インタビュー
体験会直前!「MHW:アイスボーン」 カプコン辻本良三P、藤岡要D、市原大輔Dインタビュー
2019年8月1日 00:00
- 【PS4版】
- 9月6日 発売予定
- 価格:
- 4,444円(税別、DL版)
- ※プレイには別途「モンスターハンター:ワールド」ゲーム本編が必要
- 6,999円(税別、マスターエディション)
- ※ゲーム本編と超大型拡張コンテンツのセット
- 【PC版】
- 2020年1月 発売予定
- 価格:未定
9月6日に発売が迫りつつあるプレイステーション 4/PC用ハンティングアクション「モンスターハンター:ワールド」(以下、MHW)の超大型拡張コンテンツ「モンスターハンターワールド:アイスボーン」(以下、アイスボーン)。弊誌ではプレイレビューとして、「アイスボーン」で新たに登場するモンスターの狩猟の様子を紹介しているが、今回は「アイスボーン」開発陣へのインタビューをお届けしたい。
インタビューに応えてくれたのは、「MHW」プロデューサーの辻本良三氏、エグゼクティブディレクター/アートディレクターの藤岡要氏、ディレクターの市原大輔氏。以前に行なわれたベータテストの反響や、前線拠点セリエナや集会エリアのコンセプトについて伺うことができた。
ベータテストは評判上々。ガンランスは再調整へ
――6月に実施された「アイスボーン」のベータテストですが、反響はいかがでしたか?
辻本氏:全体的には好評をいただいたと思います。特にモンスターへの反応が良かったですね。ティガレックスは、以前にシリーズ作をプレイしていた人からは懐かしいという声がありましたが、初めての人は動きに慣れていないので苦労されていた方もいました。2回目のベータテストではナルガクルガが登場しましたが、よりハイクオリティになったことでかなり好評でした。
藤岡氏:新アクションのクラッチクローについては最初、しっかり使いこなすのが少し難しいのかなという印象があったのですが、ベータテスト1回目の3日目や、ベータテスト2回目になってくるとかなり使いこなしている人が出始めていて。いい意味で狙いを超えてきてくれたと思います。
――ランスであればガードからのカウンターでクラッチクローが発動するなど、武器ごとのアクションとの組み合わせも印象的でした。
市原氏:各武器の個性や、立ち回り方からクラッチクローが派生するように意識して入れています。各武器の新アクションという点では、さっそく使いこなせている人が多くて良かったと思います。
藤岡氏:全体的には良かったのですが、ただガンランスについては、新アクションの意図が伝わりにくかったと感じるところがありました。あえて玄人好みに調整をして、しっかりと使いこなせばちゃんと火力が出るようにはなっていたのですが、その意図と、試しで触れてみた時に受ける印象に誤差があるのかなと思いました。
市原氏:他の武器種は気持ちよく使われている一方、ガンランスだけは狙い通りではありませんでした。今は使いづらさだったり、数値的な見返りだったりといった部分の見直しに取り組んでいるところです。
辻本氏:ガンランスの調整は8月2日からの体験会では反映される予定なので、ぜひ試してみてください。
――他にベータテストで評判だった点や調整する点はありますか。
藤岡氏:細かいところでは、カメラ速度を変更したり、モンスターを透過してプレーヤーの影を見せたりなどは、大きくは言ってなかったのですがプレーヤーの方に気づいていただけて、やって良かったなと思います。
市原氏:調整も本当に細かいところになるのですが、ナルガクルガの尻尾がその1つです。今回、あえて普段の時から尻尾の先がボワッと広がった状態にしていたのですが、「生態的に変ではないか」という指摘をいただいて。なので、普段のナルガは過去作のようにシュッとした尻尾にして、狩りが始まったらボワッとなる感じにしました。
藤岡氏:尻尾については、閉じているか広がっているかでナルガクルガの状態をプレーヤーの方に知ってもらうという意味もあるのですが、よく見ていたらずっと広がっているなと。なので調整というほどのことでもないのですが、直しているところの1つではあります。
ベータテスト全体としては、イメージ通りのものが素直に伝わっていると思います。多くの部分は現状を維持しながら、製品版に向けて精度を高められればと思います。
コンパクト化で利便性を増した「前線拠点セリエナ」
――前線拠点セリエナと集会エリアを作る際のコンセプトを教えてください。
藤岡氏:前線拠点セリエナは、「渡りの凍て地」を調査するための場所です。「渡りの凍て地」は1期団ですら初めて見る場所ですから、まずは調査団の精鋭を送り込んで、そこから深く調査しよう、というような位置づけです。
