インタビュー
「サイバーパンク2077」クエストデザイナーPatrick Mills氏インタビュー
「現代はサイバーパンクそのもの。そんな時代にこのゲームを出すことに意味がある」
2018年8月26日 14:37
E3に続いてGamescomでも話題を独占していた「サイバーパンク2077」。なんだかんだいってやはりこの業界は、意欲的な新規IPを常に待ち望んでいるということがわかる。「サイバーパンク2077」Gamescom2018レポートでも書いたが、このゲームがいつ完成するのかはまったくよくわからない。ただ、デモを通じて待つ価値のあるタイトルであることは確認できた。
本稿ではデモの後に実施できたクリエイターインタビューの模様をお届けしたい。インタビューに応じてくれたのは、「サイバーパンク2077」でクエストデザイナーを務めるPatrick Mills氏。開発元のCD PROJEKT REDの本社があるポーランドワルシャワで勤務し、膨大な数の開発メンバーのひとりとして日夜新たなクエストを生み出しているという。
――「サイバーパンク2077」とはどのようなゲームなのか?
Patrick Mills氏:「サイバーパンク2077」は、1989年にリリースされたテーブルトークRPG「サイバーパンク2.0.2.0.」をベースにしたオープンワールドアクションRPGだ。
――「サイバーパンク2077」というタイトルの由来は?
Mills氏:元になったTRPG「サイバーパンク2.0.2.0.」から取られているのはもちろんで、これに関してはCD PROJEKTとして正式にライセンスを獲得している。これはポーランドではとてもポピュラーなゲームだから、“Cyberpunk”という世界観を選んだ。2077は2020と似た感じで語感が良い。世界観的にも2020よりは後だろうということで2077とした。
――このゲームに登場するキャラクターたちは人間を改造したサイボーグなのか? それとも人間を模したロボット、すなわちアンドロイドなのか?
Mills氏:どちらかというと、ロボットではなくてサイボーグに近い。サイバネティクス技術を用いて、義手や義眼などのサイバーウェアを身体に導入している人々だ。ただ、その程度は様々で、ほとんどが生身の状態のものもいれば、ほとんど機械といっていいものもいる。完全なロボットの住民はいないが、AIという概念はあるのがこのゲームの世界観だ。
――デモでは性別を選ぶことができたが、性別によってストーリーは変わるのか?
Mills氏:現時点で言えるのは、基本的なストーリーは同じだが、ロマンスの要素に影響が出てくるということ。キャラによって性的な嗜好も違うし、NPCにも好みがあるので、最初に選んだ性別によって恋愛要素の展開が変わってくることはあるだろう。
――デモを見ていて一番驚いたのは、街に大量の人びとが描かれていることだ。これはどうやって処理をしているのか?
Mills氏:私自身はクエストデザイナーなので、そこまで技術的に詳しい説明はできないが、最新のテクノロジーを使って群衆を処理している。もともと我々は、人びとが密集した街を描く、ということそのものを目標の一つとしてゲームを開発している。現在はまだ開発段階なので、街の人々に関してはこれからもっともっと凄いモノが見せられると思うよ(笑)。
――このゲームが、「ウィッチャー」シリーズと大きな違うのは、1人称視点を採用していることだと思うが、採用した理由は?
Mills氏:たくさんの理由があるが、1つはたくさんの狭い路地、ごちゃごちゃしたインテリアを特徴にしたこのナイトシティを歩き回る際に、その雰囲気を最大限に味わうためには1人称視点が最適だと考えたからだ。2つ目は、街が縦に長く、垂直にそびえたつビルがたくさんある中で、見上げる操作がし易いという点でも1人称視点が良いと考えた。
――モチーフにした街は?
Mills氏:ゲームの舞台になるナイトシティは、北カリフォルニア州という架空の州にある設定。実際のカリフォルニア州、ロサンゼルスやサンフランシスコなどを参考にした上、そこに世界中の都市の要素を取り込んで、インターナショナルな雰囲気を出している。
――世界の都市でいえば香港に一番近くて、現代の九龍城のような雰囲気だと感じた。
Mills氏:香港の影響がどこまであるか明確にはわからないが、「サイバーパンク2077」では開発チームとローカライズチームが密接に連携をとるようにしている。参考にした世界中の都市の要素について、ローカライズチームと連携して、「こういう言葉選びや雰囲気が適切」というアドバイスを常に貰うようにしている。
――そして「ブレードランナー」の影響も感じられた。
Mills氏:確実に影響は受けていると思う。ただ、それだけではなく「攻殻機動隊」、「AKIRA」、その他数多くのSF映画の影響も受けている。
――デモの序盤と終盤では激しいバトルシーンがあったが、バトルシステムが「ウィッチャー」シリーズとはまったく異なる純粋なシューティングアクションになっていたが、このノウハウはどのように培ったのか?
