて一旦区切りのいい時期だと思うので、まずはシーズン振り返っての感想を簡単にお願いします。
XQQコーチ:自分たち的にはLOCK//IN以前からある程度準備していて、最終的なゴールがMasters TOKYOに出場するということでやってきていたんです。でもLOCK//INの段階で変える必要のある部分が出てきて、リーグ開幕前に変えたので序盤はかなり大変でしたね。施設的な問題や練習環境に加え、日本から韓国に渡航して海外で生活するという意味でも大変な時期だったと思います。
ただ、試合数をこなしていったり練習を重ねていったりするうちに自分たちのやりたい形になれてきてはいたので、時間かかってもいいからできるだけ修正していこうということで、勝てる試合もたくさん落としたんですけど、それなりにいい形で終われたかなと思います。
――ではここからは、XQQコーチから見てVCT Pacificを通じてひとりひとりの選手たちにどんな成長や変化があったかっていうのを聞かせていただけますか。
XQQコーチ:じゃあ、役割があまり変わっていない選手から。そこまで大きく役割が変わっていないのはSugarZ3roですね。一旦IGL(=In Game Leaderの略。ゲーム中のリーダーとして味方への指示出しなどを担当する役割)を試していましたが、IGLをやらない役割に戻ってコンスタントにいいプレイを出しています。最近さらに安定感が増してきているのは感じますね。
もともと彼はすごく勉強するタイプで他のコントローラーの動画を見たりとか、最近はあまりヴァイパーをやる機会はないですけど、nAts選手の定点とかプレイが全部わかるぐらい、喋り方を一生マネしてくるぐらい、集中して勉強したら吸収できるタイプなので、安定性はそのあたりからきてるのかなと思います。天才肌ってタイプではなくて、考えて理論づけしてやっているので、参考にしやすいプレイヤーだとは思います。こんな感じで話していけばいいですか。
――こんな感じで引き続きお願いします!
XQQコーチ:じゃあ次はDepかな。今まではかなりフレックス寄りでヴァイパーをやったり、ネオンを始めとするデュエリスト全般をやったり、イニシエーター全般をやったりと色んなピックをこなしてきたんですけど、Derke選手とかaspas選手とか世界的なデュエリストはわりと固定されていることが多いんです。独特の感性や勝負感は同じエージェントでやり続けないと出なかったりするので、Depもできるだけ固定化させるようにしました。それこそ今、Pacificリーグのなかで1位といっても過言ではないようなパフォーマンスを出せていると思います。もともとめちゃくちゃ喋るしアイデアマンなので、状況判断能力がすごく高くて直近の試合でもとっさのコールとかすごく良かったですね。
――へぇ。あまり喋らない寡黙なイメージがあったのでちょっと意外です。
XQQコーチ:インゲームではそんな感じですね。
XQQコーチ:続いて、TENNNかな。彼もデュエリスト半分他のエージェント半分ぐらいでイニシエーターをやっていたところが、完全にセンチネル寄りの立ち位置に固定してます。彼は試合中に敵が何をやっているかとか、どういうものがささりそうかっていう試合中盤のミッドコールが元々上手いタイプで、キルジョイになってからは端っこでひとりで戦うことが多いんですけど、マップを見られる能力も高いのでセンチネルに固定してからは撃ち合い集中半分、新しくセンチネルの動きに慣れること半分でかなり頑張ってるなとは思います。ヴァイパーはまだまだ練習中なのですが、やってて楽しそうだしラークの才能が元々あるのは助かっているのかなと思います。あとは本当に撃ち合いがピカイチに強いので、今のVALORANTだとセンチネルのポジションに撃ち合いの強い選手がいるのはめちゃくちゃ大事ですね。
――そうなんですね。勉強になります!