なので、いきなり大きな拠点というよりは最低限の規模感で構築されている場所、というイメージです。それは世界観的にも合っていますし、ユーザビリティ向上の意味もあります。この1年でみなさんが何をプレイサイクルのポイントに置いているかがわかってきたので、エリアをギュッとコンパクトにして利便性を上げています。
加工屋周りもなんとかしてシームレスにできないかと取り組んで、触り心地的にはストレスなく行ったり来たりできるようになりました。
――一瞬暗転しますが、ロードなしでスッと出入りできるような感じにはなりましたよね。
藤岡氏:そうです。そういう使いやすさは意識して作れました。我々としてはいい形になったのではないかと思っています。
――集会エリアで印象的だったのは、アイルーを撫でられる「足湯」です。かなりかわいい要素ですが、なぜ入れたのでしょうか。
藤岡氏:オトモはサポート役としてずっと脇にいますが、触れ合う瞬間はそんなにないんですね。あってもたまにクエストクリアした時に触れ合うくらいです。色々お気に入りの装備を着させても、触れ合う機会がないなと思っていて。
集会エリアはワイワイ楽しんでもらう社交的な場にもしたかったので、ゲーム的な意味はあまりないけど、色々なことができるというようにしたかったんですね。その中の1つに足湯があって、せっかくならオトモとイチャイチャできるようにしたいなと(笑)。それでデザイナーに頼んだらやりましょうとなって。
――あんなにアイルーの顔を正面でじっくり見ることはないかも知れないですね。
藤岡氏:そうですね。大写しになりますし、とにかくイチャイチャできます。
市原氏:アイルー、意外とデカイんですよね(笑)。
藤岡氏:そうそう、抱いてみるとわかりますよね。そうやって触れ合う瞬間があってもいいかなと。
――それと食事のビーフシチューの表現も力が入っていますよね。
藤岡氏:時間をかけました。何回もリテイク出して(笑)。ちょっとずつ進めて、なんとか絵になったかなと。
「モンスターハンター」では食事は必ずするものです。ずっと付き合っていくものなら、おいしそうな方がいいだろうと。見るだけでテンションが上がったり、ちょっとお腹空いたなと思うくらいのものをちゃんとやりたいというのが「MHW」の頃からずっとあって。
「アイスボーン」では前線拠点セリエナという場所に来て、料理長はお婆ちゃんアイルーになります。お婆ちゃんが作るもので、それでいてハンターが食べて力が出そうなものがないかなと考えて、ビーフシチューに決めました。
山盛りのお肉が煮てあって、トロトロにしようとか、最後はクリームソースかけようとか、色々アイデアを出し合って、最後はおいしそうなものができたなと思います。
――最後クリームソースをササッとかけるところがオシャレですよね。
藤岡氏:お婆ちゃんならではの気遣いを感じられると思います(笑)。
暖かい地下を作り生態系を意識した「渡りの凍て地」
――「渡りの凍て地」のコンセプトを改めて教えてください。
市原氏:新しく調査団が踏み入るフィールドなので、進行に合わせて徐々に開放していく場所です。「渡りの凍て地」にも、色々な生物が登場します。それぞれの生物が生存できる環境はどんなものかを考えていきました。
たとえば地下は暖かくて、そこで生活する生物がいます。そうした生物は一時的に外に出ることはあっても、巡回の中心になるのは地下だったりとか、逆に雪の深い場所で生息できる生き物はそちらが中心になったりとか。彼らが鉢合わせたら、縄張り争いが始まるような感じです。
また、「モンスターハンター」はマップをある程度頭に入れて狩りをするようなところもあるので、各エリアごとの個性付けも意識しています。
藤岡氏:雪景色や氷山だけだと、生き物が繁殖しそうなイメージがあまりないんです。それだと生態系が生まれにくいなと。生き物は暖かい場所で繁殖するものなので、だったら地下を作りましょうと。でも地下も1点で繋がっているだけじゃなくて、寒い上層のエリアと地下のエリアが重なっていて、基本的には行ったり来たりしやすいようにしようと。そうしたらモンスターもプレーヤーも行き来しやすくなるので、そこを意識してデザインしました。
――地下の方が、様々な生物を利用しながら狩りができる印象です。
藤岡氏:地下は生物感があるというか。微生物から植物から、色々なものが繁殖する場所です。ある場所では、光るツララみたいな細いものがバーッと連なっているのですが、これが実は虫の卵だったりします。そういうネタもあるんです。
デザイナーが「こういうのいるんですよ」ってニコニコしながら教えてくれました。それを聞いてちょっとぞわっとしましたが、見た目が綺麗なのでOKにしました(笑)。
辻本氏、藤岡氏、市原氏の「アイスボーン」お気に入りモンスターは?