Mills氏:そのためにスタジオに新しい人材を取り入れるようにしている。例えばシューティングゲームを作ってきたノウハウのある人材を雇うことによって、スタジオの体制を強化して、新しいことに挑戦している。
――このゲームを通じて伝えたいことは?
Mills氏:かつて1980年代から90年代にサイバーパンクがブームになって、落ち着いて、また最近盛り返してきている。この時代にこのゲームを出すということが重要だと思っている。というのは、今の世の中が、まさにサイバーパンクだと思うからだ。企業が強い力を持ち、テクノロジーが発展していて、テクノロジーと人が共生している。これはサイバーパンクそのものだ。それをやりすぎなぐらい強調したのがこのゲームだ。
――CD PROJEKT REDの代表作と言えば「ウィッチャー」シリーズだが、最大の違いは何だと思うか?
Mills氏:「ウィッチャー」にはゲラルトという主人公がいて、ベースとなる原作があって、長い歴史があって、キャラクターとしてのゲラルトが何をして何をしないかは明確に決まっていた。しかし、「サイバーパンク2077」では主人公があなた自身だ。これは選べる選択肢が大幅に増えることを意味する。
――「サイバーパンク2077」にも原作のTRPGが存在するが、その影響、ストーリーの関連性はどの程度あるのか?
Mills氏:具体的に何パーセントとは明言できないが、もともとTRPGなので、一緒にプレイする人によって毎回状況が変わる。「サイバーパンク2077」は、コアとなるストーリーを用意しつつ、その中に高い自由度を取り入れている。もしオリジナルのTRPG版を知っていれば、いろんな細かい要素が似ていると感じられるはずだ。原作のファンの方には期待して貰いたい。
――主人公にミッションを依頼するキャラクターは、右腕に金の義手を付けていたが、ああいった創造性、クリエイティビティはどこからでてきているのか?
Mills氏:それはキャラクターチームの創造性だね。私はクエストデザイナーなので、クエストについて話をしよう。クエストを考えるときは、まずテーマ、ストーリーを大まかに決めて、そこから組み立てて、戻ってレビューをして……という破壊と創造を繰り返すことで徐々に完成に近づけていく。個人的なインスピレーションのタネは音楽のアルバムだ。今聴いてる音楽のアルバムからインスピレーションを受けることが多い。
―― Mills氏はクエストデザインを担当しているということだが、「サイバーパンク2077」のクエストデザインの特徴を教えて欲しい。
Mills氏:このゲームは、自由であるということを最大の特徴にしている。何をよしとするか、選択するかしないか、プレーヤーがすべて自由に選択できる。
――このゲームにも「Fallout」や「GTA」などのオープンワールドゲームと同じように、メインクエスト、サブクエストという要素があるのか?
Mills氏:基本は同じだ。メインクエストがあってサブクエストがある。ただ、我々はメインとサブの重要度を一緒だと感じて貰えることを目標にしている。メインクエストだから重要で、サブクエストだからどうでもいい、ということではなく、すべてが重要だと感じられるようにクエストをデザインしている。
――クエストの数は?
Mills氏:まだ話せないが、「ウィッチャー3」と同じぐらいだと考えてくれていい。
――マルチエンディングになると考えて良いか?
Mills氏:それはまだ断言できないが、そうなるように目指している。このゲームは「選択と結果」が重要なテーマとなっている。プレーヤーの選択によって結末が変わるものを目指している。
――そういえば、E3 Xbox Media Briefingのハッキング演出は面白かった。なぜあのような演出にしたのか?
Mills氏:とにかく目立たせたかったからだ。バーンと発表して、みんなが盛り上がる様子が見たかった。2013年に最初のティーザーを発表してから、長く続報を出していなかったので、派手な演出を取り入れた。
――Xbox版の独占コンテンツはあるのか?
Mills氏:現段階で確約はできないが、過去の我々のやり方からしてもプラットフォーム毎のエクスクルーシブはないと思う。何も約束できないが、何かあればマーケティングチームから発表させてもらう。
――マルチプレイは?
Mills氏:今はまだ話せることが少ない。現時点で言えるのは、ローンチ時はシングルプレイに集中するということだけだ。
――ということは、DLCやアップデートでマルチプレイモードが追加されるかもしれない?
Mills氏:そのような話も社内で出ていて、検討も行なっているが、現時点で話せることはない。
――発売時期が知りたい。もう少しヒントがもらえないか。
Mills氏:完成した時に出る、としか(笑)。
――発売を待つ日本のゲームファンへメッセージを。
Mills氏:とにかく楽しみに待っていてほしい。我々は皆さんが期待してもらえるものを用意すると約束する。