XQQコーチ:続いてcrowとLazは同じぐらい変わっているんですが……。crowはイニシエーターを続けているので、外側から見るとポジションはそこまで変わっていないとは思うんですけど、イニシエーターってサブとメインがあって、イニシエーターをふたり出さなきゃいけないときとか、ひとりしか出せないときとかが構成によって増減するんですよ。今メインのほうにLazが入っているので、crowはマップに合わせて色々なエージェントをやる必要があって、Chronicle選手とかSaadhak選手みたいないわゆるフレックスと言われるロールをやっています。だから、前よりは自分も戦いながら味方もサポートするという感じになっていますね。
――確かに今回観に行った試合でもcrow選手がかなり撃ち合いをしていて、クラッチも出ていましたよね。
XQQコーチ:戦う順番がデュエリストの次ぐらいの感じなので、一番撃ち合いが大事でなおかつ微妙に不利な撃ち合いをずっとやる必要があって。例えばDepがやられてカバーに入ったら、敵視点から認知された状態での撃ち合いをしなければならないので、ほかのロールに比べるとシビアなんです。撃ち合いの重要度が前より上がっていて調整がかなり大変だったと思うので、今回特に一番大変だったんじゃないかなと思います。
――なるほど。
XQQコーチ:最後Laz。今までうちのチームはほぼ全員でコールをしていたんですけど、やっぱりLazのコールは多めでした。マクロの視点で理解度がすごく高い選手なのでほぼIGLみたいなことをしてたんですけど、やっぱり明確に誰かがIGLをする必要があるということでSugarZ3roで試したところ、このまま続けていくとパフォーマンスを潰すことになっちゃいそうだなというのもあって、Lazがやってくれることになったんです。
ロール的にもIGLがしやすいような、情報がバランス良く取れる位置に入って、組み立てに重きを置いてプレイしてくれるようになったのが一番大きいかなと思います。ただ、自分のプレイへの要求の水準が高い選手なので、IGLをやるなら勝てるコールじゃないとダメっていうのもあってシーズン序盤はめちゃくちゃ大変そうでしたね。
――最後Lazって言われちゃったんですけど、barce選手のことも気になっています。彼はどうですか。
XQQコーチ:barceの場合はちょっと難しくて。元々うちのチームって明るいタイプの人間が少ないからbarceがいないと雰囲気が違うなっていうのはあるので、いてくれるとすごい助かりますね。ただちょっとサブの運用に関しては、まだまだどうしたらいいんだろうなというところはあります。
――これからの課題って感じなんですね。貴重なお話をありがとうございます!
韓国での生活はなれた? XQQコーチの「Overwatch」時代の話も
――ではここからは、韓国での生活について伺っていきたいと思います。前回のインタビューでcrow選手は韓国生活を満喫しているのに対して、Laz選手は体調に問題が出ているというお話もありました。XQQコーチは個人的に、韓国生活いかがですか。
XQQコーチ:可もなく不可もなくって感じですね。めっちゃ帰りたいなってわけでもないですし、ここにずっと居たいなって感じでもなくて、いつもの海外滞在中に近いかなという感じです。ただ、やっぱり街並みとか散策したいんですけど時間がなくて、そこはちょっともったいないなと思っています。
――お忙しそうですからね。そもそも韓国では、どういう体制でチーム運営を行っているのでしょうか。日本と連携をとってやっている感じですか。
XQQコーチ:コーチ陣は僕とJUNiORさんが韓国で、日本にいるアナリストのgya9さんとほぼ3人でやっている感じですね。でも日本にいたときからオンラインなので、今までとそこまで変わらないです。LOCK//INのときはブラジルで真逆だったので、gya9さんには昼夜逆転した生活を送ってもらわなきゃいけなかったんですけど、韓国は時差もないので楽ですね。実は今回gya9さんも韓国へという話もあったんですけど、体質的な面などを考慮して最終的に韓国には来ない方がいいんじゃないかということになりました。
――そうだったんですね。あとは、できればスタッフの方々も軽く紹介していただけないでしょうか。