――それぞれ、「アイスボーン」で好きなモンスターは何でしょうか。
藤岡氏:氷の表現はとてもやりたかったので、イヴェルカーナは印象的ですね。氷柱を作り上げるような今までにない攻撃の表現もできましたし、以前から追求したかった、繊細なデザインの古龍という点でもそうです。他の古龍とも違う、いいデザインになったと思います。
それとベリオロスです。個人的には、「モンスターハンター3(トライ)G」に苦労した思い出があって。というのも「3G」はハードが初めてニンテンドー3DSになったんですね。「3」をとにかく移植しようというタイトルでしたが、「モンスターハンター2(dos)」の時に色々後悔したことがあったので、「3(トライ)」ではチームもゲームデザインも立て直したかったんです。その中で作ったベリオロスはデザインも気に入っていますし、「アイスボーン」で復活してくれたことは感慨深いですね。
辻本氏:1番で言うとまだ出ていないんですが(笑)。出てる中ではナルガクルガですね。「モンスターハンターポータブル 2nd G」のモンスターです。日本で一気に「モンハン」シリーズが伸びたタイトルだったんですが、製作期間がとにかく短くて。総出で取り掛かって10カ月くらいだったかな。このナルガクルガがハイクオリティで復活してくれたということで、今出ている中では1番です。
市原氏:僕はウルグです。「MHW」って寒冷地が今までなかったので、鱗のモンスターが多いんです。でもウルグは、毛が生えてモコモコなんですよ。見た目がとてもかわいいんですが、実際会うとめちゃくちゃやっかい(笑)。そのギャップでまず心を掴まれて。それから指笛を手に入れて、ライドができるようになった時は、その従順さでもう1回心を掴まれて(笑)。「めっちゃかわいいやん」ってなる。
独特の生態もあって、狼みたいな習性があって、ハンターのあとをずっと付け狙って、自分たちの仲間がいるテリトリーに入ると一気に襲いかかってきます。その辺りも生物としてしっかり描かれているので、そういうのも含めて好きですね。小型モンスターってなかなか注目されませんが、振り返ると意外にすごいなと思ったりします。
指笛を吹いた時ですが、1回目のモーションと2回目以降のモーションが微妙に違うんです。1回目の時はしっかり撫でて「さあ行こうか」みたいのが入るんですが、その撫でている時が「かわいいな、愛らしいなお前は」と思うんですよね。
――発売日周りで仕掛けていくものなどはありますでしょうか。
辻本氏:発売前と発売後にイベントを予定していますが、まだ企画中の段階なので、具体的には後日お伝えできたらと思います。
また「アイスボーン」についてですが、「MHW」から変更や調整しているものでまだお伝えしきれていない部分が細かくあります。今の最終調整が終わったら、改めてみなさんにお伝えする機会を発売までに設けたいと思っています。先日配信した番組「デベロッパーズダイアリー Vol.1」のような形を想定しています。少しお待たせしますが、よろしくお願いします。
――ありがとうございました。
※ゲーム画像・映像は開発中のものです。
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