XQQコーチ:マネージャー3名とビデオディレクター1名ですね。と言っても普段は制作などをやっているスタッフが1名、突如マネージャーとして食事係に駆り出されているんですが。彼らが買い出しとか時間のかかるものは全部やってくれていて、ほぼ100%試合に集中できるような環境をつくり出してくれているんです。選手たちの要求に応えるべく苦労していると思いますよ……無理難題を要求してくるので。
――無理難題、例えばどんな感じですか。
XQQコーチ:例えば、何だろう……。(マネージャーさんにヘルプ)
マネージャー:めちゃくちゃハードなものはないんですけど、全員が細かいお願いをしてくる感じですね。練習中に誰かが「コレ買ってきてほしい」って頼んできて、買って戻ってきたら他の選手が「アレ買ってきてほしい」とか(笑)。
XQQコーチ:このチームをみんながわかる例えで言うなら、「飲み会で別々に飲み物を頼む人間」しかいないです(笑)。
――大変ですね(苦笑)。いつもお疲れさまです。ところで全然違う話をするんですが、XQQコーチを最初に取材させていただいたときって、「Overwatch」(以下OW)の現役時代に台湾で開かれたアジア地域リーグに参加していたときのゲーミングハウスにお邪魔してっていう感じだったじゃないですか。何だか今とすごく状況が似ているなと思ったんですけど、当時の経験が今に生かされていたりするんでしょうか。
XQQコーチ:いやぁ……、さすがにもう5〜6年経ってるので(苦笑)。当時は、海外でリーグに参加してゲーミングハウスで練習してっていうのの全部が初めてで、もう楽しかった記憶しかないんですよ、負けた以外は。ただ、当時思ったのは、リーグが始まったときのチームの状態が低ければリーグ中に進化するのは難しいんだろうなということでした。でも今回のVCT Pacificで、試合を重ねて成長していくっていうのもちゃんとやればできるんだなという考えに変わったっていうのがありましたね。
――じゃあ、もう経験というよりはガラッと変わって新しい取り組みという感じだったんですね。
XQQコーチ:あ、でも昔からひとりでふらつくのが結構好きだったのは変わってないですね。当時はローミングやWiFiもない状態で自分で電車に乗って市場を歩いたりしていて、今となってはだいぶすごいなとは思いますけど(笑)。あのときがきっかけで、個人的に家族で台湾旅行へ行くぐらいには台湾好きになりました。
――へぇ、そうなんですね。となると海外でリーグを戦うことに対しては良いイメージがあって、今回も楽しみにしていたという感じだったんでしょうか。
XQQコーチ:いや、今はプレッシャーが全然違いますからね。「OW」は優勝候補でもなかったし、日本自体が注目されることもなかったので。視聴者数もそんなに多くなかったですし、今とは全然違うなっていう感じですね。今はプレッシャーもありますけどファンの方も増えたので、そのへん上手く相殺してやれたらなと思っています。
――ファンの方が増えたという話で思い出しましたけど、試合が終わったあと1階のロビーでファンサービスを行なっているのを見ました。自主的にやっていると聞いて驚いたんですけど、まあ、皆さん待っていてくれるのでそのまま帰すわけにもいかないということなのかもしれませんが。
XQQコーチ:ここ2年ぐらいはコロナ禍もあってイベントや大会でファンとの交流がほぼなかったので、僕らとしても応援してくれたりわざわざイベントに足を運んでくれたりしているのに見返りも何もなしで申し訳ないなっていうのは話していたんです。韓国に行く前に壮行会「Z-SITE」で登壇してトークなどはしたんですけど、サイン書いたり写真撮ったりはしていなかったので、韓国まで来てくれたファンを歓迎するならこれが良いだろうな、と。
――いいですね。では最後に、準備期間は短いですがプレイオフに向けて意気込みをお聞かせいただけますか。
XQQコーチ:とりあえずプレイオフ進出というのはMasters TOKYOに行くための最低条件を満たしただけであり、ここから最低限2連勝する必要があります。再戦となりつつリベンジする機会もあるので、しっかり勝ちに行きたいですね。ただ、プレイオフはレギュラーシーズンと違って例えば6位抜けチームがローワーから一気に勝ち進んだりとか独特の雰囲気があるじゃないですか。だから本当に気を引き締めて、自分たちがそれになれればいいですね。
――本日はありがとうございました!